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003「カノコ、かつての子供部屋の前に佇む」

 お姉ちゃんとトウマくんがダイエーに行っている間に、実家の構造と家族の紹介をしておこう。


 まずは、実家について。

 玄関を開けるとすぐに廊下と階段があり、廊下の横がリビング、奥がダイニングキッチン、キッチンの横で踊り場の下あたりが洗面所と浴室。

 階段を上がると、二階には洋室が廊下沿いに二部屋と、奥に一部屋ある。家族四人で暮らしていた頃は、二部屋が私と姉の子供部屋、奥が両親の寝室として使っていた。

 今は、奥が姉と義兄の寝室で、二部屋のうち寝室に近い方が甥っ子の子供部屋。そして、元は私の部屋だった方は、物置状態になっている。

 母は、三宮にある旅行代理店に勤務し、ツアーコンダクターとして長期にわたって家を空けることが多いせいか、部屋は要らないらしく、たまに帰ってきた時はリビングに布団を敷いて寝ているそうだ。

 が、私の部屋が無いのは困るので、早いところ不用品を片付けて、ベッドで寝られる状態にしたいところだ。


 続いて、家族の紹介。


 まずは、姉から。名前は、菊原アキコ。旧姓は梅野。年齢は三十三歳で、私とは二歳違い。薬科大学を卒業したあと、貿易センタービルにほど近い製薬会社で研究員として働いているという、筋金入りの理系女子。昔は竹を割ったような性格で、まったく男っ気が無かったので、結婚の報告を受けた時は驚いた。

 続いて、義理の兄について。名前は、菊原マコト。年齢は二十九歳で、お義兄さんと呼んでいるが、実は私より年下。国立大学を次席で卒業後、公立博物館で学芸員として働いているという。直接的な面識はないが、電話やメールでやり取りをしたことはある。

 それから、甥っ子も。名前は、菊原トウマ。五歳児で、近所にある公立幼稚園に通っている。今日、初めて会ったわけだが、姉にも義兄にも似ていないような気がする。

 あとは、母親。名前は、梅野セツコ。年齢は六十四歳だが、本人は永遠の二十歳という設定を崩そうとしない。昔から身体が丈夫なのが取柄で、病気で臥せっているところは見たことが無い。


「たっだいまー!」


 噂をすれば、お母さんの底抜けに明るい声が聞こえてきた。

 基本的に母は周囲の反応を気にしないので、思春期は特に一緒にいるのが恥ずかしかったことを覚えている。

 放置しておいても良いことは何も無いので、気が進まないが、部屋の片付けは後回しにして、ひとまず玄関に向かおう。


「トウマくーん! おばあちゃんですよ~。――あら、カノコ」

「残念でした。愛しの孫息子は、娘と一緒に買い物中です」

「今日中に帰ってくるなら、そう言っておいてよ。あんたの分のお土産は無いわよ?」


 ふぅ、危ないところだった。変な仮面だの楽器だのを持って帰ってこられては、いよいよ今夜の寝場所が無くなってしまう。

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