ある夏の屋上で前篇
僕は屋上が好きだ。
風が気持ちいいから、とか高いからという理由ももちろんあるが
やはり一番は悩みが、心配事が、そして後悔が吹き飛ぶから…である。
僕は後悔が多い。
あの子を手伝えばよかった、助ければよかった…。
でも、やって後悔したくない。だから、やるとまよっても基本やらない…
で、結果後悔して終わる。
その繰り返しだ…。
さらにみんなは悩みといえば恋愛、という年齢であるが、
高校でありながら、僕は恋愛を、恋をしたことがない。
それもおそらく…後悔したくないから…
変わりたいとは思ってる。でも、変われないんだ…。きっかけがないから…。
僕、風間拓也はそう思っていた…。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
昼休み、いつも通り一人で屋上に向かう僕。
最近、屋上に来る人が減ってきた。
それは僕にとっては好都合。
昼飯はできるだけ静かなところで食いたいからだ。
ガチャ。屋上の扉をあけると、
一人の女子が柵にもたれかかっている。
同じクラスの天音 真奈。彼女とはほとんど話したことがない。
が、噂は聞いている。性格がよく、容姿は学校一とまでいわれるほどである。
今日は彼女一人のようだ。
とりあえず、かかわらずいつものベンチにむかうと、意外にも彼女が話しかけてきた。
「風間くん…?」
無視できる状況でもないので、
「なにか…よう?」
「用ってわけじゃないけど…少し話そうよ」
一人がよかった、という気持ちもあったが、もてる女というものに多少興味がわいたので
「かまわないよ。」
「ありがとう♪風間君はいつもここにきてるの?」
あまり触れられたくない質問ではあったが、彼女ならいいだろうと思い
「大体ね。天音さんは、普段来ないよね…??」
「えぇ…。でも、今日はちょっと事情があったの。風間君、ここの噂聞かないの?」
噂の類はあまり好きじゃないから聞いたとしても覚えていない。と答えるわけにもいかず
「どんなの?」
「幽霊が…でるって」
「幽霊ね~しんじたことないなぁ」
「だから、最近ここで食べる人減ってるでしょ?」
「なるほどね。みたことあるって人が、いると…」
「そう!…あれ?風間君反応鈍いね~」
「そーゆーのは信じないからね…」
「そっか…じゃあ、私は戻るね」
気付くと彼女は食事を終えていた。
「うん。おもしろい話をありがとう。」
「おもしろいって…。ふふまたねっ」
彼女は口元を緩ませこちらをちらっとみてから校舎へ戻っていった。
僕も食事を終え、教室へ戻ると彼女は一人で本を読んでいた。
教室で、しっかり彼女をみたのは、はじめてかもしれない。
あたりを見回すと、何人かの男子が彼女を眺めていた。
―翌日―
再び屋上へと向かった。
案の定、彼女も屋上にいた。
「待ってたよ~」
前日、またねと言っていた意味を今理解した。
「ご…ごめん…。」
「いーよいーよ☆」
そして、ベンチに腰掛けると、風も吹いていないのに木が揺れた。
弁当をあける前にもかかわらず、
彼女はキャッっと甲高い声をあげ、僕の手を引き校舎へと。
「あ、ちょ・・」
止めようとする僕の声を聞きもせずに…。