スーサイドホリック・イン・アルコール
ああもう、分かったよ。アンタのが凄い。アンタのが偉いよ。俺なんかよりも優れているし、俺なんか弄って遊んで使い捨てるのが、アンタは丁度いいんだよね。俺は当然何にもできないし、平均を下回る人生を送っているなんて、俺が一番知ってんだけど、わざわざみんなの前で言うことあるかな?俺ってそんなに不用品かな?そんなに存在してちゃいけないかな?仕事ができないだけで、こんなにも心苦しいなんて惨めったらしいけどさ、俺にとっては死活問題なんだよ。アンタは普通に生きられているからこの苦しみを知らないだろうけど、誰からも必要とされていない感覚がずっと、心を蝕んでいるんだ。いらない、死んだ方がマシ、そんな言葉が俺の周りを飛び交っている気がするんだ。そんなに社会に必要とされてないならさ、さっさと死なせてくれよ。お願いだ。湊と一緒に最期だけは笑って死んでいきたい。苦痛だけを味あわせる人生に何の意味がある。俺が犯罪者になったのは、全て全てお前のせいだ。お前のせいで、俺を愛してくれている人からハグされたって、俺は何も感じないんだ。こんな俺を愛してくれているんだ、ありがたいなって思うだけで、次の瞬間には「どのくらいで離してくれるんだろ」ってことばかり考えてしまう。湊からの愛情を疑いたくはないのだけど、無意識的に「ああ、これはセックスしたいから」と心の中で俺じゃなくてもいいと言い訳をしている。俺の人生がこんなにも幸せなんて有り得ないから、信じたくないから、信じたらまた傷付けられるから、俺はそうやって、何も感じないフリをする。だからって、傷付きたいわけじゃない。傷付いたら普通に痛い。自虐、自傷行為は傷付けられた時の痛みが軽減するようにやってるんだ。決して傷付けても大丈夫な人間だというアピールじゃない。けれど俺は特別な存在じゃない。絶滅危惧種に指定すらされていない害悪種だ。貴方はたった一人の唯一無二の存在だって、キラキラの歌詞に言われたって、アンタは俺の存在を知らないだろ。俺が死んだって興味ないだろ。ってひねくれて一再生も満たさずに興味を無くすんだ。愛されたいけど、結局は死にたいから、愛されたくない。人生全てが面倒くさい。仕事できない俺はもう死んでいいですか神様。
「氷野さん、遅かったですね。吐いたんですか?」
バイト仲間との飲み会の場、俺はトイレにこもって泣いていた。何故そんなことになったか?なんて俺が聞きたいくらい俺が可哀想だ。
「しーっ、内緒にして?」
「じゃあ、お酒は禁止ですね」
「嫌だね」
と、もう一杯。その分、涙の量が増えるんだからプラマイゼロだね。アルコール度数が高ければ高いほど、現実を忘れられる気がして、その数字の分だけ喉を焼いた。
「ちょっ、それ私の!」
「ん?……まあ、良いじゃん」
そのグラスにまた口を付ける。飲み放題なんだから、また頼めばいいじゃん、ってのが俺の主張なんだけど、周囲の人、特にある一部の人からは尽く嫌われた。
「キモ。女ったらし。態とだろ」
どーでもいい奴なのに、グサリとくるこの感覚がとても不愉快で気に入らなくて、ストレスだ。自分でグサリとする方がまだ気持ちが良い。
「あ、橋下さぁん。それ飲まないなら俺が飲んでいいっすかあ?」
「は?自分で頼めよ」
「ははっ、そうっすよね〜!」
とハイテンションに任せてハイボール頼んだ。身体がグラグラと左右に揺れる。爪を噛む。ゲロを吐く。食べた唐揚げの繊維が出てきた。キモ。
「氷野さん、大丈夫ですか?」
吐いてきた後で、ぼんやりとしたあかりの顔を見た。
「俺、酒弱くなったかも……」
「単なる飲み過ぎですって。かなりのハイペースだったじゃないですか」
身体が勝手に、あかりの肩を借りて、眠りにつこうとする。体力が限界を迎えていた。
「あかりぃ、死にたい……」
彼女の耳元で、酒に甘えて出てきた欲を吐いた。
「すみません。私、氷野さんを家まで送りますね」
「吉岡さん、一人で?大丈夫??」
「いや、まあ、一人じゃないので。大丈夫です!」
「どういうこと……?」
一同が首を傾げた。俺は湊がいるんだと確信した。
「氷野さん、立てますか?」
「ん。抱っこ」
と、赤ちゃんのように両手を広げた。
「貴方、酔ってるとはいえ……あーはいはい、記憶になきゃいいですね」
脇の下に手を入れられて、立たされた。そして手を繋がれて、店外まで出ると、春だけどまだ冷たい夜の空気が漂っていた。
「あれぇ?みにゃと、?」
「さっき呼んだんで、もうすぐ来ると思います」
「まだいないの?」
「……もうすぐで」
俺は泣いてしまった。精神不安定?百も承知。下水溝に吐いた。息ができない、苦しい、苦しすぎて、夢みたいだ。恥ずかしすぎて、笑えてくる。
「死にたい、死にたいよぉ。あははっ、死んでしまいたい……」
「貴方はもうお酒飲まない方が良いですよ」
「そんなの、ううっ、無理だよ……。記憶をぜーんぶ飛ばしたい。生きるのは苦痛だ」
メンヘラすぎて、生きるのが不自由だ。ああもう、ウザってえな。死にてぇんだよ。何生きようとしちゃってんの?人生相談?馬鹿みたいだなっ!って馬鹿だもんなお前。
「京一さんっ!!!」
誰かに強く抱きしめられる。それだけで俺の涙腺は崩壊する。もっと俺を求めて、もっと俺を愛して、もっと俺の生きる意味を付け足して。死なせないで。
「……っ、はあ」
誰かが啜り泣く音がやけに大きく聴こえる。そりゃあそうだ、俺が泣いているんだから。涙は無音で流れ落ちる。
「貴方がそんなに泣くなんて、何があったんですか?」
「いや、違うよ?私は何もしてないって」
「そうだよ、勝手に泣いちゃう俺が悪いの」
「そんなことないです。泣いていいんですよ?泣いていいんですけど、誰が貴方を泣かせてるんですか?」
湊は俺の頭をいいこいいこしてくれる。俺が悪くなかったら、誰かが悪者になっちゃう。それが嫌だから、俺が悪いでいいんだよ。ね?
「みにゃと」
「僕、ですか!??」
「そんなに俺に、優しくしないで……」
「す、すみません」
「ううん、優しくしてくれて嬉しい♡」
「はああ、可愛い♡♡もう泣きやめますか?可愛すぎるので……」
「うん、ごめん。迷惑かけてごめんね」
泣き止まなくちゃいけないのに、謝罪してると涙が流れてくる。自己嫌悪に沈んでいく。
「もおっ、迷惑じゃないですよお♡♡」
堂々と路上で惚気られた。
「湊くん、」
「何ですか?」
「氷野さん、一人で連れて帰れる?」
「はい、タクシー使うので大丈夫です。お気遣いありがとうございます」
その次の瞬間には、こういう社会人のコミュニケーションができるんだから、恐ろしい。
散々水飲んで吐いたあと、タクシーに乗って、何だかんだまた家に帰っている。現実に引き戻されていく。タクシー代は俺の一日のバイト代くらいだった。俺がこんなに酔わなきゃ……無駄遣い。
「うー、あー」
喃語を話す赤ちゃんのように、俺は奇声を発して、布団の上で身を捩り、悶え苦しんでいた。
「京一さん、何かして欲しいことはありますか?」
「ああああ、死にてえ。飛びてえ。自殺してえ」
「京一さん、僕がずっとそばにいますからね!」
「つらい、苦しい、死んじゃいたい、逃げたいよ」
「そうなんですね、ああ、そうですよね。……ごめんなさい。何もできない僕を許してください」
「俺が死ぬ時は、一緒だよ。みにゃと」
「はい、一緒に死にましょうね。京一さん」
「ふふっ、そしたらもうつらくないよ」
……結局、死ななかった。夢を見たってゲロ吐いたって、人生は続いていく。何なんだこれ。もううんざりだ。
京一さんが二日酔いで潰れた。よくある事だけど、京一さんが飲み過ぎる時は決まって、死にたい気持ちに呑まれた時で、急性アル中でまた死にたくなるんだ。
「京一さん、ゼリー飲料だったら食べれますか?」
「……味しない」
「それでも、京一さんの身体には必要なものですから、食べてくださると嬉しいです」
「じゃあ、食べる」
とそのゼリー飲料を両手で持って、ちょびっと押し出してパクッと食べる京一さんは、ひまわりの種を食べるタバスコみたいで可愛かった。
「京一さん、僕の愛情はいらないですか?」
「そんなことない。いらなくないよ」
京一さんが僕の肩を掴んだ。
「それなら、どうして……死のうとしたんですか?」
「そんなの、分かんないよ。湊だって、自傷行為の理由を聞かれても、分かんないじゃん」
僕の自傷理由なんて、大体、自己嫌悪が最大値になった瞬間だ。生きているだけで自己嫌悪するんだから、それが募りに募って、バッと切るんだ。
「そうですよね、ごめんなさい」
「ちゅっ。だけど理由の一つは、飲み会がつまんなかったから」
彼は僕の頬にキスをしてから、そう続けた。
「そんなことで、ですか?」
「ふふっ、あの時の俺にとってはきっと、そんなことじゃなかったんだよね。自分が無価値に思えてならなかった」
そう語る貴方を、僕は横からめいっぱいに抱きしめた。貴方のその片目から涙をこぼす仕草、曇りがかった表情を見ていると、胸がギュッと苦しくなる。自分のことのように貴方のことでつらくなるんだ。
「僕と永遠に一緒にいればいいのに……」
そしたら、貴方にこんな顔なんかさせないのになあ。
「俺も、そうしてたいよ」
と貴方は僕に寄りかかる。この共依存は単純明快だ。人という字によく似ている。僕達は二人で一人前。僕は貴方を支える棒になりたい。
湊から微かに匂う、女の子の香り。湊が好んで読まないような少女漫画を全巻持って帰ってきた。湊の恋愛対象は俺だって、散々分かっているのに、虫の居所が悪かった。読んでいる漫画をスッと取り上げる。
「……あ、何ですか?」
「読んじゃダメ」
「何でですか?」
「俺以外で、キュンキュンしたらダメ」
漫画のイケメンには到底敵わないブサイクな俺、の余裕のなさが露呈する。
「何なんですかそれ。……漫画よりキュンキュンしちゃいましたあ♡」
漫画のイケメンには到底敵わないブサイクな俺、審美眼を持ち合わせていない美形(男)に、めちゃくちゃ甘やかされている。
「……はあ、んっ、可愛い♡湊が一番、可愛いよ♡♡」
男同士のセックスで良いなあ、って思うことは、やっぱり妊娠のリスクがないことだ。これが女だったら、中出し禁止だし、中絶費は取られるし、下ろしたくないってヒスりそうだし、それにつけ込んで「結婚しよ」が始まるんだ。女が好きだけど、嫌いな女は腐るほどいる。自分をお姫様のように、少女漫画のヒロインのように、優しく扱って欲しいのなら、そういうコンセプトカフェやホストに貢いでろ。無給でそんな骨が折れることできねぇわ。
「いっ……」
眉を顰められる。
「ごめん、あまりにも良すぎてさ」
獣のように夢中で腰を振っていた。聞こえのいい言い訳とキスをして許しを乞う。
「ふふっ、痛いくらいが、気持ちいいです♡♡」
こんな乱雑なプレイでも、湊は乗っかってきてくれる。それが最高に可愛い。
「ありがと。だけど、なるべく優しくするね。湊のこと、大切にしたいから」
あ、キュンキュンしてる。可愛い、キュンキュンしちゃってる。繋がってると手に取るように、相手のことがよく分かる、ような気になる。「身体は素直だね」ってキモく言ったところで、指突っ込んだらゲロ出るみたいな生理現象だから、身体はアウトオブコントロールなんだ。
「京一さん、分かりますか?僕がキュン死しそうなの」
「俺のこと咥えたまんま、離そうとしないね♡♡」
あはっ、もっとキュンキュンしてる。おもしろっ!!
「ああ、このまま、繋がったまんま、ミイラになりたいです……」
「それ一生、イキ損ねるよ?」
「死ぬってそーゆーことじゃないですか」
その瞬間、目の前にいる男の子がめちゃくちゃ愛おしく思えた。ああ、死にたいと願いながら死ねない俺は、死んでしまいそうなほど愛してくれる君を蔑ろにしていたんだね。
「……ダメ。死んじゃ嫌だ」
「それ、特大ブーメランですよ」
死んでしまいそうだと感じる瞬間が、生き物が最も愛おしく感じられる瞬間だ。可愛いってのは、自分よりも小さくて弱いと認識している生き物にしか使えない。美人が可愛いのはきっと、お人形さんに見えてしまうからだろう。手のひらで転がせられるものが可愛いのはきっと、それが手のひらで転がせられるからだ。
「ふふっ、湊、好き♡、可愛い♡♡」
「あ、京一さんの、ドクドクしてますね♡」
毒々しい俺の体液は湊を内側から蝕んでいく。心の奥底まで届くように、俺は手を伸ばす。刹那、溺れる。暗闇の中を重力に従って、ただ沈んでいく。背中からコツンと当たる。底にはキラキラとした砂浜が広がっていた。俺はそれを口にする。痛み止めは神経を麻痺させているだけで、本質的な痛みは改善されていないように、苦虫を噛み潰したような味がした。必死でキラキラした砂をかき集める。俺らがしているのはその場限りの痛み止め。お互いに薬で毒でジャンキーなんだなあ。湊の涙は俺が全て飲み干しちゃいたい。パチン、夢から覚める。記憶は曖昧だった。湊を大切にしたいという想いだけが何故か不思議と残っていて、湊を抱きしめる時にはどんな夢を見ていたかなんて覚えていないんだ。
「……湊の全部が俺は欲しい」
「あはっ、もう一回ヤリますか?」
「ねえ、ふざけないで?」
「別に。ふざけてないですよ」
湊に軽く抱き返される。俺はキスしてしまう。湊はそれに照れるんだ。俺はそれを見て満更でもない。
「湊の血肉を喰らって、骨までしゃぶりたい」
「……腕、切りましょうか?」
「そーゆーことじゃないの。そーゆー比喩だよ」
「比喩って苦手なんですよ。そのまま受け取っちゃいます」
って言いながら、湊の下半身の膨らみが俺の太ももに当たってくる。
「え。喰われるの想像して、興奮した?」
「貴方の糧になれるのならば、僕は喜んで死体になりますっ♡」
「じゃあ、もし俺が先立ったら?」
「そしたら、んーーー、ショーケースに入れて、永遠に冷凍保存しておきたいですね。僕だけの京一さん、ふふっ、今でも閉じ込めておきたいです」
こっっっわ!!やっぱ可愛くない!!!ってか、何に嫉妬してたんだろ?俺は
メアちゃんが紙袋に約束の少女漫画を入れて持ってきてくれた。薬物を取り扱う商人のように、チラッと中身を確認させてから、また紙をかぶせてそれを隠す。僕はワクワクして、背中に隠した。
「それよりも青柳氏、きょっ、京湊の近況報告、お願いできるでございまするか?」
昼休み、メアちゃんと一緒に階段で駄弁っているのが最近はお決まりになりつつある。それで大体、漫画かアニメか京一さんの話で盛り上がるんだ。
「一昨日、京一さん、バイトの飲み会でさあ、吐くまで飲んでて。その上、泣き上戸だから、ほんっと泣き顔が可愛くってさあ♡ それで、京一さんは『死にたーい』って泣いてたけど、僕が慰めると『死ぬ時は一緒だよ?』って笑ってくれて。僕が『一緒に死にましょうね』って言ったら、『そしたらもうつらくないよ』って。え?イケメンすぎじゃん……?」
「いぃぃぃいいい!!てえてえですわあ!!!その話で救われる命がここにあります。いやあ、はあ、青柳氏のお兄さん、最高っ!!」
メアちゃんが良い表情しながら親指を立てる。
「うんうん、そうだよね!!京一さんは最高だよね!!」
触発された僕は同調して、良さを改めて噛み締めた。
「何なんだろう、存在自体がエモい!!」
「わかるうう。はああ、理解者が近くにいると良いわ」
僕のママったら、分からず屋。
「京湊の同人誌を描きたいくらい、すこ……」
「それはダメだよ。京一さんは僕達の想像を超えてくる可愛さなんだから僕達が想像できるわけがない。できたとしても、ファンアートだよ」
「そ、そうだね。……そうだ!ファンアート!!」
「え?」
「青柳氏、ウチでファンアート制作しませぬか?」
放課後、京一さんとの時間を削って、連れてこられたのは美術室。僕にはアートってものは、からっきし分からない。美術の成績は安定の二だった。
「無理。帰りたい……」
「お兄さんに愛情たっぷりの絵をプレゼントすれば、きっと喜んでくれるはずですぞ!」
「僕の画力で京一さんの麗しさを表現しようだなんて、もってのほかだ」
「どんな拙い絵でも、その頑張りは伝わる。絵を見れば分かる。俺の絵、見てくれるか?」
「うっ、上手いじゃん!!」
「あ、ありがと……」
京一さんの写真を見ながら京一さんを描く。京一さんに会いたくなってきた。ウズウズする。
「やっぱ帰る!!!」
描きかけの絵を持って、僕は美術室から逃げ出した。玄関を開ける。実物の京一さんは絵に描いたように綺麗で、僕の絵は京一さんじゃない。このどうしようもない好きをどう表現しようか?
「湊、おかえり」
「ちゅっ、ただいまです」
キスだけじゃ、物足りない。常に貴方で満たされていたい。貴方を感じていたい。僕の世界は貴方を中心に回っていると言っても過言ではない。だから、貴方もたまには僕の方を見て?そんなことを考えながら、漫画を眺めていると、京一さんに漫画本を取り上げられた。
「俺以外で、キュンキュンしたらダメ」
あ、キュンを通り越して、ギュンって心臓を持ってかれた。可愛すぎるわこの人。
幼い頃から俺は性欲はある方だと自分では思っていた。だけど、湊がいるとそれが狂ってくる。湊は毎日毎時毎分毎秒、俺のことをそーゆー目で見て、そーゆーことを求めてくる。俺は週二くらいで、ゆったりとできれば理想的なんだが、それも叶わぬ夢。バイト終わりに精力剤を買って帰る日々が続いている。
「氷野さんは、これからが本業ですもんね〜!」
とあかりに揶揄われるのにも慣れた。精力剤のためにバイト一時間増やしたんじゃ意味ないよな。と思いながら、買ってすぐのそれを煽る。
「あー、不味!」
「でも偉いですよ。ちゃんとここで飲んで、ちゃんとここで捨てて」
「俺、幼稚園児だと思われてる??ただ湊に見られたら、クソ病まれそうだから隠してるだけだよ?」
「それが偉いんですよ。彼氏想いですね!」
「別に。そんなんじゃ……」
だって、こんなのに頼らなくても抱ければ、もっと理想的な彼氏だろ。こんな陰でコソコソやってんの、みっともないだろ。勿論、湊のことを愛しているけど、俺の愛情は性欲には繋がらない愛情なんだ。だけど、自慰行為の延長線上のように湊とそーゆー行為をしているんだから、もう何も言えないね。
「京一さんって、何で僕で勃起できるんですか?」
「は?好きだからだよ」
「脳内で女の子の裸とか胸とか想像してるんですか?」
「ううん。お前、顔可愛いじゃん」
「でも身体は男の子だし……」
「それに俺、脚フェチだから」
「知ってますよ。僕の太ももはどうですか?」
「ちゅっ、ちゅっ、ちゅっ……」
湊の脚を持って、内太ももに何度もキスをする。段階的に股の方へと唇を移動させると、
「あっ、そんなとこ、キスされると……」
湊は興奮した様子で、顔を真っ赤にする。パンツに染みできちゃうかもね〜♡
「ふふっ、これが答えだよ」
「ああもう焦らさないで。早く抱いてください」
自分でパンツを下ろして、我慢の限界のように、自慰を始める湊の手を止める。
「まだ愛撫してたいんだけど、ダメ?」
「はあああ、いーよっ♡♡」
指輪を外して、湊の中に指を入れる。湊の熱い体温に包まれて指が溶けそうだ。トントンと少し動かしてみると、湊は飛びそうな顔して身悶えするんだ。
「指二本、入るかなあ?」
聞いといて何だけど、同意なしに容赦なく入れて、ぐちょぐちょにかき乱す。
「あ、いやっ!イッちゃう!!イッちゃうからあ……」
出入口がキュンキュンしてる。まじでイきそーじゃん。可愛い。
「嫌?」
抜いた指が糸を引いて、まだ繋がってたいって言っているみたいだ。
「嫌じゃないけど、京一さんのでイかせてください」
あ、キュンってきた。これが愛し合うという行為ならば、何と汚らしくて素晴らしいんだろう。
「酒入れていい?ここに」
「ひぇっ?……」
ドン引きされてる。そりゃそうだよなあ。上の口から摂取しても一瞬で酔うのに、直腸に直接は死ぬんじゃない?
「嘘だよ、俺が飲むだけ。だってその方が、俺、頑張れちゃうからさあ♡」
気持ち悪いぶりっ子を、グビっと一口飲んでから、何事も無かったように挿入する。俺の身体が火照って余計にトロットロだ。一発で目がチカチカして、もう動きたくなくなった。三発目は、惰性で突きまくって、湊を傷付けながらもイかせた。もう何も出ねえ。もう何もしたくねえ。死にてえ




