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元勇者の吸血鬼、教師となる  作者: 妄想少年
16/46

015

吸血鬼の本体が血の鎌足……塊ってマジなんですかね。

 「二分経った、集合しろ。……よし、とりあえずおまえ等がどれぐらい鍛えてきたのか知りたい。ってことで体育館十週、八分間な。」

 「……え? まじ?」

 「無理だろ……」

 「安心しろ。おまえ等だけに走らせるようなことはせん。四分経ったら俺も同じ数だけ走る。追い抜かれないように気をつけろよ? さぁ、スタートだ。」

 

 藤堂には有無を言わせぬ気迫があり、困惑しながらも生徒たちは走り出すことになった。体育館の面積は50×30の1500平方メートル。県立高校よりも非常に広いが、それは多く面積を取ることで怪我を防ぐためである。

 そして、走り方によって変わるだろうが一周の距離はおよそ1300メートル前後、それの十倍だから13キロメートルである。これを八分間で走りきらねばならないということは、秒速約27メートルで走らなければならないということだ。現在の地球でならば全然可能な速度と言える。

 

 「……あっ、言い忘れてたが、遅れたら腕立て5000な。放課後に捕まえるから覚悟しておけよ。まぁ、それすらサボったら評定1だが。」

 

 十秒ほど経ったところで藤堂がサボっていた生徒に対して死を告げる。無論、言い忘れていたことではなくわざとだ。ここで何かしらのアクションを起こしてくると理解していたものはしっかりと走っていたが、サボりながらダラダラ走っていたものは速度を大幅にあげる。

 

 「あの先生鬼畜だろ……目がマジだ」

 「まぁ、それを見越して走ってたから大丈夫だろ。この場で、じゃなくて放課後って言ったあたりマジなんだろうけどな。」

 「このままならいけるよな?」

 「さぁ? やばくなったら体力捨てて走るしかないだろうな。」

 「……これだけで終わりそうにねぇけどな。」

 

 富樫と田中、二人にはこうして軽口を叩いたりする余裕がある。中学時代サボっていなかったことやペースを簡単に脳内で計算して走る能力があったためである。馬鹿な者は体力を直ぐに使いバテるのだが、彼らはその類ではなかった。

 しかし、体力を直ぐ使うということはどんどん体力が増えていくということとほぼ同義であるため、どちらの練習が身のためになるのかはその場によって変わる。彼らはこの場は走りきるだけでいいと考えたのだ。

 

 「--四分経ったな。じゃあ、俺もいくぞ?」

 

 その言葉が聞こえるとともに、何名かの生徒は超高速で移動する藤堂の姿を目に捉えた。捉えたと言っても姿は霞んでギリギリといった程度……それなりの速度で走っている彼らから綺麗に捉えられない異常な速度であった。

 走っている藤堂からすればそこまでの速度ではない。鍛えたといっても精々Aランクが一つ混じっている程度の生徒と、ステータスのほぼ全てがSSである藤堂とは大いなる壁が存在する。超えられるかどうかは才能と努力次第だが、努力だけでも到達できるには出来る。そのような例はいくつもあるのだ。

 

 「お二人とも、あまり驚いた様子ではありませんわね?」

 「……ん、イネスさんか。驚いてるに決まってんだろ。なんですかねぇあの速さ、少なくとも人間じゃないよな」

 「--失礼だな、俺は人間だ。」

 「ヒェッ、怖いんでやめてください。」

 「あなたが悪いので文句は言えないのでは?」

 「いってやんな。聞かれてないと思ったらついつい口が滑るもんさ。ところで、滑るっていったら受験だけどイネスさんってどうしたん?」

 「唐突すぎますわ……、普通に受験しましたわよ? 親が勧めてきたり勧誘は来たものの選んだのは自分ですもの。どうでもいいですけど滑るって不謹慎ですわね。」

 「……ごめん、俺ら受験してないんだわ。」

 「マジですの?」

 「--この学校は小中高一貫性だ。」

 「ちょこっと現れるのやめてくれません?」

 

 富樫や田中を含む半分ほどの生徒は中学が同じだ。その中学も学園長が私財で作り上げたものであり、現在も簡単な戦闘訓練をしたり通常の教育をするのに使われている。高校までの地盤固め、といえば分かるだろう。準備期間である。ちなみに小学生は通常の教育に加え、魔物の危険性を教える機関となっている。

 

 「そういやイネスさんや、一緒に走る相手はおらんので?」

 「あ、確かにそうだな。女子なら女子とが普通だよな。」

 「……そのニヤニヤとした顔やめてくださる? あなた方の水道から出る液体を全て硫酸に変えますわよ?」

 「はっはっは、ぼっちなんだな。」

 「はっはっは、俺らがいるじゃないか。」

 「はっはっは、ぶち殺しますわッ」

 「やべ、逃げるぞ田中」

 「おう、指揮は任せるぞリーダー」

 

 みなが真面目に走っている中、平然と会話をしながら走り続ける三人は控えめに言っても頭がおかしい。また、イネスが少々キレたことでさらに速度が上がり、とんでも無い能力のアホと認知されるようになった。

 

 --あいつら、厳しくいったほうがいいな……。

 

 ただし、三人が引き気味で見られる中藤堂だけは面倒くさそうな生徒に内心ため息を吐いていた。中途半端に優秀な分、扱いが面倒だろうというのが彼の感想だった。事実、これから彼は大変である。

 

 「終わった終わった~、いやぁ、久しぶりのマラソンは疲れるなあ」

 「息切れはおろか汗すらかいてないくせに白々しいですわね……。」

 「まったくもってそうだな。一応10キロは走ったのにな。」

 「あなたにも当てはまりますわよ!?」

 

 彼らの中でイネスが突っ込みをするというのが確定しようとしていた。覆そうにも指摘すれば弄られるのでほとんど不可能だが……。それに、イネスとて言える立場ではない。富樫や田中と同様に、彼女もまた息切れはおろか汗すらかいていなかった。べたつきが一切無く煌びやかに輝く金色の髪がその証拠である。

 

 「おー田中、イネスさんが怖いぜ」

 「おー富樫、イネスさんが怖いな。まさに邪神……寧ろ邪そのもの。」

 「あなた方遠慮の欠片も無くなって来ましたわね!?」

 「……さて、そろそろ真面目な話をしようか。田中から見てこのクラスの人間はどうだ? ちなみに俺は普通だと思う。俺らも含めてな」

 「やれやれ、イネスさんのせいでふざけちまったな……。俺からしたら平均的に高めって感じだな。ま、他のクラスを知らないから断定はせんがね。」

 「私!? 私のせいですの!?」

 「落ち着け、カルシウムが足りないんじゃないか? オススメは豚骨スープだ。あれって骨を出汁に使ってるだけあってカルシウムが多めに含まれてるらしいぞ。」

 「え? そうなんですの?」

 「いや、知らんが?」

 「……そろそろブチ切れますわよ。」

 

 彼らが漫才を繰り広げる中、走り始めてから八分が経過した。時間内に間に合わなかった者は一人もいなかったが、一部の人間は大量の汗を流しており、その者たちは最初サボっていたか純粋に体力が足りないのだろう。

 藤堂は脳内でチェックをしていく。真面目に走りきった者、体力ギリギリの者、陸でもない会話をしている者、汗水かかず余裕でいる者等である。忘れないためにも後で纏めるつもりだが、それまで覚えておく記憶力の良さが彼にはある。

 

 「八分経ったな。では集合、早く来い。……なんだ、なかなかに余裕そうじゃないか? これならもう一セットぐらいしても大丈夫そうだな。」

 --冗談だが……マジで大丈夫そうなのが何人もいるからな。馬鹿三人組とか阿久津とか……あいつらあたりは大丈夫だろ。

 「冗談だ。今から行うのは体術の基本、突きや蹴り、足裁きとかもだな。本来なら対魔物用の基本も教えるべきなんだが、今日は対人用の基本だ。」

 

 この学園に入った以上、生徒たちはよっぽどのことが無い限りは人や魔物との戦闘をこなす職業に就く。リベリオンというエリート部隊はあるものの、戦闘をする機関はそれだけでもないのだ。警察や自衛隊等、活躍する場はいくらでもある。

 そのため、生徒たちは嫌でも戦闘訓練を行わなければならない。それが人類が生き残る為の方法であり、国を背負う者が選ばなければならない選択なのだ。まぁ、この学園はエリート校に入るものの学園長が学園長なのでなんとも言えないが。

 

 「せんせぇ、無手なんですか?」

 「あぁ、言っただろ? まずは確認だ。おまえ等の体つきや筋力から武器をチョイスするつもりだからな。素手のほうが効率がいい。」

 「それってセクハラ案件では……」

 「ん? 嫌なら別にいいぞ。ロマン武器を使いたいのだって歓迎だ。魔物程度なら俺は逃げられるんでな。生徒がどうなろうが知ったことじゃない。」

 

 敢えて突き放すようなことを言っても、悪人でない限りは助けてしまうのが藤堂である。いや、彼自身もロマン武器を使っているというのがあるかもしれない。何しろ戦いには一切向かないであろうデスサイズである。

 

 「俺だってこんな武器がメインなんでな。人のことは言えんよ」

 「どっから出したし……」

 「空間魔法の一種だ。二年生になるころには使えるようになってるだろう。あくまで藤原先生が教える気分になればだがな。……そんじゃあ、始める。ぶつからないように間を取りながら並べ、ゴー」

 

 彼らは藤堂に対して様々なことを思いながらも素直に並んでいく。目つきが目つきなのでなるべく反抗的なことはしないようにしているのだ。ついでに言えば、藤堂が欲望の目を向けようが目つきが悪いせいでそれは殺意にしか見えない。

 

 --ガキの体なんざ興味ないしな。

 

 本気で観察している分彼の視線は恐ろしい。しかし、たかが一年で危険な先生扱いされなくなったのは彼の人徳と言えるのだろう。この生徒たちもいずれ分かってゆく筈だ。もっとも、彼に対して向き合おうとすればの話だが。

 

 「簡単にコツだけ言っておく。脇はシメろ。拳に力を入れるのは目標に当たる瞬間だけだ。回転も掛けろ。腰を捻れ。というわけで突き、始めッ!」

 「えと、こんな感じ?」

 「喧嘩殴りになってるじゃねぇか。脇しめろ脇」

 「あなた方はぶれないですわね……」

 「よせやい、照れるだろ」

 「誉めてないですわ」

 「……おまえ等、放課後に補習したいのか?」

 

 いくらアホ三人組だろうが、放課後に補習させるられると思ったら真面目に練習しだすのだった。……あくまで表面上は。

 

やべぇ……矛盾起こりまくりだよぉ。

(直す気は)ないです

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