ある夏の屋上で 中篇
「風間君…やっぱりいるんだよ…。」
信じがたいが、事実、風がないのに木は揺れた。
「とりあえず…今日は戻っておこうか…。」
そういって、僕と天音は校舎の中に入り、そこからげた箱へ行き中庭で昼食をとることにした。
中庭はとても広く、ベンチも多いのでランチタイムには大勢の生徒が集まる。
幽霊騒ぎの件もあってか、以前よりも増えている気がする。
「風間君は…怖くなかったの…?」
急にそう聞かれ、どうこたえていいか、回答に迷った。が、
「怖いというか驚いたな…。まさか本当にいるとは思わなかった。
あれが本物だとするなら幽霊を見てみたいな。」
予想の回答とちがったのか、少し驚いたような顔をして
「そっか…。うん!私もみてみたいな!一緒にみにいこっ!」
彼女は僕の手首を握った。ぽっっと顔が熱くなるのを感じながら時計を確認すると13:25をさしていた。
「行きたいけどもう昼休みはあと五分だから明日にしよう」
「もうそんな時間!?そっか…じゃぁ、約束ね!」
「う、うん。」
そういって彼女と別れ、僕は教室に戻った。
教室に戻ると、クラスで数少ない仲のいい級友、鎮西丈が近づいてきた
「おい、拓也~お前もついに惚れたのか?」
ニヤニヤしながら問いかけてくる丈に、何のことかわからない僕は
「どういうことだ?」
と、切り返す。すると、
「何って、決まってるじゃねぇかぁ~天音だよ~
好きになったんだろ~?」
予想外の返答に
「ぶっ。な、何言ってんだよ!惚れるわけね~じゃん
おれそーゆーのに興味ねぇし!」
そういいながらチラッっと天音の方をみる。
その視線に気づいた彼女は、一瞬、笑顔を作った。
それに再び顔がほてる。
「ほらな~赤くなっちゃって~隠すことね~ぜ~
応援するよ~」
チャかす丈を一睨みして、視線を落とした。
次の日の昼休み、今日は天音と屋上へ上がる階段で待ち合わせをしていた。
彼女とほぼ同時にそこへ到着し、屋上へと上る。
そして、昨日揺れていた木のそばへ寄る。
すると…小さな女の子がいた。
「この子…幽霊…かな?」
天音が僕の袖をひっぱりながら不安そうに問いかけてくる。
「だろうな…」
そういって、しゃがみ、その女の子に近づいていく。
「君は…?」
びくびくしながら、小さな女の子は
「松田…有沙…。」
と小さな声で答えた。
それを可愛いと感じて、警戒心が薄れたのか天音が
「ありさちゃんか!私は真奈、よろしくね!…ほら!風間君も」
先ほどとの変貌に驚きながら
「拓也…だよ。」
「たくや…まな…。」
「そう!まな!覚えてくれたね!!風間君っ」
僕は…幽霊である有沙より無邪気に笑う天音を見ていた…。