プロローグ
初めましての方も、こんにちはの方もよろしくお願いします。
毎日一話づつ投稿予定です。
赤黒い炎が、見上げるほどの高さまで轟々と音を立てて燃えている。
今日8歳になったばかりの私は、茫然とその光景を見ていた。目の前には無残に殺害された両親が横たわっているが、どうしてこんなことになっているのか分からない。
「お母様…お父様…」
事切れていると理解しながらも、一縷の望みをかけて両親を呼んだが、勿論返事などない。
「お兄様…キースお兄様、どこ?助けて、怖い…」
10歳年上の兄の名前を呼んだ瞬間、力が抜けて蹲った。答える声はなく、炎が燃え盛る音だけが無常に耳に届く。今すぐに逃げなくては、このまま焼け死んでしまう。理解するより先に熱波が頬を撫でる。
「だめ…足に力が入らない…誰か、誰か助けて!お願い!!…ごほ、ごほっ」
絶望しながらも、死にたくなくて必死で何度も叫んだ。叫んだ拍子に、煙を吸い込んでしまい激しく咳き込む。目の前は赤く染まり、涙で景色は歪んで見える。もう、ここで終わるの…?絶望に襲われそうになった時、遠くで私を呼ぶ声が聞こえた。
「リア、どこだ!!僕を呼ぶんだ!!」
「く、くり…クリスティアンさまぁ!!」
叫んだ途端、目の前が真っ白な光に包まれ、中心に私の知る人物が立っていた。白銀の長髪に紫の瞳の眉目秀麗な青年だ。
「リア、大丈夫か?取り敢えずここから離れよう」
「で、でも…」
目の前の両親の遺体を見ると、クリスティアン様は私を安心させるように微笑んだ。
「大丈夫だ。アドキンズ侯爵たちも一緒に転移する」
気づいた時にはベッドの上だった。どうやら転移する時に、気が緩んで気を失ったようだ。
「お嬢様、お目覚めですか?旦那様をお呼びしてきます」
メイド服を着た女性が私の顔を見て、一瞬驚いた様な顔をしたまま部屋を出ていった。数分後にクリスティアン様がお医者様を連れて現れた。私は言われるまま笑顔や、悲しんだ表情をつくった。その度にクリスティアン様の表情が曇っていった。
「どうやら、オーレリアお嬢様は昨夜の出来事で表情を無くされたようです。精神的なものと考えますが、いつ治るのか今はお答えできません。軽い火傷は痕も残らず治せますが、こればかりはどうすることも出来ません」
お医者様は気の毒そうに私に頭を下げて部屋を出ていった。クリスティアン様が悲しそうに私に近づいた。
「リア、今の状態が理解できているかな?」
私は首を横に振った。どうしてお医者様が気の毒そうな顔をしたのか、全然見当がつかなかった。
「リア、これを見て」
クリスティアン様は、私に手鏡を渡した。私は言われるままにその鏡を覗き込んだ。そこには何の表情もうかべない私の顔が映っていた。私はビックリした。そう、心ではすごく驚いていた。でも、鏡には相変わらず無表情の私が映っていた。
「大丈夫だリア。きっと治る。それとキースが見つかるまで、この屋敷にいればいい。僕に全て任せて安心してゆっくりお休み」
私はそのままクリスティアン様のお屋敷で住まわせてもらうことになった。
そして、あれから6年が過ぎた。
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