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息子の押し入れには人外が住んでいる  作者: 笹木
第六章 息子と母と人外
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第3話 大海原を泳いでみれば

 質問:中学生の息子が顔にアザを作って帰ってきました。親はどうするのが正解ですか?


『そんなこと自分で考えてください』


『顔にアザ? 殴られたに決まってるじゃないですか。こんなところで質問なんてしている場合ですか? すぐに学校に連絡してください。そして犯人を突き止めてもらい、謝罪を受けましょう。学校と相手の親に具体的な再発防止策を考えさせ、その実行を誓ってもらうまでは許しちゃだめですよ』


『どうするのが正解って、「痛そうだね」、でいいんじゃない? 親が何をすることがあるの。過保護だよ』


『警察に被害届を出しましょう。暴力は犯罪です』


『ちょっとみんな冷静になってください。この状況じゃ相手がいることなのかどうかもわからないし、ただ転んだだけかもしれないじゃないですか。それに、その子自身が実は加害者側で、やり返されただけってこともある。それなのに騒ぎ立てたら、息子さんも本当のことを言えなくなっちゃいますよ』


『中学生なんてそんなのよくあることなのに、いちいち気にする必要あります?』


『今はイジメも精神的なダメージが大きく、命に関わる時代です。先生はあてになりません。親しか助けてあげられないのです。じっくりと時間をかけて話を聞いた上で、学校としての対応を求めるべきです』


『中学生男子です。恥ずかしくて学校に行けなくなるので親が口を出すとか、先生にチクるとか、マジでやめてほしいです』



 親としてどうすべきかをずっと考えているうちに、どうしたらいいのかわからなくなり、そうだ、ネットの大海原で先人たちの知恵を借りようと思い立ったのだが。

 調べるとすぐに出るわ出るわ、皆さま同じようなことで悩んでいるのだということがわかった。

 さらにはよくあることだからこそケースも様々で、対応も考え方もまた様々だ。


 しかし誰が見ても「これが答えだ!」と言えるような回答は、当たり前だが出てこない。どの回答にも反対意見があるからだ。

 立場も価値観も違えば回答だって変わるのは当然なのだが、迷える子羊はさらに迷宮に潜ってしまった。

 たくさん同じような質問があり、自分と似たような悩みを抱えている人はたくさんいるが、迷子が一人増えただけだった。


 ただ、中学生男子だという書き込みには、「だよね」と頷かざるを得なかった。

 彼とは少し理由が違うが、私自身も親には知られたくなかったし、先生にも言いたくなかった。

 しかし、それはあくまで子どもの思いであって、その通りにすることが最適解とも言えないだろう。

 子どもは視野も狭く、間違いもするし、まだ先を見通す力が弱い。だからこそ親が必要な場面だってまだあるのだ。


 そうなると結局何が正解かはわからないけれど、そういった様々な意見を目にするのは無駄ではなかった。

 バシッと決められないブレブレな自分を不甲斐なく思っていたが、親だからこそあらゆる可能性を考えるし、悩みもするのだと思えたことで少し落ち着くことができた。


 ちなみに、夫に相談するという選択肢はない。

 ほとんど家にいないし、息子との関りも薄い、お金を銀行口座に運ぶのが自分の役割だとばかりに存在を消している我が家の空気だから。

 どうせ話しても聞いてるんだか聞いていないんだかわからない態度で、話すだけ無駄だしこちらが消耗するだけでメリットが一つもない。

 話し出したかと思えば「俺が子どもの頃はなあ」と的の外れた自分語りをするだけで、会社の若い子に嫌われていないか心配になるというおまけもついてくる。


 とにかく、一度担任の先生に電話してみよう。

 だって、あんな明らかに「殴られました!」と顔に書いてあったら、先生もさすがにスルーはできずに「おい、どうしたんだその顔!」と聞くだろう。

 その結果、同じように本人がさらりと流したとしても、クラスメイトたちからは何か話を聞けているかもしれない。




 そろそろ授業が終わった頃だろうと、覚悟を決めた夕方四時半。

 我が家では沈黙の家電(かでん)と呼ばれていて滅多に鳴らなかったはずの家電(いえでん)が、今日も鳴った。

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