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元勇者の吸血鬼、教師となる  作者: 妄想少年
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004

夏イベガチャでまさかのナイチ○ゲール

 「おはようございます。」

 「あ、藤堂先生。おはようございます。」

 

 朝七時半、一人の男性が職員室に入室した。男性の容貌は若く、平凡な顔立ちだ。まだまだ新しいスーツを着こなし、平凡な顔立ちながらも気迫というものがある。……まぁ、少々目つきが悪いが。

 彼の名は藤堂、高校二年生の卒業式の日に勇者召喚され、様々な人物に鍛えられながら召喚されな目的を果たした正真正銘の勇者である。その性格は義理堅く、見ず知らずの人間でも放っておけない正義漢だ。

 彼が担任するのは今年入ってくる一年生のクラス、五組だ。若い故に一年生の担任をするということになったのである。

 無論、勇者召喚にて培った彼の実力は本物だ。魔物の中でも最上位に当たる幻獣を片手でなぶり殺すほどの筋力、俊敏性を持っている。更に教師になるだけの頭脳を持ち、戦闘においては勿論のこと、社会人としてもこの先力を持つであろうとされる人物である。

 簡単に言えば、顔以外は高いポテンシャルを誇る優良物件である。そこらにいる美形を狙うよりも、彼を選んだほうが幸せになれるだろう。幸せの基準はひとそれぞれだが、陸でもない人間を捕まえるよりも遥かに良い。

 

 「今日も時間ピッタリですね。」

 「ははは、癖になってるものですから。」

 

 現に彼と会話をする若い女教師、彼女は藤堂のことを一人の男性として狙っていた。彼女の場合は藤堂の人間性を知ってから能力を知ったという形になるが……男を見る目はあると言えよう。

 ただ、教師同士の恋愛は問題ないが、結婚となると別の学校に飛ばされてしまうためどのタイミングでアプローチしようかというのは迷うことだった。この段階では知っている者は少ないが、魔力を得たことでヒトの生命力は大きく上がり、三百年ほどは生きる生物となった。

 要は、多少遅くとも先駆けしなければ時間は十分にあるということだ。藤堂も彼女の想いには気付いた上で、ゆっくりと待っているのである。

 ……自分からアタックする度胸は無いヘタレであった。

 

 「俺だって必要無い時間働くつもりはありませんから」

 「それはそうですけど……」

 「ま、仕事さえしっかりしていればいいでしょう」

 「……ですね。」

 

 必要以上には働こうとしない男なだけ、思考は変ではないと言える。これで働きたい症候群ならば立派な社蓄というものだ。彼の正義はどうしうもないような悪にのみ働く。小さなことは軽く注意する程度だ。

 

 「……ところで、今日から新しい先生が来るんですよね?」

 「はい、といってもたった一人ですけどね。」

 

 本日は入学式兼就任式だったのだが、就任する人物がたった一人だったため就任式は行われなかった。無闇やたらにこの学園で育った教師を他に回せないのである。こうなった原因は、やはり学園長と政府の関係にあった。来るもの拒まず、去るもの生かさずがこの学園の教師の実態である。

 

 「初めての後輩ですね~」

 「年齢……としては同級生に当たりますけどね。」

 「ん? なんの間ですか?」

 「あ、いえ、なんでもないですよ。」

 

 藤堂は、これから来る元同級生が吸血鬼ということと、年齢が自分の数百倍は重ねていることを知っていた。そのため、年齢では同じではないが戸籍上は同じということに引っかかり、言いよどんでしまったのである。ちなみに、若い女教師と藤堂の年齢はまったく同じだ。学校は違うものの、年齢が同じということで親しみがあるのだろう。

 

 「あれ? それならこの一年何をしてたんですか?」

 「ん~、職歴上は空白だったと思いますよ。ですが、あいつが何もせずに家で過ごしていただけとは思えません。常に生きがいを探すような奴ですから」

 「自由な人なんですね……」

 

 --異世界連れてかれても余裕でふらついてた当たり自由としか言えんなぁ……。しかも、平然と王族脅したり……うん、今も自由にやってんだろ。

 

 彼の記憶の中で、元同級生のあの男は自由を体言したかのような人物だった。王族に喧嘩は売るわ、吸血鬼のくせして色んな種族の力を振るうわ、高校生なのに子供がいるわ、魔王に執拗に嫌がらせをするわ……彼は大変だっただろう。

 

 「ここ一年は会ってなかったですから、今まで何していたのかを間近で見たことはありません。自由の塊に間違いは無いでしょうけど。」

 「ん、連絡は取ってたんですか?」

 「近況報告みたいなもんは月一ぐらいでしてましたよ。」

 

 彼の言う親友とは藤堂のことではない。友好的な関係であるものの、やはり生きてきた時間が違いすぎるのかあまり深い関係にはならなかった。……ただの友人、というわけでもないが彼らの関係を表すのは少し難しい。

 

 「へぇ、結構仲はいいんですね。」

 「これでも二、三年はつるんでいたんで。あいつには色々助けて貰いましたから、ただの友人ってよりかは恩人ですかね?」

 「……なんだか、会う前から緊張してきました。」

 

 藤堂の懐かしむような、それでいて誰かを羨んでいるような目になった。そして、この時点で彼女の中での人物像は自由奔放だが人に手を差し伸べる人間だと確定した。本物とはちと、いやかなりずれているが、イメージは人それぞれだろう。

 藤堂からすると緊張するような厳格さのある人間でも強者特有の覇気がある人間でもない。強いて言うなら、世界がどうこうよりも家族を大事にする父親というような感じだ。彼の性格を知っている藤堂でも、緊張の無さには呆れるほどである。

 

 「大丈夫ですよ、同級生ですから。」

 「……まぁ、そうですよね。」

 「ただ、副会長やってたり定期テストでは常に五位以内だったり、化け物身体能力だったりと明らかにおかしいスペックでしたけど。」

 「その一言で不安になりました。慰謝料を請求します。」

 「丁重にお断りさせていただきます。」

 

 内心のツッコミを隠して藤堂は冷静に返す。真顔でそのようなことを言い出す若い女教師も、なかなかに奇妙な人間であることは間違いない。全国模試で常に一位を独占していたという実績を持つだけに、真顔のギャグは恐怖だった。

 尚、この学園の教師というのはどこかしら異常に高いスペックを秘めている。リベリオン等という組織を作り上げる男だ。無論、人の才能を見抜く力が無ければそんなものは運営出来ない。若い女教師もその毒牙に襲われた哀れな一人だったのだ。

 

 「……で、他にとんでもない情報があったりしませんよね?」

 「う~ん、俺はそこまで詳しいわけじゃないですからなんとも。もう本人来てるでしょうし、放課後ぐらいに聞いてみたらいいんじゃないですか?」

 

 --実は吸血鬼です。なんて言えるわけないだろ? いくら地球がこんなんなったからと言って吸血鬼の実在なんて知られてねぇよ。

 

 吸血鬼、というものは物語の中でしか登場しないとされている。いかにこの地球がファンタジーな世界になったからと言ってもたかが五年。表面的な非科学的存在は認められるようになったが、実在が認知されていない生物のことまで認めていない。

 実際には吸血鬼を含む人外のほとんどはこの世界に存在しているのだが、やはり長い歴史で積み重なってきた偶像というものが簡単に払拭されることはない。現に、未だこの世界の変化を夢のことだと思い込み、塞ぎ込む者もいるぐらいだ。

 

 「その時はお付き合いよろしくお願いします。」

 「分かりました。家に押しかけるとしましょう。」

 「……いや、あの、そこまではしませんよ? まだ知り合ってもないんですから。」

 「大丈夫です。あの家には二人女子がいますから、女性だからどうこうされることなんてありません。あいつ性への関心が欠片も見当たりませんから」

 「そういう心配ではなくてですね……」

 

 彼女とて、初対面の人物の家に押しかけるほど度胸のある人間ではない。友人の家に遊びに行く感覚の藤堂とは違うのだ。故に、心配は自分の貞操どうこうではなく社会人としての常識の部分にある。しかも、押しかけに行く理由が理由だ。社会人の常識以前より人としてのマナーだろう。

 

 「あ、からかってますか?」

 「からかうって程でもないと思います。少なくとも、真顔でボケかましてくる美人に対する態度はこんなもので十分じゃないですかね。」

 「美人って……セクハラになりますよ?」

 「なるたる理不尽、これが男の悲しきところ。泣けます」

 「どうぞ。雑巾ならそこにありますから涙を拭くのに使ってください。」

 「遂に人として扱われなくなった俺にチャンスをください。具体的には給料を上げるチャンスをください。人として扱われなくてもいいのでお金を……ッ」

 「公務員なんて薄給の仕事についたのが悪いです」

 

 まさにぐだぐだである。教師同士としては如何なものかと思ってしまうようなこの会話、端から見れば真剣な話をしているように見える真顔、言葉と顔が合っていない。優秀な人間はどこかしらおかしいとは良く言ったものだ。

 彼らはそんなくだらない会話をしながら机においてある書類を仕上げていく。主に雑用系のものだったが、教師とて常に学習のことを考えておけばいいのではない。それが使われやすい新入りなら余計にだ。

 つまり、たった一人だけ新任教師として学園に入ってくる彼は、助けようにも助けられない地獄の雑用が待っているのは確定である。皆通っている道だから皆仕方ないと思っているし、こんなことにさせた学園長をアホだと思っている。ただ、それでも変えられないのがあの学園長の持つ力であり、よっぽどでもない場合教師は学園長に逆らえない。

 

 「--んで、炎で囲んでジワジワ焼き殺そうとか言い出したんですよ」

 「うわぁ、エグいことしますね。」

 「あいつ曰く敵に当たるか当たら--」

 「皆さん。新任の先生の紹介をするのでこちらを向いてください。」

 

 彼らが雑談を続けていると校長室の扉が開き、そこから教頭と一人の青年が現れた。校長室を使っていいのは校長だが教頭はそんなことお構いなしである。

 若い女教師は入ってきた青年を観察する。

 

 --身長はそこそこ、平均的な日本人より少し高い程だから170後半ほど。体格は長袖長ズボンのジャージを着ているためハッキリとは分からないけどあまりガッシリした方ではないじゃない。どこにでもいるような体格ね。

 

 --ん~、結構美形ね? 肌は少々白っぽいし……学園長の奥さんが外人さんってことは本当なのかしら? でも、藤堂先生が言ったのとは違って頼りがいはなさそうな顔立ちね。

 

 青年は白みを帯びた肌の穏やかそうな顔つきだった。彼の肌が白っぽいのは外人の血が混じっているというのもあったが、本質は吸血鬼特有の血の気の無さである。伝承の吸血鬼とはほとんどの事が一致していないが、外見だけはある程度一致していた。

 

 「今日から就任する事になった藤原詩季先生です。」

 「ご紹介に預かりました藤原詩季です。今日から皆さんと働かせていただきます。至らぬ点もあると思いますが、ご教授願えると幸いです。」

 

 --うん、挨拶とかはどうでもいいんだけど……なんで目、赤いの? しかも眼鏡で髪長いし……頭部だけ詰め込みすぎじゃない?

 

 丁寧に挨拶する青年--詩季の瞳は、誰が見ても分かるぐらい赤々としていて、挨拶が耳に入らないぐらい彼らが凝視してしまうのは仕方の無いことだった。また、詩季の髪は男とは思えないほど長く、注目するのは当たり前のことなのだ。

ジャ○ヌがよかったよぉぉぉぉ!

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