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隻眼隻腕の魔女と少年  作者: 麻酔
第一章
8/43

魔女の覚悟

楽しんで頂けましたら幸いです。

 その日の夜。

 カンザキは、ベッドで(寝かしつけに成功した)リンフに添い寝をしながらフジノとの話を思い返していた。

 ──『魔女狩り』。

 こんな西暦も壊れた時代に、時代(さく)()もイイところの言葉が出てきたもんだ──と(なか)(あき)れたものの。

 実際に奇襲を受けたという事実が──警戒心をざわつかせる。

 過去の。

 数百年前の経験がそうさせるのだろう。

 不意に、リンフが寝返りをうってこちらにくっついてきた。カンザキの、腕の通っていない浴衣(ゆかた)の袖を握りしめて引き寄せ、そこに顔を埋めて再び寝息を立て始める。

 その寝顔を見てカンザキは、息が掛からないように顔を()らして溜息をついた。

 さて、どうしたものか……と心中で独り言を落とす。

 今日のフジノの話が本当なら近いうち、再びここが襲撃される可能性があるだろう。

 その時カンザキと一緒に居れば、リンフにも危害が及びかねない。

 それでなくとも。

 目の当たりにするだけでも怖い思いをさせてしまうことは必至(ひっし)だろう。

「………………」

 先日の、あの時のリンフの表情や様子を思い出して、カンザキは心に覚えた罪悪感に顔をしかめた。

 子供の泣き顔は見ても──思い出しても辛い。

 考えに考えてカンザキは、知り合いの魔法使い──ヴァイスに預けようかと思った。

 ヴァイスは魔法使いだが、コロニーに人として馴染んで医師をしている。彼のところであれば『魔女狩り』の手は及びにくいだろう。ここに居るよりは安全なはずだ──。

 ──と。

 ここまで考えてカンザキは、これが無理に近い考えだったことに気付く。

 今のリンフは金魚のフン状態だ。預けるとき、……いや、この話をした時点でイヤだと駄々をこねるに違いない。

 となればいっその事──

「────っ」 

 一瞬。

 コロニーに置き去りにする考えが頭を過ぎったが、これは即座に却下した。

 やることが最低過ぎる。

 それに。

 例え、置き去りにしても、リンフがカンザキを探してコロニーを出てしまったら最悪だ。荒廃域(こうはいいき)──コロニーの周辺地域にある荒れて(すた)れたコンクリートジャングル──にでも迷い込んだら、獣に襲われるか、彷徨(さまよ)って迷い極めるかして命を落とす。

 ……考え過ぎて、よからぬ方向へ思考が迷走しかけている。

 カンザキはガリガリと頭を掻いた。

 どんな案にしろ、カンザキと離れることになる案はリンフの現状を鑑みるにとても採用できない。

 カンザキは二度目の溜息をつく。

 こうなると、リンフと一緒にここを離れることが一番の得策ではあるのだが、カンザキはここを離れるわけにはいかなかった。カンザキがここを離れることによって『魔女狩り』の目が他の魔女まで視野に入れ始めれば被害が大きくなる。カンザキがいるこの場所に注目が集まっている間は余所(よそ)に手を出す暇など無いだろう。その状況を維持するためにカンザキはここに残らなければならない。

 覚悟を決めなきゃならねぇな──と、カンザキは心中で呟いた。

 己に向けて言うように──言い聞かせるように。

 何かを守りながら戦えるほど、カンザキは己が器用だとは思っていない。むしろ、不器用な方だと思っている。

 覚悟を──リンフを守り抜くという心構えを決めて臨まなければならない。

 守れるかどうか分からない、なんて思ってる余裕は無い。

 守らなければ。

 守る、と決めなければ。

 カンザキは、己の胸元で寝息を立てているリンフの寝顔を眺めた。


 ──守る。 

 読んで下さいましてありがとうございます。


 次回の更新は6月24日(水)になります。

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