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勇者斉藤  作者: まさし
9/9

異世界への扉

前回までのあらすじ:

 書くほどの内容がないよう。



「そんなどうでもいいこと話してる場合じゃないだろ。今俺たちが話さなきゃいけないのはなんだ?お前の今後についてだ。」


俺は脱線しかけていた話題を強引に戻す。俺はコイツと仲良く漫才がしたい訳じゃないんだ。夜勤明けで疲れているし、さっさと寝たいんだぞ。


「そうだったわね。それで、私はどうすればいんのでしょうか?」


先ほどまでの明るい表情から一転して、セフィリアは不安そうな表情を浮かべる。コイツをどうすればいいかなんて俺が教えてほしいくらいだ。


「えっと、お前は魔法?とやらを使って、この世界に来たんだよな?」

「そうよ、それがどうかしたの?」


魔法か…こいつが住んでいる世界にはそんなものがあるのか。よくある中世ファンタジーみたいな世界なのか?安もんのコーヒーをありがたがるくらいだから文明レベルは低いのかもしれない。

…ちょっと待て。そう言えば俺なんで異世界とか魔法とかあっさり受け入れているんだ。

よく考えるとおかしい気がする。俺は何であんなに簡単に異世界とか信じてしまたんだ?

…確か交番で設定を見せられて…。設定ってなんだ?俺は何を見せられ…なんだ急に頭が…。


「どうしたのよ、急にボーっとして。」

「え、あ?いや…すまない。何話してたんだけ?」

「しっかりしてよ。私が魔法でこの世界に来たのかでしょ?それで私はイエスと答えた。ドーユーアンダスタン?」

「ああ、そうだったな。」


いつの間にか意識が飛んでいた。話している途中で意識で飛ぶなんて、やっぱり夜勤明けで疲れているせいかな?早く寝たいぜ。


「えっと、それで魔法とやらは、この世界では使えないから帰れないと。」

「そうなのよ!この世界にマナがないせいで魔法が使えないのよ。どうすればいいの?私魔法使いなのよ!魔法が使えない魔法使いなんてどこに需要があるのよ。」


わめき始めるセフィリアを無視して俺は話を進める。俺に相手にされなかったのが堪えたのか。セフィリアは恥ずかしそうに



「マナねぇ…。それってどういうものなんだ?」

「どういうものって、どういうことよ?」

「ほら、あれだよ。見た目とか、固体なのか?それとも液体?」

「?マナはマナよ。それだけよ。」


俺の質問に対して、何を言っているんだとばかりにあきれた顔になるセフィリア。

くそ、馬鹿相手じゃ。質問するのも一苦労だ。…質問を変えるか。


「魔法ってどういう手順で使うんだ。」

「そんなことも知らないの?まったくあんたってバカね。」


セフィリアは途端に得意げな顔になり、俺を見下してくる、が、我慢だ。早く話を進めるためには余計なことをいう訳にはいかない。耐えろ我慢だ。


「いい?魔法ってのはまず魔方陣を書いてね…。何か書くものある?」


俺はセフィリアに紙とペンを渡してやる。セフィリアは興味深そうにペンを一瞥した後、紙に複雑な図形を書き始めた。


「ここをこうしてっと。はい出来上がり。」


セフィリアは得意げな顔で、書き上げた紙を俺に見せつけてきた。まるで子供だな。


「へーよく書けてるな。」

「でしょ?」

「それで、これにマナ?を使うと魔法が使えるのか?」

「違うわよ。ホントバカね。いい?私たち魔法使いは大気中のマナを取り込むことで、魔力を生成するの!この魔力を生成する能力が高いものほど高位の魔法使いであり、邪竜王四天王の私は…。」

アホが間抜け面でバカみたいな自画自賛をほざき始めるが、俺は軽くスルーし。一人は考え込む。

大気中に存在するってことはつまり、マナは気体なのか?この世界にはないってことは酸素や窒素、二酸化炭素ではなさそうだが…。コイツにいろんなガスを片っ端から吸わせてば、何とかならないかな?


「ちょっと聞いてるの?」


俺が話を聞いていないことにようやく気付いたか。間抜けな奴だ。


「聞いてるよ。さすがセフィリアだ。尊敬するぜ。」

「そ、そう?まあ、それほどでもあるんだけど。」

「それで、魔方陣に魔力を通せば魔法が使えるんだな。」

「え、そうだけど。アレもう終わり?もっと私を称えてもいいのよ?」

「つまり、魔方陣が回路図で、魔力が電力…みたなものか。」

「おーい、聞いてるの。ねえもっと褒めてよ!」


回路図か…そう考えると何とかできそうな気がする。…くそこのアマまとわりついてくるな考えに集中できないだろ。


「とりあえず、魔力の代わりになるものを探すのが最善なのか。」

「え、そんなものあるの?」

「わからんが、試してみる価値はあるだろう。」

「おお、なんだがよく分からないけど頼もしい!」


セフィリアは期待に満ちたまなざしで俺を見つめる。そ、そんなに注目されると、なんか緊張するな。なんだかんだ言ってコイツ美人だし。

ええい余計なことを考えるな。いまは魔力に変わる何かを探すことが先決だ。神秘的な…何か…。


「そうだ!」

「思いついたの!?」


俺はセフィリアに答えず台所に駆け込み。目当てのものを掴みとる。



「これだ!」


リビングに戻った俺は勢いよく手にしたものを魔法陣の横に置く。


「なにこれ?変なにおい。」


魔方陣の上のものを見て、セフィリアは顏をしかめる。


「変なにおいとは失礼な!これは味噌だ。」

「ミソなにそれ?」

「我が国が誇る伝統的な調味料だ。」

「調味料?な、なんで調味料なのよ。」


セフィリアは俺の行動に明らかに動揺している。


「いや、昔から誰が最初にこんなものをどうやって作ったのかが不思議でさ。…その神秘的じゃない?」

「そ、それだけ?」

「…あと、昔から妙に好きなんだ。ミソ。」

「アンタ頭大丈夫?こんな臭い調味料が、私が生み出す美しい魔力の代わりになると本気で思っているの?馬鹿なの?」


言いたい放題のセフィリア。俺も何とか言い返したいが、事がことだけに言い返さない。くそ、最初に思いついたときはこれしかないと思ったんだが、冷静になると味噌はないよな。回路図に例えたんだから電池とか使うべきだった。我ながらどうかしていた。


「いや、俺も…。」


我ながらどうかしていたと思うよ。

そう続けようとした言葉を俺は思わず飲み込んでしまう。目の前の光景に目を奪われたから。


「魔方陣が…。」

「光ってる…。」


あっけにとられる俺とセフィリアを置き去りにして、事態が進行する。魔方陣の横に置いた味噌が突然宙に舞ったかと思うと、それは渦を描いた後、扉の形へと変貌する。


「ゲートが…開いた。」


あぜんとした様子でセフィリアが呟く。マジかよ。やっぱり味噌は万能だったのか…。



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