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第24話「『次の方どうぞ』と言われた時の『次、俺だよな?』という不安感がたまらない①」

 僕らは勇者の装備を先に奪うべく、出発した。目指すは勇者のマントだ。オールドエイトの話によれば、クレバの洞窟という場所にあるらしい。まずは洞窟近くの街に向かうことにした。街の名前はタミオンというらしい。


 うっそうと茂っていた森を抜けようとした。オールドエイトは森を出る手前で僕とマクラを手で制した。


「さてと。シルバよ、ここらで着替えをしよう」

「着替え? なんで?」

「いや、いかにも魔族の服装している二人組と、この世界に似つかわしくない服装をしているお前では、街や街道でも人目につくだろ」

「なかなか良いこと言うではないか。そういう面白いことは好きじゃぞ」


 自分の服装を見る。白のスクラブ上下にグレーのパーカだった。すぐに働きたかったから、着替えて出たんだっけ。


「――はっ。オールドエイト、大変なことに気づいたぞ。初めて僕の服装について触れた気がする」

「細か! 男の服装なんてどうでもいいだろ。読んでる人もそんなの求めてねえよ。そんなの要求するのは中途半端な物書きぐらいだ。奴らは人の抜けているところをやたら指摘したがるからな。心理描写がたりないだの、風景描写がたりないだの、これじゃあキャラクター想像できませんだの。風景から心理描写を読み取れるような記述しろだの、陰影や色でキャラ付けしろだの、描写が稚拙だの、伏線、伏線、伏線! 回収、回収、回収! だの面倒くさいことこの上ないんだ」

「いや、お前の話も相当面倒くさいわ! っていうか読んでる人って誰だよ」


 オールドエイトは鼻息荒く息巻いている。お前は全方位に敵意を向けすぎだ。僕の肩近くから声が届く。


「まあまぁ、二人とも。戯言はそれぐらいにするんじゃ。確かにオールドエイトは四、じゃなかった五天王だったっけ? その一人じゃから変装も必要じゃろうて」

「まあね! 俺、有名人だから! 指名手配犯だから! 賞金首だから!」

「うわぁ、昔は悪かったみたいなイキりかたしてるよ……」


 とはいえ、口ではそう言うものの、着の身着のままで出てきた僕たちに着替えなどなかった。僕の心配そうな視線を感じたのかオールドエイトが自信ありげに口角を上げた。その表情がムカつく。


「人間族と魔王軍の境目にあたるこの辺りでは、魔王軍ご用達の道具屋がこの近くにあるんだ。皆、人間族に紛れるためにここで着替えることが多いから、店を構えているのだ。ただ闇雲に歩いてたわけではない」


 オールドエイトの言う通り、少し歩いたところに開けた場所があり、大きめの建物を見つけた。


 店の中に入ると、短髪で背の高い緑髪の男性型の魔族が出迎えてくれた。魔族とすぐにわかったのは、腕が六本あったからだ。腕六本男は僕たちを見るなり、大きく目を見開いた。


「オールドエイトじゃないか! どうしたんだ! こんなところまで! 部屋から出れたんだなお前! 通販ばっかりだったのに!」

「いや、前から部屋は出てたよ! めちゃ出てたからね!」


 強がるオールドエイトを見て、僕はオールドエイトの肩に手を置いた。


「オールドエイト、いい加減認めよ? 僕も気にしてないさ。ね? 勇気だそ? それに異世界でも通販あるの?」

「シルバ、優しい言葉かけんじゃねえよ! 話進まないだろ。あと通販は俺が広めた」

「お前、なんでも『俺が広めた』っていうよな。そのうちなんでも『俺が育てた』って主張しそうだな。プロ野球の監督やりそうだな!」

「誰が乱闘ばっかり注目される監督じゃ!」


 すると、オールドエイトは何か気づいたように「はっ」という声を上げた。


「おおおお、お前、ちょっとボケすぎだぞ。俺がツッコミ役やってるじゃねえか!」

「たまにはいいんじゃね?」


 いや、オールエイトがボケたら話が進まないだろ。早く着替えさせろよ。

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