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第18話「~アルっていう子が欲しかったんだけど、なんか違う……②」

 気が付けばロリっ娘が僕をじっと見つめていた。少し釣り目気味だけど大きい瞳の中に僕が映っているのだろうか。小さいシルクハットを乗せている黒髪。高い位置のツインテールが風で少しなびいている。


 僕の胸辺りぐらいしか身長のない彼女が僕の周りをぐるぐる回り、「ほほう、なかなか」とか言いながら見定めているようだ。


「こほん。改めて自己紹介しよう。我が名は魔苦羅マクラ。魔王の姉にあたる。さっきオールドエイトが言ったように魔法を使えるのだ。尊敬してもよいぞ」


 えへん、と小さく言いながらマクラは腰に手をあて、控えめな胸を張った。


「えーっと、僕はシルバ。異世界から来ました。そして速攻で帰る予定です」


 すると、おおっ! と声を挙げ、瞳に星が宿ったように光ったように見えた。小走りに僕へ近づく。マクラの小さな顔が僕に近づいた。小さいけど少し尖ったような唇が印象的だった。なかなかに生意気そうなロリだな。


 ……っていうか、女の子出てきてから身体表現多すぎない?


「やはりお前が異世界人だったのか! おおおっ! 異世界人など初めて見たわ! こうしてみると我々と大して変わらんなぁ」


 ロリっ娘、マクラは目を輝かせながら僕の手を取って何度も上下に振った。柔らかくて小さな手が僕の手を包んでいる。わわわわっ、と僕の心が騒ぐ。僕が戸惑っていると背後からオールドエイトが耳元で囁いた。


「お前に残念なお知らせがある。この外見だけ魔法少女は、一日一回の究極魔法しか使えない魔法使いなどではなく、普通の魔法使いなのだ」

「えーっ! 一日一回じゃないの?」


 絶対そうだと思ってたのに!


「なんの話をしておるのだ? 内容は分からんが、ゲスい話をしているだけはわかる。私は『ゆん●ん』でも『め●みん』でもない、残念だったな! 普通の実力をもつ魔法使いじゃ!」

「普通をそこまで誇れる魔法使いも珍しいな。取柄は年上ロリっ娘キャラだけか……」

「たわけ! 私だって好きでロリっ娘をやっておらんわ! 昔はナイスバディの大人の女性じゃったんだぞ!」


 必死で弁解するマクラはぷいっと横を向いて拗ねて見せた。その子供っぽい仕草で余計に大人の女性疑惑は深くなったのだが……そもそもナイスバディだからって大人の女性ってわけじゃないけどな。


「じゃあ、なんで小さくなったの?」

「世界を滅ぼす魔法を使ったせいで、自分の体を犠牲にした代償じゃ」

「実力超ある! 普通の魔法使いじゃねえじゃん。そして、まぁまぁ重い話だった……」


 しかも、この世界が維持されているってことは、世界を滅ぼす魔法は失敗したのか阻止されたってことか。


「そもそもどうして世界を滅ぼそうとしたの?」

「親子喧嘩じゃ」

「親子喧嘩! スケールでか! 魔王対勇者よりスケールでか!」


 っていうか、あの、お餅つまらせ前魔王と親子喧嘩したってことかよ。なんか親子喧嘩のあと、お餅を喉につまらせたの考えると切ないな。


「一気に力を使った反動でのこの姿。おまけに魔力も下がり、普通の魔法使いと成り下がった……せめて私にも『ハルマゲドン百分の一!』とかいう力の調整が使えてたらよかったのじゃが……」

「おい、オールドエイト、いいのか! こんなに自由な発言させて」

「いいケロよ」

「はい、アウト~。二人ともアウト~」


 もしかして、オールドエイトのような人物がもう一人増えただけじゃないのか? ますます話が進まないぞ。


 僕の心配を察したのか、マクラが「さて」と前置きして話題を変えた。


「ところでじゃ。お前ら。ここで何をしておるのじゃ」


 すると、オールドエイトは僕とマクラの間に割って入った。


「マクラ、お前に言う必要はない」

「ほう。魔王城のお荷物がなかなか言うではないか」


 マクラの言葉に驚く。オールドエイトも一瞬肩を揺らせたような気がした。


「いつも魔王城に引きこもってたオールドエイトが、異世界人を連れて魔王城から外へでるのじゃ。それは興味がわくじゃろ?」

「お前、ニートだったの?」


「ちちち、違うわい! おおお俺は、ごごごご、五天王の一人だ!」

「だがお前は我が弟である魔王の任務を――」


「働いたら負けだと思っている」

 それはそれはキリっとした顔でオールドエイトは言った。


「完全にニートじゃねえか!」


 思わずツッコんでしまった。


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