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ただいま地獄
急遽ひとり新幹線に乗り東京に戻ってきて、すぐに病院に向かった。
タクシーを経由して、病院につくと、エントランスで父親が待っていた。
「行くぞ」
そう静かに告げた、父親の後ろを俯いたままついていく。
エレベーターが来るのが遅かったので、階段で四階に上がり、部屋の前まで来ると、父親が道を開けた。
自分でドアを引け、ということらしい。
ゆっくりとした足取りで扉に近づき、取っ手に手をかける。
震える衝動を抑えながら、ドアを引いて――目を見張った。
泣き崩れている母親。
生命の面影がなくなった祖母。
後ろで静かに泣く父親。
涙が伝う。
声を押し殺して泣く。
こんなにも、
こんなにも、
命は、
儚いものなんだ。
瞬間、
あの日の記憶が
フラッシュバックする。
落ちていく友の姿。
あの日のように
俺はまた
なにもできなかった。
変わってない、
昔も、
今も。
心の中の悪魔が
そっと、
厳かに、
かすかに、
笑った、
気がした。
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