先生と違和感。
これは奇妙な先生に関する物語。
先生は妙だ。(仮称)
…僕の先生はおかしい。
朝の出来事を話そう。
「はーいHR始めるよーー」(クソデカボイス)
先生が話を始める。時刻は8時30。教室の顔さえ合わせたくない連中と同じ動作をし、頭を一斉に下げて礼をする。
朝の僕はたいてい眼が濁りきっていて死んだ魚のような眼をしている。
そんな中辛気臭さをたっぷり含んだため息を吐き、一日が始まる。
始まりのSHRは担任の先生による一日の流れの確認や今週の行事、提出物の確認。
…
「提出物を出さなかったらぁ、成績の点数が引かれるとよっ」
先生は告げる。なぜ僕は毎回このようなタイミングでにこやかな表情を浮かべ、たしかに笑顔でありながらどこか
無性に腹のたつ表情をしてくるのかがわからない。なぜならこんな教師を僕は見たことがないからだ。
今までの先生共なんて言ってしまえば、凝り固まった自分の正義と、まるで人間の見た目をした同じプログラムをされた
AIか、ただのフランクな人間か。
だから教師という存在が僕は嫌いだ。
「別にいいとよ?出さなくても点数が引かれるだけだからぁ。」
続けて言う。しかしただ煽って焚き付けて提出物を出させたいわけじゃない。しかし減点されるそれを見て楽しんでいるわけでもない。
このような文面では伝わらない何かがあの女の奥にある。
僕は「先生」に対して毎回、表情という仮面の奥になにかがあると思って接している。
もし先生を文字起こしし、エピローグの一つでも読んだら見えたりするのだろうか。
ある種、その仮面を僕は物語と同時に国語の文字数限定難解読解問題として捉えている。
先生という物語を読み解き、本質という問題を解かされている気分だ。
───この得体のしれない気分の悪さと、完璧に近しい仮面を見て、また違う意味を多く孕んだ息がそっと漏れた。
あの教師の正義や考え方とは何なんだろうか。
僕には理解し得ないものだろうか。(この感覚、上位者の叡智にでも近づこうとしている気分だ。)
少し違う話を出そう。
僕は今の人間関係の環境なんかが苦手だ。女子は大人数で集まりゲラゲラ、男は男で大声を出したり人を平気でいじったり軽い雰囲気だったり。
とてもじゃないが正気ではいられない。とにかくそのノリが寒いし気持ち悪かった。
僕はそのことを先生によく話していた。しかし先生は相槌をうち、僕にそれをできるだけうけいr、いや。なんというかそのような環境でも生きていける力を説いた。
結局ありがちな、大事にならない確信がある生徒には我慢させ、一年終わらせるつもりなのだと、具体的な対策なんてのは何もしないのだと僕は思っていた。
以前にそのようなことがあったからな。
しかし、一時時間が立つと、特に悩んでいた人間の対象が(つまりうざくてたまらなかったやつが)変わっていた。それは小さな変化、微弱な変化かもしれないが確かに変化していた。
あるやつは人をあまりいじらなくなり。ある嫌いなグループは少し静かになった(ように思える。)
それに関して先生に尋ねると
「陰で対策してるよ」
とだけ言った。
具体的な内容は教えてくれなかった。
少なくともわかるのは、この先生は今年この学校に入り、僕も1年生で、生徒と先生の距離は最も離れているということ(つまり仲の良い先生から注意が入るわけではないこと。)
そしておそらく人心掌握がうまい人間であること。
そのまるで盤上のチェスを見下ろしているような「眼」を使えば簡単に犯罪や嫌いなやつを消すなんてことできてしまう。そう思った。
違うタイミングで僕は同じ学校の生徒に友達がネット上で悪口を言われていることを伝えた。証拠の写真なんかも全部渡した。
その時に小さな声で
「バカだなぁ。」
といった瞬間を見逃さなかった。
仮面の端からこぼれる瞳の色を垣間見た気がした。
ここまで話していて、僕は先生が完全に仮面を被って役を演じているように語った。しかし彼女は人間だ。
すべてがこういうわけじゃない。授業中の先生は普通に楽しそう。
手相の占いをするときの先生は朗らかだ。(しかし、ただのまじないのクセにかなり的中したことを言ってくる。)
・・・・・
ただそうは思ってももしかするとそう思わされている可能性もある。
夜襲のリュカオーンドン引きの頭の良さ、心理掌握術で、信じ込まされているのやもしれぬ。
僕は先生が何者なのかわからない。
だからこそ、あえて言おう。
僕の先生は、妙だ。