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あと六日!!『冬越し中の行商人』

 冬に市場は立たんと言うが、雪で街道が塞がる前に逃げ損ねた行商人ってのも案外居てな。


「そんなに悩むんなら、立て替えといてやってもいいぞ?」


 この辺りじゃ、雪が二階まで降り積もることもあるから、この時期に路上で店を開いている馬鹿は二重の意味で居ない。

 ただ、その手の商人向けな安宿を巡ると掘り出し物を得ることも出来る。


 なんて言い出した俺の話に、最近採取クエストで懐が温まっていた少女二人が飛び付いた。


 好奇心旺盛な獣族の戦士ディトレインに、真面目で節制はするものの、やっぱり女の子な神官トゥエリ。

 俺の冒険者仲間だ。

 二人は今、なんとも愛らしい民芸品を扱う行商の元で既に半刻近く唸っている。


 懐具合を何度も確認していたディトレインが、猫耳をピクリとさせて隣のトゥエリを窺う。


「それにゃらぁ……」

「駄目だよ、ディト。ロンドさんも、お金のやり取りはパーティ崩壊の引き金です」


 ディトレインの浮ついていた尻尾が地面に落ちた。

 ただ、言いつつトゥエリも視線は商品へ注がれていてな。


「えーっ、でもさっ、これさっ、次来た時には無くなっちゃうかもだよ? 今ある分で買っちゃうとーっ、次に集めようって話してた冬用の装備も買えなくなっちゃうよ?」


「っ、そうなんだけど……でも」


 と、トゥエリの視線が俺を撫で、ディトレインの尻尾が俺の足首に巻き付いてくる。


「これ以上、甘えてしまう訳には……」


 彼女が言ってるのは、ディトレインと二人で俺の部屋を占拠しちまってる事だろう。

 事情があって元の部屋を失った二人は、俺に頼る形で冬越しの住居を手に入れた。

 しかも、その主である俺が適当な理由を付けてあまり部屋に居ない事が、トゥエリにとっては気になって仕方ないんだろう。

 別に野宿してる訳じゃないし、俺は俺で今の状況を愉しんでるんだけどな。


 神官には真面目な奴が多い。

 野宿しない方法について解説するのは、今のところ内緒だけど。


 そうして俺はにんまり笑って応じてやった。


「さァどうする冒険者お二人さん?」


 金を借りる借りないはどちらでもいい。

 問題はそこじゃあないんだ。


 冒険者ならよ。


「欲しいものが二つ、元手は一つ分。方法を考え出すのも、危険や感情を切り売りして解決策を得るのも、冒険者としての醍醐味だッ」


 大いに悩め、大いに欲しろ、苦労した分だけ手に入れた悦びも大きいし、手に入らなかった時でも次こそはと頭を使う。いいことさ。

 そこにテメエの矜持や誇りを優先しても、全く構わない。


 懸けているのは人生と、命だ。

 周り巻き込むなら相応に信頼関係を築いて認められればいい。

 金の貸し借りだって、知識の提供だって、結局はそこへ行きつくんだからよ。


 けど今回は、もうちょっと視点を変えてみてもいいと思うぜ? 


「うーん…………うーーーーん、うーん?」


 なんて、粘られつつも根気強く少女二人の買い物に付き合っている行商の兄ちゃんへ視線を送ってやると、ディトレインの目がようやく商品から俺や商人へ向いた。


「あ!!」

 獣族の尻尾が元気に跳ねた。

「もしかしてさっ、トゥエリ!!」


 耳打ちされた神官が、固く杖を握りしめていた手を、緩める。


「…………え? そういう、ことなの、かな?」


「頼んだ所で危険はにゃい! やるだけやってタダならやってみない手はないよっ!」


「わかった……っ。あ、あの、値段交渉……よろしいですか?」


 さて、冬の宿代は薪の分まで高く付く。

 売れ残りを抱えちまってる商人の懐具合を見極めて、安く良いモノを買い叩けるか……二人の健闘を祈るとしようか。





















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