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諸々脆い諸共

俺には才能がない。全くもって才能がなくて、それを痛感する度に泣いちゃうんだ。やりたいことやってみたいことを仕事にしたくても、好きを仕事にしたくても、俺にはその才能がない。才能がないくせに努力すらできねえクズだ。俺はクズだ。クズクズクズクズ。俺はこの苦しさ、息苦しさを表現しようと、文章を書いても、誰も誰も誰も誰も、認めてくれない。ふざけんな、お前のわかったフリした共感も同情もいらねえんだよ、俺は。ただ、ただ生きるための金が欲しかった。金が、金がねえと生きれねえこの世の中腐ってんだろうけど、まじで金銭的余裕のなさが精神的余裕のなさに直結してんだよ。こんな俺の何を認めろって、俺は言ってんだ?存在だって認められてないくせに何してんだ?俺の生み出したこの文章を金銭的価値あるものと認めて欲しいんだ。ごめんなさい。ただの愚痴でしかないのに、ごめんなさい。俺しか書けないとか、俺が天才だとか、そんなのは全く思ってなくて、でも、その他力本願が何処か救われたいと思ってる。そうだよ、クズだよクズ。絵だって、描いてみてはしたけど、下手くそで誰も何も言わないけど、それが逆に下手だって言っているようなもので、本当に、俺、生きてる意味あんのかな?生きていけるのかな?普通の職にすらつける自信ないし、だって、朝起きて身体が動かない、ストレスで頭が痛い、幻聴が聞こえるなんてザラだぜ?クズな上に一般人にすら手が届かない役立たず、死んだ方がみんなのためだ。まじで死にたい、死にてえんだよ。こんなこと言ってる間はまだ死なねえとか何とかほざく野郎がいるが、俺はこのアパートから出て、2階のあの柵から飛び降りれる自信はあるんだ。クソ、こんなの書いてる前にさっさと死ねって話なんだけどよぉ。どんどんどんどん俺、バカになってく。嫌だよ、怖いよ。湊との楽しいはずの想い出が全然、思い出せないんだ。つらいことばっか、残ってんのに、俺の脳みそは楽しいことは排除するんだ。簡単なことしか考えられない。生きるか、死ぬか、そんな簡単な二択しか俺にはもうない。他のことをグダグダと考える脳みその容量がない。それほど馬鹿になってんだ。こんなの生き地獄だよ。俺は、俺の、頭の良さだけはプライドを持って生きてきたのに、もうそれも全部なくなった。簡単で単純なことしか分からない。馬鹿馬鹿馬鹿馬鹿、嫌だよ、こうまでなって生きていたくないよ。まだ自分のプライドを守って死ねてた方が良かった。もう嫌だ。俺の人生クソだ。楽しいはずの酒も気付いたらつらくなって泣いていて。痩せていて好きだった俺の身体もどんどんと豚になっていく。クソだよこんな人生、クソだ。死にてえ死にてえんだよ。自分が醜くて気持ち悪い。楽しくない楽しくない、楽しそうな奴の顔を見る分つらくなってくだけの人生。俺に価値なんて何処にもないから何処にも俺の救済所はないんだ。ただ何かがうまくいかないストレスで俺はこんなにも過剰に反応してしまうんだ。生きるの向いてないよな、まじで。生きてるだけで大損失。俺が腹くくって死ぬ。そんな妄想だけは一丁前にできて、本当に何度も何度も何度も何度も脳内で自分を殺してる。俺には湊がいて幸せなはずなのに、こんなにも死にたいだなんて申し訳なさすぎて死ねてくる。飛び降りたい。ふっと飛び降りて死にたい。この世に留まっているのが苦痛でしかない。一時期、この苦痛が嘘みたいに消えて、生きるのが楽しいというか、まだ生きていたいと思えていた時期があった。湊のことを完全に信用していて愛していて、湊からの愛情も疑ってなくて、このままこの世界にずっといられたら、って柄にもなく思って笑っていた時期があった。けど、そんなのは俺の思い違いで、こうやって苦しいことがつらいことが続けば俺は簡単にまた死ねてしまう。自分自身が怖いんだ。ふと飛び降りてしまいそうで、こんな醜い姿では死にたくないのに、最高に幸せって瞬間に死にたいのに。結局、俺は怪物だ。生きているだけで誰かを傷つけてしまう。ずっとずっと死にたい気持ちぶら下げて、一発逆転のような才能×運勝負に賭けている。こんな俺が勝てるわけないって目に見えてんのに。才能がある奴はその才能を遺憾無く発揮する上に、好きこそ物の上手なれという言葉の通りに上手くなっていく。金銭に目がくらんだ俺が勝てるわけない。ごめんなさい。こんなにも無駄な人生、ごめんなさい。生きてて、ごめんなさい。アルコール9パーセント、5本で既に出来上がってしまった俺は、泣きながら、頭痛に耐えながら、なんとかお金にならないかと、こんなクソとクソが結婚してそこにできた純正クソのうんこみたいな何も役に立たねえ、寧ろ、不愉快にするような文章をタラタラタラタラと意味もなく書いて、泣きじゃくってる。湊が学校に行ってるあいだにね。本当に死にたくなってくるよ。みんなにも、全人類平等にこの屈辱感を味あわせ、味わうべきだと思うね。ああ、日本語が書けねえ、ごめんなさい。教えてもらったのに、今までの記憶とか経験とか、大切にしていたはずなのに、すべて気付いたら失くしてしまっていて、ごめんなさい。ごめんなさいだけじゃ、許されないと思ってさ、手首切ってみたんだよ。浅くしか切れないチキンでイラついたけど痛いし笑うしかなくて、笑って逃げた自分も大嫌いだけど、これ湊みたいって笑った自分が最悪で大嫌い。湊、本当にごめん。コンビニ行って、追加で酒買おうとして、棚破壊したのも、酒雪崩させたのも、本当にごめんなさい。生産性のない人間でごめんなさい。俺の心は罪悪感でいっぱいで、満たされていて、ああ、こんな俺を誰も愛して欲しくないから、死ぬね。って、誰かに言うのも、ただのかまちょで俺が言うとキショいね。



予定通り、教室で口論を始めて、メアちゃんに殴られる。全然痛くない、実際は触れられてないから。


「ああそう、そんなに僕のこと嫌いなんだ。もういい、別れよ」


殴られた頬を押さえながら、彼女を見限ったようにそんな台詞を吐いた。そう、君は最低野郎の僕の前から逃げるだけでいい。


「湊ちゃん、捨てられちゃったの?可哀想に」


と僕を哀れんで肩を組んできたのは鈴木。


「別に」


なんて僕が冷たくあしらうと、


「そっかぁ、そうだよね。湊ちゃんってば、遊び人だもんね」


と教室中に聞こえる大きな声でそんなことを言った。メアちゃんが不安そうな顔でこちらを見ている。せっかく一芝居打ってもらったのに、台無しだ。


「僕は一途に愛したいよ、愛していたいよ。けれどもみんな、僕のことを鬱陶しがるんだ」


「へえ、奥谷、そうなの?」


「ひっ!!……い、いいや、お、俺は、その……」


いきなり話を振られて、恐れを生して、怖がってるのがありありと見える。あの演技まではうまかったのに。よく頑張ってくれたんだね。


「ねえ、やめなよ。如何に僕を傷付けずに鬱陶しさを伝えようかって、表現に困ってんじゃん、メア優しいからさ」


「じゃあ、湊ちゃんが教えて?鬱陶しいほどの愛情ってどんなの?アイツとは別れたの?」


アイツって、きっと京一さんのことだろうな。鬱陶しいほどの愛情って。我儘に愛してたら、それが鬱陶しいそれだったんだよね。何て言おう。


「キスせがんでセックスもせがんで、僕のこと愛してるんでしょ?って束縛をしちゃうんだ。毎日毎日好きだとか愛してるだとか言いたいし言われたい」


「へえ、普通じゃん。何も鬱陶しいことないじゃん」


「.......え?普通?」


平然とした顔しながら、彼は何ともないようにそれを言った。普通という言葉に僕は衝撃を受けているのに。



「湊々、俺さあ、人生で初めてレベルで超真面目に計画表を作ったんだあ、見てよこれ」


京一さんが朝6時に起床??朝ごはんで、7時から勉強??そこから8時間も??16時からは自由時間で週三でバイトを入れる??何??バイトって??そして風呂入って、21時には就寝って、小学生ですか??いや、健康的でいいんだけど。.......現実味がない。


「京一さん、よく書けていますね」


「でしょお??それでね、バイトはコンビニでしようと思ってて、勉強はやることは上から順に.......」


この夢のような計画表作りに一日を潰している彼が何とも愛おしく見えて、それを楽しそうに発表する彼も.......ずっとその話を聞いていたくなる。


「でも京一さん、これは最終目標にしましょうか」


「何で??」


ああ、嫌だ。現実的な話をするのは僕だって嫌いだ。嫌いだけど、この計画が倒れて自分に幻滅して共倒れする貴方を容易に想像できてしまう。苦しすぎて痛々しすぎて目も当てられない。貴方に期待していないわけじゃない、貴方ならきっとこの計画も成し遂げられるはずだ。だけど、それが今じゃないだけ。


「一気に何個もやろうとすると、目が回っちゃうじゃないですか」


「.......そうだね、そうだけど。無駄に焦っちゃうんだ。この胸いっぱいに含んだ不安をはやく解消したい」


胸の辺りをさすって、苦しまぎれに貴方は笑う。僕はそんな貴方に少しずつ苦しみを解かしていきましょうなんて、馬鹿みたいなこと、悠長なこと言ってらんないくらい苦しそうなのに。


「今だけを見つめて僕だけを見て。僕は貴方のためならば何でもします。貴方が喜ぶことならば何でも」


ならばこの一時だけでも、夢を見て。泥水の中から砂金を見つけて。


「じゃあ、俺と一緒にタップダンスしてよ」


部屋中に音楽が流れ始める。踊りなんてできない貴方が滑稽にも見よう見まねで踊り出した。楽しそうに笑いながら。


「タップダンスですか??」


「俺達は火車の天板で裸足で踊り合うピエロ。ほら、足裏が溶けちゃうよ?」


アップテンポのリズムにあわせて、クルクル回って、タタッと足を動かす。設定された状況は最悪だけれど、こうゆうことだよね?幸せって。


「京一さんの好きな歌.......」


2、3曲目でゆったりとしたテンポの鬱蒼とした雰囲気に、躁鬱の緩急を思わせた。貴方も疲れたように僕の肩に両腕を置いて、ゆらゆらと揺れるだけのダンスをする。


「永遠に好きな音楽に浸かりたい」


耳を壊すような爆音で、聞きたくない声を塞ぐように、貴方は音楽の水槽に溺れ、閉じこもろうとする。そうやって、貴方は過去に見たくないものを見ないようにするため目を悪くした。眼鏡をかけないと、少し遠くの文字が読めない。小さい文字が読めない。僕の顔だって、ぼやけて見えるみたいだ。そのくせ幻覚はまだずっと見えていて、見えにくい分、余計に見ようとしてしまって、悪化した。


「愛しています、この言葉は聴いてもらわないと」


貴方の腰に手を回して、ドラマで見たプロムみたい。音楽に身をゆだねるように、貴方は僕に身をゆだねていて。


「.......うん」


僕の肩に額を擦り寄せながら、素直で複雑な心境を感じさせる返事をされる。震えている、、?


「京一さん(?)」


彼は音楽を止めた。


「学生時代からずっと思ってた。俺には努力する才能もないって。俺、高校生になるまで勉強なんてまともにしたことなかったんだよ」


ふと、足元に目をやって、あの計画表の裏側に、彼は上向きに伸びる曲線とやや上向きに進む直線を書いた。


「だから、俺は努力を知らなかった。努力がこんなにつらく苦しく難しいものとも、無力感を与えるものとも知らなかった。だからある日、俺は周囲と差が開いていることに愕然した。ただ普通に、今まで通りに生きているだけで、差が開くとは知らなかった」


直線が京一さんで曲線がその周り、ということ。


「俺だって、努力しようと努力したさ。死に物狂いの言葉通り、必死に差を埋めようと、死のうとした。あはは、焦燥感に囚われて、でも動けなくて、努力すらできねえ俺は、もう負け組だと、烙印を押された。何で、何で何で何で、俺は動けないんだろ?やりたくてやってやりたくて、たまんないのに、何で」


僕にもその何故は分からなくて、でもそれが彼を鎖のように縛って苦しめているのはわかった。


「俺は、命を天秤にかけても努力ができねえクズだ。世の中、努力が根性が覚悟が足りねえと怒鳴る奴ばっか。根性焼きだって、死ぬ覚悟だって、俺はできてんのに、これ以上、俺に何を求めてんのか、さっぱり分かんねえ。できねえことをやれって言われてもできねえだろうがあ、あああああ死にてえ」


子供のように床にペタンと座りながら、愛らしく泣き出して、両手で大粒の涙を拭っている。京一さんは負け組なんかじゃない。そう貴方を誑かす奴がいたら僕が殺す。


「何で貴方がそんなに苦しまなきゃならないんですか?貴方を苦しめる、そんな世の中がクソなんですよ。僕が証明します、貴方は最高だって」


「どうやって?」


キラキラとした涙を人差し指にのせた貴方がこちらを横目で見てくる。ううっ、可愛い。


「どうしますか?僕が大人数に貴方を最高だと言わせたら貴方は自分のことを最高だ認めますか?それとも貴方を多方面で分析して最高だと論文で発表しますか?」


「ふふっ、社会不適合者が最高なわけないじゃん」


「ああもう、わからず屋!!誰が何と言おうと僕にとっては、貴方が最高なんですよ!!氷野 京一郎が最高なんですよ!!」


どうやったら貴方が最高だと貴方に伝わるのか、思案を巡らせても、僕の脳ミソが足りてなくて、もどかしさで笑ってしまった。僕の胸にあるこの感情をこの好意を貴方にそのまま見せられたらいいのに。


「.......青柳 湊は最高だね、俺を楽しませてくれる」


泣き止んだ貴方が、僕の手をとって、その手を大事そうに撫でてくれる。僕の全身にその温かさが巡って、胸の奥の方が震えた。


「だったら、僕がいれば貴方は死にませんか?」


「あはは、俺を縛んないでよぉ。たぶん、死ぬかな?」


僕と恋人繋ぎして楽しんでいる貴方を見ながら、貴方のそんな言葉を聞くと、僕は引き裂かれて分離してしまいそうになった。


「何が原因で死ぬんですか?世間ですか?金銭ですか?名誉ですか?健康ですか?愛情ですか?」


「あーーー、何でだろ??感情でしか動いてなかった」


「貴方をつらくさせているのは何ですか??」


「俺を、俺が、ああ、俺か.......自己嫌悪♡♡」


可愛いいいっ!!!何でそこで可愛こぶるの??めっちゃ可愛いじゃん!!!そんな可愛い貴方が何で何で自己嫌悪なんて、大好き♡♡


「僕が貴方の嫌悪を超えて、貴方を愛好をさせていただきます」


「うんうん、そうしてあげて」


「貴方は嫌悪感も罪悪感も抱かなくて大丈夫です。全部全部、僕のせいにしてください。貴方を生かしているのは僕です。だから、何かうまくいかないことがあれば、僕を蹴り飛ばしてください」


「あはっ、理不尽じゃねー??」


「いいえ、僕は貴方に蹴られたいですよ」


「ありがと湊、愛してる♡♡」


そうやって僕にキスしてくる貴方は最高に狡くて好き。ずっと僕と生きていて欲しい。



「ねーねー、ここで働きたいんだけどぉ、どーすりゃいい??」


レジ打ちで暇してそうなアイツに声をかけた。


「はあ?貴方がここで働くんですか?嘘でしょ?うわっ、酔ってるし.......」


嫌な顔された。


「まじで、働きたいの!!湊に、湊に安心させないと」


湊と一緒に計画表を見直した。まず、働けるという自信をつけようってなって、週一でコンビニバイトをしようと話になった。そしたら、湊も安心して学校に行けるって。バイトしてれば飛び降り自殺する暇もなくなるから。


「あーあー、泣かないでくださいよ!!ちょっと待ってて!!」


商品の履歴書とボールペンを持ってきて、イートインスペースに並んで座る。名前住所生年月日等々を聞かれて、「へえ、私よりも歳上なんだぁ。意外〜」って若干、煽られた。絶対に分かってただろ。


「志望動機??そんなん、社会貢献による安心感のため、それしかない」


「うへー、そんなこと考えてんすか?それも意外、とゆーか、何でここのコンビニにしたんですか?」


「.......お前がいるから」


「え??私??」


「みんな初対面よりかマシだろ??」


「まあ、そうですけど。もっと、家から近いとか、暇そうだとか、そんなこと言ってくるんかと思ってたから.......」


ってどんどん小声になってくから、何だか眠くなってきた。ダメだ、社不すぎて、笑える。


「ねえ、俺いつ働けんの??」


と馴れ馴れしくその肩に肘置いて頭置いて彼女に寄りかかった。そんな俺の脇腹をエルボーしながら


「明日の午後二時、たぶん面接できるから、絶対に、絶対にシラフで来てくださいね!!」


と念押しされた。面接、面接、シラフで、面接。はあ、ダルい。無理。緊張で喋れなくなりそう。


「媚び売れば通る?」


「おっさんには通じませんよ」


「お前が媚び売っといて」


「はあ?何で??」


「一緒に働きたい」


「大丈夫です、貴方は案外ちゃんとしてますよ」



はあ、京一さん大丈夫だろうか??今日バイトの面接、受からなかったらどうしようもっと病んじゃいそうだ。俺はこの社会に必要とされてない、もう死んじゃえーって、衝動的に死んじゃいそうだ。嫌だ嫌だ嫌だ怖い怖い怖い。あの人がいなきゃ僕も生きてる意味ないのに。


「なあなあ、青柳」


「はああああ、何??」


「どったの??」


「どうでもない、何??山田」


「山田じゃない高橋、高橋 和樹」


「へえ、山田太郎じゃなかったんだ」


「お前の興味ない奴、だいたい山田太郎と山田花子だよな」


「興味ないもん」


「まあそれでさあ、お前援交してんだって??」


「は??」


「鈴木が変な噂広めてんよ?しかもオッサンと」


「どーでもよっ、クソみたい」


「否定しないんだ」


「だから何??」


「いやあ、似合うなあって思って、みんなで面白がってんの」


「そうなんだあ、良かったね」


「青柳、キレてんの??」


「キレてないけど??ああもうイライラするぅ」


「キレてんじゃん!!」


「ねえ学級委員さん、僕帰りたいよお。学校なんてどうでもいいです。帰らせてくださいいい」


「どうしたどうした??とりあえず落ち着け??」


「落ち着けるわけないじゃん!!ああまじで部屋に監禁して一生監視していたい」


「何の話!?」


「僕の生死に関わる話。まあ一緒に死んじゃえばいいや、本望だ。よし、死のう!!」


「京都へ行こうのテンションで言わないで」


「京都??行くの??」


「行かないよ、馬鹿」


「何でいるの??ここに??」


「え??」


「何で君はこの地球上に存在して、たった今ここにいるの??」


「いきなり哲学的だなあ!?」


「む、ち、の、ち、ソクラ〜テッス、プラ〜トン♪む、ち、の、ち、アリストテレスッ♬ちゃちゃちゃちゃん!!」


「テレスって誰!?」


「え??」


「いや、その前に歌うなよ」


「つい、ね」


「落ち着いた??」


「カズちゃん優しいいいい」


「何だよ煽てるな!!それで、どうしたんだ??」


「僕の兄さんが精神不安定で死んじゃわないか、とってもとっても心配なんだよ。いてもたってもいられなくなるほど」


「電話したら??」


「出なかった。これ聞いたらすぐに電話してってボイメ入れたのに返ってきやしない」


「チャットは??」


「ノー」


「今日何かあんの??」


「バイトの面接、落ちたら死んじゃうと思う。それ以前に緊張で死ぬかもしれない」


「お前の兄ちゃん脆いなあ」


「おい、誰だろうと僕の兄さんを馬鹿にする奴は許さない。言うんならお前が兄さんと同じ境遇を味わってから言え。きっとそんな台詞一切吐けないだろうからさ」


「……ごめん」


「ああ考えれば考えるほど心配になってきた。こんな僕はクズだ。兄さんのこと信用してないも同然なんだから」


「でもこんな青柳に心配かける兄貴も悪ぃよ」


「悪くない!!悪くないもん!!僕が、僕がもっと、死にたくならないようにメンケアしてあげないと」


「また京一さんのことで悩んでるの??」


「アリス、トテレス……」


「真城さん、聞いてよお、今日ね、京一さんのバイトの面接があってね、本当に京一さん頑張ったんだよ、頑張ってるからね、頑張りすぎちゃってないか、死んじゃわないか、心配で心配で、京一さん緊張でお酒飲んでったりしそうだなあ、どうしよう面接で暴れたらあ、きっとヤケクソになっちゃうよね??ああ、どうしようどうしよう、ひたすらにめっちゃ会いたいよお、落ちちゃってもよく頑張りましたねってずっとずっと慰めてあげたいいいああああ帰りたい」


「うんうんそうだね、それはとっても心配だね。でも大丈夫だよきっと大丈夫だから、青柳くんも京一さんに褒められるよう頑張ろうか」


「京一さん、褒めてくれるかな??」


「褒めてくんなかったら自分でアピールするんだよ!!こんなに頑張ったんだよって」


「そっかあ、そうだよね。そしたら京一さんきっと、ご褒美くれる。ふふっ、すっごく楽しみ♡♡」


「アリスが青柳を懐柔してる……」


「良かった良かった、青柳くん最近勉強頑張ってるから私も応援してるんだよ」


「応援してくれてるの!?嬉しいなあ、ありがとう。僕ね、お医者さんになりたいんだあ」


「そうなんだ!頑張ればきっとなれるよ!!」


「流石に医者は冗談だろ??青柳」


「冗談じゃないよ??心のお医者さんになって、人生の苦しみを少しでも和らげたいの」


「……高橋のバカ、青柳くんの夢は立派だよ」


「だってこんな脳内お花畑みたいな奴が……」


「ありがとう、真城さんは優しいね」


「少しは現実見ろよ。医大に入るだけの頭がお前に、青柳にあると思うのか??」


「へへっ、あはははっ、ふふふっ」


「何笑ってんだよ、気持ち悪ぃ」


「ふふっ、ダメだ、笑っちゃう……」


「青柳くん、大丈夫??」


「は?コイツが大丈夫なわけねえだろ。青柳くーん、頭大丈夫ぅ??」


「ねえ高橋、悪ふざけもいい加減にして」


「だってそうじゃんかよ、アリスもおかしいぜ?こんなmad headerなんかと付き合って」


「Am I a mad header?? Hahaha, do you mean I'm a dickhead??hehe」


「確かに青柳くんはみんなとは変わってるところがあるよ??だけどそこが彼の個性で魅力じゃないの??」


「こんなのが個性ならば俺は没個性でいいね!!全ッ然、魅力を感じないし寧ろ、可哀想に思えてくるよ」


「ふふっ、ありがと、高橋。貶してくれて」


「はあ?まじで意味わからないんだけど。日本語通じてる??」


「理解してる。僕もこの僕が大嫌いで、僕自身を傷付けていたいんだ。高橋と一緒だね」

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