第37話「新人にとっては何がわからないのかわからないのがデフォルト⑤」
職人さんや親方とも一日働いて、色々指示をもらいながら話をするとかなり打ち解けたような気持ちになる。仕事もアルバイトの僕らの仕事内容は複雑ではないので、ある程度覚えることができた。
仕事は何回かの休憩を挟んで、進められた。異世界だから、てっきり労働基準法無視の過酷労働をさせられるかと思ってたら、そうでもなかった。もしかしたら、この辺りも僕のような異世界人が変えていったのかもしれない。
とはいえ、力仕事。一日働けば体はクタクタに疲れる。約束では三日間働くことになっていた。さっさと仕事を終わらせて金貯めるぞ。
つーか、この部分ぐらい省略できるだろう。こんな長々と仕事の描写いる? いやいや、僕は誰に訴えかけているのだ。
仕事が終わってギルドに戻る。道すがらのオルエはゾンビのように足取りは重く、疲労困憊の様子だった。
ギルドの受付から今日の日給が支払われる。オルエは封筒からお金を取り出すと金額を数えた。
「あれだけ働いたのにこれだけか……」
「作業補助にすぎないからな。安宿になるけど、泊まれるぐらいの金額にはなるだろ」
すると稼いだお金をまじまじと見ながらオルエは答えた。
「ダメだ。そんなので金を使ったら、今日働いた意味がなくなる」
「オルエ、意外と今後の金の心配とか考えているんだな」
僕の言葉にオルエは満面の笑みで給料袋を掲げた。
「まずは焼き鳥とビールを買おうじゃないか!」
「き、キンキンに冷えてやがる……が言いたいだけだろお前は!」
「先にオチを言うなよ。ボケにやさしくないぞ、シルバ。ただ、宿泊代にお金を使いたくないのは本当だ。今日は野宿にしよう」
「マクラもいるんだぞ、そんなことできるわけないだろ」
するとオルエは視線を逸らして頬を指で撫でながら答えた。
「大丈夫だ。アイツはアイツで今日の寝床ぐらい探すさ。だから今日は二人で野宿だ」
「なんだよ。その奥歯にモノが挟まったような言い方は」
「とにかく、俺は野宿がしたいの! そして『ニックニック!』って言いたいの!」
「ハーレー乗って謝肉祭目指す気かお前は! 嫌だぞ、野宿してて街の人に襲わるのは
。モンスターもいるだろうし、僕たちだけでは野宿は危険だ」
「えー。だけど、宿にはなるべく金を使いたくないしなぁ……」
腕を組んで考えているオルエを見て『こいつ、何も考えてないな』と思った僕は、仕事中に言ってた職人さんや親方の言葉を思い出した。
「……わかった。だったら僕に考えがある。ついてこい」
野宿も悪くはないが、せめてある程度の雨風がしのげる場所が良いと思った。僕にはアテがあった。僕の言葉にオルエは驚いている表情を見せた。
「アテがあるだと……? お前にとっては異世界なのに」
「あぁ、今日話をつけたんだ」
そして僕たちが向かった場所は、今日働いた現場の親方の家だった。今までも僕たちみたいな旅をしながら日雇いの仕事をする人間を雇っていた親方は、宿代が出せない旅人のために泊まる場所を提供してくれるという話を職人さんから聞いたからだ。
事情を話したところ、親方は快く一晩の宿を提供してくれた。僕とオルエは喜んだ。そして僕たちは指示された場所で寝ることにした。
「おい。ここで眠るのか?」とオルエ。
「野宿よりはましだろ」と僕。
それが、馬小屋だった。藁が敷き詰めてあり、ここで眠れという事らしい。どこかで見た展開だが。
あれ? でもこの展開だと僕は女神と馬小屋生活するのでは? なぜ隣で魔族が寝ているのだ?
そして出てくる登場人物男ばっかり! 若者の男離れ!




