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-BLOOM-  作者: すいかばきばき
19/19

-BLOOM-

「Byyyy‼︎」

 不快な叫び声をあげながら突進してくるルクシアの攻撃を剣で受け止める。反動でよろけたそのルクシアの体をを灰色の剣(ソキウス)で真っ二つに切り裂き、ソウルを消滅させる。

「DDeeee‼︎」

「……」

 背後にいるもう一匹のルクシアから放たれた光線を、俺は剣の刃を使い、その光線を跳ね返した。

「Dyy⁉︎」

 ルクシアは光線により体を貫かれ、ソウルと共に溶けて消えた。

「GGGGGoo‼︎」

 雄叫びをあげながら背後からルクシアが襲いかかってくる。

「奇襲が目的なら、まず叫ぶのをやめたほうがいい」

 剣をくるりと回転させ逆手に持ち変えると、振り返る事もなく、俺は下から真っ二つにそのルクシアを引き裂いた。

 だが、その攻撃は硬い皮膚で覆われたそのルクシアのソウルまでは届かなかった。

「GGAA‼︎」

 ルクシアは、すぐに周りのグラナで体を修復すると再び襲いかかってくる。

「こいつは一発で仕留めろ、だよな…華輦」

 俺はそう呟くと、跳躍してその攻撃を避ける。

「出てこい…」

 拳に力を入れると、俺のソウルに共鳴(レゾナンス)した体内のグラナが形を変え、半透明の巨大な腕が出現し、拳と重なるった。

「はあぁぁ‼︎」

 俺はその巨大な拳でルクシアを粉微塵に叩き潰す。

「Gogyy…」

 ソウルの壊れたルクシアは、崩壊し、溶けて消えていった。

「お前も、早く消えろ」

 ルクシアが消えても、なお残るその“黒い腕”に向かって言葉をぶつける。

 あの日からだ――華輦が死んだあの日から、俺のソウルには華輦のルクシアが住み着いた。

 華輦を守ることの出来なかった俺への(いまし)めのように――


「燈利、また一人で狩っていたの?」

「おわっ…と、リューネか」

 物思いにふけっていたせいで気付かなかった。

 いつのまにかリューネが心配そうな表情を浮かべながら俺の隣にたっていた。

 俺は慌てて黒い右腕を隠す。

「コキュートスに帰ったらまた燈利いなかったからさ…クリルが心配だから探しに行こうって」

「クリルが?」

 向こうの方を見ると、木の陰からコソコソとこちらを伺っているクリルが目に入った。

 クリルは俺に存在を気付かれると、ムスッとしながらこちらに近づいてくる。

「べ、別にお前のためじゃないさ。ただお前が一人でやられると責任が私らや九条さんにいくからな、それが嫌で探しにきてやっただけだ」

 ふんっ、とそう鼻を鳴らすクリルにリューネは「素直じゃないなぁ」と笑いかける。

「そうか…でも仕方ないさ、パートナーがまだ見つからないからな。一人でやるしかない」

「なら見つかるまで休んでろ。一人じゃ危険だ。何かあった時にフォローができない」

 クリルはそう言って俺を叱咤した。

「一人じゃないさ、タローも一緒だ」

 そう言って俺は右腕をひらひらと降る。

「もっとも、こいつを()と数えるべきかはわからないけどな」

「そんな――」

 自虐的にそう言う俺に、二人は哀れみの視線を向けてくる。

 やめろ…そんな目で俺を見るな。

「ま、今日はもう帰って寝てるから安心してくれ」

 俺は懐からスマホを取り出すとコキュートスへと電話をかける。

 こんな居た堪れない場所にいるのはたくさんだ。

「おぉう人狼か!どうしてしまったのじゃ、今日はもう帰るのか?」

 コール音が三度なると、すぐにアイルが出た。

「あぁ、とりあえず周辺のルクシアは倒したからな。いつも通り俺の部屋に直接ゲートをつなげてくれ」

 じゃあな、と言って電話を切ろうとするとアイルが慌てて引き止めてきた。

「いやそれがってばさ、今日はカイねぇ様が人狼の事めちゃくそ呼んでんのよ。パートナーの事で話があったりするとか、ないとか、だからカイねぇのいるとこ繋ぐから!だからそゆことで!だからよろしくな!」

 俺の返事もきかず、一方的にそう言うとアイルは電話を切った。

「パートナー…か…」

『通話終了』という文字が画面に表示された数秒後に目の前にゲートが出現した。相変わらずの仕事の早さだ。

「パートナー?」

 俺の呟きを訊いたリューネが俺にそう問いかけてきた。

 流石コキュートスのエースは耳がいい。

「あぁ、パートナーの事で九条さんから話があるらしくてな。大方、新しいパートナーが見つかったんだろ」

 俺のその言葉にリューネは嬉しそうに笑みを浮かべた。

「新しい、パートナー…そうなんだ!華輦ちゃんみたいにいい子だといいね!」

「あぁ、そうだな」

 無愛想にそう告げると、俺は二人に背を向け、ゲートへと入る。

 こんな風な態度をとってしまう自分に嫌悪感を覚える。だが、今の俺は他人(ひと)に気を遣ってやれる余裕はないのも事実だった。

「ちゃんと、組めよ…」

 寂しそうに顔を歪めるリューネの側で、クリルがそう呟いた。



 xxx



「おかえりなさい門音くん!待っていたわ」

 脱走して、勝手にルクシアを狩って帰還した俺を、九条さんは文句ひとつ言わずに笑顔で出迎えてくれた。

「久しぶりだね、燈利」

 そして、九条さんの隣にはいつか見た銀髪の青年が立っていた。

 背が高く、底の見えないこの感じ、すぐに思い出せた。七戴天のヒカリという男だ。

 なるほど、こいつが――

「今日は、すいませんでした。なんかむしゃくしゃしちゃって…」

 頭を下げると、俺は辺りを見渡す。

『B22』――ここはよく華蓮と九条さんと俺との三人でミーティングをしていた場所だ。

 もっとも、華輦は九条さんからもらったお菓子を食べてただけだったが。

 今は――その空間には違う人間がいる。それが俺にはどうも気に食わなかった。

「アイルから聴いていると思うけど、今日はあなたに新しいパートナーの事でお話しがあって呼んだの」

 九条さんは柔らかい口調でそう俺に語りかける。

 あなたの気持ちはわかっている、そう言っているように――

「察しはつくと思うけど、この人があなたの新しいパートナーのヒカリ君よ」

 九条さんに促され、青年――ヒカリはゆらりと俺の目の前に右手を差し出した。

「前に一度会ったことがあるよね。こんな形でまた会えることが出来て嬉しいよ。よろしく」

「あぁ、よろしく…」

 最低限の言葉だけを放ち、俺はヒカリの手を握る。

「門音くん…」

 俺のその様子を見て、九条さんが心配そうな顔を浮かべる。

「華蓮のことで…まだ門音くんが心が落ち着かないというのなら、断ってもいいのよ」

 そう言う九条さんに俺は「大丈夫ですよ」と言って笑ってみせる。

「今日はちょっと体調が悪いだけです」

 新しいパートナーは、九条さんが言うようにまだあまり落ち着かない。

 けれど、単独でルクシアを狩っている今の俺が九条さんの不安の種になっているのは明らかだ。だから、俺は少しでも九条さんの負担を減らしてあげたい。

 華輦が亡くなってから九条さんの笑顔は貼り付けた偽物の事が多くなった。

 辛いのは、俺だけじゃない――

「そう、それなら良かったわ」

 そう言って九条さんは少しだけ胸をなでおろした様だった。

「じゃあさっそくだけど、明日から任務に向かってもらうわ。それまで、良かったら二人で親交を深めてみて、親睦を深める事こそ、パートナーで一番大切なことだからね!」

 九条さんはそう言い残すと、俺たちに手を振ると、さっさとエレベーターに乗って他の階へと行ってしまった。

 親睦を深める言ってもな…こいつと何を話せばいいんだ?

「………」

 部屋には俺とヒカリだけが取り残され、沈黙が訪れた。

 だがその沈黙は、ヒカリが口を開くことで破かれた――

「燈利、今から一緒にここから抜け出そう」



 xxx




 ゲートから出ると懐かしい景色が視界に広がった。

 地面に落ちた看板には掠れた文字で『空島公園』と書かれていた。

 奇遇にも、ここは俺が初めて華蓮と二人で任務に出た場所だ。

「にしても、随分と唐突だな」

 遅れてゲートから出てきたヒカリにそう話しかけた。

 あのままあそこに二人でいても正直ラチがあかないと思って二つ返事で了承したが『ルクシアを倒して親睦を深めよう。それがコキュートス流さ』とは何とも突拍子のない話だ。

「昨日の散歩をしていたらルクシアのソウルが集中している場所を見つけてね、他のコキュートスの人が間違えて入ってしまう前に潰しておこうと思って」

「ふーん、そうか。けど本当にここなのか?何も――」

 俺がそう言うのと同時に電流がバチバチと流れる音ともに大量の輪が空間に出現し、俺とヒカリは一瞬のうちにルクシアの群れに囲まれた。

 タイプ的には両手に刃がついているだけの一番ノーマルはルクシアが大半を占めているが、雑魚とはいえこれだけの数がいると流石に尻込みしてしまう。

「じゃあ、始めようか」

 ばっ、とヒカリが両手を広げると、ヒカリの周りに虹色に輝く羽根が無数に出現した。

 そしてその羽根はひらひらと舞いながら淡い光に包まれると剣や斧といった武器へとその姿を変え、ヒカリを囲む様に宙に浮いた。

「随分カッコいい能力だな」

 そう言った後、俺はソウルを共鳴(レゾナンス)させ、両手に剣と槍を出現させた。

「燈利のほどカッコよくはないさ」

 ふっと笑うとヒカリは周りに浮かぶ無数の武器を同時に操り、一寸の狂いもなく的確にルクシアへと斬りつけた。

「俺も負けてらんないな」

 襲いかかってくるアンヘルを槍で薙ぎ払い、剣で切り裂いていく――


 どれだけの時間が経ったのだろうか、俺は必死にルクシアを斬りつけていた。逃げまどうルクシアも悲痛の叫びをあげるルクシアも、俺は必死に殺していた。

「随分と荒々しい闘い方だ、それじゃまるで猛獣だ」

 その言葉でハッとする。夢中でルクシアを倒していた俺の純白の戦闘服は、ルクシアの黒い返り血で黒く染まっていた。

「こいつらは敵だ、慈悲なんていらないさ」

 言いながら、襲いかかってくるルクシアを斬り捨てる。

「ルクシアは負の感情に囚われた“元”人間だ。そんな事を続けてれば、いつか燈利も変わらない存在になる」

 ヒカリは冷静にそう言いながら何体ものルクシアを引き裂き、粉砕し、ソウルを抉った。

「お前だって、俺と変わらないじゃなねぇか」

「あぁ、だから俺は化物なんだ――」

 こちらを振り返り、ニコリと笑うと無数の武器を一斉に振り抜き、周りのルクシアを一掃した。

 黒い血が弾けて、飛んだ。

「だから、燈利には化物にはなってほしくないんだ」

 ヒカリはゆっくりと俺の方に歩いてくる。

「燈利がルクシアと戦うたび、化物に近づくって言うのなら俺はここで燈利を拘束して永遠にコキュートスに幽閉する。燈利が傷つかないように、それが師匠との約束だから――」

 低い声でそう言うと、ヒカリは虹色の羽根を変化させ紅い鎖を出現させた。

「ちっ――そういうことかよ!」

 パートナーなんかじゃなくて、俺を――ただ俺を閉じ込めようと遣わされただけってことかよ‼︎

 俺は剣を構える。七戴天だろうが、相手は一人、なら…チャンスはあるはずだ!

「GGyyy‼︎」

 ヒカリに飛びかかろうとした刹那、俺の背後でルクシアと雄叫びが訊こえた。

「なっ――」

 ヒカリの方に気を取られ、背後からの攻撃に俺は気づかなかった。

「yyyy‼︎」

 天へと高く向けたアンヘルの刃が俺に向かって振り下ろされる。

「はっ!」

 瞬間、ヒカリは手にした鎖をルクシアへと巻きつけ、動きを拘束させた。そしてその直後、空から降ってきた俺の身長よりもはるかに巨大な槍がそのアンヘルを貫き、消滅させた。

「でも――可愛い子には旅をさせよ、っていうのが俺の信念だからね」

 ヒカリはそう言ってニコリと無邪気に笑うと、俺に背を向けた。

「燈利の背後(うしろ)は俺が守る。だから、燈利は目の前だけに集中してろ。闇に堕ちるなんてことは、俺がさせないさ」

 ヒカリはそう言ったあと顔だけこちらに向け「格好つけすぎか…」と苦笑いを浮かべた。

『あかりの、うしろは、私がまもる。だから、あかりは、まえだけみてればいい』

 ヒカリの背中が、いつの日かの華輦の姿と重なって見えた。

「あぁ、けっこーカッコつけすぎだったな」

 俺はいたずらっぽく笑うと、ヒカリにそう口を開いた。

「さて、それじゃあ――」

 周りの大気が震え、バチバチと音を立てながら大きな輝く光の輪っかが二つ出現した。

 ヒカリは無数の武器を空中に浮かべる。

「あぁ」

 俺は剣を構えた。

「「いきますか‼︎」」



「こいつで――終わりだ‼︎」

 サイに似た姿をしたルクシアに、俺は巨大な黒腕で一気に叩き潰し、ソウルを消滅させた。

「ははっ、中々良い闘い方だったよ。乱雑だしそそっかしいけど、さっきのよりは2倍いい」

 ヒカリはふわふわと宙に浮きながら、パチパチと手を叩き笑っていた。

「はぁ…まったく、お前は俺がピンチだっていうのに少しも手を貸さないしよ…ほんとに俺のパートナーなのか?」

 俺の傷の治りが早いから良かったものの、ヒヤヒヤした場面がとりあえず片手で数えられないぐらいあったぞ。その間もこいつは笑っていたし…。

「そんなことないさ、俺はパートナーとしてちゃんと燈利が死なない所を見極めて任せていただけだよ」

「なんだよそれ…」

 言いながら俺は袖を伸ばし、右腕を隠す。

 今更遅いが、見られたいモノではなかった。

「なるほどね…あまり見られたくないと」

 ふーん、とヒカリはニヤニヤと笑う。

「よかったら、訊かせてよ」

 ヒカリは壊れかけのベンチに腰掛けると、横の空いてるスペースをポンポンと叩いた。

 いや――、と俺は断ろうとしたが、ヒカリは断固としてベンチを叩き続けた。

「き・か・せ・て・よ」

「はぁ…わかったよ…」

 俺は人生で一番なんじゃないかと思う程のため息をつくと、ヒカリの隣へと腰掛け、呼吸を整えた。

「これは――呪いなんだ。パートナーなのに華蓮の最期を渡してあげられなかった俺に…華蓮が怒ってるんだ」

 俺がそういうとヒカリはキョトンとした表情をする。

「燈利、本当にそう思ってるのか?」

「本当って…当たり前だろ!それ以外に考えられない!」

 少し声を荒げながらそう言う俺を見て、ヒカリは腹を抱えて笑い始める。

「な…なにが可笑しいんだよ!やっぱ最低だなお前!」

 そう言って俺が背を向けると、ヒカリは「ごめんごめん」と言って目に浮かべた涙を拭いて話を続けた。

「だって、燈利がイメージしているのはきっと違うモノだろう?燈利の記憶の中での華蓮ちゃんはそんな真っ黒な姿をしかしてなかったのかい?」

 そう言われてハッとする。

 そう言えば俺がこの腕が出てくる時は決まってルクシアとの戦闘中だった――

「……」

 俺は深く深呼吸すると、華蓮のことを思い起こす――


 いつも無表情で、いつも話す時はすごいゆっくりで、

 でも戦う時はすごい頼りになって、

 九条さんの事が好きで、クリルとリューネの事が好きで、そして、俺の事も好きで、

 いつも小さな手で俺の事を引っ張ってくれていた華蓮の事を――



 黒い腕がきらきらと煌めきながら、徐々にその姿が消えていく――そしてその煌めきは一つの光に形を成すと、ひらひらと俺の手のひらに乗っかった。

「だろ?」

 そう言ってヒカリはニヤリと笑う。


 キラキラと輝く光が少しずつ、少しずつ消えていく――

 そして俺の手のひらには、金色に輝く金盞花が暖かな光を纏いながら残った――


「本当だ――」

 頬を、温かい涙がつたう。

「ヒカリの、言った通りだったな」


 華蓮は恨んでなんていなかった。

 あんなに優しかった華輦が俺を恨むはずなんてなかった。

 そんなの――そんな事少し考えればわかったはずなのに…。

「俺は、大バカ野郎だな…」

 ポツリとそうつぶやくと

『そうです、あかりは、はんせいしなさい』

 一瞬、華蓮が俺を叱る声が訊こえた気がした。

 その声が妙に懐かしくて、温かくて――涙が溢れて止まらなくなった。

「あっ!いたいた!クリルー!ここに二人いたよ」

「お!ほんとだここにいた!まったく…九条さんカンカンだぜ、早く帰ってこーい!」

 顔を上げると、遠くの方でクリルとリューネがこちらへ手を振っていた。

「本当だ、これは相当怒ってるね」

 ヒカリはそう言うと、俺にスマホの画面を見せた。

 俺は涙がを拭いその画面を見る。

 そこには『今日は、天武の仕事を手伝ってもらいます』と表示されていた。

「天武ですら苦悩するあの量を俺たちでやるなんて…今日は眠れないかな」

 ヒカリはそうボヤいた後「よっこらせ」と言って立ち上がる。

「帰ろうか」

 ヒカリはそう言うと俺に手を伸ばした。

「あぁ」

 俺は金盞花をそっと胸に抱くと、ヒカリの手を取った。


 金盞花の花言葉は『失望』『絶望』など哀しいものばかりだ。

 けれど、一つだけそうでない物があった。

 それはとても華蓮にぴったりの言葉だった――


 この先に何があるかはわからない。

 もしかしたらまた壁に道を塞がれてしまうかもしれない――


 もう俺の手を引いてくれる華輦はいない――


 けれど、華蓮は俺と一緒に歩んでくれている――


「見守っていてくれ、華輦」

 俺は、ゆっくりと、一歩を踏み出した――





 エピローグ


 突如世界にルクシアが現れ、人間を襲い始めてから三年――

 ルクシアと人間との長い争いは、長く仲違いを続けてきたコキュートスと国際政府とが互いに協力し、ルクシアの本拠地を叩くことで根絶に成功し、人間側の勝利で幕を閉じた――

 しかし長い戦いの中で都市は崩壊し、傷ついたこれからの地球の復興をどうするか、という議論がスイスのジュネーブで開かれた。

 参加者各々の意見が衝突する中、国際政府のトップ――ディベロ・イレネオは、この戦争を終結させた最大の功績者である《七戴天》の男に意見を促した。

「花を植えてみてはどうだろう」

 その男はただ一言、そう呟いた。

 その提案に参加者が動揺するなか、イレネオはただ一人だけ笑うと、その提案を無理やり承諾した。


 そして、その男の提案通り、世界中に花の苗が植えられた。


 今は蕾であるその花は、やがて綺麗な花を咲かせ、傷付いた人々の心を、その花言葉にふさわしく深い愛情で包みこむことだろう――


 この計画は植えられた花の名前にちなみ、

『カレンデュラ』

 と名付けられている。


 ―fin―

ここまで長い間読んで下さり、本当にありがとうございました。またいつか、出会いがあればお願いいたします○ ̄I

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