未来へ踏み出す君の姿は輝かしくていつまでも見つめていたくなる
地球という舞台で生きているから、貴方は生きにくいのです。地球という舞台から逃げ出して、輪廻の外側へと身を投じることで、貴方は真の幸福を得るのです。
「え?京ちゃんどうしたん?スーツなんか着て……」
髪型を整えてスーツに身を包んで、ルイに会いに行くと「誰かの葬式か?」と勘違いされた。
「湊の卒業式なん。祝ってやらんと」
ルイはそれを聞くと俺の手を掴んで、近くの花屋に足を運んだ。
「お姉さん。恋人が今日卒業式なん。一万円ぐらいでぴったりな花、見繕ってくれや」
と店員さんに言うと、京ちゃんはどんな花入れたい?って俺の好みを聞いてくる。
「この向日葵、ちっちゃくて可愛い」
何気なく明るい湊には向日葵が似合いそうだと思い、指差してルイに示すと、
「向日葵の花言葉は貴方だけを見つめるです。恋人への花束としてはぴったりですよ〜!」
と店員さんが割り込んできた。
「へ、へぇ……じゃあ、それで……」
照れくさくなって、ぎこちなくお願いすると、店員さんは向日葵を四本入れて、それに合わせるようにバラやガーベラ、かすみ草などをいれてくれた。
「きっと恋人さん喜びますね!」
「そうだと良いですけど……」
「京ちゃんほんま自信ないなぁ。こんな綺麗な花束、今まで見た事ないやろ?京ちゃんの愛情が詰まっとるからやで??」
と耳元で囁かれた。
「……キショいこと言うな!」
「ほんまのこと言ったまでやし。お姉さん、なんぼ?」
とルイは財布を取りだしてそう聞くと、一万円札を店員さんに渡していた。
「ルイ、俺が払うよ」
「ええってええって。俺からの卒業祝いってことで!京ちゃんは湊くんの好きなの買ってやりぃや」
「でも、俺の気持ち……」
「京ちゃんが選んだんやし、京ちゃんの気持ちたっぷり入っとるよ。ほら、綺麗やろ?これが証拠や」
とルイから大きな花束を託された。確かに、綺麗だった。
「ありがとう。頑張って渡してくる」
俺は部外者だから、式には参加できなかった。だけど卒業式が終わる頃を見計らって、正門の横で煙草を吹かしていると、澪さんに話しかけられた。
「煙草の匂いがしたから、もしかして……と思ったら、やっぱり京一郎くんだった」
「澪さん、今日は一際お綺麗ですね」
正装で身を包んだ澪さんは、いつもよりも気合いが入ってて、ブーケにされた花束に似ている。
「何?口説いてるのかしら」
「いえ、事実を述べたまでですよ」
「その花束は、湊へ?」
「そうです。祝ってやりたくて」
と言うと、澪さんは嬉しそうに微笑んで、
「格好良いわね、京一郎くん。王子様みたいで」
と俺が照れくさくなるようなことを言ってきた。
「そんな、俺がなるとしたら……魔王辺りですよ」
「ふふっ、こんな魔王になら攫われても良いわね!」
それって、それって、それって……!??淡い期待が俺の脳内を包み込んで、頬を赤く染める。
「澪さん、変な冗談はやめてください……」
「ふふっ、今晩は何か予定ある?」
「特にないですけど」
「湊の卒業祝いでお寿司にでも行こうと思うんだけど、一緒にどうかしら?」
「回らない寿司ですか?俺の財布が持つかどうか……」
「もちろん、お金は私が出すわよ!京一郎くんがいた方が湊も喜ぶし……」
楽しそうに話す澪さんを横目に俺は俯いてしまった。
「……情けないです。俺がもっと経済的に自立していれば、湊を喜ばせられるのに。周囲の人達に頼ってばっかで」
「大丈夫よ。お金なんて後からどうとでもなるの。だから、今の湊をちゃんと見てやって。湊のことを愛しているならね」
その言葉にハッと気付かされた。お金に目が眩んで湊のことを蔑ろにした時、湊は簡単に死を選んだ。湊は俺がちゃんと見てあげなきゃダメだ。もっと湊のことを大切にしなきゃという思いが強まった。
しばらくして、校舎から生徒達が出てきた。みんな卒業証書を片手に嬉しそうに階段を降りてくる。
「あ、生徒達出てきましたね」
「湊、何処かしら……?」
と遠目で生徒達を眺めて、湊を探している澪さん。
「湊はきっと最後の方に出てきますよ」
「どうして?」
「湊の第二ボタンを狙う女子がきっと多いから」
そうニヤっとして微笑むと
「それは経験論かしら?」
と思わぬ角度から指摘された。
「俺は別に……」
「教えてくれないの?学生時代の恋愛とかについて」
「あははっ、良いのが一つも思い浮かばないのが、学生時代の恋愛ですよね〜!」
「ふふっ、恋愛下手なの?」
とちょっぴりからかわれると、少しムッとして、
「いやぁ、そんなことないと思いますけどね。歳上のお姉さんに気に入られてたりしてましたし!」
なんて黒歴史同然の過去のセフレ話をしてしまった。
「歳上がタイプなの?」
「うーん、別に年齢とか関係なしに、居心地良いのが一番ですね!」
「じゃあ、湊は理想なタイプ?」
「湊は極端なんですよね。俺の相手する時と自分のことする時で態度が変わるし、結構、頑固なところもあるし、融通が効かない……。あ、好きですよ?もちろん」
ちょっぴり不満を言ってしまって、決まりが悪くなった。
「へぇ、何処が好きなの?」
「俺のこと、ずっと好きでいてくれるし、俺の傍から離れないし、きっと俺と一緒に死んでくれる。それぐらい愛情を尽くしてくれるのが、俺にとって心地良いんです」
今までのマイナスイメージを払拭するように湊の好きなところを列挙した。
「愛されるのが好きなのね」
「湊から愛されるのが好きなんですよ。アイツほど俺のことをわかってる奴はいないから」
と格好付けて言うと、澪さんはふふっと微笑んで、
「確かに。理解ある彼くんってことね!」
と羨ましそうに言った。そんな会話をしている内に、湊が校舎から出てきた。澪さんはやっぱり母親だ。湊を見つけるなり、彼の名前を呼びながら嬉しそうに手を振る。その隣りで俺は小さく手を振った。湊は俺達を見つけると、階段を急いで駆け下りて、ぎゅーっと順番にハグしてくれた。
「京一さん、来てくれたんですね!」
「もちろん、こんな晴れやかな日に参加しないのはもったいないからね」
「ありがとうございますっ!」
湊の胸元には卒業おめでとうとリボンに書かれたコサージュが付いている。それが何とも可愛らしくて、ふっと笑ってしまった。
「湊、卒業おめでとう」
と背中に隠していた花束を湊に差し出した。
「え、こんな大きな花束……凄い綺麗ですね!!」
そう両手に花を抱える湊の笑顔のが綺麗だけど。
「気に入った?」
「もちろんですよ!特にこの向日葵、可愛くって……」
「店員さんが教えてくれたんだ。向日葵の花言葉は『貴方だけを見つめる』って」
と湊の耳元で囁くと、湊は顔を真っ赤にして、
「京一さん……!!」
と怒る時のトーンで俺の名前を呼んだ。
「何?気に入らない??」
「本気ですよね??」
「え?」
「本気で、そう思ってるってことですよね??」
「そう、だけど……」
とぎこちなく言うと、
「ふふっ、大好きです!京一さん、王子様みたいに格好良い♡♡」
とメロメロになった顔して、抱きついてきた。
「……ごめん。もう裏切ったりしないから」
そう湊の頭を撫でていると、湊は唇をちゅんと突き出して、俺にキスを求めてきた。
「湊、ここ学校だから……」
「良いじゃないですか。今日で卒業なんだし」
そんな湊の誘惑に負けて、俺は学校で湊とキスをした。ちょっぴり、学生時代の元カノを思い出してしまった。
「何だか、初々しいですね」
唇同士が触れるだけのキスをしたからか、湊は俺のファーストキスを奪ったかのように嬉しそうに微笑んだ。
「湊、みんなと写真撮ってこなくて良いの?」
「あ、そうだった!京一さん、ここで待っててくださいね!」
荷物を置いて、俺から貰った花束と卒業証書だけを持って、友達のところへと駆けていく。青春だな。
「青春だわね。好きな子と学校でキスだなんて」
と隣りにいる澪さんに微笑まれた。
「ちょっ、揶揄うのはやめてください……」
「いい思い出じゃないの。こんな経験、滅多にできないわ」
「まあ、そうですね」
とぼやけた返事をすると、
「あら?モテる京一郎くんには過去にも経験あったかしら〜?」
とまた揶揄われた。
「やめてください!もう湊で上書き保存したんで、過去のことは忘れました!」
と強く言うと、澪さんは嬉しそうに微笑んで、
「湊のこと、大事にしてやってね!」
とこんな俺に湊を任せてくれた。
「もちろんですよ。これでも、愛してますから……」
愛してるとは思えないほど、傷つけてばかりだけど、俺の生きる理由は湊だから愛せずにはいられない。
「あら、京一郎くん可愛いっ♡♡」
「だからぁ、揶揄わないでくださいって!!」
なんて朗らかに会話していると一人の女子生徒が緊張した面持ちで話しかけてきた。
「きょ、京一郎殿……!!お写真をお撮りしてもよろしいでござるか?!」
「あ、湊の友達だ!名前は確か、メアちゃんだったよね??」
「さ、左様でございます!!俺なんかのことを覚えて下さって、大変光栄でございまする……!!」
「写真かぁ。ん?何で俺の写真が欲しいの??湊と写真が撮りたいなら……」
「あ、あの、それは……青柳氏に頼まれているんです!何卒、お願いいたします!!」
と深々と頭を下げられた。そんな頭下げなくていいのに。写真ぐらい湊自身で撮れっての。
「湊が迷惑かけてるみたいでごめんね。写真は全然撮っていいから……どんなポーズすればいい?」
「あー、えーっと、んー、八方向から撮らせていただけると助かります!」
と正面からぐるーっと一周するように写真を撮られた。こんな撮られ方初めてしたから不思議に思ってこんなことを聞いてしまった。
「3Dのフィギュアでも作るの?」
「あっ!あぁっ!!それ良い!!!青柳氏に提案してみます!!」
その用途じゃなかったのか。ますます気になる……。てか、自分で自分の首を絞めちゃったな。
「たぶんOKが返ってくるよ。どうしよう、気持ち悪いぐらい量産されたら……」
「ふふっ、湊ならやりかねないわね!」
母親である澪さんは楽しげに笑っている。
「澪さん、あいつに金渡さないでくださいよ?ロクなことに使わないですから!」
「んー?浪費家の貴方に似たのかもしれないわね〜??」
この人は俺を手のひらの上で転がすのに長けている。俺はまんまと転がされて、情けなく彼女の名前を呼ぶだけだった。
僕の友達なんて、高橋と真城さんとメアちゃんぐらいしかいなかった。
「高橋、真城さん、一緒に撮ろ?」
「わ、何そのすげー花束!??」
と京一さんがくれた花束をすごいと高橋は褒めてくれる。
「ふふん、良いでしょ?」
と得意げに鼻を鳴らすと、誰から貰ったのかが予想ついたのか、あ〜〜っと納得するように相槌された。
「誰真ん中で撮る?」
真城さんは自身のお母さんを呼んでくれて、三人で撮れるようにしてくれた。
「三枚撮ったら?ローテーションで」
そう僕が提案すると、「採用!」とノリよく決まった。くるくる真ん中の位置を変えながら、写真を撮っていく。写真を撮り終わった後、真城さんのお母さんに礼を言うと、
「それにしても、綺麗な顔してるね。モデルさんみたい」
と言われた。顔を褒められてもいまだに何が良い返答かわからない。だって、自身の努力じゃないし、ただ運が良かっただけだから。
「ふふっ、ありがとうございます!」
と愛想笑いだけしといたら、真城さんが僕の自慢するように、
「青柳くんって、すごいんだよ!頭も良いし、俳優も医者も両方目指してるの!」
お母さんにこう言っていた。僕はちょっぴり照れくさかった。
「青柳、高校で友達できなかったら連絡しろよ。笑ってやるから」
とニヤケながら高橋が僕の肩を軽く叩く。
「高橋は真城さんと同じ高校だよね。末永くお幸せにね」
「何か俺だけ嫌な奴じゃん……」
「『いつでも連絡してきていいよ』ってことでしょ?めっちゃ良い奴じゃん」
「ははっ、まあな!だから、その、間違ってもあのイカレ彼氏と心中なんかするなよ」
「そうだね。優しい人なんだけどね……」
視線を花束へと落とす。こんな綺麗な花束を送ってくれるぐらい優しい人。虫もすぐに殺さないくらい優しい人。そんな京一さんが大好きだから、死にたがりの京一さんに飲み込まれるように死にたくなることがある。人生はこんなにも楽しいのに。
「表面的には優しく見えても、青柳を死にたくさせてるんだから根本的には優しくないだろ」
「ふふっ、そうかも。でも、好きなのは変わらない」
「なんで?」
「総合的に見て、僕の彼氏が世界一かっこいいからっ♡♡」
「あーあ、盲目もここまでくると怖いな」
高橋にやれやれって顔された。でも僕は京一さんを失うくらいなら、それこそ死んだ方がマシだと思う。
高橋と真城さんと別れて、メアちゃんを探していると、僕のママと京一さんとメアちゃんで楽しそうに会話している現場を目撃した。
「ずる……」
胸がチクッとする。僕の知らないところであんなに仲良くなってる。
「あ、メアちゃん探したよ〜!京一さんと一緒にいたんだぁ」
とちょっぴり嫉妬の感情を込めて言うと、
「青柳氏!!京一郎殿の3Dフィギュアを作るのはどうでござるか?」
そんなのお構いなしの熱量こもったオタクトークで返される。
「え、3Dフィギュア??」
「そう!ミニチュアの京一郎殿が青柳氏の手に……!!」
「何それ、超欲しい!!それで家を埋め尽くしたい!!!」
「やっぱりこうなりましたよ、ね?澪さん」
京一さんは言ったでしょ?みたいな顔で軽くため息をついた。
「さすがに家を埋め尽くすのは隆文さんに怒られちゃうわね……」
ママがちょっぴり現実的な話をした。
「湊、そんな代替品なんか一個あれば十分だよ。だって、俺達はいつでも会えるでしょ?」
京一さんのその蠱惑的な声と台詞にメロついてしまって、納得させられて、僕は取り乱したように
「本当にもう、京一さんとは24時間365日ずーっと一緒にいたいですぅ♡♡」
と可愛子ぶって京一さんを落としにかかった。
「湊、そーゆーの外ではやめて。二人きりの時だけね」
その言葉で僕の心臓は跳ねる。京一さん、舌なめずりした。僕にキスしたがってる!なのに外だからって躊躇してる!超可愛い!!
「はーい♡」
京一さんの言動から僕のことが好きなんだと感じる瞬間が、僕の中で最高に幸福で、分泌されまくった脳内麻薬に溺れてしまう。
「イケメンが二人いると、ボーイズラブが始まるのか……!!」
メアちゃんはそんな中で尊すぎて悶え苦しむオタクになっていた。
湊が帰ってきたと思えば、湊は俺を校舎へと連れ込む。湊って本当に自由人なんだから、俺はそれに付き合うことしかできない。
「湊、誰かに見つかったらどうするの?」
「もう卒業してるんで、関係ないですよ」
そして、空っぽになった教室で二人きり。こんなノスタルジックな気持ちになるとは思わなかった。湊は徐にポケットからカッターを取りだした。
「湊、何する気?」
湊がカッターを持つ時はもちろんロクなことが起きない。湊は自身の心臓に刃先を向ける。心臓を抉り取るように背中を丸めて何かを懸命にしていると思ったら、やり終えたのか満面の笑みを見せられた。
「京一さん、大好きです。僕の心臓に一番近かったボタンです。受け取ってください」
と湊は俺に第二ボタンをくれた。俺はそれを大事に受け取ると、胸ポケットの中にしまった。
「ありがとう。俺のために取っといてくれたの?」
「僕はそんなにモテませんから……」
「嘘だぁ!!俺の時なんか制服のボタン全部なくなるくらい……」
「京一さんはそれくらいモテたんですね」
「いや、そうゆうんじゃないけど。……あぁ、そうか。これがジェネギャか。今の子達はあんまり知らないんだ」
「ふふっ、そういうことにしといてあげます」
と湊に大人っぽく笑われて、大人びたキスをされた。
「これがしたかったの?」
「あと、京一さんのことを今だけ先生って呼んでもいいですか?」
「教師嫌いなんじゃないの?」
「こんなイケメン教師は別です。京一さんが先生だったら、毎日ルンルンで学校来てましたよ」
「お疲れ様。そして、卒業おめでとう」
と先生っぽく言うと、
「先生。それじゃあ、ご褒美ください」
と教師と生徒の禁断の恋がしたいらしく、そう情欲を煽るように聞いてくる。
「ふふっ、変態的だね」
湊は俺の陰部をいやらしい手つきで触る。その期待に応えるように濃厚なキスをした。
「先生、これください」
「ダメだよ。お家に帰ったらね」
「もう僕、我慢できないです……」
「あ、我慢できない子にはお仕置きが必要かな?」
お仕置きって言葉に目を輝かせる。ダメだ、この子はそれぐらいえろに脳が毒されてる。
「先生、悪い子にはちゃんとお仕置きしてくださぁい♡♡」
そう煽られて、俺も我慢の限界で、我慢する意味もわからなくなって、湊の上半身を机に押さえつけて、お尻を突き出す体勢にさせた。バックから攻めたんだ。そして、お仕置きして欲しいというから、その突き出た真ん丸の綺麗なお尻を赤くなるまで叩いた。その度に湊の中は締まって、喘ぎ声が漏れていた。
「先生が悪いのかな?こんな淫らな子に育っちゃって……」
「変態でごめんなしゃい♡♡あっ、あん、でも、先生のこと大好きだから……!!」
「ねぇ、その先生って誰のこと言ってんの?」
「京一さん!!氷野 京一郎!!!」
「正解。じゃあ、ご褒美あげるね」
と湊の中にたっぷりと愛情を注いだ。湊はそれが余程嬉しかったのか産まれたての子鹿のように脚をガクガク震わせていた。俺達は近くにあった備品のトイレットペーパーで証拠隠滅を図った。
「先生プレイ、めちゃくちゃ良かったです」
「そう?」
「あーあ、本当に京一さんが先生だったら良かったのに……」
「俺は保健体育しか教えられないよ」
「僕だけの保健体育の先生になってください。他の生徒に教えられると嫉妬します……」
「もちろん、湊しか相手しない」
湊との先生プレイを終え、校舎から出ると、一、二年生の後輩達が授業を終え、先輩である三年生と写真を撮っていた。
「僕は部活入ってなかったんで、関係ないです」
と湊はそれを横目で見ていたが、突如、一人の女の子が「青柳先輩!」と声をかけてきた。
「ナナちゃん……」
俺の知らない湊の友達(?)。
「青柳先輩、ちょっと来てください」
その呼び出しは告白にしては目が据わりすぎていた。
「僕に復讐でも考えたの?」
「そんなんじゃありません。来てください」
その呼び出しに俺もちょっぴり気になって、遠目から湊の様子を見ていると、なんと湊がたくさんの女の子に囲まれ始めた。
「私達、青柳 湊ファンクラブです!本日は青柳先輩の卒業を祝ってプレゼントをご用意しました!」
「え、そんなのあったの……?」
湊が呆然と立ち尽くしていた。
「私が創設者のナナです。青柳先輩のことやっぱ好きなのやめられなくて、気づいたらこうなってました!」
「どういうこと??」
「青柳先輩を好きな子達が自然と集まったんですよ。ファンクラブのモットーは青柳先輩はみんなのもの。みんなで楽しく見守ろう!です」
「じゃあ、僕のあんな言動やこんな言動まで全部見られてたってこと?」
「はい!青柳先輩って結構、変態なんですね♡」
と創設者ナナちゃんに煽られてる。「ああああ、死にたいかも〜!!」という湊の心の声が聞こえてくるようだ。これはあまりにも可哀想だった。
「あの、本当にすみませんでした。僕の性癖やプライベートなことは、どうか口外禁止でお願いします……」
「それじゃあ、ファンクラブの皆と写真撮ってくれますか?」
「それは、是非……」
と湊がなかば脅されてる形で皆で集合写真を撮ることになった。創設者のナナちゃんはその集合写真をアルバムの最後のページに挟み込むと、
「これ、ファンクラブの皆が撮った青柳先輩のベストショットを集めたアルバムです!」
と湊にアルバムを渡していた。湊はそれを深々とお辞儀して受け取っていた。
「これで、このファンクラブの活動も終わりだね〜」
誰かが寂しげにそんなことを言った。
「あの、皆さんにご報告があります。僕は高校生になったら『三上 京』として芸能活動をするつもりです。もしよろしければ、今後も応援してくださるとありがたいです」
と湊がファンクラブの皆にそう言うと、ファンクラブの子達から歓声があがる。
「じゃあ、今後は三上 京ファンクラブに改名しなきゃ!」
ナナちゃんは嬉しそうにそうほくそ笑んでいた。
湊はファンクラブの皆と写真を個別に撮り終わると、俺らの元へと戻ってきた。
「お疲れ様、湊。アルバム貰えて良かったね」
「はい、僕のファンクラブがあるなんて今の今まで知りませんでした……」
「ちゃんと売名活動して偉いわ!」
澪さんは湊のことを芸能界の先輩としてそう褒めた。
「でも、どうしよう。京一さんという彼氏がいること皆にバレてる……」
「大丈夫よ。それを知ってて皆追っかけてくれてるんでしょ?皆、湊の幸せを願ってくれてるのよ。ありがたいことじゃない!」
澪さんが結婚しても澪さんのファンはいるように、ファンと推しとの関係は恋愛感情だけじゃないと教えているようだった。
「そうだね。ありがとう、ママ。僕、俳優の仕事頑張るよ」
湊の未来は湊だけのものじゃない。湊の魅力をひしひしと痛感した。




