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人間性ではたぶんモテてると思ってる奴全員ブス

「氷野さん、イートインスペース使うんなら消費税10パー取りますよ」


「どーせ国に納めんのによく取り立てる気になるね。バイトしてんだからショバ代くらいまけろよ」


と昼下がりのコンビニで、下ろしたての新品の服にお気に入りのアクセで防御力高めて、酒も飲まずにただ水だけで居座る迷惑客。ついでに、スマホの充電はさせてもらう。


「ショバ代って、何処ぞのヤクザですかぁ?それに、今日は何だかいつもと雰囲気違いますね」


「ん?格好良すぎて見蕩れちゃった?」


「え?何て?」


と俺に恥かかせるのも、お手の物。俺が懲りずに上辺でこういうこと言っちゃう変なテンションになるのが悪いんだけど。


「あーもう、日本語不自由。喋りたくねえ」


コミュニケーションを図ろうとはするものの、意思疎通という着眼点では、言葉選びのセンスが壊滅的で劣等生。本当にコミュ障なんだと実感する。寡黙なだけがコミュ障ではないと思う、くだらない思考そのワン。


「とか言いつつ、喋っているのは日本語。っていう」


「あはっ、馬鹿にしてんね〜!」


「いや、事実を述べたまでで……」


そのタイミングでその事実を述べることが馬鹿にしてるってことになるだろ。って思いつつ、その言い訳に苦笑いをして付き合っていると、どんどんと不安が増してきた。


「ははは……あのさ、今日の俺、本当に格好良い?」


「はい?」


「あかりだから言うんだけど、俺、これから湊と遊ぶんだよね。だから、格好良く見られたいっていうかぁ……あはは、まじダセェな。ごめん、今の無しで」


「好きな人に良く見られたいだなんて、当たり前じゃん!!それをダセェだなんてヘラヘラ笑ってるアンタの方がよっぽどダサい。湊くんなら頑張って格好良く見せてる貴方を笑ったりだなんてしない……です」


俺達の物語の一部始終を知っている彼女が言うんだ。湊の話をよく聞いて貰ってるし、湊本人とも仲が良い。そんな彼女が、熱を込めて話してくれたんだ。合ってるに決まってる。


「ありがとう、あかり。勇気貰ったわ」


「いや、そんな、私なんかが一丁前に説教くさいこと言っちゃって……」


「あははっ、なんか俺に似てきた?その、言いたいことはその場で言っちゃう感じぃ」


って明朗にわざとらしく煽ると、


「貴方が私の気に障るようなウジウジしてるからですよ」


とまたチクチク攻撃された。そのチクチクが通常運転だから、安堵から笑えてくる。


「みーなとっ♡」


姿勢は綺麗だが何処か気だるげに歩く彼を横から抱き締める。そのビクッとする振動がこの腕で感じられるそれだけでもう幸福。


「きゃ、きょ、京一さん!!?どうしたんですか?!」


舌噛んで死ぬなよ?ってぐらい噛んでんの可愛い。


「これから湊とデートしたいなぁ、って思って」


「え!??でも、僕、制服ですし……」


「その湊が良いの。学ラン姿の湊、結構好き、なんだよ?」


ああああああ、自滅。懐かしい、この感覚。言ってしまった後に反芻して冷静になって後悔していく感じ。


「ええっ!?あ、じゃあ、もう、脱ぎません!!」


「あははっ、それはそれで惜しいなぁ?」


この湊のテンション高ぶりまくって、極論でしか考えられない思考回路になってんのも、可愛すぎる。俺の惜しいの意味ちゃんと理解できてるかな?


「やば……ううっ、ああもう、やばい……めっちゃ格好良い。京一さん、僕すっごく会いたかったんですよ?」


感動の再会を噛み締めて味わって、涙目になる君が俺も恋しかった。ずっと会うのが不安だったけれど、会ってしまえばもう距離はゼロ。


「俺もすっごく会いたかったよ♡♡」



京一さんにドッキリを仕掛けられた。何気ない帰り道をとぼとぼと何となく歩いていると、京一さんが突然襲ってきて、僕は舌を噛んだ。というか僕の彼氏、イケメンすぎるんだが!!?京一さんの写真や動画を見返すのが日課になっていた僕は想像を超える実物の格好良さに慄いていた。


「京一さん、クレープ食べませんか?」


「良いよ。どれにする?」


といつもよりも少し優しい口調で僕の我儘を聞いてくれる彼。心臓が痛いほど高鳴ってるから、僕はまだ彼を直視できないでいる。


「チョコバナナで、お願いします……」


「わかった、買ってくるね♡」


いつもよりも僕に好き好きアピールしてハート飛ばしてきてくれるのが、ああもう心臓持たないって!!京一さんがチョコバナナのクレープを一つ買ってきてくれて、人混みを避けた路地裏でそれをシェアして食べる。と言っても、ほぼ僕が食べる。


「最近は、どうでしたか?」


「どおってことないよ。毎日がつまらなくて、毎日が最高」


って彼は冗談っぽく普通を恨んで笑うんだ。毎日がつまらないは僕にとっては嬉しい。


「少し痩せましたか?食事は……」


「ふふっ、頑張って食べてるのになぁ?」


吉岡さんに賄いを京一さんに持って帰らせるようにして欲しいと頼んで、食育に手伝ってもらっている。だけど、やっぱりそれだけでは足りないようだ。その細い手首を掴んでそのことを確認し……、


「これ、僕が付けた傷跡じゃないですよね?」


赤い傷跡、何本も重なって。血液が染みた赤い糸、その結び目には僕がいれば良いのに。切らないで、切れないで。バッと貴方がその手を引っ込める。


「……ごめん、何でもないよ?」


笑顔を繕い、僕を欺こうとする、詐欺師に向いていない彼は、何事も無かったように違う話題を探して、次々にああだこうだ喋っている。


「京一さん、ダメです。貴方が自分を傷付けるくらいつらくなるのなら一緒にいましょうよ。僕がたーんと甘やかしますから、ね?」


僕は骨ばっている彼の細い腰を抱いて、説得を試みた。彼は僕の顔を一見して、目を逸らして、また見て、


「生クリームついてるよ」


って意地悪そうな笑顔を見せてから僕の口端を舐める。とっくにクレープは食べ終わっているから、ずっと口端に生クリームを付けてたってこと。は?


「そういうのは、もっと早く言ってください……」


僕が滑稽な顔で真剣に説得しようとしているという滑稽な図ができてしまって、その滑稽さから説得力が格段と下がってる。とにかく、今は恥ずかしい。


「嘘。生クリームなんてついてなかったよ」


「え?それって、どういう……?」


「あはっ、どういうことだろうね?」


ああ、貴方がそうやって僕を誑かして遊んでいる態度が大好きだ。


「じゃあ、京一さんの身体中には大量の生クリームがついてますよ?」


「あははっ、湊はだ〜めっ♡それを使えるのは発案者の俺だけなの、著作権マークついてるのっ!」


可愛いいいい、可愛すぎるんだけど♡♡


「ふふっ、そんなの狡いじゃないですかぁ♡僕だって、貴方にキスしたいのに……させて、くれませんか?」


僕は貴方の胸に擦りついて、身体同士を艶めかしく擦りつけて、上目遣いで貴方をあざとく誘った。


「……ダメ」


と彼は目を泳がせて困惑している顔を見せると、僕の唇を奪ってきた。僕が一方的にキスされる形で、こんなに京一さんから求められたことなんて初めてだった。耐性が薄れてきていたところに、いきなりぶん殴られるような破壊力。意識、飛ぶ。


「んはぁ……やば、立てない……」


京一さんに抱き締められるように支えてもらって、触れ合うと僕と同じくらい熱のある京一さんを感じて、本当に僕のこと好きなんだって。そう思う頭弱い瞬間が幸せ。


「ご馳走様」


彼は「もうしないよ、ごめんね」っていう感じで、僕が触れているのが気に触るみたいで、僕を遠ざけようとしたいようだけど、僕が傷つかないように気を使ってくれているみたいで、ただ冷たい風に冷まされている。


「京一さん家に行きたい」


と恐る恐る声に出して言ってみた。今なら本当に抱いてくれそうだから。


「それこそダメだよ、理性が死ぬ」


京一さんは理性があるのが人間たる所以と言わんばかりに、本能に支配されるのを恐れている。それじゃあ、もう一生、性交も自慰もできないじゃん。ああ、そっか。僕が京一さんの理性を殺せばいいんだ。学ランの第一ボタンを開けて、胸いっぱいに彼の匂いを吸う。何故か涙が出てきた。


「京一さん、もう離したくないです。離れられないです」


夕方五時に鳴る地域の防災アナウンスが、僕の帰りを急かす。僕がシンデレラだったら、王子様の前でボロ着で醜態晒して、死んでしまいたくなるだろう。


「気をつけてお家に帰りましょう、だってさ。家まで送るよ」


貴方の紳士の対応が、僕の胸を苦しめる。僕は貴方の香りに包まれて、貴方と触れ合っている時が幸せなのに……これって僕がおかしいの?


「僕の居場所は貴方の隣以外にありません。貴方から離れてしまうと、僕の生きている意味が分かんないんです」


「あははっ、それが正常なんだよ。凡人に生きている意味なんてなくて、ただ惰性で生きている合間にある『生きてて良かった』を必死にかき集めて、狂わないように生きているんだ」


「そんなの、つまんないです!!」


そうやって僕が声上げて反論すると、貴方は目を真ん丸にして、その後でぷっと吹き出して、ツボに入ったように高笑いした。


「そうなんやけどなぁ、俺は天才でも狂人でもない。ただの凡夫。人生がつまらんのは必然で、息が詰まるんのは当然じゃん」


笑って流れる涙を指で拭きながら、ニヤついて苦しそうに笑ってる。それがなんとも、可哀想。


「貴方は天才で狂人で怪物で、僕の恋人です。そんな人間が、つまらない人生を幸せだと誤魔化して笑ってやり過ごして良いはずがない。もっと刺激的で熱狂的でディオニュソス的で楽しいことをしましょう」


僕は貴方の両頬に両手を添えて、僕の顔の近くまで持ってくると、一瞬たりとも目を逸らさずに、貴方を洗脳しようと試みた。


「あーーー、狂っちまいそうになる」


ロボットみたいに、あーーー、と読み込みエラーを起こした貴方は、自分の頭を叩いて再起動。


「そういう貴方と一日でも、いや、一時でも長く共にいたいです。優しい嘘をつく貴方では、僕の調子が狂います」


「じゃあ、蹴り殺してあげようか?」


と意地悪な嘘を言う貴方は、僕の性癖にぴったり合って、発狂。


「ん〜〜っ、フル勃起しちゃいましたぁ♡♡」


と僕は貴方に甘えるように抱きついて、固くなったそれを擦り付けると貴方は、めちゃくちゃ嫌そうな顔をしてドン引きしてる。


「去勢した方がいいんじゃね?」


なんて最高な彼氏なんだ!



バタン、誰もいない部屋。虚しさと静けさと汚さを兼ね備えているこの部屋は、家賃四万円。バストイレ別(?)。壁は薄い、床は焦げた。俺と大家さんしか住んでいないボロアパート。湊がいる時は「若い子は盛んね〜」なんて冷やかされたが、もうそれもない。住みたては隣りに無口なおっさんがいたが、もうその人もいない。……寂しい。

布団に寝っ転がって、湊、可愛かったなぁ、なんて思い出してはムラムラとしてくる。ああ、抱きてぇ。ズボンを脱いで、パンツの中に手を入れて、湊とする時のことを妄想しながら手を上下させて、シゴいていく。


「湊ぉ♡……やっ、あ、ダメ……〜〜っ!!んんっ……はぁ、湊、みな」


声を抑えるために人差し指を噛んだ。こんなの無意味だ。わかってるのに。ヌルヌルになった左手でまた快楽を得ようとして馬鹿みたいだ。湊の名前を呼んで、自分の指と舌を絡めて身悶えしながら遊んでる。気持ち悪すぎて、この行為をしている自分に嫌気がさす。唾液と白濁した液体が床に垂れる。指を喉の奥まで突っ込んでイラマチオ。胃液と涙も床にこぼれ落ちて、倦怠感から掃除に手が伸びない。床を這おうにも両手はヌルヌルのベタベタで気色悪い。ただ横向きで赤ん坊のように縮こまって床に寝転がっている俺は、いつになったら、露出している下半身をしまえるだろうか。


一時間後、賢者タイムのピークが過ぎ去り、脳内のくだらねえ思考遊びもやり尽くしたので、倦怠感を携えながらも渋々頑張って起き上がって、まずは手を洗う。もうカピカピに乾いて、俺の手の中に染み込んでしまったようなそれを俺はまた小一時間かけて洗うんだろうか。時間と水道代の無駄。でも、その体液の汚さが指に染み込んでいるのはもっと嫌。元々は俺の体内にあったのに、外に出てしまうとそれはもう俺のじゃないみたい。そんな風に湊との共依存を終わらせて、湊のことを正常に気持ち悪いと思いたいのに、その気持ち悪さも愛おしいなんて、やはりどうかしている。いいや、夢から醒めて「気持ち悪い」と罵られるのは俺の方か。


「氷野さん、これお願いします」


ぼやけた脳みそでルーチンで仕事して、ため息をついては安い時給のバイト募集の貼り紙を睨む。だりぃ。仕事してるフリ仕事してるフリ、最初っから俺は仕事なんかできちゃいない。ただ仕事してるフリ頑張っているフリを見せびらかして、給料泥棒しているだけだ。あかりなんか俺の数倍は役に立ってんのに、俺よりも少し時給が良いだけという待遇の悪さ。サボればいいのに、そして人件費だけが嵩んであのクソ店長と共にこの店舗潰れればいいのに。俺は仕事では犯人なクセしてサボるのは一人前。あの棚まだ直す金ねぇのかよ。ごめんなさい。


「あかり、ごめん。ちょっと一服してくる」


「ああ、はい……」


バックヤードから店を出て、換気扇がうるさい隣りで煙草の煙を昇らせる。俺は何で生きているのだろうか。


「あああ……ああ……ああああ……ああ」


俺は壊れたロボットみたいに「あ」だけを繰り返し、泣いていた。湊に会えないことのストレスを恒常的に孕んでいる俺の身体は、誰もいない自室で湊の名を呼んでいる。こうやって働いて疲れて帰っても、あの部屋には誰もいない。お帰りなさいのキスもない。何のために働いて何のために頑張って何のために生きている。その答えは既に分かっているけれど、その無機質な答えでは俺のこの悲憤慷慨を抑えきれない。湊に会いたい。ぐちゃぐちゃになるまで愛されたい。……死にたい。


「氷野さん……大丈夫ですか?」


「え、何がぁ??」


「目、真っ赤ですよ」


鏡に映った俺の顔、最高にブサイク。こんなんじゃ接客なんかできやしない。馬面でも鹿くんでも猫かぶりでもしていたい。


「ああこれ、ヤニカスだから。心配しないで」


「だから心配してるんじゃないですか。煙草、やめたらどうですか?」


「……やめらんないよ。早死したいのっ!」


と陽気に言うと、横から誰かに抱きつかれた。


「ごめんなさい、ルール違反なのは分かってます。けど、貴方を死なせたくないです」


「湊くん!??」


ああ、最悪。目を瞑って、このまま眠ってしまいたい。夢の中で湊と遊びたい。身体の触れ合い、愛情表現の一つであるけど、それが愛情とは限らない。確かめたくない。俺は愛情が分からないから。


「俺、仕事中だから。帰って」


「貴方が号泣してたの知っています。店に入るの躊躇ってたら、貴方の煙草の匂いがしたから」


俺の意志に反して、湊はぎゅっと抱きしめてきて、俺にしか聞こえないような声でそう囁いた。湊に覗き見されていた。格好悪。


「だから、何?俺は、仕事しなくちゃいけないの」


「じゃあ貴方の仕事が終わるまで、外で待ってます」


とコンビニの外に出て、店内からは見えないところに身を隠された。……仕事終わり、湊と遊ぶ。今はそれしか考えられなくて、仕事が手に付かない。


「湊くん、何て?」


「俺の仕事が終わるまで、待ってるって」


「そういうこと。じゃあもう退勤していいですよ」


「いや、でも……」


「どーせ暇ですし、隣りでずっとそわそわされてると、こっちが落ち着かないんですよ」


とからかわれた。後一時間で退勤。やるべきこと片付けたし、この時間帯はまじで暇。


「ああじゃあもう帰るけど、忙しくなったらすぐ呼んでいいから、というか、呼べ」


「あはっ、文句言われそうだから嫌ですぅ」


「文句言わねぇよ」


「でも絶対にイラつくじゃん。せっかく湊といい感じだったのに、って」


下っ手くそなモノマネだが、俺が言いそうなことを的確に言っていて、それは笑えた。確かに全裸の状態で電話来たら、最高にイラつく。


「ふふっ、じゃあやっぱ帰んない!給料泥棒しよっ!」


「えーっ、湊くん可哀想ですよ?」


「可哀想じゃないよぉ。アイツ、焦らしプレイ大好きじゃん♡」



京一さんを待ち続けて、おそらく三時間。いや嘘、一時間。僕は単語帳を三周していた。煩悩が一〇八個、僕が覚えた英単語は八〇〇個。煩悩を数で圧倒して殺す。中学修了レベルと言われて渡されたこの単語帳。貴方と洋画を字幕なしで見るには、こんなんでは太刀打ちできない。


「crazy おかしな 気の狂った I'm crazy about her. 私は彼女に夢中だ。I'm crazy about you……私は貴方に夢中……」


この英文を京一さんに言っている自分を想像して、照れくさくなってきた。ああ、言えないよ。絶対に、言えないから、何英文作って練習しちゃってんの!?馬鹿馬鹿馬鹿、僕の馬鹿。I'm foolish, stupid and a sucker for you. ああああ、訳わかんないよ!!勉強になんないって!!


「湊、お待たせ」


「うわっ、あ、やば……」


疲れた脳に京一さんが天使すぎるんだが!!??


「おぉ、単語帳やってたんだ。偉いねっ♡」


無理、好きぃ♡♡頑張って良かったあ♡♡♡


「京一さんはお仕事、お疲れ様です」


動悸が激しすぎて、このままでは死んでしまうので、京一さんを直視できずにそうやってたどたどしく伝えた。


「ん、」


すると、彼は僕の顔をまじまじと見つめてくる。


「え?」


「お疲れ様のキスは?してくれないの?」


「あ、、ああっ、死、しますっ!!」


何このデレ、超絶可愛いんだけど!!?一瞬、心臓止まった。彼に軽く口付けをすると、僕の煩悩が一〇八〇個はゆうに溢れ出てきて、英単語全部忘れた。


「ふふっ、ありがとう。あのさ、俺ん家で一緒に映画でも見ない?」


やばやばやばやばやば、京一さんからのお誘い!??え……これ、口説き文句でしょ??だとしたら、そういうことだよね?そういうことで良いんだよね!?待って、本当に、やばい、息できない。


「はい、見たいですっ♡」


あーーー、ドキドキが止まんない。でも止まったら止まったで心停止で死ぬんだけど。映画じゃなくて京一さんのヌードが見られるってことで解釈合ってる、よね?ああああ、鼻血出そう。


このアパート、京一さんの部屋、そんなに月日が経ってないのに懐かしさを覚える。ここが僕のアナザースカイです。って、言いたいいい。


「湊、何か飲む?あっ、レモネード貰ったんだ。断酒用に、って」


「じゃあ、それで。京一さんは?」


「俺はぁ、お酒飲んじゃダメ?」


「良いですよ」


飲みすぎないように、僕が見張ってますから。そして、京一さんが最近見ている海外ドラマを一緒に見て、一時間。一話分が終了した。その間、京一さんにどういう内容で何をしているのか色々と教えて貰って、この一時間で僕は十五話分くらい知識として吸収した気分だ。


「ふふっ、湊ぉ♡」


ほろ酔い気分で京一さんが僕にくっ付いてきて、僕の頬にいきなりキスしてきた。やば、喰われる。恐怖か恐悦か、身体が火照る。この五月蝿い心臓を抉りとって欲しい。


「あはっ、何ですかぁ?」


「ああもう離れてからずーっと、こうやって湊にキスしたかった。俺はとても君が恋しかったんだよ?」


と髪を撫でられながらに問いかけられると、蛇に睨まれるの如くドキッとする。僕は京一さんのお人形さんになったみたいに。


「ほろ酔いの京一さんは素直で可愛いらしいですね♡♡」


「ううん、湊が俺の穢さも醜さも全部愛そうとしてくれるから、俺は俺のままでいられるんだよ。湊以外には見せられない。だから、お願い。俺を否定しないで、俺を……愛して?」


京一さんは僕を抱きしめながら、欷歔する。僕のことをがんじがらめにして、大好きじゃん♡♡


「そんなに抱きしめなくても、僕はどこにも行きませんよ。貴方が求めるのなら、僕はずっと貴方の傍にいます。大丈夫です、貴方は穢くも醜くもない。子供のように素直で純粋で、キラキラしてて、僕の理想の彼氏です。愛しています」


京一さんが僕と目を合わせる。次の瞬間に、ぶわっと涙を溢れさせて止まらなくなって、大粒の涙にその笑顔がキラキラしてて、宝石のように貴方の周りで煌めいている。


「ううっ……好き、愛してる……」


貴方の涙をすくう。その距離に僕がいられること。貴方の瞳に写るのは、僕だけだ。そして、僕の唇を奪えるのも、貴方だけだ。


僕は床にペタンと押し倒されていた。学ランの第二ボタン以降は貴方が外した。その手つきや僕への扱いが魅力的であればあるほど、貴方が何人も僕以外を抱いた証拠で、愛憎の摩擦熱で僕のナカは爛れてしまう。


「I’m crazy about you」


吐息と吐息の間にその言葉を忍ばせた。貴方は母語と同等のスピードでそれを理解して、


「Drive me crazy」


とサラッと格好良いフレーズを口にしてしまうのだから、この英文の意味がわかんなくても、僕は海外トップスターに出会った時のように、心底、彼に見惚れてしまってるんだ。


「日本語で、聴きたいです」


「あははっ、分かってんだろ?」


「いや、」


「あーあー、分かったよ……もっと俺を狂わせて♡♡」


ごめんなさい、僕はヤケクソで愛を煽ってバカ笑いする貴方が大好きなんだ。僕はご褒美に(?)、いやそんなんじゃない、とにかく"僕が"べろっべろにキスしたかったから、した。キスだけでイカせるには、と今まで何度も模索した。抱き枕を相手にシュミレーションして、京一さんはそんなに簡単に攻略されないと葛藤した。


「京一さん……んっ、気持ち良い……♡」


まず第一に、京一さんは耳が弱いから、僕は彼の耳元で練習してきたエロい声で彼の欲情をかきたてようとした。京一さんは余裕そうな笑顔を見せているので、失敗。その次に、彼の耳の中に舌を……って、舐めた瞬間、彼が吃驚して身を引いて、耳を手で抑えてしまったので、これも失敗。むしろ、マイナス値。


「ごめん……舐めても良いよ?」


貴方は怖がりながら耳から手をゆっくりと離して、その耳に髪をかけた。僕は究極の二択を迫られているみたいにドキドキしてきた。


「……ごめんなさい、僕が悪いんです。貴方が嫌がることはしたくありません」


僕は舌を噛んでから、貴方の横顔を胸の中へと抱きしめた。だけど、下半身は勃起してる。


「ふふっ、スボンは脱がせた方がいい?」


「お、お願い、します……」


膝立ちで勃っている僕は、貴方にされるがまま。ベルトを外され社会の窓が開かれると、ズボンが膝まで落ちた。


「湊の太もも、ふわふわしてる〜♡」


と貴方は僕の裏ももを無邪気な子供のように楽しそうに愛でている。京一さん、僕の脚フェチ。すると、どんどんと貴方の手が上へとのぼってくる感覚があって、僕の体温もどんどんと上へとのぼってくる。


「ちょっ……京一さん??」


貴方の手が僕のお尻を一揉み。パンツのゴムに指を引っ掛けたかと思えば、それを引っ張って離してパンッと音がする。もう子供の遊びなのか大人の遊びなのかも分からない。彼はえへへってずーっと笑っている。そして僕を自分の腰の上に座らせると、いつもみたく甘えてくるように僕にキスしようとしてしなかったり僕がキスしようとしたら避けたり、とにかく焦らしプレイしてくる。


「あははっ、チューしたい?」


と酔ってうねうねしながら首を傾けて、悪魔みたいな笑顔で聞いてくる。


「したいに決まってるじゃないですか」


僕は一直線にそう言って、今度こそ貴方にキスしようと手を伸ばした……その手を貴方に引かれて、キスされてしまった。


「ふふっ、楽しいね。湊ぉ♡」


ああもう、好き♡♡貴方に遊ばれるのは楽しいよ、僕は貴方の玩具だから。それからも貴方は、すぐには舌を絡めようとはせずに、鼻にキスしたり唇に甘噛みしてきたり、とにかく楽しそうに長ーく遊んでくれる。


「えへへっ、いっぱい僕で遊んで♡」


そしてゆったりと完膚なきまでに僕の咥内を味わい尽くしてくれるんだ。貴方が僕の腰を支える手。その手が僕のパンツの中にすっと入り込んできて、お尻の割れ目を指でなぞる。やば、変な声が出そう。それに、さっきから京一さんの腰がキスするタイミングに合わせて動いていて、僕のと擦れている。あっ、京一さんも勃起してる。……どぴゅ、っと僕の何かが溢れ出た。


「湊、イッたの?」


京一さんが僕のパンツの中身を確認すると、案の定ヌルヌルで糸引いてて、やば引かれたって思ったら案外笑うのを堪えたにんまりしてて、僕もつられて笑った。絵空事だと思ってた、って貴方は言うけど、その絵空事を貴方が叶えてくれたんだ、と僕は思う。


「京一さんのキスが、エロすぎました」


あのキスをされたら100人中100人が「本当に私って愛されてるんだ」って実感する。それくらい僕のことを気持ち良くしてくれるキスだった。


「湊が、」


「あ、タイミング逃しましたね」


京一さんはイキそびれていて、まだ半勃起してる。


「少し、唇だけ貸して」


彼は自分のパンツの中に手を入れて、僕にキスをしながら自慰行為をしている。その様子に僕はまた興奮してきてしまって、いたちごっこ。


「京一さん、手を貸してもらえませんか?」


京一さんに咥内をまさぐられて、顔、身体、脚を順々に触られて、僕は前を触られるだけじゃ物足りなくなってきて、そのゴツゴツした細長い指で後ろをぐちゃぐちゃにされたらと思うと、ああもう胸の高鳴りが抑えきれない。


「湊、他には?何されたい?」


賢者タイムの京一さんが僕を気持ち良くしてくれようと、事務的に聞いてきてくれているのにも関わらず、エロ漫画脳の僕にはそれが言葉責めされているようにしか聞こえなくて、濡れた。


「指……僕のナカに、入れて?」


あーーー、今すぐにでも腕切って土下座して蹴りまくられて死にたい。

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