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第13話「詳しく説明したとしても理想の髪型になるとは限らない。だけど説明は必要②」

「まずは前提から。魔王城についてだ。お前たちの世界でのRPGゲームでよくある設定の世界樹というものに似ている。その大樹があるおかげで世界中の生き物が生命エネルギーを得られるという都合のいい設定のものだ」

「お前、世界樹ファンに殺されろ」

「世界樹ファンなんていません」


 言い切ったよコイツ。オールドエイトはメガネを指で上げ、話を続ける。


「ってことで話を続けるけど、魔王城も構造は似ている。魔王城があるおかげで、理性を持たない下級モンスター達が理性を持って生活できているんだ」

「いや、モンスターは叫びながら人々を襲うものだろ」


「はい、でた。モンスターは人々を襲う悪い奴らっていう価値観。それは魔王城の影響外にでてしまっているモンスターだ。魔王城の影響下にあるモンスターはお前たちの世界の常識では外見上、異形のものかもしれないが、ちゃんと理性もあって、人間界と戦争状態だから戦っているに過ぎない。しかし魔王城の外に出てしまうと現世の空気に耐えられず、錯乱状態に陥って『グオォォォッ』とか『ギャルルルル!』とか『あべし!』とかいいながら人々を襲ってしまうんだ」

「いや最後のは明らかに断末魔だったろ」

「話の腰を折るなよ」


 お前が折ってるんだろ。と心の中でツッコミを入れた。


「つまりだ。魔王城のおかげでモンスター達はより人間らしい……モンスターらしい最低限の生活を営んでいるわけだよ」

「いやいや。ここに連れていかれる途中で会ったモンスターは俺を食べるとか言ってたよ?」

「あれは仕込みだ。エキストラ料も払ってる」

「ホントに!?」


 オールドエイトはメガネを指で上げながら頷いた。

 召喚時にいた爺どもといい、エキストラ多すぎね? それじゃあ、今のこの状況を作るために皆が演技したっていうの?


「まて。じゃあ、去り際の魔王の言動も……」

「演技だ」

「騙されたわ~、めっちゃ、騙されたわ~、魔王めっちゃ演技上手いじゃん!」


 しまった。ついつい口に出してしまった。

 案の定、僕の言葉を聞いたオールドエイトの口元は緩み、鼻息荒く勝ち誇ったような表情を浮かべた。めちゃめちゃメガネを指で上げ下げしている。


「めちゃめちゃ演技の特訓したからな。練習は魔王城にバレないようにシチュエーションは学園モノの設定だったけどな」

「学園モノの設定はホントに役に立ってるの? ねえ、立ってるの?」


 そして今回は『自信満々でっしゅ』は言わないんだな……いや、ここで疑問に思うべきことはそこじゃない。なぜエキストラをやとったり、魔王が演技する必要があるかということだ。


「シルバ、お前がツッコミを入れるといちいち話が中断する。めんどくさい」

「いや、そっちがボケるからだからね!」

「はぁ……話を戻すぞ」

「いや、なんでため息!? こっちがため息つきたいわ!」


 くそっ! ついつい突っ込んでしまう! 僕の右腕ならぬ口元、落ち着け~。


「端的に言えば俺たちは魔王城に監視されているのだ。魔王が魔王城から逃げないようにな」

「いや、魔王が魔王城から逃げるの? 魔王城ってそんな物騒な所なの? さらわれたお姫様が良い寝床を確保するために自由に闊歩するような場所じゃないの?」


「今度はお前が話の腰を折ってる! 俺もボケさせろ!」

「いやいや、ボケずに話し続けて!」


「さっきから『いや』ばっかり。お前は、いやいや村の村長か。話を続けるぞ。魔王城を維持することが、我が魔王軍の維持にも欠かせないのだ。そして魔王城も生きている以上、死にたくないと考えている。利害が一致している。だが、魔力が尽きれば魔王城は死んでしまう。では、どうすればいいかという疑問に達しないか?」


 確かに言われてみればそうかもしれない。ただ、水と光と土があれば生きられる樹木のように何百年、何千年と生きる、魔力があれば。


「そのままの魔王城は樹木のように何千年もの寿命はない。自然物ではないからだ。魔王城は建築物ゆえ、魔法によって生命を得ている。つまり魔力が生命線ということになる。魔力さえあれば長寿も可能。現に魔王城はもう数千年生きている。その魔力の源は……」

「まさか魔王本人?」


 オールドエイトは黙って頷いた。


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