覚醒する力
「あ、斉藤さん早かったですね。もしかして、そんなに僕に会いたかったんですか?いやー照れるな。」
俺は息も絶え絶えになりながら、交番に駆け込んだ俺をにこやかに出迎えるくそ警官。殴りてぇ、そのニヤケヅラ。
「ちげえよ!ゼーハーゼーハー…おい、指名手配とか言ってたけど、どうなったんだ?嘘だよな?そうだと言えよ、くそ野郎!!!」
俺は問い詰めるために警官を締め上げる。警官は俺の剣幕に同じた様子もなく、平然としていた。
「やだなあ。斉藤さんたら、あんな冗談本気にしたんですか?」
「冗談だったのか…?」
「安心してください、大丈夫ですよ。指名手配犯情報の作成ボタンは押しちゃいましたけど、ちゃんと犯人自首で処理してきましたから。」
「それのどこが安心できるんだ!ちゃんと間違いだったと連絡して処理しろよ。」
「えーそれだと僕、始末書を書かないといけないじゃないですか。勘弁してくださいよ。斉藤さん程度のことで減給とか僕、嫌ですよ?」
「てめえの好みなんて訊いてないだよ!いいからやれ。やらねえとこの拳銃で手前のケツの穴を増やしてやるぞ!」
俺は警官の腰にあった拳銃を奪い取ると、股間付近に向ける。下半身を狙っているのは…別に他意はないぞ、拳銃にコードが付いているから下半身にしか向けられなかっただけだ。
「や、止めてくださいよ!わか、分かりましたから。ちゃんと間違いだったって連絡します。だから、拳銃をおろしてください。」
俺の本気具合をようやく理解したのか、警官は降参とばかりに慌てて俺の要求をのむと言ってきた。
俺は自分の要求が通ったことに満足し、拳銃を返し、警官を開放するのだった。
「まったく、勘弁してくださいよ。行動が凶悪犯そのものじゃないですか。そんな狂気を抱えたままで、よく現代社気に適応してますね。驚きですよ。」
「てめえがみたいのが警官を務めている狂気に比べたら些細なことだろ。」
「あ、それ言っちゃいますか?いやー、僕もよく警察官になれたなって内心、不思議に思っているんですよ。」
どこか照れたように笑う警官。コイツ頭おかしんじゃないか。
「あ、そうだ。斉藤さん」
俺が内心呆れていると、警官は何か思い出しとばかりに俺に話しかけてきた。
「彼女さんが奥で待っていますよ。外国人の方みたいですが、イヤー美人ですね。ちょっと目のやり場に困るカッコをしていますけど、もしかしてあれ斉藤さんの趣味ですか?もうこの変態!」
「知るか、ウゼェ。そのなれなれしい態度を止めろ。そんな女知らないって言ってるだろ。」
「えー冷たいな、彼女泣きながら叫んでいましたよ。斉藤喜一、喜一って。」
俺は思わず頭を抱えたくなる。そう言えばもともとはあの変質者が俺の名前を呼んでいたことで呼び出されたのが始まりだった。
セフィリアとか言ったか?なんであの女俺の名前を知っているんだよ。
「まあまあともかく、会ってあげてくださいよ。彼女寂しがっていましたよ。」
「…だから俺はそんな奴は知らないと…。」
「フフフ、待ちかねたぞ勇者カイン。」
俺と警官が問答をしていると、いつの間にか例のコスプレ女が
「罠とも知らず、ノコノコと。ここ既に我の支配下に置かれた…たぶん。キサマの命運もここまで…だといいな。なんなのよこの世界は!さっきからまったくマナを感じないじゃない。これじゃ私何もできないじゃない。インチキ!インチキ!!!…あと、よくもだましてくれたわね。売ってなかったじゃないマナなんて。この嘘つき!嘘つき!!!」
「勇者カインって…え、斉藤さん。ちょっとマジですか!?彼女にそんなプレイを要求してるんですか?ちょっと受けるんですけど、なんですか勇者って。斉藤さん勇者になりたかったんですか?」
激昂するコスプレ女。その女の言動に警官はツボに入ったの、笑いながら俺を指差す。俺もなんだか恥ずかしくなってきた。
くそ、俺が悪い訳じゃないのに。
「もしかして、毎晩そんな感じなんですか?俺の夜の聖剣を食らえみたいな?」
「聖剣だと!?まさか、カイン。邪竜王様が施したゼルナスブレイドの封印を既に解いてたのか!…ちょっと待って、それじゃ私勝てないじゃない!…争いは何も生まないと思うのここは話し合いを。大丈夫。私魔族と人間の間にも友情…絆…フレンド!友達になれると思うのよ。」
「ゼルナスwブレイドwwww、やべかっけぇ。斉藤さんやめてくださいよ。僕を殺すつもりですかww」
慌てたように態度を変えるコスプレ女と笑い止まらない様子の警官。
そんなクズ共のクソくだらないやり取りを見ていたら、怒りの感情をリミッターを超えたのか、俺は怒りに震えていた頭が逆に冷静になっているのを感じる。
この取るに足りない蛆虫どもをどうやって処理すれば、一番手がかからないのか。今の俺の思考はその一点に支配される。
俺は無言のまま、力を解き放つのだった。