039
ァァ……暇つぶしで思いついた小説をなんとなく書いてから楽しくて、全然本編が進まない……アァ!
なんで1日で16000文字もかけるんだよぉ!
そっちのモチベをこちらによこせよ僕ぅ!
「おい詩季、ありゃどういうことだ!?」
「声を荒げるなよ龍牙……ちょっと待って、今調べるから。」
突然崩れ落ちた不良君を見て龍牙が叫ぶ。
瞬時に魔法で空気を圧縮したから声は聞こえていないだろうが、ひとまずは落ち着いてほしい。というか、魔法は龍牙の専門なのだから自分で調べてほしい。
まぁ、とりあえずはやるべきだろう。
--《魔眼・開示》
正直、予定と違うので困惑している。今すぐにでも不良君を此方で回収したいのだが、それは少し難しい。柏木貞夫が不良君を殺そうとしていないからまだ大丈夫だと思うのだが、この状況はかなりまずい。
『状態』、精神的外傷、悪夢、半浸食
なるほどなるほど……やばい。どうしよう。
当初の予定では、ある程度柏木貞夫を追い詰めさせて不良君の強制的な乗っ取り。不完全状態から器としての力を無くさせて現れる奴だけを消すつもりだったのに。
まずい、このままだと深層心理すらも浸食されて不良君の存在が無くなる。
めったに流れない冷や汗が流れた気がした。
「このままだとやばい。全部乗っ取られる。」
「俺らに出来ることはなんだ……?」
「精神的な支援が出来たらいいんだけど……駄目だね。そっち系は全部あのアホに一任してたから無理。龍牙は?」
「俺らの意識を無理やり埋め込むことなら……出来なくもない」
「失敗したときのデメリットは!?」
「良くて記憶喪失! 悪くて肉人形だ!」
「……やるかい? 判断は君に任せよう。」
「チッ……このままあいつがくたばるのも後味悪い……やるぞ詩季」
「あいよ。くたばるなら僕も一緒だ」
親友がくたばるのなら僕も一緒だ。
それぐらい共に歩んできた道のりは長い。
--あぁ、いいとも。命の危機ぐらい既に何回も味わっている。
「我が心、我が魂、我が想いは共鳴す--《ソウル・フュージョン》」
「よし、待っててよ不良君……!」
そして僕らは、不良君の意識の中に潜り込んだ。
ここから先、僕らにも仮の死の危険がある。乗り越えられるかどうか、それは不良君の心の……いや、思いの強さによって変わる。
あ、言い訳してたの無駄になってたね。
そんなくだらないことを考えながら、僕の意識は此処ではない何処かへ行こうとしていた。
『頑張ってね……貴方』
ふと、愛しい彼女の声が聞こえたような気がした。
--でもきっと、これは僕の何かが生み出した幻聴なのだろう。
◇
--そこは、灼熱の焔が燃え盛る地獄であった。
如何なる場所からも悲鳴が聞こえ、地球には存在していない生命が闊歩していた。醜い顔、有り得ない巨躯を持つヒトガタ、数多の首を有する大蛇。
中でも、何より目を引くのは漆黒の龍であった。
圧倒的な存在感を放つ双眸、一枚一枚全てが刃物のように鋭利な鱗、紅色に発光している計12本の爪,まるで聳え立つ山のように動じない姿。
口から漏れ出るは圧倒的な熱量の吐息。呼吸をするだけで人は灼け、大地は不毛なそれとなる。もはや、生物ではなく--災厄の一種であった。
「ここは……五年前か?」
「みたいだね……あのクソ龍がいるってことはあの日以外無いよ……うん」
「時雨はどこにいる?」
「さぁ……どこかから見ているってのは何となく想像出来るけど……」
そこに、二人の青年が降り立った。
龍牙の魔法は成功し、時雨の精神空間に入ることが出来たのだ。
いや、精神空間というよりは悪夢の中、記憶の欠片といったほうがよいのだろうか。意味合いとしては大体合っているが、正しい表現ではない。
「……いたぞ、邪龍の左側にいる」
「え? 戻ってない? ってか、龍牙の話じゃ家の中じゃなかった?」
ここは、柏木貞夫の家とは別のところにある魔術師の集落。
本来の柏木邸がある場所であり、本来彼らが育つべきだったところだ。
龍牙は家の中で時雨と美雨を見つけたと言っている。当然、邪龍の近くに時雨がいる筈がないのだ。出来事とあわない。
ということは、時雨の意識は幼い頃のそれではないという事だ。
「あの中に時雨の意識があるってことだろ。……なんでガキの姿になってんのかは分からないが、何かしらの理由はあるだろ。」
「くっそ適当だね。まぁいいけど。」
「つか、今時系列だとどれぐらいよ? 五年前ってのはわかる。邪龍がいるってことだから俺らが来てないってのもわかる。そのちょっと前ぐらいか? 知らんぞ」
「せめて不良君の両親がどこにいるのか知れたら分かるんだけどねぇ。」
「ここじゃ魔法も使えないみたいだからなぁ。」
「試したの?」
「まぁな。気力のほうはどうだ?」
「……無理。今の僕らは触ったり出来ないみたいだ。」
二人の体は軽く浮いている。物に触れようとすれば通り抜け、なにかしらの行動を起こそうとしてもほとんどのことが失敗する。
彼らが感情……精神的な物体であるからである。
そのため、お互いにと時雨への干渉は可能だが、他のものへの干渉は出来ないでいる。人がいるなかポツリといるのだ。
誰にも見られていない。見えていないのだ。
「……あれは……時雨の両親か?」
「若い男女で魔術師……家の中から出て来た……うん、不良君の両親以外有り得ないだろうね。真っ先に邪龍に向かってるよ」
「ってことは、ここで死ぬのか……?」
「聞いた限りではそうなるのかな……。あのクソ龍にも傷はついていた訳だし、戦っていたってのは間違いないと思うよ」
「でも俺らがどうにか出来ることでも無いからなぁ。知り合いに死霊魔術師とかいる? 魂単位で復活させられるようなの。」
「いるわけないだろ。勿論僕も無理。肉体が欠損無し且つ死んで一分ぐらいなら権能も通じるけど……あ、祖父さんならいけるかも。」
「一応聞いてみるか……アポ取っといてくれ」
「ん、聞いとく。」
現れた男女は邪龍の前で杖を構え、なんとか抵抗している。
魔術は効いている。鱗を貫き、手足に傷をつけている。一部の肉をえぐり取り、明らかなダメージを与えている。……が、魔力の消費は大きいようで、彼らの額からは大量の汗が流れている。それでも戦うのは、家に隠している二人の子の為だ。
二人としても彼らが死ぬのは見たくない。他人が死んだところで傷つくような人生は送っていないが、あまり気分の良いものではないのだ。
何も出来ないことへと悔しさぐらいはあるのだ。
「食らえッ! --《魔銃砲》ッ!」
「そろそろ死になさい! --《氷剣舞》ッ!」
弾丸と氷の剣が宙を飛び、邪龍の体に傷を入れる。
それも十数という数では無く、三桁以上はあるだろう。
巨体のためほとんど動かない邪龍は、このままでは死ぬだろう。
--彼らが勝利を確信したとき、奴は現れる。
「留めだ--」
「いいや、それは違うな。……兄上」
「あ、貴方……貞--」
二本の剣が二人の背中から生える。
それは、柏木貞夫の不意打ちであった。
魔力がほぼほぼ枯渇状態であった二人は、なんの抵抗も出来ないまま倒れた。血は広がり、彼らの命が繋がらないことを告げる。
柏木貞夫は兄の頭を踏みつけ、会心の笑みを浮かべる。
「ククク……クハハハハハ! ようやく死んだかクズめ! これで奴らを操れば……クハハハハハハハハハ!」
狂気的な笑い声を上げながら、足元にあるそれをグリグリと踏んだ。
兄に行う行為ではない。
……元勇者の二人は、まだ現れていなかった。
--俺は、何を見せつけられている……?
五年前の忌むべき記憶を見て、時雨は一人困惑する。
熱風が吹き、彼は感覚があることに気付く。自分が何をしていたのか、何を目的としていたのか、柏木貞夫に何をされたのかを思い出し、この光景が何なのか考える。
--俺の記憶?……いや、違う。これは俺のじゃない。
かつての時雨少年は、家の中で震えていた。
齢11の子供に外にでる勇気など存在しなかった。いかに優秀な魔術師であっても、年から来る精神はどうしようもない。
そして、彼の体は今、五年前のものへと戻っている。
--となると、あのクズの記憶なのか?
直ぐ近くにいるのは巨大な龍と、戦う両親の姿。魔術師としての力を発揮し、超生命体にも優勢に戦う偉大な姿。尊敬の対象。やはり自分の両親は凄いのだと思ってから、これから起こるであろう出来事に身を震わせる。
だが、柏木貞夫は何を見せると言っただろうか。
『実際に人殺しを見ればどうだ?』
彼がその意味を考え、答えを出した刹那--
柏木貞夫は剣を刺し、高笑いを始めた。
そして、すべてを理解する。
--父さんたちを殺したのは……こいつだったのか。
時雨の心に、どす黒い何かが入ってくる。
否、入ってきたのではない。それは元々時雨が抱え込んでいたモノであった。心に絶望するほどの傷を負った彼を侵すことは、それには容易いことだ。
「……まずいッ!」
「龍牙! 急いで!」
彼の心を邪悪な力が包み込み、全てを黒く染め上げる一瞬前、残った彼の精神は、龍牙に取り込まれることで消滅を防いだ。
残るものは邪悪な力のみ。
その力が龍牙達をも飲み込もうとする。浸食は早く、誰かに止められるものではない。肉体を捨て、何かの中に避難するしかなかった。
「出るぞ龍牙! もうほとんど浸食されてるッ!」
「分かってる! クソッ……終わった! いくぞ!」
三人が逃げ出した時雨の中は、全てが塗り潰され入れ替わる。
その力は微かな神の力を帯びており、今にも暴れだそうとしていた。
……そう、それは二人がかつて倒した邪神の残党、邪神王エレボスやその幹部がいなくなったことにより動き出した存在である。
柏木時雨は--いや、柏木の正当な家系は、邪神の器たる才能を秘めていた。
つまり、柏木時雨の妹である柏木美雨も、邪神の器である。
「う……うぁぁぁああぁぁぁ!」
「美雨ちゃん!? どうした!?」
--藤原家でも、邪神の覚醒が起こり始めていた。
でも、エタリそうだからその小説は上げたくない




