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乾杯に完敗

「「乾杯〜〜!!」」


とグラス同士をぶつけて鳴らして、グイッと飲み込む。この瞬間、俺は「あはっ、人生たのし〜!」って単純に思ってる。


「じゃあさ、まずは自己紹介から!俺は氷野 京一郎。隣りの遥斗って奴と同じ大学に通ってる大学三年生。趣味は映画鑑賞で、ジャンルは洋画ホラーが一番好きかなぁ。ふふっ、よろしくお願いします!」


当たり障りのない趣味を一つ持っておくと、第一印象だけは取り繕うことができる。俺の経験論だ。じゃあ次、と遥斗にバトンパス。


「はい、野嶋 遥斗です。同じく大学三年生です。趣味は……あ、最近料理を始めました。得意料理はだし巻き玉子です。よろしくお願いします」


「え!料理できるんですね!すごーい!!」


と自己紹介で女の子の心を掴んだ。ま、俺だって、カップラーメンくらいは作れるけどね。言わないけど。


「遥斗、今度俺に作ってね」


「飲みすぎないって条件つきね」


あー、痛いとこ突かれた。


「ふっ、じゃあ次は?」


と目線を朝陽に逸らして話まで逸らした。


「あ、はい!僕ですね。僕は東景大学経済学部二年の齋藤 朝陽です。趣味はドライブと水族館巡りです。よろしくお願いします」


「え!?お前、東景大なの??」


やべ、馬鹿っぽい驚嘆の声でちゃった。


「はい」


「やば!あったまいい〜!!」


あ、大丈夫。こっちの女のが頭悪そう。


「てか、京一郎の友達じゃないの?何で知らなかったの?」


怪訝そうな遥斗の目。


「友達だけど……だって、俺も今日知り合ったから、」


「あはは!なにそれ〜!!」


馬鹿っぽい笑い方するなあ、この女。


「僕が京一郎さんの家に、」


と朝陽が馬鹿正直に説明しそうで怖かったので、


「そう、キャリイーツ!キャリイーツで朝陽が家まで持ってきてくれて、それで仲良くなったんだよ」


って、咄嗟に嘘ついて誤魔化した。


「すごーい!コミュ力お化けですね!」


「そんなんじゃないって!ほーら、女の子達の番!」


それじゃあ、今回の合コン女子メンツを紹介するぜ。右から、寡黙そうな眼鏡っ娘☆おっぱいが大きい桃子、馬鹿っぽいギャル☆声が大きい彩花、会話にならない不思議ちゃん☆身振りが大きい優里。

男子トイレで作戦会議、誰が一番タイプかと聞くと……クソ、誰も口を割らないから、俺が最初に桃子を選んだ。あー、あの巨乳揉んでセックスしてぇ。


「んー、まだわかんないけど、僕は優里ちゃんかなぁ。一生懸命に話してる感じが可愛い」


へえ、遥斗ってああゆう子がタイプなんだ。でも、面倒見いいから似合いそう。


「ぼ、僕は、彩花さんが一番……」


「はあ!?朝陽ってまさかのギャル好き??」


「ギャル好きって言うか、明るい人がタイプです!」


と瞳をキラキラと輝かせているから、偏差値にどのくらいの差があるんだろうとか考えないようにしよう。


「へえ」


「京一郎は何となく桃子ちゃん選ぶと思ったよ」


「ああゆう子がいっちゃん可愛い!」


「京一郎さんこそ、ギャル好きかと思いました」


「なわけないじゃん。は失礼か。まあともかく、みんな喧嘩せずに、好みの女、落としにいきましょうや!」


と気合い入れて席へと戻ると、女子メンツも同じような会議をしていたようで若干気まづくなった。


「とりあえず、何頼みますか?」


という朝陽の問いかけに、グイッとビールジョッキ空けて、


「俺、レモンサワー」


と2杯目を頼んだ。


「京一郎、ペースはやいよ」


「大丈夫大丈夫!今日は潰れないから!」


何故こんな自信あるのかだって?そんなの、潰れたらセックスできなくなるからに決まってんじゃん。


「サラダとかも欲しいよね〜!」


「あー、あと焼き鳥も!」


次々に頼みたいものをあげるから、タブレットで入力して注文する朝陽が大変そう。あ、桃子ちゃん。


「あと、この鶏ももとつくねでお願いします」


朝陽のことフォローしてる。何だかずるいなぁ。何もしてない俺が悪いんだけど。


「さて、自己紹介も終わったことだし。みんなでゲームでもしない?」


「いいねいいね!」


「何しよっか〜?」


「第一印象ゲームとか?」


「いいじゃん!やってみよ!」


第一印象ゲームとは、この中で一番○○な人を指さしていくゲームである。


「じゃ、俺からね。この中で一番お酒が弱そうな人は?」


と俺は面白半分に聞いて、また罰ゲーム飲みのことも考慮して優里ちゃんのことを指さした。が、遥斗と朝陽は男同士で指さしてて、何か俺だけが女の子に飲ませたいみたいじゃん。てか、協力しろよ。女の子は女の子同士で指さしてて、結局、優里ちゃんが三票獲得で飲んでた。


「私そんな弱くないですよぉ」


なんて言いながら。


「遥斗、酒弱い女の子可愛い発言してやれよ」


「は?京一郎じゃないんだから」


隣同士で小声で話し合ってたら、


「はーい!そこの二人、イチャイチャしなーい!」


とギャルの彩花に指摘されてしまった。


「わかったわかった。じゃあ、席替えする?」


「いいですね〜!」


男同士女の子同士でそれぞれジャンケンをして、勝った一人がそれぞれ女の子サイド男サイドの真ん中の席に座れる。言わば、ハーレム席争奪戦だ。


「やった、俺の勝ち!」


俺はチョキで圧勝して、右に桃子ちゃん、左に彩花ちゃん、目の前に優里ちゃんって席に座れた。


「あ、それじゃあ、ゲームの続き……」


「いいよ!進めて?」


「はい!んーっと、この中で一番猫が好きそうな人は?」


「せーのっ!」


俺は何となく遥斗を選んだ。世話焼きだし。けど、俺のが指さされていた。桃子ちゃんまで……。


「反論反論!俺、猫飼ったことないし、」


「でも、猫ちゃんのこと可愛いって思ったりもしないんですか?」


初めて、桃子ちゃんから話しかけて貰えた。


「可愛い、くらいは、まあ、あるけど……」


と彼女の顔を見て、ついそう言ってしまった。可愛いって。


「はい、京一郎さんダウトです!」


朝陽の奴、めっちゃ楽しそうにダウト言ってくるじゃん。桃子ちゃんの顔を再度見て、不満げに頬を膨らませてるとと、ちょっぴり小悪魔みたいに微笑んでた。


「はい、なーんで持ってんの?どーして持ってんの?飲み足りないから持ってんの!」


と自分自身にコール浴びせて、レモンサワーを一気飲み。


「やるじゃん!京一郎!」


と賞賛を浴びせるギャルとは対照的に、遥斗が一人「あーあ」ってうんざりした顔してる。


「はいはい!じゃあ次、俺お題言うね。この中で一番腹黒な人は?」


「え〜、何それ?」


「ここで俺のこと選ぶ奴、腹黒だからねー?」


と、もう飲ませんなって先手を打っておく。


「せーのっ!」


俺は桃子ちゃんを選んだ。さっきの仕返し。けど、遥斗以外は全員俺のこと選んだ。みんな空気読んで。


「ねー!俺さっき一気してるって!!」


と不満をひけらかすとより笑いが取れる。


「あははっ!飲んで飲んで〜!」


「桃子ちゃん、さっき俺のこと嵌めたよね?一緒に地獄に落ちよ?」


彼女の太ももに手を添えて、そう交渉してみた。相手の罪悪感を刺激して。こくんと頷かれた。


「えー?なになに?二人で何話してんの??」


「なんかぁ、桃子ちゃんも一緒に飲みたいってさあ」


「京一郎さん、腹黒すぎぃ」


「ふふっ、何?お前も飲みたいの?」


「いえ、遠慮しときます!」


ジョッキいっぱいの酒。二人だけで乾杯して、一瞬で飲み干した。桃子ちゃんも頑張って飲んでるけど、一気はできなくて、数回に分けて飲んでるの可愛い。


「ちょっと煙草いってくるわ」


「あ、じゃあ私も」


とギャルがついてきた。めんどくせぇ、煙草の時くらい一人にさせてくれ。あ、つられて朝陽まで釣れた。


「あはっ、何できたの?吸わないくせに」


「僕も、吸ってみたくなったから、」


「お目当てがいるから、じゃなくて?」


「ああ、うっさい!黙ってください!!」


朝陽、わかりやすくて可愛いなあ。煙草を一本あげて火をつけると、案の定むせてて笑えた。


「京一郎、ライター貸してくれる?」


「はい」


とギャルにライターを手渡したけど、そんなのは興味なくて、俺は煙草ふかしてる朝陽のこと笑ってた。


「ライターありがと。京一郎ってさ、どんな子がタイプなの?」


「え?」


これって、脈アリ?俺に??朝陽と顔を見合わせる。


「別に、好き、とかじゃないけど、」


「んー、俺あんまりタイプとかないんだよね!けど強いて言うなら、脚が綺麗な子が好きかなあ?」


「わ、変態じゃん!」


と笑われた。傷つけないような返答を用意してやったんだ。もっと感謝しろよ。


「男はみんな変態ですぅ。ね?朝陽」


「僕はまだよくわかんないです、彼女いたことないし、」


「あはっ、けど、明るい子がタイプって言ってたよね?」


なんて暴露して、それじゃあ私に気があるんじゃ!?的な感じにあのギャルを思わせたら勝ちじゃん。


「ちょ、京一郎さん!言わないでくださいよぉ!」


「ごめんごめん!」


「へえ、朝陽くん明るい子がタイプなんだあ。良いこと知っちゃった!」


ニヤける彩花ちゃん。それに照れる朝陽。ここに俺の居場所はない。帰ろ。


「ただいま!遥斗と何話してたの?」


「まあ、なんだろう。自己紹介の延長的な??」


と優里ちゃんが教えてくれた。


「えー、もっと際どい話してんのかと思ったあ」


「僕のことを何だと、」


いい友達だよん。なんてシラケるから言わない。


「桃子ちゃん、飲みきってんじゃん!酔ってない?」


と頭撫でて褒めて可愛がって心配して、いい男を演じる。ボディタッチの多さは下心の多さだ。


「京一郎さん、」


この女、俺が彼女の太ももに添えた手に自分のを重ねて、上下に撫でるように動かしてる。それでこのにやけ顔。えっっっろ!!


「そーゆーこと、期待しちゃっていいの?」


と耳打ちしてたら、朝陽とギャルが帰ってきた。

そこからも第一印象ゲームや山手線ゲームなどの定番ゲームで遊んで盛り上がった。俺は盛り上げ役として、酒浴びて女の子にちょっかい出して弄られて笑われて、頑張った。けど大体の合コンって、盛り上げ役よりもクールにすかしてる方がモテるんだ。どーせ、この女も抱けないだろう。俺はタダ酒でも浴びて帰るか。


「京一郎さん、飲みすぎじゃ、ないですか?」


「えー?だって、この後予定ある?」


んー、ん!??俺、失言した!!?


「特には、ないですけど……」


これって、誘って欲しいのサイン??


「じゃあ、二人でいよ?」


この言葉で、ぽっと顔赤らめる彼女が、可愛らしい。俺の下心ありきの発言で。

店外へ出て、まだ涼しい夜風にあたると、脳内がクリアになってくる。湊、いま何してんだろ。


「京一郎、酔ってない?」


「大丈夫だよ。すげー楽しい」


とピースサイン。遥斗、楽しめたかな?


「じゃあ、二次会行く人ー?」


俺ら以外、手をあげた。遥斗も楽しかったってことか。


「俺は桃子ちゃんのこと送ってくから、みんなまたね」


と腰に腕回してしれっと抜けた。みんな察してたんだろうなあ。じゃあね、って手を振ってくれた。


「ふふっ、やっと二人きりになれたね」


ああ、やっとだ。ぎゅーしたいキスしたいセックスしたい。ホテルを即決して、軽率に五千円飛ばした。人間の性欲とは気持ち悪い。


プルルルル、プルルルル。


着信画面には青柳 湊の文字。ああ今、一番萎えるタイミング。


「電話、でなくていいの?」


「うん、弟だから」


罪悪感が募るセリフ。これ勃つかなあ。プルルルル、プルルルル。


「また電話鳴ってるよ?大丈夫??」


「ごめん、一旦出るわ」


電話に出た瞬間、開口一番に「何!??」とキレ散らかしてしまいそうだったが、すすり泣く声を聞いたらそんなことはできなかった。


「京一さん、何で浮気するんですか?」


「浮気って……」


「知ってますよ。合コンに行ったこと」


「あれはただの付き合いで……」


「じゃあ何で、ラブホにいるんですか?」


「えっ!?」


何で知って、まさかGPS付いてるとか!?


「え、本当にラブホいるんですか??どういうことですかそれ!??」


うっわ、カマかけてやがったクソ。


「別に、そんなんじゃないよ。酔っ払った子がいたから、ホテルで休ませてるだけだって」


「二人きりで?」


「まあ、でも、何もできないくらい酔っ払ってるから」


「じゃあ、その人に代わってください」


「嫌だよ。何で俺の言うこと信じてくれないの?」


「……分かりました。今日中に帰ってきてくださいね」


あー、休憩にしといてよかったあ。宿泊か悩んだんだよね。金ドブにしなくて済んだわ。


「もちろん、愛してるよ」


と電話を切った。罪悪感しか俺の心にはない。


「会話の内容からして、彼女さん?」


と下着姿の彼女はあっけらかんと聞いてくる。


「ヤンデレで束縛厳しくて、」


「彼女さんも大変だね。こんな如何にもモテそうな男と付き合ってると」


「そんな、モテないよ。俺のこと、ちゃんと見て?」


君の目には何が写る?ただの男?それとも怪物?

ああ、君はきっとヤレれば誰でもいいんだ。


「この傷……」


「あ、これ?かっこいいでしょ〜!」


とリスカ跡を自慢げに彼女に見せた。彼女は何処か悲しそうな目をしてからこう続けた。


「かっこいい。けど、私と似てる」


「え、君も??」


「私にとって、セックスって自傷行為なの」


腕や脚に傷跡はなかったから、まあ、そんなとこだろうとは思ってたけど、


「ふふっ、あーあ、そんなん言われたらできないよ」


とせせら笑うしかなかった。


「でも、自傷行為の気持ち良さ、わかるでしょ?」


「うん。でも、俺は自傷行為をする気持ちもわかるんだよ」


誰からも認められない。自分になんか価値はない。俺のせいで傷つけてしまった。ひとりぼっち、孤独で寂しい。自分が生きている理由が欲しい。それらの感情ぜーんぶまとめて、自傷行為して発散させる。


「京一郎さん、」


彼女は俺の手を取って、自分のその柔らかい胸に俺の手を置く。やべー、理性が死にそう。


「そんなにヤリたいの?」


「ふふっ、やっぱ私って、魅力ないですかね?」


と自信なさげに彼女は微笑んだ。


「ううん、すげーあるよ。今すぐにだって、犯したいくらい。めちゃくちゃエロい」


正直、俺の理性がもう保ちそうにないくらい。勃っちゃったし、


「じゃあ、何で!??」


ヒステリック起こして、今にも彼女は泣き出しそうだ。精神が不安定で、安心感を求めるようなところが、俺のよく知ってる依存性の特徴に当てはまる。


「だって君を抱いたところで、一時的にしか、君は救われない」


「もう、それでいいから抱いてよ!!そのために来たんでしょ?!」


悪いのはモノではなく、それを使う人間の用途だ。とはよく言ったもので、ここで言う俺は、カッターであり、煙草であり、バッドドラッグである。なんて、罪悪感の言い逃れ。身体の繋がりは精神の繋がりじゃないのに、身体の繋がりで精神の繋がりを欲している。


「……俺は嫌だよ。君みたいな子、見てて可哀想になる」


逃げて煙草を手に取った。


「は!??」


「そもそも、何で君のなけなしのプライドを玉砕するために、俺がセックスしなきゃなんないの?」


「うっ……あは、それもそうだね、」


またこの情けなさそうな笑いだ。


「けど、そうやって病まれるのも嫌だ」


「え?」


不意をついて、彼女の身体を抱きしめる。


「桃子ちゃん、すごい可愛いよ。だから、大事にさせて?」


「……彼女持ちの言葉、信じられるわけないじゃん」


「あはっ!やっぱダメかあ……」


あー、煙草がうまっ!


「でも何かもう別に、ヤラなくても良いやあ」


「じゃあ、俺の理性の勝ちぃ」


「ずっと、勃ってるけどね?」


バレてたんかよ!恥っず!!


「トイレ、行ってくる……」


「待って、京一郎さん。手コキ、してあげる♡」


と言われて、俺は誘惑に勝ちきれずに彼女の手の中で弄ばれている。


「ん、気持ち良ぃ」


「ふふっ、可愛い!」


「……触っていい?」


「どうぞ」


同意を得て彼女の胸を軽く揉んだ。その柔らかさの虜になってしまいそうだ。余計に興奮した。ビュルルッと出た白乳色の液体は彼女の胸まで飛んで、汚してしまった。


「ふふっ、すげー飛んだ」


「京一郎さんのこと、何だか愛おしくみえる」


「それはお互い様だよ」


と俺に頭を撫でられた彼女が見せた笑顔に、俺はキュンとした。賢者タイム、煙草とスマホが欲しくなる時間。けど俺はどちらとも手にしないで、ただ彼女を後ろから抱きしめていた。


「京一郎さん、私、勘違いしそう……」


「いいよ今だけは。俺の彼女は君だよ」


こんな薄っぺらなセリフ、最低だ。


「……ううっ、う、京一郎さんと……出会えて良かった、」


「え!?そんな、泣かな……いや、泣いていいよ。今までつらかったんだね」


と支えてあげると、さらに号泣し始めて、今までのつらかったこと、全部教えてくれた。毒親からの暴言暴力、親戚からの性加害、信頼してた元彼の裏切り。


「もう!いま死んでもいい!!」


と彼女がベッドから起き上がったけれど、俺は寝っ転がりながらその手を引いて、


「それはだ〜めっ♡」


とまた彼女を寝かしつけた。


「何で?だって、京一郎さんだって……」


「お前のことが本当にどーでもよかったら、もう中出しセックス決めてんよ。何でしてないか、わかる?」


「わかん、ない」


「あはっ、正直俺もわかんない。だけどなんか、ほっとけないんだよね」


「そうゆうの、死ぬには最も邪魔だから、いらない」


と冷たく言う彼女。


「あははっ、そうだよね!他人との繋がりなんて、死んじゃえば……だから今、一緒にいれて嬉しいよ」


「そうですか、」


「死なないでとは言わないけどさ、死ぬまでは仲良くさせてよ。俺、君のこと好きだからさ」


「……浮気男」


「ふふっ、図星で何も言えないね」


その後は俺プレゼンツの鬱ホラーを途中まで見て、チェックアウトした。


「グロかったあ……」


「そこが面白いでしょ?」


「うーん、何だか食欲も性欲も落ちちゃった」


「ふふっ、満たされたってことじゃん!」


って馬鹿なフリして笑った。


「京一郎さんって、狂ってるね」


「何それ褒め言葉?ほら、駅まで一緒に行こ」


腕組んで恋人みたいに歩いた。何だかこうして歩いている内は優越感を感じた。


「それじゃあまたね、京一郎さん」


駅のホーム、彼女が俺に手を振る。俺も手を振り返すと、電車内に乗り込んだ彼女はニコッとした。ドアが閉まって、彼女が去っていく。あーあ、この時間がものすごく嫌い。


「ただいま、湊」


「京一さん!!!もう、すっごく心配したんですからあ!!煙草はこんなにあるし、合コンには行っちゃうし、」


玄関を開けたら、湊にタックルされるみたいに抱きつかれ、いろんなことを愚痴られた。


「え、何で知ってんの?」


「あかりさんに教えてもらったんですよ!!何で恋人の僕には言わないのに、仕事仲間には言えるのかな?」


この何気ない愚痴に何だかカチンと来てしまって、


「あ?何??恋人だからって、図々しいのも大概にしろよ」


と暴言吐いて、湊を引き剥がしてしまった。


「いや、僕はただ、心配で……」


「そう言えば許されるとでも思ってんだろ?」


「違う!けど、貴方が僕の傍からいなくなるのは嫌だ!!」


引き剥がしてもなお、抱きついてこようとする湊に可愛げを感じて、また押し返してやった。


「もう、湊帰れよ」


「ううん、京一さんと一緒にいたい。僕はどうすれば良いんですか……?」


今にも泣き出しそうな目して俺の脚に縋ってきて、ああ、これには完敗だ。


「はあ……ごめんね湊。意地悪しちゃって、」


と彼の柔らかい頬を撫でてから、キスをした。


「はあ、あああ、はあ、、うああ!!」


俺の急な手のひら返しに、頭の整理がおいつかないようで、いや、ただ安堵してなのか、結局、湊は泣き出してしまった。


「あーーもう、悪かったって……不安にさせてごめん」


「本当ですよ!!京一さんって、いっつもそう。思い立ったらすぐどっか行っちゃうし、女の子絡み多いし、かと思えば、病んでたり、死んじゃいそうになってたりもするし、最悪の場合だって、いつも頭によぎるんです。その度に吐きそうになって、不安と心配でいっぱいいっぱいになって……」


それで少しの安心を求めてリスカしちゃうのか、


「湊、俺のこと大事に思ってくれてありがとね。けど俺も湊のことを大事に思ってるよ」


「信じてますよ、京一さん」


「うん、こちらこそ信じてるよ」


なんて言うと、なんだか心が締め付けられた。

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