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元勇者の吸血鬼、教師となる  作者: 妄想少年
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002

彼女が欲しい……です

 それから朝食を平らげ、予め準備しておいた荷物を二回から取ってくる。

 中に入っているのは簡単な筆記道具、パソコン、免許証の類、あと財布と白衣ぐらいのものだ。何故白衣が入っているのかと問われれば、僕は仕事で必要だからと答えよう。

 医務室で普段を過ごすことになる以上、白衣を着るのは必須とのことだ。その理屈は分からないでもないが、回復魔法を使う僕には必要ないだろうと思う。ただ、動きやすくするために素材は軽くて丈夫というものにしていてくれているらしい。この白衣をジャージの上に羽織るわけだが、少々奇妙な姿だ。

 

 「それじゃあ、行ってきます」

 「行ってらっしゃい。また後で行きますね。」

 「うん、シャルの普段がどんなのか楽しみにしておくよ。」

 

 当然っちゃ当然のことなのだが、シャルが学校でどんな生活をしているのか知らない。月に一回ぐらいはどんな様子か聞いたりするのだが、その程度だ。

 エレボスに関しては興味ない。あいつは聞いてもないことをベラベラ話すぐらいお話大好きな人間だし、暴れないか心配で何度か見に行ったことがあるので知っている。

 ドアを開け、外に置いてあるバイクのもとへ向かう。

 艶のある黒色がベースで、世間的に見てもそこそこ大型に入るだろう一品だ。とある伝手から購入したものだが、その性能はただのバイクを超越する。

 まずこの動力なのだが、電力やガソリンを必要とせず魔力で動くのだ。詳しい仕組みは相当面倒くさいので簡単に言うが、これは張り巡らせた魔石という石と、予め込められた魔法で車輪を回し動かすというものだ。

 勇者であり、吸血鬼でもある僕の魔力を込めればとんでもない速度が出る。正直自分で走ったほうが速いのだが、労力を使わない分こちらの移動のほうが便利だ。吸血鬼も飛べるからといって飛ぶことでしか移動しないわけではない。バイクがあればバイクに乗るし、電車があれば電車にも乗るのだ。

 

 「よっこらせ……っと、そいじゃ行きますかね」

 

 エンジンを掛けないからといって、音がしないわけでもない。なんかこう、作った人の昔のバイクに対する愛が感じられるものだ。もしくはマフラーを改造することに快感を覚える変態のどちらかだが、作り手を僕が知ることはない。大量生産されるような代物ではないが、作り手をわざわざ知るようなものでもないのだ。

 ブランド品にこだわりがあるわけでもない。ふつうのバイクよりも安上がりだからこれを使っているだけってだけだ。僕にこだわりがあるとしたら、使う武器や掃除道具、高品質なカメラぐらいのものだろう。

 

 「この町も変わんないなぁ……何も発展してないじゃないか。」

 

 世界のそこらを動き回っていた僕からすれば、この小さな町は生まれてからほとんど変わっていない。精々スーパーやコンビニが増えた程度のものだろう。ドが付くほどではないが、僕の生まれた此処は田舎以外の何者でもない。

 これまでは依頼を達成することやらに忙しくてまともに風景も見ることが出来なかった。だから、じっくりと見るのは久しぶりだし、これからはそこまで離れなくていいという安心感もある。ちょっと前までは週に六日は夜しか帰れなかったから。

 

 「どこを見ても畑……うん、争いなんてまったくないねぇ。」

 

 現在の地球はそこそこ危ないが、それでもあの世界の危険と比べれば生易しいものである。ただの農民も腰にはナイフを持ち、常に何時現れるか分からない魔物に神経をすり減らしていた。中には奴隷として働かされているものもおり、仕方ないことだと分かっていてもあまり気乗りのする世界でなかったことは確かである。

 一方でこの世界の農民はまだ優しい。柵などを使い侵入者の警戒は行っているが、怒鳴り声を上げて人を叩きつけたり食べ物を奪いにきた賊を殺したりはしない。食べられるか聞いたら貰えたりするぐらいには余裕もある。

 あぁ、僕は奴隷とかが駄目だと言うつもりはないし、腰にナイフを吊り下げていることだっておかしな事だとは思わない。あの世界の現状や文化にとやかく言うつもりはないし、正義感を燃やして制度を廃止したりするつもりはなかった。

 そういうのはどうしようもなくて優しく、それでいて強い親友に任せることであり、新たな罠や効率のよい殺し方を身につけようとしていた僕の仕事ではなかった。一応、制度を廃止した時の影響を伝えたことがあったが、あの親友は見事にやらかしてくれた。

 今となっては懐かしい、毎日がドタバタしていたあの頃のことだ。

 ……僕も手伝ったあれだが、二回目の時にあいつが賢者扱いされているのは流石に笑わせて貰った。腹がよじれるまで盛大に笑った。

 

 「そういやあいつはどうしてんのかな? 一週間前ぐらいからロシアに行ってるらしいけとど……まぁ、無傷で帰ってくるか。」

 

 親友とは頻繁に顔を合わせる。あいつとは裏関係の仕事でよく会うのだ。違いと言えば、僕は非公式なのにあいつは公式に雇われているということである。やってることの種類は大分違うから当然のことなのだが、何だか理不尽な者を感じる。

 そんな親友は今ロシアで仕事をしている。現地人や部下ではどうしようもならない化け物が現れたらしいが、あの親友が負けるとは思えないので何の心配もしていない。今頃、時季はずれのロングコートや口を隠すマフラーを付けて戦っている筈だ

 

 「にしてもなんだっけ? 改名したんだっけあの学校」

 

 この地球のある日、世界を揺るがした事件が起こった翌年僕の母校である勤め先は改名した。もともとよく分からない名前の学校であったが、現在では更によく分からない名前へと変わっている。

 よく分からない名前というのはその言葉の意味自体が分からないというわけではない。ただ、なんでそんな名前にしたのかが意味不明なだけだ。改名されたあの日以上父親の正気を疑ったことは未だに訪れていない。

 何故こんなことを口に出したかというと、改めて頭のおかしさを認識するためと、実は嘘だったのではないかと希望を持ったためである。……そして、当たり前のように改名後の名前を思い出し、謎の頭痛がした。

 

 「あ~、不安しかないなぁ。藤堂の野郎がいるから大分マシだろうけど……」

 

 知り合いがいるにしてもあの糞親父が作った学校……それだけなら中身はまともな可能性もあるのだが、あのような改名を受け入れる生徒や先生となれば……やはり、不安しか残らない。しかも、制服も奇妙な変化を遂げていると聞いた。

 無論、あの世界にも変な学校はいくつもあった。親友が臨時講師として行ったことあるらしいが、受け入れがたい伝統がいくつもあったらしい。

 そして、あの糞親父もその文化をよく知っている。あの人ならばまず間違い無く陸でもない決まりを作っているだろう。詳しい説明はまた後で受けることになるのだが、後からというだけでまた不安である。

 ちなみに、今は朝の四時半だ。出勤するには少々早い時間かも知れないが、説明があるから早いだけだろう。毎日この時間なんて事はありえない。ありえない、と思いたいが父親があれである以上ありえないと言い切れない。

 

 「お、見えてきた」

 

 バイクを走らせること三十分、僕の勤めることになる学園の姿が見えてきた。場所としては、周りに被害を及ぼさないように街中とは隔離されている。とは言っても五百メートルぐらいのものだから、帰りに街によることは不可能ではないが。

 僕の家から三十分ぐらい、十数キロほど離れたここらへんには街の入り口のようなものだ。日用品を買いにくるときは大体ここである。まぁ、田舎の街というぐらいなので、かつての東京の四分の一も栄えていない。

 

 「見事に結界張られてるなぁ。あれだけのものを維持するのにも大分金がかかるだろうに。やっぱ私立って凄いわ」

 

 ありとあらゆる衝撃に耐えられるものが学校の周りを覆っている。認めたくはないが、あの糞親父の財力も武力も相当なものである。あの結界を作り出す武力、そしてその結界を維持する財力、僕でも余裕で行えるが可能な者は限られているだろう。

 僕の知っている中でも、あれを問題なく出来るものは百といない。更に、余裕を持って行使出来るとなればその五分の一にも満たないだろう。

 

 「生徒は……まぁ、誰もいないよね。」

 

 四時半に出発して現在は五時である。このご時世、五時に学校に着いている生徒などよっぽど頭がおかしいのかやむを得ない事情があるものだけだろう。少なくとも、僕が生徒会副会長として動いていた時はそんな早くに来る生徒はいなかった。……おっと、確認のために来ていた僕がいるではないか。

 前言撤回である。こんな時間に来ても全然頭はおかしくない。寧ろ、こんな時間に学校にいるなんて物凄く勉強熱心ないい生徒である。

 さて、戯れ言はこれぐらいにしておいてさっさと中に入ろう。ぐだぐだと頭の中で考えていても不毛なことだと知っているではないか。

 

 『ピピッ……認証、オ通リクダサイ』

 「なんで音声付きなんだよこれ。微妙に声怖いんだけど?」

 『ピピッ……認証、仕様デアリマス』

 「こわっ! 誰だよこんな仕様にしたの……」

 『ピピッ……認証、……失敗。ソノ質問二対スル返答ハ設定サレテオリマセン』

 「……」

 

 ふざけているのかと声を大にしてツッコミたい。が、こんなところで叫ぶのは大人としてどうかと思うし、何より負けた気がするのでそんなことはしない。ツッコミに関しては親友に任せるものだし、あいつならいい反応してくれると信じている。

 そして、最後の質問にわざと答えないあたりこの仕様にしたやつの性格が伺える。きっと、散々煽ってから逃げるタイプだ。同類だからなんとなくわかる。この仕様にしたやつは何かしら嫌がらせをするとしよう。

 

 「……オラッ!」

 『オヤメクダサイ! オヤメクダサイ!』

 

 とりあえず、むかついたにはむかついたので蹴り上げる。こんな叫び声の設定までしているということは……わざとだな。

 

 

※ただし二次元に限る

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