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Parola-00:青春……そレは、キミが見たナニか。

 青春とは、どうやら知らないうちに終わってるものらしい。


「……」


 五月も半ば。教室に空調が入るのはもう少し先で、半開させたそこからは若干の生ぬるさを伴っているものの、窓際の席は自然な風の流れを常に感じていることが出来て、落ち着くというか、まあ凪ぎに凪いだ自分の内面を浮き彫りにさせなくも無いものの、それ含めて何となくの居心地は悪くは無かった。体温に干渉しないような、そんなぬるま湯に鼻下まで静かに身体を沈めているといったような。


 六年がとこ打ち込んできた陸上に終止符を打ったのは、本当に、大したこと無いと思ってた小さな怪我から来たものだった。左膝、半月板。深くストレッチしてる時にたまに曲げ伸ばしでちょっとだけ引っかかりあるなとは思っていたけど、四百を半日で八本とかやっても痛みとか違和感は無かったから発見が遅れた。去年の南関東大会決勝で写真判定七位という、悔いしか残らない結果に焦って、見て見ないふりをしていただけかも知れないが。今年こそインハイへ、という自分の中での大義名分めいた独りよがりと、周りからの期待という名の無責任な重圧と、そういうのが絡み合ってしまったんだろう。どこかで破綻するのはそれこそ目に見えていたはずなのに、俺はそれから目を逸らすためだけに、目の前のことに集中しようとしていた。だましだまし、膝も、自分も。そのツケは最悪のタイミングで。まさに都大会の当日の朝に、ベッドから踏み出した左脚がフローリングに沈み込んだくらいに感じるほどに不気味に。そしてまともに歩けないほどの痛みとして襲って来た。


 縫合手術を余儀なくされた。術後リハビリを経て普通の練習が出来るまで五か月か六か月とか言われたけれど、それはもうどちらでも関係のないことだった。あっさりと引退を決めて、推薦で入ろうと考えていた大学に、一般枠で目指すこととした。周りの運動部の面々も、概ねそんな感じの時期だったからあまり目立たなかった。それは良かったんだがそうでもなかったんだか、取り敢えず自分の鳩尾辺りにうっすら重く居座るしこりみたいなのは残った。


 そんな中、出会ったのだった。いや、出くわした? 遭遇? 邂逅? ともかく。


 完全に終わっていたと思っていた高三の、つまり最後の夏が、とんでもない角度から、とんでもなく鈍い光を滲ませながら、俺を既に捕らまえに来ていたのであった。前言撤回、


 ……青春とは、どうやら知らないうちに始まってるものらしい。


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