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第一話 現状


「リキヤ様、朝食は何がよろしいでしょうか?」

「ハァハァ……自分はポーミルクとラントルの目玉焼きをお願いします」

「かしこまりました」


 朝のトレーニングが終わったがもっと鍛錬を積まなければ、今のままでは弟にすら勝てないかもしれない。


 色無地の着物を着た女性は広々とした畳の部屋を出ていった。

 息を上げている黒髪長髪一本結びの青年は手拭いで汗を拭いている。


 もう王位継承の儀はそう遠くない、正直今の体で他の候補者達にまともに対抗できる気がしない。けれどここで逃げるようなことはできない、そんなことをしてしまえば強くなれる機会を自ずから捨てるのと同じことだから。


 目つきの鋭い青年は畳の部屋を後にし、長い渡り廊下を大広間に向かって移動する。朝の鳥のさえずりに心地の良い風。そんな情景とは裏腹に彼の足取りは重い。

 大広間を抜け二階に上がり、賑やかな声のする部屋へと入っていく。そこには十数人の人とお膳が並んでおり、使用人が食事を運んでいる。


 彼は自分の座布団に座るのに苦労している。


「リキヤにいちゃん! 今度の大会ほんとにでるの!」


 幼い男の子が大きな声で聞いた、それと同時に先ほどまで賑やかだった部屋は静かになった。


「ジュノ! リキヤは疲れてるから今はそっとしておくの!」

「……ほんとに彼出場するのか?」

「あの体じゃ自殺行為だぞ……」


 部屋はどよめき始める。その時、上座の隣にいた白と黒の髪が混ざった端麗な顔つきの青年が咳払いをした。すると部屋はまた静かになる。

 彼が「いただきます」と言うと、みなそれに続いた。


 兄上は流石だな、皆から尊敬されてる。


「リキヤ、お前は今度の王位継承の儀に出るのか?」

「はい、兄上はどうするんですか?」

「今年は出ないよ、国外に用事があるし今の実力で父を超えれる気がしないからな、お前も出場するんなら気を付けるんだぞ」

「ありがとう、頑張るよ」


 リキヤは兄であるテッカと仲良く話してるが、エンガイ家の人以外、使用人や従者たちは表情を曇らせている。


 朝食を済ませたリキヤはまた道場へと向かっている。渡り廊下を歩いていると後ろから黒髪の弓道姿の娘が話しかけた。


「リキヤ、本当に出るの?」

「出るよ、だれが何と言おうと」

「……厳しいことを言うけど、松葉杖の人間がまともに戦えるとは思えないわ、今のあなたは自暴自棄でただただ突っ走ってるようにか見えない!」


 エンガイリキヤは生まれつき足が不自由だった。頭脳は兄や姉に引けを取らず優秀で、手先も器用、座した状態で弓を射る技術も素晴らしい物であった。

 しかし、王位継承の儀は国内国外問わず強者の集まるトーナメント形式の試合。一対一の勝負で弓を射っても簡単に弾かれてしまうだろう。


「姉上、やってみなきゃ何も得られない。何かを得なければ、俺はいつまでたっても夢に向かって進めないんだ!」

「だからって! ……わかったわ、でも絶対に死んじゃだめだからね、必ず生きて帰るのよ」


 ……リキヤは返事をしなかった。




 儀のルールは武器の使用を許可している。自分で持ち運べる程度のものであれば何でもあり。勝敗の決め方は相手が降参するか死亡する、戦闘領域から一度に一分以上出る、気絶した状態で一分経過すると勝利が決定する。

 毎年数十人が参加し、トーナメントを勝ち残った一人が現在王である人と戦うこととなる。

 参加条件は15歳以上であること、本人に参加する意思があることの二つのみ。

 過去の出場者には毒や、自爆ベスト、生き物を所持したり場外から攻撃を加えたものなどがいたが、みな敗北を喫しおり、現在の王は21歳の時に勝利し、18年連続で王を務めている。

 リキヤの父、エンガイ・カツジは王の歴史上二番目に強いとされており、国民は彼に畏怖と尊敬の意を抱いている。


 それはリキヤ自身も同じであった。




 ホムラ王国、原始の大陸の南に位置する国であり、主要な種族はハイリアンとターダリンだ。

 ハイリアンは薄橙や白や黒の肌をした、体毛の少ない、生まれつきエラを持たない肺呼吸の種族。ほかの種族と比べてやや数が多い。

 ターダリンは原始の偉人アルバートキキが作り出した、金属の体を持った人造人間。繁殖や成長を可能とし、長い寿命を持つが数は少ない。

 この国の主な信仰は「炎」と「力」であり、国章には人の手に炎が宿るデザインが施されている。ハイリアンは炎の神を繁栄と幸福の象徴として崇めているが、ターダリンは神への信仰心は全くない、その代わりとして創造主であるアルバートの帰還を待ち続けている。

 そしてこの国の最も特徴的な思想は完全実力主義であることだ、たとえ王の子であっても足の不自由な者は周りから煙たがれるのが、今の現状だ。




 私は王に、父に憧れている。どうすれば近づけるのだろうか、……あの領域まで。そのためなら、俺は……。


 初めまして、作者のkarukaronです。今回小説を書いてみようと唐突に思って書き始めました。

 ただ、作文なんて小学校以来レベルで久しぶりだったんで結構読みずらいところがあるかもしれませんが、読んでいただければ有難いです。

 この小説はエンガイ・リキヤという人物を、彼自身の視点と客観的視点を織り交ぜながら進める、伝記に近いハイファンタジーです。

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