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やっぱ、どう考えても病んだ人間って、無価値じゃね?

こんにちは。俺は生産性のない、他人を不快にするただのゴミだよ!今日も駄文を脳内に繰り広げては病んだ日々を過ごしているよ!酸素の無駄使いだねごめんね!ヘモグロビンちゃん垂れ流して張り切ろうとしたって、貧血でぶっ倒れるんだから意味ないね。好きな人とは楽しいことだけ面白いことだけしていたいのに、何故か病み発言をして困らせちゃうんだ。ウザイよね。好きな人を不快にさせるくらいなら、死んでいなくなりたいんだ。それが俺のゴミとして真っ当に生きる本望ってやつなのに、どうもそれが悲しくて悲しくてたまらなくて、めんどくせぇ奴だろうね。そんなの自覚してんのに、何でそれを再度確認しちゃって傷付いちゃってんの?馬鹿みてぇ。てか、馬鹿か。でも、好きな人には、好きだからこそ、ありのままの俺、クズい俺を知って欲しくて、その上で愛して欲しくって、ウザいキモい死んでくれって自認している自分を、酒飲んだ拍子に、ゲロっちゃうんだ。こんな俺とは幸せにはなれないよ。だから付き合うのなんて、間違いだよ。彼に何度もそう伝えている。実際にそうなっている。もう、俺のせいで不幸せになる好きな人を見たくない。俺が死ねばいいだけの話じゃん。


何でこう京一さんって、定期的に僕から距離を置こうとするんだろう?昨日までは、普段通りに愛し合っていた。甘々なセックスだってした。それだってのに、今日になったら、突然の手のひら返し。正直、意味わかんない。愛しているの単語だけ響かないように脳みそプログラミングされてんのか?ああ、何で京一さん一人で泣いてんの?恋人なのに、何で僕はわかってあげられないの?その痛みや苦しみだって愛おしいのに、もっと共有して欲しいのに……何でそうやって苦笑の裏に隠そうとするの?京一さんから何度も聞いた。こんな俺とは幸せになれないよ。だから付き合うなんて、間違いだよ。その度に僕は否定しているのに、何で僕の言葉を聞いて、その脳みそで理解してくれないの?言葉悪いけど、馬鹿なんですか?貴方と一緒なら僕は幸せで、貴方と一緒にいることで不幸せになったとしても、その地獄では僕は心から笑える気がするんだ。なのに、その気持ちを分かろうとしない貴方は、僕との関係をリセットボタンを押すように簡単に切り捨ててしまう貴方は、僕はきっと唯一嫌いだ。


「湊、愛してるよ」


その言葉はまるで、遺言のようだった。貴方が自暴自棄で死のうとしていることなんて、手に取るように分かった。僕だって、馬鹿じゃない。


「京一さんを逮捕しないでください。示談金、いくら詰めば良いですか?」


「馬鹿だなあ、湊は」


死んだような目で僕の髪を撫でる彼。はああああ、好き!!!まあ、そんな感情があっても、京一さんが刑罰を受けるのは免れなくて、僕とのハメ撮りが児ポルとして看做され、罰金刑。



「ママ、お願いします!!百万円貸してください!!!」


僕は土下座で頼み込んだ。


「あら、湊がお小遣いを強請るなんて、珍しいこともあるものね。それで、何に使うの?」


「京一さんが児童ポルノで捕まっちゃうの、そしたら三年間くらい会えなくなっちゃう……」


「へえ、ちょうどいいじゃない」


僕のママは鼻で笑った。


「ちょうど良くない!!京一さんがいないと、死んじゃうよ?良いの??」


こんな脅し、ママには通用しない。だって、元々僕は本当のママの子じゃないんだもん。


「湊、京一郎くんに依存するのはやめなさい。それが百万円を貸す条件よ。守ってくれる?」


「え?」


「湊は京一郎くんに依存しすぎなのよ。少しは自立しなさい」


「……はい」


全部、ママの言う通りだ。


彼の部屋。


「湊、じゃあな」


貴方は簡単に別れを告げる。僕は時間感覚なんて消失して、永遠に貴方と話していたいのに。そんな気持ちを押し殺して、「それじゃあ、また」とだけ言うんだ。


「また、僕だけ貴方を求めているみたい」


貴方からは「会いたかったよ」の一言もない。それでもどうしようもなく好きだから、何もかも差し置いて、貴方を第一優先にしちゃう都合のいい人間になってしまうんだ。こんなの、馬鹿げてるからやめたい。もっと貴方の方から求めてよ。僕のことを好きって言って、僕の身体に触れて。


「はあ、はあ、はあ、はあ……」


また貴方を妄想して抜いてしまった。貴方が僕の身も心も愛してくれる。そんな妄想をしては虚しさに浸るんだ。何でこんなにも尽くしているのに、貴方は僕のことを愛してくれないの??そうやって、考えている時点でウザったいね。虚しさで笑えてくる。貴方が言う、好きって言葉で僕の心は救われるのに、貴方は好きって言葉を言い慣れていないんだ。酔った時にしか言ってくれないその言葉に、僕は執着しているんだ。だから、お酒をやめろと言っているのに、貴方を酔わせたくてしょうがない時がある。酔っている時ばかりはバカップルのようになれるから。


「ルイ、金貸して〜」


「良いよお、なんぼ?」


「百万円」


「へえ、またシャブってんの?俺以外の奴ので??」


「いーや、最近しゃぶってるで言ったら、恋人のアレしかないわ」


「きっっっしょ!!!聞きとうなかったわあそれ」


「意外と舌使うの上手いよお?俺」


と舌をチラつかせた。


「あー、俺のチンコと百万狙っとんのか」


「あはっ!バレたかあ」


「バレバレすぎるわ!……さすがに俺、京ちゃんではイけんわあ」


「やろなあ」


「何でか、分かっとる?」


「あれだ、胸がないからだろ」


「ふざけとんのか?我」


「あははっ!さっすがにふざけたわ!!」


「ふふっ、本気で言っとったら、どついてたところやわあ」


「俺なんかに、夢見てくれてるもんなあ。ルイルイは」


「まじシバくぞ?」


「わあ、怖っ!」


「『俺なんか』ちゃうぞ?京ちゃんは俺の憧れなんやって、なんぼ言ったら分かるん?」


「……今の俺見て、幻滅してない?」


「しとったらここにおらんわ阿呆!」


「あははっ、まじ憧れなんか?暴言聞こえたけんどお」


「しとるしとるう」


「あは、それはありがたい、かな……」


「京ちゃん、まじ何やらかしたん?」


「ふふっ、児童ポルノ。恋人を愛してただけなのにね」


「無理して笑わんといて?こっちがつらいわあ」


「ごめ、」


「謝りもせんでええ。つらいならつらいでストレートに言ってくれればそれで……まあ、何も解決はせんけど、少しは優しくしてやんよ」


「……じゃあさ、ホテル行こ?」


「は?何でそうなるん?」


「だって……優しくしてくれんねやろ?」


「あーあー、泣くな泣くな!もうファミレスなんかで酒飲むな!」


「ルイルイ、ね?」


彼の優しさでケロッと泣き止んで、ああまあ、これを優しさと呼んでいいものか分からんけど、俺達はホテルに入った。「俺の感情を掻き乱して弄んどるやろ?」って、ルイルイには言われたけど、俺が情緒不安定なだけだった。


「きょ、京ちゃん!まじいらんて!!」


ベルトのバックルを死守される。


「そーゆーことじゃないの?」


「普通に金なら貸すから!」


「ううっ、嫌だあ……」


「何でそこで泣く!??」


「俺が、こんなんだから、ルイルイは、」


バシンッ!!彼から平手打ちを食らった。


「こんなんとか言うな。そんな弱音聞きとうない!!」


見事に頭がグランとしてその衝撃で、酔った。


「……おえっ」


吐いた。


「ん?目覚めた??」


「ああ、また死ねなかった」


「まーたそんなこと言うて、俺の気ぃ引きたいんやろ?」


と笑われた。俺は本気だった。でもその本気度は伝わらなかった。


「そうやって冷たくされんのも嫌なくせに、慰められても迷惑かけたんじゃないかって嫌になる。はあ、面倒くさい奴だよね。どうやって生きたらいいんだろ」


「お前に迷惑かけられても、面倒くさいって思わない奴を傍に置いてたじゃん。それで万事解決じゃないん?」


「でも、好きだからさあ、迷惑かけたくないし、嫌われたくない。俺がこんな俺を嫌いだから、愛せないから、認められないから、こんな自己嫌悪のループにいるの。分かる?」


「愛してやれよ、もっと自分を」


「俺は失語する度に死にたくなる。こんな人間が、」


「あーもう!こんなとか言うな!金貸さんからな!!」


「あああああ、」


取り乱して、布団蹴飛ばして、暴れる俺を、ルイはベッドの上に押さえつけてくれた。


「京ちゃん、ごめん!ごめんって!!追い詰めたいわけじゃないんよ?たださ、俺は京ちゃんのことが好きだから、下げて言われんのが気に食わんの」


「じゃあ、どうすれば!!自分を愛せるようになりますか?」


俺は赤ん坊のように泣きじゃくった。その後で煙草を吸った。


「俺は愛してんぜ?京ちゃんのこと」


「おえっ、きっっっしょ!!!」


「は?酷くね?」


「あははっ、仕返し〜!」


「俺そんなん言ったっけ?」


「言ってた言ってたあ!てかさあ、どっか死にに行かね?」


「そんな阿呆みたいた提案、人生で初めてされたわ」


「俺さあ、気付いちゃったんだよ。俺は誰も愛しちゃいけない人間なんだって」


「そんなことない」


「そんなことあるんだよ。俺の愛ってさあ、意外と重いんだぜ?」


「あはっ、簡単に身体重ねる奴が何か言ってるぜ?」


「ふふっ、おい!ふざけんな!!まあ、そうだけどさあ、そうじゃないんだよ」


「何が?」


「どんなにヤッても満たされたいもんは満たされねぇし、恋人とヤッたってなんか疲れちゃうんだよね……なあ、異常だろ?」


「京ちゃんは、まあ、愛してんだけど、正しく愛せてないんだよ。京ちゃんの恋人も同様に。だから、満たされないんじゃね?」


「何だよ、正しく愛すとか意味わかんねえ」


「それにさあ、愛如きでその孤独感や寂寥感が拭えるって考えとるその脳みそお花畑やわ」


「じゃあ、死んだらええか?」


「いや、孤独感や寂寥感を味あわないように生きることを諦めろ。京ちゃんは孤独で寂しがり屋で、可愛い奴なんよ」


「ばっ!バーカ!!キモいだけじゃろがい!!!」


「あははっ、寂しくて死んじゃう兎みてぇ」


「お前、まじで馬鹿にしてるよな?」


「してへんよー?」


「あーもういい。俺、顔もブスやし、性格もクソやし、口悪ぃし、ヤニくせぇし、おまけに、ヤク中やろ?あはっ、全く良いとこないわ!そりゃあ、周りに人いなくなるわ!……あは、死にたくなる」


「……そんなん言われんやったら俺、京ちゃんに薬売らんかったわ」


「いやいやいや、薬使えたんは感謝してんのよ。ただそれに依存してる、自分が嫌なだけで」


「でも最近やってないやん」


「……そしたら、それ以外のところに歪み出てんの。それも嫌だ。そうなってくると、生きてくんの嫌になんね?」


あー、泣けてきた。最悪。何回泣くねんコイツ。まじウザったいのやけど。


「あははっ、ほんっと京ちゃんって生きるの不器用やなあ!!」


「はあ!?今笑うところちゃうやろ」


「いひっ!おもろくて、ついね!あー、ほんま、どうしようもない人間で、愛おしいわあ。薬あげよか?」


「わあああ、俺は生きる意味くれっつってんの!!!」


「意味ならあるやろ。今を楽しんどる、それが一番だ」


「楽しかった今日より悲しい明日が俺に付きまとうのが嫌だ。今を最っ高に楽しむなら、今死ぬしかねぇんだよ」


「たとえ悲しい明日だとしても、また楽しい明後日で塗り替えてやんよ。なあ、京ちゃん?」


「ああ、何で俺こんな情緒不安定で、ルイルイの言葉さえも疑ってしまう人間不信なんだろ。生まれてこなければ良かった……」


「あははっ、めんどくせぇ!!」


「なあ?そうだろ??死んだ方が……」


「おいおい、死ぬなよ。俺を置いて逝くな」


ルイに抱きしめられた。その広い胸に抱かれた。


「何だよ、さっきめんどくせぇって言ったじゃん」


「そのめんどくせぇとこが京ちゃんの良いとこだと俺は思っとるんやけど?」


「あはっ、頭イカれてんね〜!」


「お前のが酷いかんな」


「はいはい、ありがとねルイルイ」


「あーもう京ちゃんまじ可愛い、ジャパニーズカワイイ最強」


「ふふっ、何やねんお前!」


「俺が日本に長くいるのは京ちゃんと会えるからなん、知らんやろ?」


「知らんかった。なあ、ルイ」


「ん?」


「好き」


「知っとんよ〜?俺も好きやし」


「じゃあ、ちゅーしよ」


「それは嫌や、身体求めてんといて。気付いたらチンポしゃぶられそうやわ」


「ふふっ、そーゆーとこも好き」


「変なやつ。でも素直で可愛い」


とルイルイは俺のおでこに軽くキスしてきた。


京一さんは僕が必死でママを口説き落とした百万よりも、ルイルイさんの百万を取った。しかも最近、ルイルイさんとやけに仲が良い。毎日連絡取り合ってるみたいだし?何かチャットしてニヤけてるし。は?僕の時そんなのあった?え、何で思い当たる節がないの?僕のが、恋人だよね!??!?


「京一さん、まじでスマホ奪いますよ?」


「えーーー、死ね」


京一さんからの冗談の死ねがここまで響くとは思わなかった。


「ふふふ、じゃあまじで死にますよ?見なくていいんですか?」


と愛用のカッターを手に取ると


「あー湊ごめんね!悪かったって!」


と抱きしめられた。でも、貴方の指先はフリック入力しててほんっと、この男はあああああ!!!!


「ルイさんと連絡とるのやめてください」


「えー?何でお前に束縛されなきゃなんねーの?」


それは、僕が貴方の恋人だからだよ!!!!


「じゃあ、僕の見えないところでやってください」


「あーもう、不愉快なら帰れば?」


貴方は僕を抱きしめるのをやめて、ベッドでふて寝する。


「……は?」


「ん?」


「え、そんなに僕のこと冷めてんですか?」


「冷めちゃいねぇけど、タイミング考えろよ」


スマホにフリック入力して、ちょっとせせら笑う貴方。嫉妬で狂いそうになる。


「は?今現在の貴方に、恋人の僕よりも優先することってありますか?ないですよね!?」


「はあ、その発言で冷めた。お前のそーゆーとこは嫌いだわ。傲慢かよ」


ああ、やらかした。めちゃくちゃ高圧的な態度をとってしまった。いつもの僕ならしないのに、最悪!!!


「ち、違いますよ〜!」


「何が?」


「ふふっ、京一さん睨まないでくださいよぉ」


笑顔で誤魔化した。


「別に睨んでないけど」


「ねえねえ、京一さん。イチャイチャしません?」


「やだ」


僕は僕が可愛いと思っていた。違う、僕は貴方の中の僕が可愛いと思っていた。だって、貴方が可愛いって言ってくれるから。それにかまけて、調子に乗って、貴方から拒否されることなんてないと思っていた。だから、拒否されると一気に虚しくなっていく。夢から覚めたように、ああ、そうだよなって。

僕は貴方が寝ている布団にもぐりこんだ。嫌がる貴方にキスをした。自分から傷を抉っている気がする。


「何で、好きになってくんないの?」


僕が泣いて、貴方がやっとスマホを置いた。こんな方法でしか、貴方の気を引けない僕は、きっと病んでいる。


「湊、ごめんね。好きだよ、ほんとに」


貴方は僕を抱きしめる。それで僕は一時的に満たされて、この世の誰よりも幸せになれる。


「もっと、行動で示してくださいよ」


そうやって甘えると彼はちゃんとキスをしてくれる。これじゃダメ?って顔で見つめてきてくれる。その顔に弱い僕は、いっつも不安にさせられても、許しちゃうんだ。


「不安にさせて、ごめん」


「いえいえ、京一さんが僕のことを愛してくださってるのは分かってます。それなのに嫉妬しちゃう僕が悪いんです。ごめんなさい」


「湊かーわいっ♡」


とまた貴方に抱きしめられるけど、虚しさは消えずにいつもどこか僕は一人ぼっちなんだ。キスしただけで言うことを聞く、都合のいい男なんだろうなあ。ああもう、貴方への献身は僕の愛情だけど、貴方は僕の献身だけが好きで愛情を受け取ってくれてる気がしないの。僕の心の底まで愛してよ。


「ふふっ、好きですよ貴方のこと。本当に」


「そんなの、わかってるよ」


当たり前のことだと得意げに鼻を鳴らす彼。僕がわざわざこれを言った理由は、貴方に僕が寂しがっていることに気がついて欲しかったから。本当は、何寂しそうな顔してるの?って、優しくして欲しかった。結局、いつも虚しいまま。



湊が最近冷たくなった。心当たりはあるけど、そこまで冷たくされるとは思わなかった。また空き缶の数が増える。あーあ、クソみたいな人生だ。プシュッ。


「京一さん、飲みすぎですよ」


「ふふっ、湊ぉ、デートしよっか?」


「え、デートですか!!?いつにします??!」


「あー考えんのダル。もう明日でいいよね、学校サボってさあ」


「……良いですよ」


あ、これ無理させてんなあ。ふふっ、死にてえ。


パシャッ。今日も写真の中の俺は奇形だ。産まれてきたことを後悔するほどに気持ちが悪い。ブサイクという範疇に収まりきらないぐらい奇形なんだ。


「……やっぱ帰る」


「え、どうしたんですか?」


せっかく美味しいと話題のスイーツがあるカフェに並んでまで入ったのに、そのスイーツを一口も味あわずに帰る発言をしてしまった。ますます自分が嫌になる。


「ああもう嫌だ。帰りたい」


ストレスで痛くなる頭抱えて、今にも泣きじゃくりそうだ。


「京一さん、何で?せっかく、食べにきたのに」


こんな馬鹿舌じゃ、何食っても等しく不味い。


「ごめん、湊が全部食べていいよ。俺はいらない」


「そんな、京一さんと一緒に……」


「いらないから。あー、頭痛え」


湊がスイーツを食ってるのをぼーっと眺めて、店から出た。湊は申し訳なさそうにこう聞いてきた。


「京一さん、楽しくないですか?」


「ううん、楽しいよ」


真っ赤な嘘。バレるための引き攣った笑顔。


「ほんっと、皮肉が得意ですよね〜!じゃあ、帰りましょうか」


「嫌だ、帰りたくない」


「は?さっきは帰りたいって言ってたじゃないですか」


「あーもう頭痛い」


「何なんですか本当に。だから、帰りましょうって」


「何で俺だけこんな苦痛を味あわなくちゃいけないの!??」


「え?」


「お前はいっつも楽しそうで良いよね。自分の外見で気にすることもないだろうし、ストレスですぐ頭痛くなんねぇだろうし、こうやって不機嫌まき散らすこともないじゃん。あーあ、人生イージーモードで良かったね」


「それ、本気で言ってますか?」


「……いや、」


「本気で言ってるんだったら、別れましょう」


半分は本気だった、でも半分は八つ当たりだった。慰めて欲しい。ただそれだけのために、湊のプライドを生き様を汚した。最悪な彼氏だろう。


「ごめん……ごめんなさい……」


最近ずっと泣いている気がする。この生きずらさは泣いても共感されても慰められても治んないのに、何を求めているんだろう。ただ惨めに泣いている俺なんか、誰も見たくないだろうから、早く泣きやめよクズ、くらいには思う。


「京一さんごめんなさい。僕は一生貴方の傍にいますよ?」


「いらない!!あっち行け!!!」


「嫌です。貴方を一人にしたくありません」


と湊に抱きしめられると、余計に涙が止まらなくなって、湊の肩を借りてしまう。


「ううっ、嫌だよもう……生きてくのが嫌だ……」


「京一さん、」


湊は俺の名前を呼んだっきり、それ以上は何も言わなかった。欲望のままにベッドにダイブして、虚しさにまた泣かされそう。


「来ちゃったね、ラブホ」


「えっっっっろ、!!」


「あはっ、なんだよその反応は」


「いや、今のは誘ってますよね?完璧に」


湊が甘い蜜に誘われてくるカブトムシのようにそろそろと俺のところへと寄ってきた。


「脱いだ方がいい?」


とシャツをまくり上げて、わざとらしく腹をチラ見せした。


「はい、今すぐヤリましょう!!」


「あははっ、まじ雰囲気ねぇな!」


と笑いながらも上裸になって、湊をベッドに誘い込む。


「京一さん、まじ好きです♡♡」


「あーね、ありがと」


俺がこの行為をする時は、いっつも自分本位だと思う。だから、この行為で好意なんか伝えられなくて、大切になんかできないんだ。それなのに彼は、これを求めてくるし、でも優しくできないし、自分本位な自分に嫌気がさして賢者タイムなんだ。



京一さんのイキそうでイケない顔が好きだ。余裕がなくて、傷つけてもいい?って情けない顔して、優しくキスをしてから腰を動かすんだ。この瞬間が1番好きだ。


「傷つけてもいいですよ」


そういうと貴方は少し目を丸くしてから、また不甲斐なさそうに、


「大切にしたいんだけど」


って軽く笑った。


「その想いだけで十分、僕は大切にされてますね」


「そーゆーもの?」


貴方は僕の手に手を重ねて、指を絡めて恋人繋ぎをしてくる。それがなんとも官能的だ。


「そーゆーものです」


「ふふっ、湊。大好き♡♡」


その無邪気そうな笑顔で、そんなことを言われたら、僕は全身に電撃が走ったように、震えた。涙が自ずと流れていた。


全身が満たされるような快楽は数秒でどこかへと流れ出てしまって、今ここには虚しさだけが残っている。涙を流すことさえもできやしない。


「京一さん、賢者タイムですか?」


「何?」


と気だるげに聞き返される。


「いや、何でもないです」


貴方に甘えたいだなんて口が裂けても言えなくて、この言葉を口にしてしまう。けど、貴方はやっぱ狡くって、


「なーに?教えて??」


って僕に抱きついてくるから、流れなかった涙が溢れてくるんだ。


「京一さん、やっぱ僕は貴方のことが大好きです」


「ふふっ、俺もだよ。二人で幸せになろうね?」


こんな絵に描いたようなラブラブなカップル、演じていいんですか?この後で、想像を絶する不幸が訪れたりしないですか?僕は貴方と幸せになっていいんですか?


「ううっ、正直に言うと、貴方が嫌いになる時は何回もあります。でもそれ以上に僕は、貴方が大好きなんです。愛してます……ごめんなさい」


「何で謝るの?キスして欲しいから??」


そう冗談っぽく聞いてから、貴方は一謝罪一キスのルールに則って、僕にキスをする。分かってるでしょ?僕の愛は貴方を窮屈にさせてるって。


「僕、貴方の全てが欲しいんです」


「いいよ。俺の全部、湊にあげる」


何事もないように貴方はサラッとそう口にした。


「ふふっ、ただの自暴自棄じゃないですか」


「俺ら、現実的じゃないことが好きなんだから、しょうがないじゃん?」


「それもそうですね。やっぱ、愛してます」


貴方がとっても魅力的すぎて、僕の語彙力が底辺になって、バカになって、貴方に好意を伝えることしかできなくなっている。


「湊はさ、俺が気持ち悪い怪物に、見えないの?」


「見えませんよ。ちっとも気持ち悪くなんかないです」


「俺は、俺の容姿が嫌いだ。すげー気持ち悪くってさ、途端に生きてていいのか、分からなくなるんだ」


「また気にしてるんですか?もう、京一さんは僕のために生きててください。貴方のその顔は、僕が愛してやまない顔です。それが事実です。まだ物足りないですか?」


貴方の両頬に手を添えて、僕はそう口説いた。けど貴方はせせら笑った後で、口を尖らせた。


「うん、物足りないね。俺は他人をも凌駕する幸福が欲しい。そうじゃないと、不公平だ」


「僕がきっと、貴方を幸福にしてみせますよ」


「このつらさは、幸福になるための伏線だよね?、そうだよね?湊」


不安がって僕の腕をぎゅっと掴んだ貴方の細長い指。悲劇のヒロインのような貴方は、とっても可愛らしい。


「大丈夫です、絶対に僕が幸せにします」

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