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第21話「最後に『なにか髪に付けますか?』と言われても、かたくなに『なにも付けなくて大丈夫です』と断ってしまう。そんな性格②」

 僕は再び瞼を閉じて確認する。確かに古臭いがステータス画面だった。レベルは1だった。そりゃそうか。各ステータスも特筆すべきものがないむしろ弱いんじゃね? と言えるような結果だった。


 強いて言うなら器用さが少し多かった。さらに見ていくと呪文の欄もあった。


「呪文の欄があるなになに……呪文『だてあの』ってなんだよこれ」

「『だてにあの世は見ていないぜ』の略で『だてあの』だ」


 なにそれ。指先から必殺技出そう。


「唱えてもいい?」

「お前にマジックポイントがあればな」


 僕はマジックポイントを見てみた。レベル1だからなのかゼロだった。これでは呪文を唱えることができない。レベルが上がって呪文を唱えることができるようになったら試してみることにしよう。


 ここまで考えて、僕は重要なことに気づいてしまった。


「ちょっと待て、オールドエイト。これじゃあ、寝るときどうするの!? 目をつむったらステータス画面が表示されたまま寝ろってこと?」

「お前、なかなか細かいなぁ。じゃあメニュー消せばいいだろ」


 消えろと念じてみる……あっ消えた。


「えー。じゃあこれ、毎回寝るごとに『メニュー消えろ』って思わなきゃいけないの?

疲れた日とか、つけっぱなしのコンタクトみたいにつけたまま寝そうだよ……」

「だったら目をつむった瞬間に『消えろ』と念じる習慣をつけろよ」

「オールドエイト、人が簡単に習慣づけると思うなよ!」


「だったらつけたまま寝たらいいだろ!」

「液晶画面みたいに視界に焼き付いたらどうしてくれるんだよ!」

「そしたら意識するまもなく寝られるように極限まで起きろ!」

「お前、人をそこまで追い込んで楽しいか! 睡眠はめちゃめちゃ大切だぞ!」


 その瞬間、オールエイトが殴りかかってきた。どうやらイライラの限界に来たらしい。僕は「暴力止めろや!」と言って、オールエイトの内太ももを叩いた。


 オールエイトは草むらに転がりふとももを抑えた。


「お前、それは禁じ手だろ!」

「いや、急に来たからつい……」


 はっ。サッカーのワールドカップで点決められなかった時みたいな言い訳をしてしまった。


 オールエイトはしばらくふとももをさすっていたが、少しして立ち上がりメガネを拭いた。


「め、めんどくせぇ……っていうか、シルバがボケるから俺がツッコミになるだろ。できないんだよツッコミなんて」

「ボケてねえよ! 素朴な疑問を言っただけだろ」


 僕とオールドエイトの間に小さいマクラが割り込む。


「大丈夫じゃ、シルバよ。私も同じことを思っていた。メイクを取って寝るのめんどくさいなぁっていつも思っている」


 オールドエイトが「あー、もう」と言いながらさらに割り込んできた。


「マクラ、お前は化粧などしてないだろ。っていうか、お前ら二人してボケるなよ! 全員がボケになるだろ! 欲しいわぁ。ヒロシ的なツッコミが欲しいわぁ」

「確かにな。的確に突っ込んでくれるもんな」


「馬鹿。それは映画監督とか韓流ファッションとかしてる方のヒロシだろ。ちげーよ。ましてやキャンプしている方のヒロシでもないからな。アイツは論外だ。俺が欲しているのはボクシングに夢中な方のヒロシだ」


「いや、お笑い芸人要素ゼロなんだが。それになんでお前はそんなに詳しいんだよ。そして最後のヒロシはツッコミなのになんでボクシングに夢中なんだよ」


 するとオールドエイトは再び首を振りながら、お手上げと言わんばかりに手を開いた。

「お前はアイツの『いや、無理~』という最強のツッコミを知らないんだな」

「そんなの知ってる魔族はお前か、もしくはデーモン閣下ぐらいだぞ」

「え? デーモン閣下って誰?」

「そこは知ってろよ!」


 オールドエイトはわざとらしく咳ばらいをした。


「ちなみにステータス画面を作った神の話は嘘だ」

「嘘かよ!」


「お前の世界のゲーム方式とこっちの世界が同調してたまるか。都合よすぎだろ……あっ。……いやいや、そんなこともあるかもなぁ~たぶんだけど、あるかもなぁ~」

「お前、自分で言って自分の首を絞めてることに気づかないのか?」

「気づいたからフォローしてるんだろ」

「オールエイト、矛盾をセルフツッコミしたからって許されるとでも思うなよ」


 厨二な恰好したからって、敵対する相手に「厨二かよ」とツッコませたり、自ら開き直って「厨二だよ」って言うのも、我ら「厨二警察」が許さないからな。


 って、何を言っているんだ僕は……。


「わかった。これから俺はゲームの世界と同調した矛盾という世界の原罪を背負って生きていくことにするよ……最後は打ち首獄門の上、市中引き回しの刑に……」

「いや、刑罰重すぎすぎだろ……」


「まぁ、原罪はともかく。俺が千里眼の力で能力を数値化して、お前にわかりやすくしたまでだ。お前ら好きだろ? こいういうの」

「面倒くさいことするなぁ。お前」

「俺はネタのためなら手段を選ばない男だ!」

「……全然カッコよくねぇ」


 コイツはこの状況を楽しんでいる節がある。本当に魔王を助ける気があるのだろうか。


 とはいえ、今はオールドエイトの心当たりとやらを信じるしか進む道がないのも確かだ。




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