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第27話「『次の方どうぞ』と言われた時の『次、俺だよな?』という不安感がたまらない④」

「おい、お前たち。真打の登場じゃぞ」


 僕たちのやり取りの間、マクラが試着室で着替えていたらしい。しかたがない。マクラの服装を見て、少しは癒されよう。あれでもロリ娘担当だからな。見せ場ぐらいあるだろ。


 カーテンが開き、マクラが姿を現した。その瞬間、僕たちの時は止まった。


「どうアルか? 似合ってるアルか?」


 マクラは上下に分かれている赤のチャイナ服を着ていた。しかも髪型は団子だった。そして手には和傘を持っていた。


 僕とオールドエイトは口を震わせていたが、ようやく口が利けるようになった。


「ダメだろ! それはダメだろ! 名前でさえギリギリなんだぞ!」と僕。


「それにその口調なんだ! お前は『~じゃろ』娘だろ! キャラ守れよ! キャラ!」オールドエイトもさすがにツッコミを入れた。


「えー、でも、なんで? え? 三人組のロリっ娘はチャイナ服に銃が付いてる傘して『~アル』とか言ってればいいんじゃないの? 人気出るだろうし、上手くいけば千年さんが演じてくれるかもしれんのじゃぞ……じゃなかったアルよ」


 オールドエイトが手の甲を口元に当ててお母さん振りながら言った。


「ダメダメダメダメダメダメダメ! ぜぇ~ったいダメ! お母さん、許しませんよ! 早く返してきなさい! ねぇ、お父さん!」

「めっ! だぞ、マクラ。マクラにはまだ早い。もう少し大人になってから、然る場所でやりなさい。夏と冬に開催されるようなカメコが集まるような場所でやりなさい」


 普段ならツッコむ僕でさえもオールドエイトに乗ってしまった。

 だが、その姿と口調だけはダメ、絶対!


「ちぇ~、ただでさえ出番少ないのに、服装まで規制されるなんてつまらんのう」


 しぶしぶマクラは試着室に戻っていく。僕たちはホッと胸を撫でおろした。


 数分ぐらいたった後、再び試着室から出てきたマクラは、真っ赤なフリフリがたくさんついたゴシックロリータ風の服装で出てきた。胸元には深緑のリボンが施されている。頭には先ほど被っていた小さいシルクハットを付けていた。


「まぁ、こんなもんじゃろ。修道服も捨てがたかったが、どうせまたお前らに怒られると思ってこれぐらいにしておいてやったわ」


 僕とオールドエイトはマクラを数秒見た後、ひそひそと相談を始めた。もちろん内容はこの服装アウトじゃね? っていう相談だ。


「でもさ、頭の飾りが違うじゃん。金髪でもないし」

「いやいや、シルバさん。いつ『私はドールじゃ』とか言いかねないかもしれませんわよ」

「そんなぁ。モノマネ芸人が、マネをした人の名前を名乗りながらモノマネするみたいな、『え? なに? 名前を名乗らないと成立しないモノマネなの?』とツッコみたくなるようなことしないだろ。さすがに」

 

 するとすかさずマクラが口をはさむ。

「するぞ。私は必要だったら言うぞ」

「やめろ! 最後のプライドだけは持てよ!」

「プライドより、わかってもらうことの方が大事じゃ!」


 だめだ、これ以上触ると怪我するかもしれない。いや、もう大怪我してるかもしれない。

 僕はオールドエイトに耳打ちした。


「この際、贅沢は言ってられない『黒髪だから大丈夫』を合言葉に乗り切ろう」

「……わかったわ。お父さんの言うとおりにする」


 まだ続いてたのか、その設定。オールドエイトはノリノリで話を続けた。


「それじゃあお父さん。合言葉を言いましょ? せーの」


「「大丈夫。黒髪のロリ娘だよ」」


 どこかの攻略本のような合言葉だが、これで乗り切ることでセーフとした。


 こうして僕たちの着替えが終わった。スカジャン、スーツ、ゴスロリ。いや、めっちゃ目立つ格好じゃねえか。絶対街中で浮くだろ。それとも人間界は毎日がコスプレ大会なのか?


 疑問に思いならが買い物を済まし、僕たちは店の外に出た。

 ゲンナイが店先で僕たちを見送ってくれた。


「またよければ店によってくれよ」

「ゲンナイさん、ありがとうございました」

「俺はモノを作るのが大好きなんだ。今回のオールドエイトの発注も無茶苦茶だった。だがなんとかなるものだな」


 ゲンナイの言葉を聞いてオールドエイトがニヤニヤしながら答える。


「また無茶な発注してやるよ」

「お前が外に出てこれたらな」

「もう部屋には引きこもらないさ。多分ね」

「オールドエイト、お前の引きこもりって結構有名なんだな」

「まぁ、俺は有名人だからな!」


 なんでそこで胸を張るんだよお前は。

 ゲンナイは僕たちを見てため息交じりに言った。


「腐った将軍として有名人だもんな」

「腐った将軍? なにそれ?」


 僕の質問にオールドエイトが目をそらしながら答えた。


「……くだらない昔の呼称だよ」


 気のせいかオールドエイトが一瞬寂しそうな表情になったような気がした。


 ともあれ、僕たちは旅支度を整えて、森を抜けることになった。

活動報告で「魔王様、モミアゲどうします?」の小ネタをボチボチ書いてます。

よろしければ、そちらもどうぞよろしくお願いします!

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