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第30話「初めていく店は注文システムがわからなくてドキドキする。風邪? それとも恋?③」

 僕たちは再び歩き出した。さっきの戦闘があったせいで、僕は少し慎重に草むらを歩いていた。緊張感が増し、なんだか気疲れする。


 前を歩いていたオールドエイトが振り返った。


「それにしても、シルバ。お前、スマホ持ってないのかよ」

「え? 持ってるけど、なんで?」


「だって、スマホあればなんでもできるじゃん。敵索もちょちょいのちょいじゃん」

「お前はラノベから離れろよ。そんな都合よくできるかよ! ネット繋がってないし、充電は、あと二十パーセントしかないし」


 僕の答えを聞いてオールドエイトは「信じられへん!」と小さく言って、言葉を続けた。


「お前、不安じゃないのかよ! 普通、七十パーセント切ったら情緒不安定になるものだろ! 俺だったらコンセント探すよ! 盗電と言われようとコンセント探すよ!」

「盗電はダメだろ。バッテリー持ち歩けよ。いや、僕は気にならないタイプだから。十五パーセント切ってから勝負だから」


「なにと勝負してんだよ。我慢ですか? ザ・ガマンですか? ウォーク系のゲームやってたら、一瞬で蒸発する充電量ですけど!」

「せっかくお前を少しは尊敬したのに馬鹿馬鹿しくなったわ! 異世界人がスマホの充電事情語るなよ!」


「重要なんだよ。あと少しで充電切れるなら写真撮ろうぜ。三人のコスプレ写真撮ろうぜ」

「オールドエイト、今、コスプレ写真って言ったな? やっぱり今の恰好は周りに浮いてるんだろうが!」


「人は見られて成長するんですー。綺麗は作れる、可愛いは最強なんです!」

「つまらーん! お前らはつまらーん! 勝手に話しおって! 私にもわかるように話せ~! まったく。お前らのうるさいやり取りはモンスターを呼び寄せるんじゃって!」


 マクラが急に大物俳優が蚊を取る器具のCMで叫んだようなセリフ言うから驚いた。偶然かな? って思ったけど、耳たぶを引っ張ってるから、確信犯(誤用)だな。


「いや。今、お前が一番煩いけどな。ピン芸人同士が組んだユニットのツッコミ役ぐらい煩いけどな」


 ちなみにこの後、僕たちはスマホで自撮りした。


 僕の両脇から二人が挟むような恰好で写真を撮る。マクラは物珍しくカメラを覗き込むようにグイグイと僕の顔を頭で押してくるし、オールドエイトは僕と写真撮る場所を張り合うように頬でグリグリ押してくる。まるで満員電車の窓際で押されるサラリーマンのような形で写真は撮られた。


 写真を見た後、全員で大笑いした。

 スマホの写真を眺めながらオールドエイトが言った。


「ちなみに充電は魔力でできるぞ」

「なんだと! そんなところだけライトノベルしてるのか!」

「当たり前だ。『面白いこと言ってよ』って言われてからの面白い話は絶対に面白くないぐらい、当たり前だ!」


「ごめん。ちょっと意味わかんない。ちなみに異世界からWEB閲覧できたり、神様と通話できたりは……」

「できるわけないだろ。現実を見ろよ、現実を。戦わなきゃ現実と!」


 なんで発毛しそうな答えなんだよ。スマホの写真機能だけは使えそうだ。そもそも僕はスマホを使いこなせないから、それぐらいしか使い道を思いつかない。動画か写真だな。

 しばらく歩くと、オールドエイトが言ったように人が作った人工の石畳の道が見つかった。こうしてようやく僕たちはタミオンの街に到着した。


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