《幕間・緑と藤と白と黒》
幕間です。
楽しんでいただけましたら幸いです……
カンザキとリンフの二人が帰った後。
耐えきれなくて──という風に、フジノはヴェルデに訊いた。
「……師匠、なんでリンフ君を一緒に行かせるの?」
コロニーをぶっ潰す──ということは、当然、相手の武力と確実にぶつかることになる。
武力と対峙する。それはすなわち、戦闘になるということだ。
ヴァイスの話から推測するに、その武力というのは軍隊であり、彼らが有しているのは剣でも槍でも弓でも無く──金属と火薬を用いた銃火器なのである。そしておそらく──武器はそれだけではないだろう。その辺りの文明と技術が三百年前とほぼ変わらないまでに復元されているからこそ、起きた抗争だともいえる。
して、そんな危険な場所に『魔法』を使って戦えるカンザキはまだしも、戦闘経験の浅いリンフをも送り出すというヴェルデの発言に、フジノはどうしても理解が出来なかった。
はっきり言うと。
『魔力』を得たところで『魔法』が使えなければ──カンザキの足手まといになるだけなのである。
「…………」
ヴェルデは黙ったまま、籐椅子に深く背中を預けた。ぎし、と編まれた藤蔓が小さく音を立てる。
何も言わないヴェルデにフジノが焦れていると、別口から催促の声が掛けられた。
「主。何か、考えがあるのか」
ネーロだった。彼にしては珍しく──先程ヴェルデも言っていたが──口を出してくる。
だが、ヴェルデはやはり何も言わない。
その表情は何かを言い倦ねているようにも見える。
答えるために、言葉を選んでいるような。
「──まさかとは思いますが、師匠」
それまで黙ってその場を見守っていたヴァイスが口を開く。
「あの少年に……見取り稽古をさせるおつもりですか?」
ヴァイスの予想に、フジノとネーロが驚いて目を瞠り、ヴェルデを見た。
緑髪緑衣の魔女はその顔に、少しの翳りを灯した。
その翳りを湛えたまま、ゆっくりと唇を開く。
「リンフ君には……出来るだけ早く、『魔法』を使った戦いが出来るようになって──強くなってもらわねばならない」
静かに、ヴェルデはそう言った。
争いを好まない──どころか、嫌厭しているはずのヴェルデの口から出た台詞に──三人は驚くと共に、その言葉の真意が分からず戸惑う。
その戸惑いを察してか──ヴェルデは三人の方を向いた。
厳しい表情になりながら──答える。
「彼には──
『 』からカンザキを守って欲しいのだよ」
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