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(仮)①
☆「うちは焼き魚定食や!」
お店に入って、着席するよりもはやく開口一番注文する。
「あははー、モトコまた焼き魚定食だねー。」
「焼き魚定食以外の注文を聞いたことがない気がするな。」
ふたりがいつものようにうちにツッコミをくれる。
安心感。
わからないけど、そんなふうに思えてる。
いろんなことがあって、通っていた学校を辞めたあとの数年間にはなかった「なにか」。
失いたくない「なにか」になってる気がする。
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「見ろ、ここの生姜焼きの豚肉を。
まるで誰かさんみたいだぞ?」
尚輝が薄い豚バラ肉を1枚、箸で摘まんで持ち上げる。
「あははー、モトコちっぱいだもんねー。」
リーザがすぐに理解して、言葉を重ねていく。
「誰がちっぱいやねんっっ!!
揉めるくらいあるっちゅーねんっっ!!」
うちがツッコむと、リーザの「あははー」笑いと尚輝の笑顔が生まれた。
幸福感。
わからないけど、失いたくない「なにか」。
‥‥‥‥ぜったいに。
①(仮)