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第12話「詳しく説明したとしても理想の髪型になるとは限らない。だけど説明は必要①」

 森の中にある広場に風が吹く。周りの木々がそよそよ動く。魔王城近くの森だから形はちょっと怖いが、吹く風は気持ちいい。


 だけど依然として緊迫した場面だと思っている。


 オールドエイトは大の字から横になり、腕に頭を載せて俺を見つめた。


「でもさ。お前も俺を殺そうとしたじゃん。おあいこだよ」

「は? お前が開き直んじゃねーよ」

「よく聴けよ。仮に俺を殺したとしても、魔王軍に追われるぞ。俺は頭脳派だから良かったけど、肉体派にかかれば一瞬で死ぬだろう。ましてや魔王様が起きたら、ホントに死ぬぞ」

「いいさ。逃げ切る」


 僕は本気だった。開き直りと言われようが何だろうが、人に自分の生き死にを決められたくはない。本当に死ぬかもしれないと思ったからこその開き直りだと思っている。


 オールドエイトは僕の言葉を聞いて一瞬、表情が固まらせたが、再び話し始めた。


「まぁ、話を聞け。せめてこの一か月間だけでも魔王様の髪を切る方法を探ってもいいんじゃないのか?」

「本気で言っているのか?」

「本気さ。魔王軍幹部の俺からすれば、お前の命なんかより、魔王様の髪をカットすることの方が重要だからな」


 どうやら本当に僕を殺す気はないらしい。時間稼ぎにしては話が具体的すぎる。


 とはいえ、時間を稼いで仲間の到着を待っている線も捨てきれない。


 それにこれからの僕の運命が裏切りからのザマァ話の可能性もあるからな! まぁ、絶対にそうはさせないがな! ましてや悪役令嬢も出ないし、破滅ルートとかないから、絶対に!


 ――はっ。僕は一体何を考えてるんだ。

 今はオールドエイトの話を聞かなくては。


「……なんで僕なんだ」

「お前にしかできないことがあるから。俺に考えがあるんだ。魔王様の髪を切る方法」

「魔王の髪をカットする方法? だったらなんでそれを早く言わない?」

「魔王城を出ないとできない話だからだ」

「どういうことだ?」


 横になっていたオールドエイトは立ち上がった。

 僕は少し身構えたが、オールドエイトが「なにもしないと言っているだろ」と言って僕を手で制した。


「前も言ったが、魔王城は生きている。魔王城で話したことは魔王城自身に筒抜けだ。アイツには聞かれたくない」


 魔王城に聞かれたくないこと? なんだろう。


「魔王城から魔王様を守るためにはお前を始末するという名目が必要だった。じゃないとおそらくお前は魔王城自身に邪魔をされて城から出られなかっただろう」

「城を出る? 僕を始末するという名目が必要?」


 わけがわからない。


 さっきまでのふざけた表情から一転して再びオールドエイトは真剣な表情になった。


「魔王様を守ってほしい」


「わけがわからないぞ。理由を話してくれて」


 僕が考え込むのと呼応するようにざわめいていた周りの森が、風がやむのと同時に静かになった。陽の光が暖かい。


 頷いたオールドエイトは話を始めた。




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