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元勇者の吸血鬼、教師となる  作者: 妄想少年
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032

こう、人から金をむしり取る手段ってありませんかね?


 「あのー、先生。これ」

 「ん? どうしたの?」

 

 今日は月曜日、何時も通り登校した。先日はあの子をどうするかで結構迷ったのだが、ルディとエマが匿おうといってきたので一応は家におくことにした。

 学園に通わせるように手はずを整えてやってもいいのだが、身元がはっきりしていないから面倒くさい。あの子自身も家が分からないというのだからゆっくり探していることになるだろう。まぁ、大体の場所は分かるのだがね。それはあの子が探すつもりになってからだ。

 

 「なにこれ……手紙? 差出人は……宿屋のオーナー? あぁ、あいつか。」

 「藤原先生に渡せって言われたんすけど……」

 「なんでこれを不良君が……まぁ、これに書いてるか。ちょっと待っててね。」

 「うす。」

 

 保健室でのんびりお茶を飲んでいると不良君に手紙を渡された。

 差出人は僕の親友である山崎龍牙、リベリオンの序列一位であるとともに、壁の外で宿屋を営むという変わり者だ。宿屋の運営に関しては嫁さんに一任しているらしいが、旦那としてどうなのかと思う。

 さて、どんなことが書いてあるのかな?

 

 『こんにちは、山崎龍牙です。お前が不良君と呼んでいる少年から手紙は届きましたか? まぁ、届いていないのならこれは読んでいませんね。とりあえず、俺と不良君の関係、お前にどうしてほしいのか、調査の結果を書きます。』

 

 なぜ敬語なのに僕の呼び方は『お前』なのだろうか。どちらかに統一しろと手紙か何かで送りつけたい。スマホが使えないのが厄介なところだ。

 あいつは圏外に住んでいるからスマホで連絡はしてこない。大体、面白そうなことがあったり僕の家が目的地までの中間地点になったりすると現れる。

 急に来てもインターホンを押すだけましだろうか? 偶に訪ねてくる馬鹿天使は勝手に家の中に入ってるのだから。

 

 『俺と不良君の関係を一言で表すのなら師弟です。お前に言われたところで、不良君が自殺をしようとしているところで出会いました。俺は腹パンをして不良君を家に持ち帰り、治療をして目覚めたところを自己紹介、からの強制弟子化でそうなりました。』

 

 待て待て、ツッコミたいところが山ほどあるのだが?

 え? 不良君自殺しようとしていたの? というか魔術師の家の近くで? あそこらへんって相当魔力の扱いが上手くないと駄目なんじゃなかったっけ?

 ……まぁ、それはいいとしてなんで腹パン? もう少し優しく止める方法とかなかった? あいつぐらいの腕前なら眠らせることぐらい出来るだろうに。 

 で、起こしてから弟子の任命? ……何がしたいのだこいつは。

 

 『弟子にした理由は簡単です。不良君が力を求めているように見えたからと、俺が面白そうだと思うからです。詳しい事情に関しては、また今度話しますから考えるな。』

 

 唐突に普通の喋り方になるのは何故なのだろう?

 あれか? そろそろ取り繕うのが面倒になってきたのだろうか?

 

 『で、お前に頼みたいのは武術の訓練だ。魔法や魔術に関しては俺が教えるのだが、やはり武術はお前のほうが断然上だ。それに時間もあまり多いとは思えない。また、不良君の為には色々探らなければならなそうなので俺もあまり時間はとれない。一日三時間で構わないから武術を教えてもらいたいんだ。出来れば《闘気》も教えてやってほしい。』

 

 なる程、事情は分からないが何か切羽詰まっているのは分かった。あいつが僕に頼むぐらいなのだから、本当に色々しなければならないのだろう。

 引き受けるのは構わないとして……はて、どこで訓練をすればいいのだろうか。生憎ここは保健室、鍛えるような場所はない。

 

 『引き受けてくれるのならば全力でやってくれ。《神権》を使ってもそういう力だと言ってやってくれ。そいつは大丈夫な奴だ。人を見極めることぐらいなら出来る』

 

 ……これは、真面目にやらねばならない案件、そう考えなければならないようだ。《神権》さえも使って良いと言われたらかなり力を入れることになる。

 そして、龍牙の目は本物だ。あいつ自身にも奇妙な能力があるが、素で人を見極めることが出来る。……出来るだけであまり行おうとしないのが残念で仕方が無い。

 本気になれば僕以上の観察眼もあるというのに。

 何故か僕の分野扱いをされてしまっているんだなこれが。

 

 『これで頼みは終わりだ。次に報告に入る。とはいっても大したことはなかった。精々ホムンクルスやゴーレムが護衛していたり、変に汚い部屋があるぐらいだった。その部屋についてはお前も理解しているだろうから説明はしない。以上だ。教師生活も大変だろうが、体調に気をつけてくれ。』

 

 「……ふぅ、これは--」

 「どうでした?」

 「ん、あいつからの頼みが書かれてあったよ。なんでも、君を学校にいる間に鍛えてやってほしいってね。ってことで、始めちゃおっか。」

 「……へ?」

 「--《神権・時空》」

 

 《神権》、それは神々に至った者が得る能力。人によって持つ個数は異なり、僕は五つの神権を持つ。これは神にしては少ないほうだ。僕の祖父さんとかなら百ぐらいは余裕で持っているのではないだろうか。

 まぁ、僕は神に至ることが出来ても神ではない。神権を貰うだけ貰ってトンズラしたのだ。僕の仲間は大体神になっている。

 今頃、神の義務に疲れているだろう。

 --そう、神の力というのはわりと簡単に持つことが出来る。八百万の神々がいるのだ、大して凄いことではない。

 そして、神権の中でも代表的なものがその神の名称となる。例えばクロノなら、あいつは時空が最も長けているから《時空神》となったわけである。

 

 「とりあえず、保健室を拡張したよ。」

 「そんなの《空間魔法》で出来ましたっけ……?」

 「さぁ? 熟練者なら可能なんじゃない? ……じゃあ、訓練を始めるよ。まずは体が動かなくなるまで筋トレね? パワーレベリングするよ」

 

 僕の使った《神権》は時空、つまりは時や空間に干渉する力だ。

 で、これを用いて空間の拡張を行った。また、外部の時をとんでもなくゆっくり進めることにより、長い間の訓練が可能になる。

 これを可能とするのがおよそ三時間。龍牙は僕の能力を把握したうえで、三時間というギリギリの時間を指定したのだろう。

 流石はリーダー、仲間の力をよく把握している。

 

 「これから行うのは超回復を利用した基礎能力上げね? 多分痛みで悶え苦しむことになるだろうけど、あいつの弟子になって僕にも師事をするならしゃあない。さぁ、早く腕立て伏せを開始するのだ! 勿論魔力強化は無しでね!」

 

 筋肉痛とは筋力を鍛えている時間である。僕はそのガバガハ理論を信じている。科学的には割と正しいことなのだが、そういうのはあまり詳しくない。

 ということで、超回復について簡単に説明しておこう。

 筋トレをすれば筋肉は痛んで筋肉痛になる。筋肉痛になるということは筋力が上がるが、時間がかかるということである。SOUDA、ならば回復魔法で無理やり回復を速めればよいのだ。さぁ、レッツ筋トレ……以上。

 これをやらせれば大体の奴はゴリラに生まれ変わる。

 ……そして、それを細マッチョに抑えられるかどうかが治す人の技量によって変わるのだ。僕ならば80パーセントぐらいで成功する。

 尚、失敗したらかなり怨まれる模様。

 

 「……うす。」

 

 僕の鬼気迫る勢いにやられたのか不良君は腕立てを始めた。

 ちなみにこの超回復を利用した筋トレ、やり方をミスったら変に発達している気持ち悪い人間が誕生してしまう。非常に難しい。

 しかし、時間を押しているのなら今日中に筋トレは終わらせたい。

 不良君がどれだけ頑張れるかによって変わる。

 

 ◇

 

 「……ヒィ……ヒィ……もう……無理ィ」

 「お疲れ様。--《ヒール》、次はスクワットね。」

 「なん……です……と。」

 

 二十分後、死にかけながら腕をパンパンに腫らせている不良君がいた。

 当然次は別の筋肉である。

 頑張れ不良君。君の筋肉は確実に育っている。

 

 ◇

 

 「……次は……何すか……!」

 「次は反復横飛びだね。俊敏も上げちゃおう」

 「うす! オラァ!」

 

 二時間四十分後、不良君の体はバキバキになっていた。

 今頃栄養素が足りなくなって体が死にそうになっているだろうが、そこは大丈夫。人間が死ぬギリギリのところは熟知している。

 なんたって、生と死に深い関わりのある吸血鬼だから。

 で、不良君の肉体レヴェル……レベルはというと、オールS+ぐらいまでは成長している。後時間をかければSSになるだろう。

 藤堂だってもう直ぐオールSSだ。藤堂の場合は才能がCぐらいだった気がするからそこまで早くないが、不良君ならえげつない程早く強化されるだろう。

 ある意味チートと言えなくもない。

 

 「--おぉ、後一分しか無いじゃないか。ということで不良君、今日はもうすぐ終わるから死ぬ気で頑張ってね?」

 「うす!……オォォォォォォ!」

 

 そして、三時間が経つと同時に、不良君は朽ち果てた。

 結果として、僕の想定を大きく超えることとなった。オールSもあればこれからの訓練にはついて来れると思ったが、オールS+までいったのだ。素晴らしい。

 ささっと治療をして、不良君の亡骸をベッドに運ぶ。

 起きた瞬間お腹がギュルギュル鳴ることは間違いない。一応師匠みたいなことを半分引き受けるのだから、飯ぐらいは僕のを渡そう。

 

 「……にしても、最近まで何かに悶えていた不良君が、ねぇ。」

 

 不良君は限り無く小さな声で悶えていたことを知っている。

 それは痛みということも知っているのだ。

 それなのに突然動けるようになった……と。物凄く心当たりしかないし、仮説を考えたら筋妻が合ってしまうのだが……まぁ、これはまだ考えないことにしよう。

 とにかく、依頼されたのだから答えるしかない。

 ……ところで、この依頼を受けたのだから柏木邸の調査の件、チャラにしてもらえないだろうか。流石に十万はボリ過ぎだ。

 

 「よし、借りを作ってチャラにしよう。」

 

 ヌヘヘ、そうと決まったら準備開始だ。

 待ってろ親友、逆に金を払わせてやるからな……!


 

住所特定方法は最近色々聞いたんですけどね。

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