表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/8

首切り門左衛門 その2

 長く期間を空け過ぎてしまいましたので、取り敢えずこれだけでも……。


「おいしい」

「え?」

 おいしい、なんて言葉は決して珍しい言葉ではない。

 生きていれば、必ず一回以上は聞くようなものだ。

 そんな事は十分知っている事だが、俺は聞こえてきたその言葉にしっかりと反応した。

 何故なら――。

「……オムレツ、好きなの?」

「……おいしぃ~」

 再びそう言って、普段なら俺が座る食卓の位置に座っている相手は嬉しそうに無邪気な笑みを浮かべた。

 ……悪魔もオムレツ食べるんだ。

 思いもしない新発見だった。

 目の前の相手――ベルーは悪魔だ。

 怠惰の悪魔の称号を持つ、フランス出身の有名な悪魔らしい。

 見た目は、腰よりも長いサラサラの銀髪、滑らかな白い肌、中性的な細身と整った顔立ち。

 そして、表情はいつも瞼が半分近く下り掛けている、眠そうな表情だ。

 パッと見はハッキリ言って、容姿が人間離れして綺麗過ぎるものの人間にしか見えない。

 だが、実は人間ではない部分もちゃんとある。

 長過ぎる銀髪に隠されている耳の先が漫画に出てくるエルフのように尖っていたり、爪が染めていないのに真っ黒なところがそうだ。

 それよりも特に人間離れしている特徴が、頭上である。

 ベルーの頭には漆黒の上等そうなシルクハットが乗っかっている。

 そのシルクハットの中に、矢印の形をした黒い触角が生えているのだ。

「ん~」

 ベルーは空になった皿を俺の方へ向けて、差し出してきた。

『我が主は、オムレツのおかわりを所望しています』

「……はいはい」

 それ位は言えよ、と頭の中でツッコミを入れながらも、俺は皿を受け取って余分に作っておいたオムレツが置いてあるフライパンの元へと向かった。

『我が主はフランスでの暮らしが長かったものですから、美味しいオムレツには目が無いのでございます』

「褒めてくれるのは嬉しいけど、そこまで美味いかなぁ?」

 今まで一人暮らしが出来ていたのが信じられない程、完人叔父には家事の才能が一切無かった。

 完人叔父と一緒に暮らす事になった俺は、仕方ない感じで家事全般を担当する事になった。

 以来ずっと炊事も俺がしているので、簡単な料理ならそれなりに美味く作れる自信はある。

 とは言っても、所詮は家庭料理しか作った事のない――普通の主婦程度のものだ。

 プロじゃないし、料理教室とかに通ってる訳でもにい俺に、フランス料理で有名な美食の国にいた相手を満足させる程の腕前があるとは思えない。

『おや! 早速、影響が現れているようですね』

「え? 影響?」

 一体何の事を言っているのか、俺はすぐに理解出来なかった。

 だが、テレビに映っているニュースの映像を観て、俺は確信に近い嫌な予感を覚えた。

 テレビの画面には、『謎の首無し死体発見! 一体何が!?』という文字とその現場、それをリポートしている若いアナウンサーの姿が映っていた。

「これって……」

『この画面を通じて、事件が起こった場所の微かな妖力を感じます』

 俺の不安な気持ちを全く無視するように、コートは最悪の予感を言葉にしてしまっていた。

 影響、妖力……つまり、俺がベルーを復活させた事が原因で……。

 俺は手に持っていた皿を床に落としてしまった。

 ガシャンッと鋭い音を立てて皿の破片が飛び散っても、俺はしばらく呆然と立ち尽くす事しか出来なかった。

 何とも言いようのない罪悪感を感じながら――。

 食卓には、沈黙だけが横たわっていた。

 あまり進展が無くてどうもすみませんでした。

 次回はもう少し楽しめる展開に出来るよう頑張ります。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ