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元勇者の吸血鬼、教師となる  作者: 妄想少年
35/46

034

ちくわ大明神って何者なのでしょうか。

極めて、そう、魚介類に対する侮辱を感じるのです。

我々人間がちくわ様を作るのは問題ありません。ちくわ様を食すことも問題ありません。しかし、それ故に、ちくわ大明神などという奇妙なものの存在が許せないのです。

彼の貴き女王は言いました。

『パンが無いなら、ちくわを食べればいいじゃない』と。

彼の有名なセリフにこのようなものがあります

『せんせー! ちくわはおやつに入りますか!?』

我々人間、中でも日本人はちくわという概念に愛と敬意を持っているのです。様々な変態思考を持つ日本人でも、ちくわを愛するという一つの事は普遍的であると言えましょう。

そんなちくわ様に対して、ちくわ大明神ですよ? これはちくわ様に対する侮辱と受け止めることは出来ませんか?

私は断固、ちくわ大明神なる存在のことを赦しません。

これを見ている皆様も、ちくわ様に万雷の喝采を……!


……本編より頑張った。

 「いいか? 魔術ってのはな、基本的に負の感情で強まる。どちらかといえば呪いに近いな。いや、魔術と呪術ってのは同一の概念だ。魔法と同じように魔力というものを使うが、根本的に違いすぎる。言葉と感情、な? 全然違うだろ」

 「そうですか? わりと近しいもののような……」

 「『言霊魔法』は叫ぶだけで増幅するか?」

 「しませんね。むしろ、音程が取りづらくなるから逆効果です。」

 「あぁ、だが魔術ってのは怒れば怒るほど、憎めば憎むほど増幅し、異常なほどの力を発揮するんだ。俺もぶち切れたときは魔術を使ってる。そんでもって、その怨念を込めた魔力を伝導体の中で反射させ、増幅されることによって更なる高みへもっていける。そしてそのためには、自分の心を憎しみや怒りで染めればいい。簡単だろ?」

 「ちょっと何言ってるのか分かりませんね。とりあえず、負の感情じゃなくて喜びとかそっちの感情じゃだめ何ですか? 感情を使うのならばいけると思うのですが。」

 「ははは、そんな何時消えるかも分からないような感情が強く残るわけがないだろ。特に憎しみはすごいぞ。本気で憎ましい相手ならずっと憎める。それも殺したいと心の底から思うレベルでな。理に適っているだろう。」

 

 龍牙の言葉はある意味正しい。人間とは喜びなどの感情よりも、怒りや憎しみを深く覚えている生物だ。それは執念ともいえるものであり、その執念が人間を成長させていたというのもまた事実。一概に否定できる感情論ではない。

 だが、この日本でその感情は間違っていると言ってもいい。平和に酔いしれた日本のことだ、憎しみを糧に成長しようとする人間は少ないし、その少ない人間にも微かな理性は残っている。理性が残っているからこそ復讐を考えるのだ。

 そして龍牙は、心を染めるということを容易いと発言した。

 その発言はあまりにも自然、何のためらいも無い言葉であり、かすかな挙動の変化も無かった。それ故に危険、潜んでいる狂気の底が時雨には分からない。

 どのような人生を過ごせばこのような存在になりうるのか、自分の過去と比べどれほどの苦痛や嘆きがあったのか。時雨は様々なことを考えるが、齢二十ほどの男が狂気を宿す人生というものを想像出来なかった。

 

 「いいか、恨みを晴らすなんてことは有り得ない。人間とは常に憎しみを抱え込む生物であり、それを発散させるために作られた概念が魔術だ。……まぁ、いくら魔術を使っても恨みが消えない男もいるがな。」

 「師匠……あなたのほうが……」

 「俺の場合嫁さんがいるから大丈夫だ。心の支えってのはいいぞ。恨みがあってもなんとか抑えきれるからな。」

 「けっ! これだからリア充は!」

 「急にキレられてびっくりだわ。……そんなわけで、俺は一応コントロール出来ているわけだよ。一番恨みのある奴は未だに殺せていないがな。」

 「殺しに行かないんですか?」

 「どこにいるのか分からないから殺しようが無い。それに、ただ待っているわけでもないぞ。いろんな魔物を殺しながら痛めつける方法を模索してる。いざ復讐ってときにあっさり終わったらつまらないだろ。」

 「あ、安心しました。やっぱり師匠は頭がおかしいですね。」

 「ブーメラン刺さってるな。……ま、雑談はこれまでだ。とりあえず魔術の増幅については分かったな? 原理とか理論とかは聞いても無駄だぞ。物が燃えれば二酸化炭素が出来るように、女を怒らせたら怖いことのように、そうやって出来ているものなんだからな。何故原子や分子があるのか? そんなの説明出来るわけがない。」

 「一つ変なものが混じってたような……」

 

 そもそも宇宙という概念が生まれた理由、それを説明出来ない限りは『決まり事』の説明をすることは出来ない。あくまでもルールはルールであり、前提となることであって変えることは不可能なのだ。

 魔術も等しい。何故感情により増幅されるのか、それは説明できる事柄なのではなく、世界が予め決めていた『決まり事』だ。原初の物体が何であろうとも、その物体が自分が生まれた理由、存在した理由を説明することは出来ないだろう。

 だから、人間は『そういうもの』だと納得するしかないのだ。

 

 「ということで、実践してみようか。じゃあ、ぶち切れまくった俺で《エクスプロージョン》を使ってみるからよく見ておけよ?--《神権・復讐》」

 「……ッ!」

 

 刹那、龍牙の瞳と髪は白銀に染まり、膨大な魔力が流れ出す。

 龍牙から溢れ出した『怨念』の魔力は増幅し、彼が取り出していた剣の先に集中した。空間を歪ませるほどの力が発生し、時雨は思わず飛び退いた。

 本能的な逃亡である。思考する前に体が動き、その後に思考する力を取り戻した。流れ出すのは大量の冷や汗、押し当てられた圧力に体が震える。

 --ヤバい!

 自分には被害が無いことも忘れ、警戒心を最大まで引き上げる。その間にも龍牙の魔力は増幅し、おぞましい何かへと変わり果てていた。

 

 「--《エクスプロージョン》」

 

 引き起こされたのは真っ黒な爆発。空にいた生物は全て呑み込まれ、一瞬のみ何もない空間が誕生する。そして大気が移動した。爆音が鳴り響き、爆風が発生する。

 時雨はその爆風により吹き飛ばされ地面に体を打ち付ける。大した痛みは無いが、彼の心には恐怖が渦巻いていた。

 魔術で飛ばされたのではない。魔術が発動したことによる余韻で吹き飛ばされたのだ。それもかなりの距離。龍牙の背中が遠くに見えるほどには遠距離であった。

 発動させた本人である龍牙は一歩たりとも動いていない。少しも揺らぐことなく、ただ堂々と仁王立ちしているのだ。

 --格が違う……!

 時雨が考えたのは実力の違いだけではなかった。感情で魔力が増幅させるのならば、どれほどの恨みを、憎しみを、怒りを抱えているのかは彼には分からない。

 

 「……とと、すまんな。多分やりすぎたわ」

 

 そう言いつつ戻ってくる龍牙は元に戻っていた。白銀の髪も瞳も日本人特有の漆黒に戻り、雰囲気もただの青年のものへと戻っていた。

 だが、その瞳に現れる恨みは何一つ変わっていない。濁りきってはいないが、正常な人間のそれでは無かった。

 

 「いえ、別に構いませんが……師匠どんな人生送ってきたんですか? 憎しみで変わるのならどれほどの恨みを抱えて……?」

 「なぁに……元恋人と部下が殺されただけだよ。」

 「……すみません。配慮が足りませんでした。」

 「おいおい、気にするなんておかしいだろ。少なくとも、復讐する対象ははっきりしてるし、支えてくれる嫁さんもいるんだぜ? 誰も仲間がいなかったお前よりもまだいい方だよ。……両親が死んだところ、お前は見ては無かったものの聞いてはいただろうしな。」

 「……師匠、知っているんですか?」

 「まぁな。だが、この話は今度だ。全てはお前の問題が解決してからだ。話を聞くのは……せめて、妹も一緒のほうがいいだろ。」

 「ええ、そうですね。」

 「よし、じゃああの日からの日々を思い出して魔術を放て。無理に作った恨みに意味は無いぞ。純粋な殺意や怨念でようやく強さとなり現れる。分かったな」

 「--はい。それぐらいならあまり余っていますよ。」

 

 時雨は白銀の剣を握りしめ、かつての日々を思い出す。

 それだけのことで魔力は増幅を初め、力をましてゆく。理性すらも失われるように魔力は注ぎ込まれ、膨大な力が集まったいった。

 そして、先ほどの爆発を思い出すように剣を振りかざし--

 

 「《エクスプロ--」

 

 --何時もごめん。時雨兄さん--

 

 愛しい妹の姿が思い出され、その爆発は不発に終わった。

 殺したいほど憎む相手はいる。だが、その行いで妹が悲しんでしまうのではないか、その考えが確固たる憎しみにひびを入れてゆく。

 彼の魔術が不発に終わったのは、憎い対象が目の前にいなかったかもしれない。完全な憎しみが心から湧き上がってこなかったのだろう。

 その時雨の失敗に対し、龍牙は--

 

 「ふぅん、そんなこと考えるのか。」

 

 馬鹿にするように、期待はずれといったように呟いた。

 彼は、時雨の葛藤は見破っていた。その上での嘲笑。これを見て時雨は怒りに支配されかけるが、その前に理性が妨害をした。

 そして考えるのは龍牙の言葉の真意。

 考えとあれば自分はどのように考えていたのか。龍牙は時雨に対し、どのように考えてもらいたいのか。自分とただの復讐との違い、それを考えたら答えは一つ。

 

 「--《エクスプロージョン》」

 「……正解だ。」

 

 憎悪を思い浮かべるのはより明確に、より詳細に。

 人のための復讐ではない。自分がしたいからの復讐。

 つまり、考えるべきは何に復讐したいのか、それだけのこと。

 愛という感情は復讐にはいらず、同情もまた然り。

 --必要とするのは、純粋な害意のみである。

 

 「そう、他のことは何一つ考えるな。心に迷いがあれば人間は進めないし、力を発揮出来ない。殺すと思うのならそれだけを、いたぶるというのならそれだけを考えろ。その過程は必要だが、いざ行うというときに余計な感情や考えは切り捨てろ」

 「それが、恨みに心を染めるということですね?」

 「ああ。--簡単だろ?」

 「ええ、簡単なことでしたね。これなら、あいつをぶち殺すための力がつきそうです。宜しくお願いしますよ、師匠」

 「おう。任せとけ」

 

 ここに今、本当の師弟関係が誕生した。

 決してこの関係は、利害の一致ではない。だが、感情は一致している。

 何かを殺したいほどドス黒い想い、誰かを大切に想う愛ならではの憎しみ。それがこの関係を誕生させたきっかけである。

 ……魔のエキスパートと、武のエキスパートから教えをこうた復讐者が出来上がるのは、これから十二日後のことであった。

 

 「なんか巻き込んだみたいであいつに悪いな……」

 「うわ、自分のせいなのにそれ言いますか?」

 

 なお、武のエキスパートのほうも首を突っ込んでいる男のため、龍牙が時雨に謝ることは無かった模様。

何が言いたいかと言うとですね。








私はちくわよりもバナナが好き。そういうことです

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