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生きづらいをゆるふわで表現したらそれはもうエンタメ

死にたいを口にしないと決めても、やっぱり脳内では死にたいと連呼していて、つい口から溢れ出てしまいそうだ。今日は空気が生ぬるいから死にたいし、明日は煙草が不味いから死にたいし、明後日はベッドから起き上がるのがめんどくて死にたいんだ。そんな死にたいスケジュールをこなしては、湊とのセックスだけがご褒美になりつつある。セックスした後は、もちろん死にたくなるんだけど。


「みにゃと、なにしてーんの?」


「課題です。入学後すぐに提出しなきゃいけなくて」


プリントを広げて、ずっとペンを走らせてると思ったら、そーゆーことだったのか。


「え、春休みまで課題!?頭おかしいね!湊は受験頑張ったのにぃ」


俺は可哀想な湊の頭をよしよしと撫でた。


「京一さん、僕、高校行くのが楽しみです!」


哀れんでいる俺とは対照的に湊の目には希望が満ち溢れていた。


「何で?勉強難しくなるよ??」


「だって、頭良くなったらその分社会に貢献できて、その分京一さんに還元できるんですよ?僕は誰よりも頭良くなりたいです」


「やめときな」


「何で?」


「自分を追い込みすぎるのは良くないから……」


湊は将来に対してわくわくしているのに、それを否定するかのように後ろ向きな俺の考えを伝えた。これで俺は失敗したから。


「京一さんがそうやって思いやってくれるの、控えめに言って好きです」


こいつのこーゆーところほんとタフ。それなのに病むんだから人間ってよくわからない。


「みにゃとぉ」


俺は甘えた声で湊を呼ぶ。


「ん?」


「ぎゅーして」


可愛こぶったら、少しでも要求が通りやすい気がして、こうやって甘えるのがやめられない。客観的に考えたら、クソ気持ち悪いんだが。


「はい、ぎゅー!」


湊は幼児向け番組に出てくるお姉さんのように、俺を甘やかしてぎゅーしてくれる。このぎゅーで死にたい気持ちとバイバイしたいのだが、なかなか浄化してくれない。


「湊、俺のこと愛してる?」


「愛してますよ。いつも愛してます」


答えはわかりきっている。ただ愛の確認作業がやめられない。愛がなければ生きていけない俺は愛の奴隷だ。


「湊のこと大好きだから、俺頑張るね」


死なない。死にたいって言わない。そのルールが俺の言動の自由を奪って生きさせる。けれどこれも湊のためなので、我慢できた。


湊が「でもやっぱまだ死にたいって思ってる」って俺の心の底を見透かすまでは。


つらいことがあった時、短絡的に死を考える。そうしてもどこか行動できずにいた。そんな自分が嫌いだった。今日は湊が冷たかった。課題が終わらなくてイライラしてそうだった。俺が死んだらいいなって思った。だって、俺がいると湊はイライラしちゃうから。でも我慢に我慢を重ねて、布団の上をゴロゴロしたり、煙草を吸ったりしていた。そんな時、湊に言われた。


「死にたいんですか?」


って。俺はこくんと頷いた。


「僕がさっき、ちょっとあっち行っててくださいって言ったからですか?」


それも否定できなくてこくんと頷いた。


「ごめんなさい。ほら、こっち来ていいですよ」


湊はうんざりした顔でこちらに両手を広げてくれた。湊にぎゅっとされる。少しの安心感を得て、でも気を遣わせたっていう罪悪感に飲まれた。


「湊……」


「何ですか?」


「ありがとう」


死にたいを言う代わりにありがとうを伝えた。そうすると湊はふふっと笑って、


「でもやっぱまだ死にたいって思ってる」


と情けなさそうにするんだ。湊にぎゅっとされても、俺の死にたいは治んないと湊にはバレバレで俺はちょっぴり恥ずかしくなった。


「死にたいよ。死にたい俺は変なんだろうね」


「それでも好きですよ。変な京一さんが好きです」


「狂っちゃいそうだよ。きっともう狂ってる」


俺はもう何もしたくないのに、甘えたい。俺のことを溺愛して俺の存在に価値を付与し続けて。


「ぎゅーしましょう。ちゅーもしましょう」


言われた通りにぎゅーもちゅーもされて、少しだけ心が軽くなった。俺は一人じゃない。それがわかったから。


「ふふっ、またちょっとだけ生きたくなった」


「嬉しいです。京一さんが僕のおかげで生きたくなってるって知れるのは」


死んだように生きて、生きるためにバイトをして、そのお金を散財してはまた死にたくなる。その繰り返しの日々で、回し車の上を必死に走っている気分だ。死んでこのループから抜け出したい。


「氷野さん、顔死んでますよ。いつもより」


「湊と心中しようとして、失敗した。ただそれだけ」


「は?何やってんすか、貴方達バカップルは!」


あかりに怒られた。


「でもいいじゃん。どーせ死なない。どーせ生きてる」


傷だらけの腕を情けなく見つめた。


「氷野さんって生きてて楽しいことないんですか?」


「楽しいことはあるよ。でも、死を上回るほどの楽しいことがないの」


俺は俺の人生に何も期待してない。期待するだけ無駄だから。こんなにもどーしようもない人生の何処に期待する要素があるんだか、わかんないね。


「せっかくの春休みなんだから、そんなことしてないで遊園地にでも行けばいいのに」


「じゃあ、あかりがそのお金払ってくれる?」


なんて俺が冗談言うと、


「は?何で??私が行くわけでもないのに」


と不満げに訴えてきた。


「そんぐらい行く気がないってことだよ」


「つまんない男」


「殴るよ?」


「きゃー怖い!」


いつもの冗談の貶しあい。それすらも俺は疲れるみたいでため息が出た。


「氷野さん、これプレゼントです!」


あかりがぎゅっと拳を握りしめて差し出してきた。


「何?ゴミならいらないよ??」


と手を出さずにいると、その手を引っ張られて、手の上にプレゼントとかいう何かを乗っけられた。


「じゃーん、ぐっぴょんくんでーす!」


「は?」


俺の手の上には何か分からないキャラクターのキーホルダーが乗っかっていた。


「え?氷野さん、まさか知らないんですかー?」


「こんな今バズってる有名キャラを」


とあかりと美優ちゃんで「ねー」って楽しそうに俺をからかって笑ってる。


「俺、SNS嫌いだから……」


「これだからつまんない男はぁ」


とあかりが俺を雑に弄ると、美優ちゃんは


「氷野さんのそーゆーところも可愛いですけどね」


って軽くフォローしてくれた。そして、ほらこれ見てくださいって、ぐっぴょんくんの四コマ漫画を見せてくれた。その漫画ではぐっぴょんくんが死にたい人間の脳みその上でぴょんぴょんして、死にたい気持ちを吹き飛ばしていた。


「氷野さんにピッタリだなぁって思って、」


あかりは俺を元気づけるためにぐっぴょんくんをくれたんだ。


「……ありがとう」


となんか照れくさい空気が流れる。それに水を差すように美優ちゃんが、


「あかり先輩って案外あざといですよね〜!」


ってからかった。


「違う!好意とかじゃないし!!ただ死なれたら困るだけ!ほんとそれだけ!!」


あかりは顔を真っ赤にしながら反論した。


「え〜、氷野さん死のうとしてたんですか?そこまで追い詰められてるんなら相談してくださいよぉ」


美優ちゃんは俺の手を掴んでそう言ってくれた。


「別になんか大した理由があるわけじゃないから……」


「理由がなくても、気軽に相談してください。私は氷野さんの力になりたいんです!」


と意気込む美優ちゃんを見て、何だか嫌気がさしてしまった。


「ありがとう。また何かあったら相談するね」


とその場限りの聞こえがいい言葉を吐いた。


「美優ちゃん、あざと〜!」


「あかり先輩、ちょっとうるさいですぅ!」


仲いい二人の楽しげな雰囲気を壊したくなくて、俺は愛想笑いをした。もちろん、死にたい気持ちは治んない。


家に帰ってから、寝っ転がりながらスマホを何気にいじっていると、湊が俺に覆いかぶさるように乗っかってきた。


「なんですかこれ」


「え?」


「これですよ」


と湊はスマホに付いてるぐっぴょんくんを掴んでる。


「ぐっぴょんくんだよ。知らないの?」


「知ってますよ。だけど、貴方がそんなに気に入るとは思えなくて、誰かからのプレゼントですか?」


目ざといなぁ。浮気のひとつもできやしない。


「あかりから貰った」


「外してください」


「嫌だ」


「外してください」


「何で?」


「僕以外からの貰い物なんか付けないでください。浮気ですよ?」


「俺の浮気の定義はセックスからなんで、浮気じゃないですぅ」


と子供っぽく張り合うと


「はあ、まったく……今度、ぐっぴょんくんのポップアップがあるんで一緒に行きましょう」


と湊は大人っぽく対応してくれた。


「え〜、俺ぬいぐるみ欲しい!」


「わかりました。買ってあげますね!」


ぐっぴょんくん付けてたおかげでデートまで決まった。あかり、さんきゅ!


「湊は何が欲しい?」


「ふふっ、僕は京一さんの無邪気な笑顔が見られるだけで満足です」


ととびきりに可愛いことを言われたので、


「湊、ちゅーして欲しい?」


とこちらから甘えてしまった。


「はい!」


湊の唇は柔らかくて、気持ち良くて、ピリッと電流が流れる感じがした。キスをしてると、死にたいなんてどうでも良くなる。


デート当日。

俺はお洒落着を着て、わくわくしていた。ポップアップストアに行くのが決まった日から、俺はぐっぴょんくんをフォローして、知見を深めていた。


「湊、どう?お洒落かな??」


「はい、僕の京一さんが世界で一番お洒落ですよ!」


「ふふっ、可愛い!」


湊といちゃいちゃしてから家を出て、ぐっぴょんくんのポップアップストアへと向かった。とても楽しみで仕方がなかった。だけどいざ、ポップアップストアに来てみると、人で溢れかえっていて、俺はうんざりしてしまった。


「京一さん、どうかしましたか?」


「ううん、何でもない」


明らかにトーンが下がっている声色。だって、人が邪魔でイライラするし、カップルが楽しそうでイライラする。そして、最もイライラするのはこの状況を楽しめない自分自身に対してだった。


「京一さん、人混み苦手ですもんね。僕がお目当ての品だけ買ってきましょうか?」


「やだ。一緒にどの子がいいか選びたい」


「わかりました。京一さん、大丈夫ですよ。僕が手握ってますからね」


湊に手を握られ、店内へと誘われる。ざわざわとしている人の話し声が嫌いだ。対して意味のない生産性のない、その上面白くもない会話をしているのが不愉快だ。耳を塞いでしゃがみこみたい。


「お前ら黙れよ……つまんねぇな……」


頭が痛むように手を添えて、俺は恨み言を小さく吐いた。


「京一さん、落ち着いて!ほら、ぐっぴょんくんですよ〜?」


「ぐっぴょんくん……可愛い……」


湊が俺をあやす様にぬいぐるみを手に取って、目の前で軽く振った。俺はそのぬいぐるみが救いのように思えて、両手でそっと掴んで、ぐっぴょんくんの手を挙げたりして楽しんでいた。


「買いますか?」


「うん……買う……」


俺はぬいぐるみを抱き抱えて、湊の手に引かれ、レジへと向かった。レジももちろん混んでいて、俺はイライラしながら、でもぐっぴょんくんがいるから何とか精神を保っていた。


「京一さん、嬉しいですか?ぐっぴょんくん、お家に来ますよ!」


湊は何とか俺のテンションを上げようとそう俺が喜ぶようなことを言ってくれる。その期待に応えるように、


「嬉しい、けど、ちょっと疲れちゃった。かなぁ?」


って俺は愛想笑いをした。湊が指を絡めて、俺の手を握ってくる。


「大丈夫だよ。この後はカフェでゆっくりしようね」


弱気の俺を支えるように強がって前を向く、彼の横顔は心底かっこよかった。


ぐっぴょんくんを買って、人混みから少し離れたところのカフェに入った。そこのカフェは落ち着く音楽が流れていて、椅子に座るとなんだか心がホッとした。


「京一さん、何飲みますか?」


「コーヒー……やっぱ甘いので……」


「わかりました」


と湊は甘いカフェオレを二つ注文してくれた。


「……ありがとう」


届いたカフェオレを俺が持ちやすいように、右手側に持ち手を動かして、湊は渡してくれた。


「京一さん、よく頑張りましたね」


湊は俺を褒めて、俺の手を撫でた。


「湊が傍にいてくれたから、頑張れたよ」


「ふふっ、ぎゃんかわです♡♡」


そう微笑む湊の笑顔のが俺は可愛かった。俺は照れて何も言えなくなってしまった。


「京一さん」


「何?」


「落ち着きましたか?」


「おかげさまで」


「良かったです。ぐっぴょんくんも喜んでます」


俺の太ももの上に座るぐっぴょんくんは相変わらず笑顔だ。


「俺の死にたさも取り除いてくれればいいのにね」


「京一さんはそのままでとっても魅力的ですよ」


「俺が死にたいって言ったら、怒るくせに……」


「それは……ごめんなさい。京一さんが死ぬなんて、考えたくなくて……」


「わかってるよ。だから俺は、死にたくなる俺が嫌い」


この荒んだ心をなだめてくれるような甘いカフェオレを一口飲んだ。


「京一さんは悪くないです。僕がもっと大人にならなきゃですよね。京一さんの死にたさも僕がちゃんと受け止めます」


「いーよ。無理しないで」


「無理したくなりますよ。貴方が死ぬより全然マシですから」


「じゃあ、帰ったらご褒美にたくさんちゅーして?」


「ふふっ、可愛すぎて反則です!今すぐキスしちゃいたいですね」


と唇を少し噛んで微笑む。


「ダメ。帰ってからのお楽しみね!」


自分がそのお楽しみになれるのか不安になりながらもそう言った。


「京一さんとこうやって、お出かけするの久しぶりですね」


「なんだかんだいつも家にいるからね」


「お家デートも好きですけど、たまにはお外デートも良いですよね」


「湊はどっちが好き?」


「え〜、そう言われると困りますよぉ!」


「俺は家にいる方が好きかな。他人の目、気にしちゃうから」


「僕もそうですね。お外では京一さんと堂々とイチャイチャできないから我慢してます」


「じゃあ、今も我慢してるんだ」


「恥ずかしいですよぉ。帰ったらたくさん甘やかしてくださいね?」


あざと……。素で顔が可愛いのに、さらに可愛いことされるとキャパオーバーになる。


「可愛い」


「京一さんのその顔好きです。僕のことが好きで好きでたまらないって顔!」


「嘘、俺そんな顔してた??」


恥ずかしさで顔を覆ってしまう。


「してましたよ。超かわいいです!」


「お前だって、俺にメロメロだって顔してる」


「あははっ、僕達まだバカップルじゃないですかぁ!」


付き合った当初みたいなバカップル。もうこんなにも長く一緒にいるのに、まだその感覚が抜けない。


「ずっとこのままでいようね。お互いがお互いしか見ないでいいように」


「もちろんです」


カフェから出て、家への帰り道。

混んでる電車に乗り込み、ガタンゴトンと揺られる。


「京一さん、大丈夫ですか?」


電車のドアに背を付けている俺を庇うように、湊はドアに両手をついて俺を守っている。


「かっこいいよ、湊」


「なんですかいきなり……」


「ふふっ、言いたかっただけ!」


湊のが俺より背が低いのに必死に守ってくれてるのが可愛かった。


「んんっ……京一さん、潰れてないですか?」


電車が大きく揺れて、湊が押されて、俺にべたっとくっついてきた。


「全然大丈夫。ありがとね」


と湊の頭を撫でると、湊は嬉しそうにまた俺を守る体勢を保つ。可愛い。


電車から降りる。家までの帰り道。指を絡めて手を繋いで、二人並んで歩いてく。


「京一さん!お互いの好きなところを10個言うまで帰れまテンしましょう!」


「ふふっ、10個で足りんの?」


「あ、じゃあ、100個にしましょう!」


と余裕そうに意気揚々という湊。


「無理無理!帰れなくなっちゃうって!」


弱った俺は100個も言う自信ない。


「ふふっ、僕からいきますね!京一さんの匂いが好きです。落ち着きます……」


と頭をぴとっと、俺の胸にくっつけてきて、俺の匂いをクンクンと嗅ぐ。


「恥ずかしいからやめろ!」


と引き剥がした。


「京一さんを感じる匂い、大好きです♡♡」


「あーはいはい、わかったから。俺は、湊の顔が好き」


「それいつも言いますよね?」


「良いじゃん。そんくらい好きだってことなんだから」


と言うと黙って、次の好きなところを考え始めた。


「あと、京一さんの手が好きです。ごつごつしてて男らしくて……」


「いつも俺の指咥えて喘いでるもんね」


「京一さんこそ、恥ずかしいこと言わないでください……」


「ふふっ、俺は湊の太もも好きだよ♡」


「変態!」


「どの口が」


「まあ、そーゆーちょっぴり意地悪な性格も好きですけど……」


「俺も湊の性格好きぃ。何でも許してくれんじゃん」


「そういった舐め腐った態度、嫌いじゃないです……」


「あ、それは本当に好きなところじゃないから却下!」


「ふふっ、じゃあ、京一さんの声が好きです!」


「声?」


「『みにゃとぉ』って可愛く呼んでくれるじゃないですかぁ!」


「はず……。湊は素直でいいよね……」


「嘘はつきたくありません。貴方からの信用を失いたくないですから!」


そう元気に言う湊を見て、嘘ついて隠して逃げてばっかな俺は惨めになった。


「湊はさ、俺のこと信用してる?」


「え、」


「信用できないよね。それぐらい裏切った自信ある……」


「今はまだちょっぴり信用ないですけど、京一さんと一緒にいたい気持ちは変わりません!」


「……どうして?」


「こんなにもたくさん好きなんです!!……一緒にいてわかりませんか?」


湊は抱える好きの重さで胸が苦しそうだった。


「わかりたいと思ってる。わかってあげたいと。でもなんか、それが認められなくて……」


「なんで認められないんですか?」


「自分が無条件に愛されるって思えないから」


「そんな、京一さんのこと僕は……!!」


「わかってるよ。でもどうしようもなくて、困っちゃうね!」


俺は愛されない。愛されてはいけない存在だと思う。だって、俺と一緒にいると君が不幸になるから。一時は幸せだろうね。でもそれはずっとは続かない。君に嘘をついている気分だ。君は俺を愛してくれるから、その愛に応えて愛しているだけ。そんなくだらないこと考えちゃうんだ。ごめんね、俺が悪いよね。君の愛は、俺と交わるためにあるんじゃないかってたまに考えるんだ。俺にそんなに執着するほど価値があるとは思えないけど。だから君がいつか俺に愛想を尽かして、ポイっと俺を捨てる悪夢を見るんだ。もう君に愛されるのが怖いよ。俺が壊されてその隙間に君が入り込んで修復されていて、俺の傷は君が塞いでくれているのに、君がいなくなったらもう、傷だらけで壊れていくだけ。それが怖いよ。


「京一さんのそーゆーところも大好きです……」


「え?」


「人間不信なのに孤独が嫌いで、愛に飢えてるのに愛されると怖くて、そういう貴方の弱いところ、大大大っ好きです!!」


湊の声は震えていた。真正面から俺の弱さをぶん殴って抱きしめてくれたようだった。


「あはっ、言ってくれんじゃん」


「僕を傍に置いてください。僕から離れないでください。僕を、できるだけ愛してください」


湊は俺の腕に抱きついて頬を擦り寄せてきて、呪文のように小声で呟いた。


「我儘ちゃんがよ」


「ダメですか……?」


「可愛いからいーよ」


とその頭を撫でて、可愛がって、湊は満更でもない表情で。この笑顔のために俺は生きているのかもしれないと、また俺が君のせいで弱くなった。


「京一さん、んっ……はぁ、んんっ……」


湊は家に帰って早々、我慢の限界だったのか何度もキスを求めてくる。


「ふふっ、気持ちぃーね」


と湊のさらさらな髪の毛を撫でる。


「京一さん、僕のこと子供みたく扱わないでください!」


「え、嫌だった……?」


「僕だって男です!好きな人からはかっこよく見られたいです……」


そうやって拗ねてる時点でまだまだ子供っぽいなと思うんだけど。


「そっか、ごめんね!」


「どうすれば、ちゃんと一人の男として見てくれますか?」


「湊はかっこいいよ。今のままで」


というと唇を尖らせて悩んでいる。


「……僕が京一さんより大きければ良かった」


「何で?こんなにも気に入ってるのにぃ」


「だって、そしたらもっと京一さんのこと守れます」


湊は今回のデートで考えてたんだ。俺が弱さを見せたから、その分、自分が強くならなきゃって。


「俺はそんな柔い男じゃないよ。心配しないで」


「そうですけど……たまには僕がリードしてもいいですか?」


そう言われて、何だかちょっぴりワクワクして、こくんと頷いた。


「服、脱がせて欲しいですか?」


「うん、お願い」


湊は不器用だから、ボタンを外すのにも手こずっていて、それが何とも可愛らしくもあり、焦らされた。


上裸になったところで、湊は俺の乳首を舐めて、舌先で弄る。


「ふふっ、くすぐったい……」


「京一さん、可愛い」


くすぐったくて肩を震わせている俺を可愛いと湊は愛でてくれた。湊のはもう余裕がなさそうにはち切れんばかりに勃っていた。


「もう限界?」


とそっと汁がもう垂れている湊のものを軽く撫でて聞くと、


「いえ、まだ大丈夫です……」


って余裕なさそうな顔で強がるんだ。


「京一さんの、舐めてもいい?」


「嫌だよ。汚いでしょ」


「いえ、貴方のは形も綺麗で美味しそうです」


そんなことを平然と言うから、俺は頭を抱えてしまう。


「この変態!」


と罵っても逆効果で、俺のに顔を近づけてそっと口付けをする。その背徳感で俺はいっぱいになって、いいよっと漏らしてしまった。


湊は本当に美味しそうに愛でるように俺のを丁寧に舐めていて、その綺麗な顔を汚している感じがしてゾクゾクする。湊の口元は唾液か俺のアレかわからない液体でぐちゃぐちゃになっていて、それでも湊は恐ろしいほど綺麗だった。


「もう限界。湊のナカに入れさせて?」


「ふふっ、それ超絶可愛いです」


というと湊は自分のを指で広げて、俺を包み込んでいく。


「京一さんは動かなくていいですから。ただ気持ち良さだけ感じてください」


湊は腰を上下に動かして、俺のを搾り取っていく。


「あぁ、ヤバい……湊、可愛すぎんね……」


「はぁ、はぁ……京一さん、気持ちいい?」


「気持ちいいよ。すごいぐちょぐちょだね」


水音と身体を打ち付けあう音が何もない部屋に響く。


「僕も限界です……京一さんのが、奥まで当たって、んんっ……んはぁ……」


湊の動きが一旦、止まった。


「何?我慢してんの??」


「だってもっとぉ、楽しみたいじゃないですかぁ」


そんな焦らしプレイ大好きな湊に、痺れを切らして、下からどんどん突き上げた。


「あ、やっ!……それ、ヤバい!!」


湊の喘ぎ声がどんどんと激しさを増す。


「イッちゃうイッちゃうイッちゃう……」


って湊は情けない声を出して、俺にしがみついてきた。これじゃあ、もうどっちがリードしてんのかわかんない。


「じゃあ、一緒にいこっか」


とズンとまた奥深くまで突いた時、湊の身体がビクビクッと痙攣して、湊は俺の腹に吐精した。その時のナカの締め付けがキューってなったところで、俺のが強く刺激されて、頭が快楽に支配されてクラクラになりながら、俺は湊のナカに出した。


「やっぱ、京一さん世界一かっこいい……」


湊は自分の精液を拭き取って、目を回しながらそんなことを言うと俺に覆い被さるよう倒れ込んできた。


「俺が彼氏で良かった?」


「そんなの当たり前に決まってるじゃないですかあ。もう一生彼氏です!覚悟してください!!」


と変なキレ方で惚気けられた。

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