調査
話を聞いた翌日。
なんとなく久しぶりに早起きしたものの、出発は昼らしい。
病院の仕事を手放すわけにはいかないけど、せっかく早起きしたのに...。
時間も余っているし、宮原さんに勝つために特訓しなきゃだな。
ドアが開く音。同時に、ナースの芝野さんが顔を出す。
「あれ、珍しく早起きだね。」
「なんとなく」
「そんな日もあるよねえ。」
彼女は結構ポジティブな性格だと、最近分かった。
「あの人、妙にいそいそしてたもん。今日どこか行くんでしょう?」
「そ、そうですけど...」
「かれこれ五年くらい一緒に仕事してるからね。分かってくるのよ。」
「なるほど...さすが芝野さん」
五年も仕事していれば、自然と分かるものなのだろう。
「でしょでしょ?あの人、君のこと見つけられて良かった、って言ってたなあ。」
「え?」
発言の意味がわからず、聞き返す。
「あ、やば、言っちゃった。今のはなかったことにしてー!」
そう言って、彼女は立ち去っていった。
「見つけられて良かった」って、どういうこと?
一体、宮原さんは何を隠しているのだろうか。
――謎は解決しないまま、昼を迎えた。
約束の時間にエントランスに行くと、青の自動車が1台止まっていた。
近くには、宮原さんの知り合いと思わしき人物もいる。
約束の時間から十分、宮原さんがまだ来ない。
「いやあ、すまない。遅れてしまった。」
後ろから、宮原さんが走ってきた。
「ったく、今日は早い方じゃねえかよ。」
これで、早い方...?宮原さんって、意外としっかりしていると思っていたのに。
「そうだ、紹介するよ。僕の友人で、フリーライターの池田だ。」
「ちーっす。おまえさんのことは少しは聞いてるぜ。」
チャラい人。それが池田さんの第一印象だった。
「今日は、よろしくお願いします...。」
「いいってもんよ。珍しくリュウが気に入ってるんだしな。」
「余計なことは言うな。」
「またまたー」
この二人、いいコンビだな、と感心して眺めていると、「ささ、乗っちゃってくれよ。」と声をかけられたので、「はい」と応じた。
移動の間、車内では英語の曲が流れていた。
何を言っているのか全くわからないけれど、なんとなく雰囲気が気に入ったので、今度聞いてみよう。
車は高速道路を降り、斜面の激しい山道を通り、県をひとつ、ふたつ、と越え、人のいない田舎に来た。
「よし、着いた。ここから少し歩いたところにあるらしい。」
「何があるんですか?」
「活動拠点みたいなところらしいけど...」
「こんな神社に一体なにがあるんですか」
「ま、それは言ってからのお楽しみってもんよ。」
「は、はあ...」
「ここで車を見ておくから、二人で行ってきな。」
「いいのか、行かなくて。」
「まあ、そのー...触れないほうが良い事情ってのもあるだろ?俺は二人と違って、普通の人間だからさ。」
「そうだな。すぐに戻ってくるから待っとけ。行くぞ。」
長い会話の末、俺は宮原さんと二人で鳥居への階段を登り始めた。
――どれくらい登っただろうか。
「はあ、はあ......」
「長すぎるな...」
一段、また一段と歪な石の階段を登っていく。
そして、さらに五分ほど経ったとき、視界に鳥居の先端が見えた。
「あと、少し...」
長い長い階段を登りきり、見えた先には、大きな鳥居と、小さな宝物庫。
「なんだ、これ...」
「中には...なにもないな」
「「うーん」」
二人して考え込んでいると、突然、何の変哲もない地面が光りだした。
「わっ!」
「何が起きているんだ!?」
あまりの驚きに、近くの柱に隠れる。
光の先端は紋章のようなものを描き、そして、真上に大きく光を放った。
そして――人が現れた。
「はあああ、今日も仕事...。」
「さっさと終わらせよ。」
「だねえ...。」
ここにいることがバレたら、命が危ない。
そう、本能が察して息を殺して隠れる。
おそらく宮原さんもどこかに隠れているはずだ。
「てかさー、いつまで隠れてるの?」
気だるげな、でもしっかりと響く女性の声。
どうする...さすがにこの見通しの良い場所ではバレるよな...え、俺死ぬ?
「早く出てきてもらって」
今度は、同じく気だるげな男性の声。
どうすればいいのか分からず、宮原さんがいるであろう場所に視線を向ける。
どうする、どうすればいい...!?
「あ、待ってクルから電話。はいー。ええ、まじで...。はいはい、すぐ行きまーす。」
「また呼び出し?」
「んじゃ、そっちの処理よろしくー!」
「は?ちょ、まっ」
シュッ
消えた。人が、消えた...?
「はあ、最悪...。面倒だから手っ取り早く出てきてもらって良い?」
人生、終わったー...。それが、素直な感想だった。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます!
ずっと書きたかったキャラクターがついに出せて、嬉しい笑
ここからペースを上げていきたいところ......。
感想・リアクション・アドバイス等、お待ちしています。
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