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クリスマスも正月も誕生日も何が愛でたいのかわからねえ

「京一さん!メリークリスマスです!」

「京一さん!あけましておめでとうございます!」

「京一さん!誕生日おめでとうございます!」


「はいはい、おめっと」


毎度同じリアクションをした。ただ騒ぐ口実が欲しいだけだろ。ただヤる口実にしたいだけだろ。何がめでたいんだ、めでたいのはそのお花畑脳みそだ。


「何が欲しいですか?」


「精神安定剤」


「いつも服用しているじゃないですか」


湊に笑われた。あの湊ですら誕生日にはケーキやらプレゼントやらを貰っている。なのに、強欲な俺は何故こんな機会に何も欲しくならないのだろうか。


「それじゃあ、チューして」


「それもいつも」


「そんなんどーでもいいじゃん!して!」


半強制的に湊にキスさせると、若干の支配欲が満たされた気がした。


「これで良いんですか?」


「あんがと」


湊にプレゼントされるならコンビニで買えるお菓子とかジュースとか、肩たたき券とか手紙とかが良い。とにかく湊に負担にならない程度のものが良い。罪悪感までプレゼントされる気がするから。


「京一さん、僕が大人になったらもっと良いものをプレゼントしますね」


「これ以上に良いものは滅多にないと思うよ」


俺はただ傍に湊がいてくれればそれで良い。これ以上は無くていい。それがもしあったら、湊は満足して俺から離れてしまうのかもしれないから。



「湊、進級おめでとう。中学二年生?」


「はい!中弛みの中学二年生です!」


「あははっ、このお腹もたるんできたんじゃない?」


って京一さんは僕のお腹を触る。まあ、京一さんと一緒に食っちゃ寝してたら、それに、京一さんの食べ残しも食べてたら、やばい、僕はそろそろダイエットしないと。


「気を引き締めて、お腹も引き締めて、頑張ります」


「そっか、頑張ってね」


って僕の肩に手を置いて、顔を近づけて可愛いキス待ち顔されるから、思わず飛び付くようにキスしてしまった。すると、京一さんは獲物が引っかかったというような悪い笑みを浮かべてから、僕の鎖骨を押して、僕を遠ざけた。突き放された。


「京一さん、?」


「プレゼント、とゆーか、俺のもとに湊を縛り付けとくための鎖」


上機嫌に笑う京一さんは自分の首元を指さして僕に示す。僕の首に冷たいものが触れる。あ、ネックレスだ。キスしたときに付けられてた。こんな高そうなもの、僕が貰っていいのかな?と思いつつも、鏡でそれを確認しては、にやけ顔の僕が写る。


「もう一生涯、外せないじゃないですかあ」


「それでいい、そうしてくれると嬉しい」


あ、そうやっていきなり照れる。さっきまで得意げにしてたのに、きっと僕の反応が不安だったんだろう。貴方からのプレゼントに嫌な顔なんかするはずないけどね。



「青柳くん、二年生も同じクラスだね」


このクラスには知っている顔が真城さんくらいしかいない。あとは山田太郎。たぶん教師達も薄々気付いていたんだろう。僕があのクラスのほぼ全員に嫌われていたことを。


「そうだね、引き続きよろしく」


「こちらこそだよ」


真城さんがいるのはとても安心感がある。


「よう青柳。教師に頼まれて今日から友達になった。よろしく」


「よろしく山田太郎」


「高橋だ!お前まじでわざと間違ってるだろ?」


「あははっ、よろしくねカズくん」


「その言い方はやめろ!」


高橋がいると何だか賑やかで面白いと思った。二年生になってからは僕と真城さんと高橋でよく一緒にいることが多くなった。たまに鈴木が貶してくることもあるけど、そうゆう時は高橋が「あんなん気にしなくていいよ」と友達っぽいこと言ってくれるから、本当の友達みたいと錯覚した。


「To be, or not to be : that is the question.」


「青柳、何格好つけてんだよ」


「ハムレットの名台詞なんだけど、汎用性めっちゃ高くない?人生の二択で迷ったときにおすすめする」


「そんな頻繁に人生の二択なんかない、って」


高橋の視線が真城さんを捉える。


「和訳では、『生きるべきか死ぬべきか、それが問題だ。』って書かれてるよね」


「真城さんもハムレット読んだことあるの?」


「ないけど、それは有名でしょ?」


「確かに」


でも僕が和訳を付けるとすると、このままかそうじゃないか、それが問題だ。だって死ぬとは限らないって思いたいじゃん。


「で、青柳はどんな人生の二択に迷ってんの?」


「医者になるか俳優になるか、それが問題だ」


「ふっ、じわるわぁ」


高橋に鼻で笑われた。


「え、何で俳優なの?」


「映画も好きだしドラマも好きだし、それにパパに演技力あるって褒められちゃって」


「父親に褒められたからって、なれるようなもんじゃないだろ?」


誰も僕の父親が誰もが知る名俳優の新田 徹さんだとは知る由もない。


「演技力あることを褒められるって、どうゆう状況?」


目敏いのは真城さん。当たり前のリアクションをするのが高橋。


「えっと、それは……」


自室で自慰行為してるところを父親に見られて、そのままイッた、だなんて言えない。恥ずかしすぎて言えない。しかも京一さんの名前を呼びながら一人芝居の妄想して興奮してただなんて死んでも言えない。


「言いにくいこと?」


「うーん、まあ言いにくいんだけど、僕のパパ、昔ね、役者目指してたらしくて、その夢を僕に託してくれて、期待してくれてるんだ」


「はあ?何だよそれ。大人の言いなりじゃん!青柳はそれで良いのかよ」


「正直、迷ってる。どっちにも良いところがあるし、勿論、悪いところもあるけど」


「青柳くん、それって、取らぬ狸の皮算用って言うんだよ」


「え?」


「医者になる夢も、役者になる夢も、とっても素敵!だけど、なれるかどうかもまだわかんないじゃん。そうゆうのは精一杯頑張って、それからどうなるか考えようよ」


「アリス、そんな医者と役者なんて正反対なもんを両方追ってたら、虻蜂取らずになりかねないぜ?行き着いた先で『こんなはずじゃなかった』って嘆くことがないように考えることは重要だと思うけどな」


狸、虻、蜂……僕の脳内で生物が飛び回ってる。どれを取ればいいのか。こんがらがってくる。


「「青柳(くん)!!」」


「えっ……うーん、僕は、アイスかな?」


「ふふ、何言ってんの?」


「あはは、何か気が抜けちゃった」


僕には狸も虻も蜂もいらないから、アイスが欲しい。



うつ病ってすぐには治んない。どんなに焦ったって逆効果に悪くなってく。どんな暮らしをしてても愚痴がこぼれてく。そんな自分が醜く見えて狂ってく。一生涯、この負の連鎖から抜け出せないように思えて、不安になってく。苦しくなって、頭が痛くなってく。特効薬は死以外には見つかんない。気休め程度のその場限りの「愛してる」の言葉に傷だらけの心臓を縫われるんだ。どう転んでも、転ばなくたって、俺には絶望しかない。酒を飲んだ分、物事の本質が見えてくる。脳によく血液が回るから。触れたもの全てが見えない膜に覆われている。本当は触れてない。分子レベルで見ると、分子間力うんぬんかんぬんで本当は触れられてない。湊とはあんなにも近しいのに触れられてない事実が、考えれば考えるほど虚しくなっていく。幸福を考えるのは馬鹿だ。哲学者も馬鹿だ。何もわかってないくせにわかったフリをして妄想を垂れ流す馬鹿だ。俺は盲目で聾で奇形な馬鹿。って言っても、お前はそんなんじゃねえって不幸ヅラしてんじゃねえって、後ろから刺される。自虐も他害も認められねえ。内心で褒めるのは口先で貶すよりも難しい。綺麗な顔面が欲しけりゃ人形の顔でも貼っつけとけ。その物理的な痛みに物怖じしてるフリして、「そのままでいい」と俺を肯定してくれるのを待っている。


「整形したい」


「ガルバの女ですか貴方は」


「うわあ、歳下(先輩)に精神的攻撃(パワハラ)をされた。可哀想な俺、一マス戻る」


「ははっ、うぜぇうぜぇ。店内誰もいないからって調子こきすぎっすよ〜」


「お前だって、無能店長がいなくて上機嫌じゃねえか」


「まあ?そりゃあ?」


「あと、俺がいるからかっ☆」


「うわあ、ないない。まじウザいわあ。やめてもろて」


ああああ、これは完全にミスった。調子こきすぎて、あからさまな悪ノリした。気持ち悪ぃ。酒が欲しい。


「俺がさ、二重になったらどう?」


「えー?想像の範囲外なんですけど。湊くんは何て?」


「んーーー、似合わなくはないんじゃないですか?ってさ」


「それ絶対にして欲しくないやつですよ」


「お前は?」


「私は、別にどっちでもいいですけど、その目付きの悪い氷野さんが見られなくなるのは、少々寂しい気はしますね」


俺の顔なんて、気持ち悪いだろ。歪んでて醜くて、証明写真なんて、一回人殺してます感出てるし。あはは、性格がそのまま顔に出るんだな。


「ごめん、気ぃ遣わせた」


「何も、本音ですけど」


「目付きの悪い男は、好き?」


俺は嫌い。大嫌い。こんな氷野 京一郎、気持ち悪くて仕方がない。死んでぐちゃぐちゃになって、アメーバみたいな、人間だと認識されない形状になればいい。何でこんなにも醜形恐怖の呪縛から逃れられないのだろう。俺が俺で愛せないものを誰も愛してくれないからだろう。


「……さて、仕事しましょうか」


そう言ってはぐらかされんのも、こっちから目を意図的に逸らすのも、慢性頭痛と同じように死なない程度に痛む。



「はあ?どっからどう見ても成人してるだろ。お前、目ぇ見えてんの?」


年齢確認ボタンを拒否する客が現れた。普段の京一郎ならば、悪態ついてボタンを代わりに押してやるのだが、今日の京一郎にはそれができなかった。


「それじゃあ、お客様。年齢確認してもいいですよ確認ボタン使用カードの提示をお願いします。ご提示いただけないのでしたら、列の最後尾にお並びください」


淡々と無駄なく舌を巻くスピードで相手を捲し立てる。京一郎の脳内には行き止まりの憤りがあった。


「はああ?お前何言って」


「はいはい、お話は後で。次のお客様ぁ」


そのクズ客の袖を引っ張って、レジ前から退かした。


「おい、店長呼んでこい!!」


棚卸し中の彼女にその男は怒鳴った。秩序を乱すわ、怒鳴る相手を間違えるわ、俺の怒りを買うわ、あああああ、てめえウザってえんだよって一回でいいから蹴り倒したい。


「私が店長ですけど、何か?」


おっ、随分と強気に出たな。胸張って立ち上がったけど大丈夫かな?


「え、まじ?いや、あの店員なんなんだよ!ふざけてんのか!?」


「彼はふざけてなんかいません。お客様が営業妨害されたのが原因ではないでしょうか?」


「はああ?」


「故意に会計を遅らせる。店員に対して怒鳴る。これは立派な威力業務妨害ですよ」


かっけえ……やっぱ、彼女かっけえよ。尊敬する。


「てめえ」


と彼女の胸ぐら掴んで、手を振り上げる姿。目にした瞬間、脊椎反射のように身体が動いて、レジを飛び越え、そいつの腕を掴んで力一杯首を絞めた。


「……堕ちろ」


「京一郎やめやめやめ!!やばいやばい死んじゃうよ!!」


彼女の焦る声が聞こえてきて、パッと力が抜けた。膝から崩れ落ちる客。……やべえ、冷や汗が止まらねえ。


「大丈夫?怪我してない?」


とりあえず彼女に問いかけてみた。


「私じゃなくて、この人……」


「げほっ、ごほごほごほ、あ、ああ」


はあああああ、良かったあああ。息してんじゃん!!


「じゃ、あとはよろしく」


颯爽とレジ打ちに戻った京一郎。あの客が「二度と来るか」と捨て放った言葉に中指を立てた。


「京一郎さん、あれ、ありがとうございます。助かりました」


レジを捌ききったところで、わざわざ礼を言われた。


「いや、俺もついカッとなって、あんなことになるとは思わなくて、怖い体験させて、ごめん」


「ふふっ、何で貴方が謝るんですか?」


「だって、そもそも俺が冷静に対処してれば、こんなことにはならなかったし、胸ぐら掴まれることもなかっただろうし……」


「助かったことには変わりないですよ。とゆーか、あの客がアタオカだったんですって」


「……ふふっ、ごめんね」


不甲斐ない情けない、京一郎。彼女に気を遣わせてばかりで気が置ける気後れする。


「また謝るう、もっと、こう」


「何?」


「あーあ、私がぶりっ子で可愛い姫だったら良かったです」


「あはっ、どうゆうことだよ」


「そしたら、イケメン王子様に抱きついて『怖かったよぉ♡』なんて猫なで声出せるじゃないですか」


「やっぱ怖かったんだ?」


「意地悪っ!」


そうやって言ってくるのが可愛くて、ポンポンと頭を軽く撫でた。すると、目を細めて笑うから、ちょっとした俺の成功体験になった。その後で、貴方は王子様とはかけ離れてますって言われたけど。


「俺は好きだよ、王子に媚びないお姫様」


そしたら、下民の俺がお姫様と遊べそうじゃん。


「あ、あれですか?俺に惚れないなんて『ふっ、おもしれー女』って奴ですか?」


「何でそうなんだよ、ふふっ、おもしれー女!」


「ああもう、いじんないでくださいよ〜」



どうしようどうしよう嫉妬で狂いそうだ。京一さんとそのバイト仲間の吉岡さんが楽しそうに会話してるだけで、脳内で何かが壊されていく気がするんだ。僕の胸が引きちぎられそうなんだ。その二人を監視するべく、僕はイートインスペースの一角を借りて勉強をするんだ。店内には京一さんの好きな音楽が鳴り響いて、たまに口遊ながら仕事する京一さんを見られるだけで癒されるんだ。だけど、なんか今日は一段と二人の距離が近い気がして、嫌になっちゃう。


「湊、まじで邪魔。離れろ」


これで三回目。三回も言われたら離そうと思ってたけど、そんなには言ってこないだろうと高を括ってたから、傷つきはしないだろうと思ってて、実際はああでとても傷ついた。


「……ごめんなさい」


しょぼしょぼして席に着いても、まったく勉強する気になれない。京一さんは僕から心移りしてしまったんだろうか。僕は京一さんに捨てられて、あああああ、嫌だよ。嫌だ。僕は京一さんがいないと生きていけないのに。僕が京一さんを働けるように、生きていけるように、ずっと支えてきたのに。狡いよ、京一さん。


「湊、捗ってるかあ?」


京一さんが机に突っ伏している僕に重なるようにして抱きしめてきた。耳元で貴方の吐息を感じる。


「いいえ、狡いですよ。貴方が『離れろ』って言ってきたんじゃないですか」


「ごめんね、忙しかったからさ。あはは、疲れたあ」


「京一郎さん、サボタージュしないでくれませんか?」


「あとちょっと。ああ湊、んーーーっ!!」


京一さんが僕の頬にながーいキスをしてくる。何この突然の求愛行動、可愛すぎかて。んーって言ってるのもいちいち可愛い。


「えへへ、ちょっ、くすぐった……♡」


「ありがと湊、補給できた。頑張ってくるね」


僕を、ほきゅう、補給してくれた!!可愛い無理ぃ可愛すぎぃ♡頭ポンポンされた。ちょっと小走りのルンルンになってんの可愛いって。まじ可愛い。愛されてるの実感しちゃった♡足をバタつかせてイートインスペースで悶え苦しんだ。


「あのさ、あかりが店長になったらさ、俺採用してくれる?」


「え、誰が貴方みたいなトラブルメーカーを採用するんですか?」


トラブルメーカー……?


「お前」


「馬鹿ですか、しませんよ」


馬鹿って、京一さんのこと今、馬鹿って


「そっかあ……」


え、京一さんガチで落ち込んでない?大丈夫かな?聞き耳立てながらドクドクと心臓の鼓動が早くなる。


「そもそもコンビニで正社員やりたいんですか?」


「んー、俺が就活で死んだ時の保険」


「死なないように装備を揃えてからしてください」


「あはは、そしたら俺いつ就活できんだろ?」


悲しみの色が混ざった笑い声。


「本当、まずは大学卒業からですよ」


そこに励ましと慰めがこもった声が重なる。その声が何故、僕では無いのだろうか。



「馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿、店内で腕切るな」


京一さんが駆け寄ってきてくれた瞬間に喜びで気が緩んで涙が溢れてきた。こんな欲望に負けた姿、こんな嫉妬に狂った姿、貴方に見られたくないのに、貴方が僕に、僕の世話を、手当をして、心配して、診てくれて、見てくれていることで、僕は悦に浸っていた。


「ごめん、なさい、うう、ごめんなさい……」


「ああもういいから、ごめん今日は帰るわ」


「うん、湊くん大丈夫?」


「わかんねえ、暫く休むかも。そん時は連絡する」


僕のために暫く休めるのか、京一さんは。


「え、あ、わかった」


「湊、動けるか?ほら、乗って」


京一さんが僕に背中を見せて、おんぶしてくれようとしている。僕は首を横に振った。


「僕は、一人で、帰れます。京一さんに、迷惑を、かけるわけには……」


貧血で立ちくらみ起こしながら、わざとらしくふらついて歩き出すのがあざとくて笑えてくる。笑っている僕の肩を抱いて京一さんはお姫様抱っこ、お姫様抱っこ!?してくれた。


「もっと俺に甘えろよ。俺がそんなに頼りない?」


可愛い。否定されるのを待ち望んでいるような問いかけに僕は「ううん」と甘えるように答えた。


「頼もしいです」


首に手をかけると、


「……湊、やっぱおんぶにしてもらっていい?転けそうで怖い」


とちょっとした弱みのような可愛さを見せてくれるから、僕のことを大切にしてくれるから、


「ふふっ、了解です」


僕はこの人が好きだ。



「湊、大人になると汚い大人と自虐的に笑うようになる。とかゆう俺もその汚い大人の一人だ。そこで思うんだけどさ。大人になるにつれて汚くなるのは、社会がそうさせてるんだろうなあって。そうしねえと生きていけねえからなんだろうって」


「すんすん、京一さんは綺麗ですよ?」


おんぶされている僕は京一さんの髪の毛の匂いを嗅ぐ。シャンプーのいい匂いがした。


「あははっ、そーゆーことじゃねえよ。なんてゆーか、意地汚くなんだよ。だから、その、湊は大人よりも大人びてる、クリーンな大人になって」


「何ですか?クリーンな大人って」


「そうだなあ、湊はこのままの湊のままでいて」


「え、僕はまだ子供じゃないですか。精神は子供のままで背格好だけは大人になれってことですか?」


「そーゆーこと。俺が思う可愛い湊を見失わないで」


「京一さんが思う可愛い僕……」


なんだろう?何でも言うこと聞くところとか?


「なーんか逆説的に、純粋無垢な子供のままで死んどけって言われてたんかなあ?でも、その汚さを目の当たりにしないと死ねないよね。目の当たりにしても死にきれないんだけどさ」


「死んじゃ嫌ですよ」


「俺は、夢のままで、夢見たままで死にたかった。人生は、将来は、希望は、明るいって思ってた。全部、嘘だ」


柔らかに、もの悲しげに笑う。


「素敵ですね、貴方はとても」


「湊、俺のせいで腕切った?」


「そうですよ、貴方に僕を見て欲しかったんです」


「可愛い、けど、もうやめてね。普通に京一郎って呼べば俺はちゃんと湊のこと見るよ」


「でもでも……邪魔だって……」


「……ごめん、ごめんなさい。子供に言う事聞かせようとする大人ってキショいよね。そのくせさあ、わかったような綺麗事言って、俺クソ馬鹿じゃん。ただ支配欲を満たしたいだけじゃん」


謝罪から自虐と自責の言葉を次々と自分に浴びせて、自傷行為をするようにザクザクと心が荒んでいく。


「そんなことないです。京一さんは悪くないです。僕が我儘言って」


「何で、俺のが大人なのに、湊の我儘を聞いてやれないんだろ?」


京一さんが静かに涙を零した。苦笑しながらに。


「京一さんは、とっても素敵です」


そうやって我が身を見直してよりよく生きようと模索するところ。すごい好きだ。

京一さんを真似て、今度は僕が京一さんを補給させて頂いた。


「ふふっ、くすぐったいね」


「くすぐったいって感覚は気を許した相手でしか感じられないらしいですよ」


「そうなんだ、嬉しい感覚だね」


心の奥からじんわりと温かくなってきた。京一さんにおぶってもらったまま、僕は眠りについてしまった。

ふと目が覚めると、僕は京一さんの布団の中で、京一さんはその隣の床で寝付きが悪そうに寝ていた。


「ふふっ、ありがと」


「んん……湊……」


京一さんが身体をもぞもぞと動かしながら、寝言で僕の名前を呼ぶ。苦しそうでつらそうで、可哀想に。悪夢に魘されているんだろう。でも、僕に助けを求めてるのとか最高に可愛い♡♡


「大丈夫ですよ、僕はここにいますよ」


と僕がその肩に触れると、京一さんがビクッて反応した。……え?


「や、んっ……もっと……」


あはは、まじ可愛い。夢の中の僕でセックスしてる。いやあ可愛い、ずっと見てたいなあ。ニマニマしながら眺めていたら、京一さんが寝返りを打ってうつ伏せになる。若干、冷めた。


「ダメ、床で擦らないで」


と身体ひっくり返すと、京一さんのニヤついた顔が拝めた。可愛い。とゆーか、夢の中の僕、まじで使えない。全然イかせてあげられてない。僕は夢の中で何度も京一さんにヤられてるのに。

勃起したそれを目の前にすると、僕の悶々とした性欲がさらに高まってきて、それをどう処理しようか考え込んだ。手でやるか、口でやる、、?良いじゃん、そっちのが一石二鳥、いや五鳥くらいなるし(IQ2)。

ひと舐めすると、きゅぅ、って足を閉じようとするからその細くて白いツルスベの足を掴んで、僕の肩にかけた。やば、めっちゃ興奮する。


「ぁ、湊〜♡」


「何ですか?」


うっわ、寝言で僕の名前言うの可愛すぎて無理。舌全体で丁寧に舐めていくと


「はああ、やば♡♡」


ってとびきり可愛い反応を返してくれた。そして、自分でも求めるようにお尻が動かしている。足や下腹部の筋肉の動きまでよく見える。あ、これって……


「ちょっ、待っ……んん♡♡」


咄嗟に先っぽを咥えて、京一さんの精液を口内で受け止める。ごっくんすると、ほろ苦い味がした。はああああ、幸せ。



「んーっ、朝ぁ??」


スマホに映し出される時刻を見て、ため息が出る毎朝。布団、湊が移してくれたの?


「おはようございます!京一さん!」


制服を着た湊が元気いっぱいに朝食を作ってくれている。可愛いけど、うるさっ!!


「ううう、何でそんな、元気いっぱいなん?」


唸りながら問いかける。


「とっても良い夢が見られたんです♡」


夢か、夢、俺もなんか見たような気ぃするけど、なんだったっけ?忘れた。


「ふわあ、だりぃ。身体が何かすげえ重いんだけど」


「手貸しますよ」


湊の手に触れた瞬間。


「あ」


「何ですか?」


忘れかけていた夢の内容を思い出した。恥っず!!!パンツの中を確認した。あれ、案外大丈夫そう?


「何でもない、今日の朝ごはんは何?」


「チーズ練乳チョコレートトーストとフルーツたっぷりのヨーグルトです♡」


うっわ、ゲロ甘じゃん

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