その一
今日も四人は早めに登校することに。
五月二日水曜日。
瑞葉の家から南にある坂の下で四人が揃うと、また階段を登って草地の中を歩いていく。八時過ぎに教室に着き、後ろから入ると、端末に指をかざして出席を取る。瑞葉は窓際の後ろに座り、隣に結菜、承芽は瑞葉の前、生実は結菜の前に座ると、四十五分までの雑談が始まる。
「普段の生活から隔離された空間の中で、何かを見いだそうと思考が働いていくところに、なんとも言えない心地よさがあるよねぇ」
瑞葉は物思いに浸る。
「天原には色んな言葉が存在してるけど、響きと意味が似てる言葉があるよね。『名前』は天原の言葉ではないといわれる言葉の『name』と、意味と読み方が似てるし、『身』は『me』、『凍る』は『cool』、『空』は『solar』『入る』は『in』、『いただく』は『eat』、『見られる』は『mirror』、『暗い』は『cry』。言葉意外にも、解読されてない古代文字が天原の古代文字で解読できたとオカルト本に書いてたし」
結菜はオカルト雑誌でよく扱われれる話題を挙げる。
「天原以外に陸地が沢山あったという説に関係しているのかもしれないよね。海の底にある人工物らしき痕跡も引っかかるし」
生実もよくある話題を言う。
「古代文明だね」
瑞葉は、とりあえず思い付いた事を言う。
「そもそも宇宙の始まりに非現実を感じるんだよね」
承芽は更なる謎に迫る。
「何もない世界に時間や物質が出現したのなら、何もない空間に物質を出現させる創作世界の魔法と同じ根拠とも捉えられると思うんだけどなぁ」
生実は力説する。
「それで、神の存在に行き着くんだよ」
承芽は答えが見えてくる。
「そこで猫神さまの登場なわけね」
瑞葉は納得した。
午前の授業が終わり、瑞葉達は中棟一階の食堂に向かう。
「今日はマグロの味噌漬けに、しじみの味噌汁かぁ」
瑞葉は盆に皿を並べていく。
「今日は地下で食べようよ」
承芽がそういうと、四人は階段を下りて地下の食堂に向かう。席に着くと、四人は黙々と食事に集中す。
「瑞葉は相変わらず食べるの早いな」
生実は瑞葉の見事な食べっぷりに感心する。
「ちょっと足りないかな……」
瑞葉は食べ終ると席を離れ、皿と長方形の紙パックを持って戻ってくる。
「次の授業は体育だけど大丈夫?」
結菜はおかわりをする瑞葉を気遣う。
「そうだった、しかもサッカーだった……ちょっと心配かなぁ……まぁ大丈夫でしょ、とりあえず図書室でじっとしてよう」
四人は給食を終え、今日も昼休みを図書室で過ごすことにした。
今回から二話です。