その一
五月二十七日、日曜日。瑞葉は目を覚ます。今日は朝から対戦会を開く予定。CPUを相手に待っていると、結菜と承芽と生実が来た。
「おはよー、みんな」
瑞葉が扉を開けると三人が待っている。さっそく熾烈な対戦が始まった。
瑞葉のあやめ対結菜のかがみ。まずは瑞葉が先勝し、結菜が追い付く。そして瑞葉が二勝して瑞葉が決勝進出。
「おっ、勝った!」
瑞葉は驚く。
「近頃の瑞葉の成長は本当に著しい」
結菜が褒める。
「ぐへへ」
照れる瑞葉。
「瑞葉はほとんど決勝に進出したことないもんね」
生実は瑞葉の過去の実績を漏らす。
「対戦相手が強ければ、相手の成長も早くなるしね」
承芽は瑞葉を対戦相手として申し分ない存在と認めた。
承芽のわとこ対生実のレシル。生実が先勝する。しかし、承芽が調子を上げて逆転勝ちし、決勝進出。
「あれあれ? 瑞葉と私、どっちが勝つか見たいんじゃない?」
「良い質問だね。まあ、興味はすごくあるけど、手は抜いてないよ」
言われてちょっと、そうかもと思う生実。
瑞葉対承芽。いつもなら、どうせ負けるしと気軽に戦いに挑んでいた瑞葉。瑞葉はかつてない対戦の重みに僅かな硬さが生じながらも、今回はもしかしたらと心が踊る緊張感。
まずは承芽が先勝。しかし、初戦の緊張感が解けた瑞葉は攻めに転じる。すると、瑞葉の圧倒的な攻めに体力が50%に減る。
承芽はいつもと違う感触に関心したところで、一気に反撃。瑞葉も体力を50%減らす。
静葉さんとの決定的な違い。それは、守りが甘いところ。静葉仕込みの攻撃は脅威ではあるが、それなら承芽は負ける気はしない。
承芽は追い討ちを仕掛ける。しかし、瑞葉は冷静に承芽の連撃をガードする。承芽は瑞葉の切り返えの速さに、精神的に強くなったと感じた。今までなら瑞葉はこのままズルズルと体力を減らすところだが、冷静さを取り戻し、しっかりガードを固める。そこから瑞葉の反撃は続く。気付けば聖の煌めきで瑞葉が追い付く。
承芽はかつてない瑞葉のガードからの反撃に対応しきれなかった。逆に瑞葉は承芽の反撃を散々受けてきている。瑞葉の反撃の原動力は精神力が高くなったからなのか、慣れきたからなのか、答えが錯綜する。
三本目。瑞葉の開始早々の攻撃をガード。少しだけ様子を見てから反撃と思いきや、瑞葉の突進技で攻撃を崩され、そこから更に体力を減らす。承芽も攻撃を与えるが続かず、隙を見せたところに瑞葉の反撃が押し寄せてくる。
入力の速さで負けているのか、そんなはずはない。入力の速さなら負けてない。しかし、あっさりと反撃を受ける。これは、瑞葉の立ち回りと的確な選択。通常攻撃か技かの判断。そんことは当たり前のこと。やはり、入力の速さなのか。
瑞葉の聖の輝きが決まる。三本を瑞葉が取って瑞葉の勝ちとなった。
「お、勝った!」
瑞葉がさらっと勝った感想を言う。
「瑞葉の動きには臨機応変だけじゃない何かがあったよね」
生実が検証する。
「余裕というか、遊びというか」
「そうか、瑞葉にも分からない謎の動き。なんなんだよ、あの変なしゃがみとか。まあ、何かをやるふりはあるけど」
結菜の言葉に承芽は答えを結論づけようとするが、どこか腑に落ちない。
「とりあえず、勝とうと思っただけかな。負ける時は負けるし、集中力と冷静な判断だね」
「まあ、承芽も瑞葉の上達ぶりに戸惑うところもあっただろうし、これからが本番でしょ」
「確かにあったね」
生実の言葉に承芽はちょっと嬉しくなった。




