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君と僕の響奏曲  作者: 宝月 蓮
第三楽章 その思いはappassionato

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奏の進路

 花音が奏達と共に過ごすようになった翌日の放課後。

 吹奏楽部員達は音楽室に集まり、顧問と部長である蓮斗から今日の予定を聞いていた。


「それから、今日は一年で入部してきた人を紹介します」

 蓮斗の言葉の後、花音が前に出て来た。

 奏は優しく表情を綻ばせる。


「一年三組、桜井花音です。えっと、中学では三年間ホルンをやっていましたので、今回ホルンパートに入ることになりました。よろしくお願いします」

 どうやら花音は緊張しているようで、表情が硬かった。


 奏と彩歌が吹奏楽部なので、花音も二人につられて入部したのだ。

 奏と彩歌は花音がホルンをやっていたことを昨日聞いていた。


「花音ちゃん、部活でもよろしくね」

 奏は早速花音に話しかけに行く。

「うん。久々のホルン、ちょっと楽しみ」

「そうだよね。私もフルートは中学一年の時にやめて以来久々だったから」

 花音はカタツムリのような形のホルンをギュッと抱きしめていた。

 奏は花音の気持ちに共感出来た。

「さっき他のホルンの先輩達が話してるの聞いたけど、奏ちゃん、フルート凄く上手なんだよね?」

「奏のフルートは本当に最高なんだから。花音も聞いたら分かる」

 彩歌が会話に加わる。

 まるで自分のことのように自慢げだ。

 奏はそんな彩歌にクスッと笑ってしまう。

 そして、彩歌にはかつて棄権したフルートコンクールに、同じ曲で挑むことを言っていないことに気が付いた。


「あのね、彩歌。実は彩歌にまだ言っていなかったことがあるの」

「え? 何?」

 彩歌はきょとんとしている。

「私、中一の時に棄権したコンクールに出ることにしたの。前と同じ曲で」

 奏は真っ直ぐ彩歌を見つめる。

「奏、もう大丈夫なんだね」

「うん、私はもう大丈夫。ありがとう、彩歌。フルート奏者の道に進むつもりだから」

 彩歌は少し心配そうである。しかし、奏は真の強い目を彩歌に向けていた。

「そっか。応援してる」

 彩歌は嬉しそうな表情になった。

「奏ちゃん、何かコンクールに出るの?」

 事情をあまり知らない花音は首を傾げている。

「うん。ごめんね、花音ちゃんにはまだ説明していなかったね」

「あたしと奏、同じ中学の吹奏楽部でさ。それで奏は中一の時に……」

 奏と彩歌は花音にかつてのことを話した。


 奏が中学一年生の冬、大きなフルートコンクールの本線で腱鞘炎を悪化させて途中棄権したことを。


「奏ちゃん、そんなことがあったんだね」

 花音は目を丸くしていた。

「でも、最初に奏の宣言が聞けるなんて嬉しい」

 彩歌のその言葉に奏はハッとする。

「ごめん、彩歌、ぬか喜びさせちゃったみたいだけど……一番最初に話したのは……」

 奏は最前列でクラリネットを準備する響に目を向ける。

「まさかあいつ!? 何で!?」

 彩歌は誰のことか分かり、響をギロリと睨むのであった。

「もしかして、奏ちゃんの幼馴染だっていう先輩のこと? 小日向先輩だっけ?」

 花音にも、奏は響との関係のことを話していた。

「何であたしよりも先にあいつに話してるの?」

「それは……」

 奏は穏やかに微笑みながら口を噤む。


 脳裏に浮かぶのは、響との幼い日の思い出や、高校で再会して以降の笑顔。


「あいつよりもあたしの方が奏のこと大事に思ってるのに」

 彩歌は拗ねたように頬を膨らませた。

「ありがとう、彩歌。私も、彩歌のことが大切だよ。一番辛(つら)かった時に、そばにいてくれてどれだけ救われたか」

 奏はかつての挫折を思い出していた。

「それはあたしだって、奏がいてくれたお陰で救われたわけだし」

 彩歌はやや照れたような表情だった。

「二人共、仲良くて羨ましいなあ」

 最近加わった花音はほんの少し寂しそうだった。

「花音もあたし達の大切な友達だから!」

 彩歌はギュッとホルンごと花音を抱きしめた。

「そうだよ、花音ちゃん」

 奏は柔らかく微笑んでいる。

 楽しそうな三人であった。






♪♪♪♪♪♪♪♪






 奏はかつて棄権したフルートコンクールに出ると決めてからは猛練習に励んでいた。

 吹奏楽部の個人練習にて、個人的に出場するコンクールの曲を練習していた奏。

 彩歌も休憩に行ったので、奏はフルートを教室の机に置いて深呼吸をした。


「かなちゃん、今日もコンクールの曲の練習してるんだね。もうすぐ予選だっけ?」

 響が奏のいる教室に入って来た。

「はい。今は特に行事もないですし、個人的なコンクール優先にしてもらえてありがたい限りですよ」

「顧問の先生もかなちゃんに期待してるみたいだよ。明日は部活休んでレッスンだっけ?」

「はい」


 奏は現在学校の部活よりもフルートコンクール優先になっている。コンクールが終わり次第再び部活に力を入れるつもりである。


「本当は予選も見に行きたいけど、体育祭とドンピシャで被ってるからね」

 響は苦笑した。


 音宮高校の体育祭と奏のコンクール予選の日程が丸被りなのだ。

 当然奏は学校に事情を説明して体育祭は休むことになっている。公欠扱いにしてくれるそうだ。


「……体育祭休んでかなちゃんの応援に行きたいな」

「響先輩、そうしたらクラスが困りませんか?」

 奏は苦笑した。

「まあ……そうだよね。でも、本選は絶対見にいくから」

 響は真っ直ぐ奏を見つめていた。

「はい。まずは絶対に予選突破して見せます」

 奏は穏やかだが、自信に満ち溢れた表情だった。

「それに、音大のフルートコースを目指すことも決めました」

「かなちゃん、本格的にフルートの道に進むんだね」

「はい」

 奏は力強く頷く。

「応援してるよ」

 響はまるで自分のことのように嬉しそうだった。

 奏は響の表情を見て、更にやる気に満ちあふれていた。

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