その七
格ゲー大会が終わり、そのあと。
格ゲー大会が一段落すると瑞葉が言う。
「そう言えば、あと少しで絵が完成するんだけど、描いてきていいかな」
「それならみんなで見どけよっか?」
結菜が提案する。
「そうね」
承芽が賛同すると、四人は隣の部屋に移動して、畳部屋に敷かれた絵の回りに座って見つめる。
「これは、瑞葉の家かな」
結菜が訊く。
「うん、そうだよ」
絵には、瑞葉の家と森を描いた風景画が描かれている。
瑞葉は絵皿一枚と筆一本に、葡萄茶色の顔料が入った瓶と膠液の瓶を用意する。顔料を瓶から少し出し、膠液を数滴垂らして中指で溶いていくと岩絵の具ができあがる。中指をタオルで拭き、手を戻す。
「ふう……」
瑞葉は一呼吸して、心を整える。
筆を持つと、筆先に岩絵の具を取り、絵の真ん中に持っていき、ゆっくりと筆先を絵に触れさせ、上から下への動きを数回繰り返す。瑞葉は筆を置くと手を戻す。
「できた」
瑞葉は満足そうな表情になる。
「おめでう」
三人は口を揃えて言うと拍手をする。
「ありがとー」
瑞葉は完成を見届けていた三人に感謝する。
「なんか完成した達成感で外に散歩でもしてみたくなっちゃった、ちょっと行ってみようよ」
晴れ晴れとした表情で瑞葉が言うと、四人は気晴らしに散歩をすることにした。
外に出ると四人は南に進み、木々の先の急斜面を降り、目の前の更に急斜面な階段を登っていく。
「さっきからずっと学校に行く道を進んでるわね」
承芽が指摘する。
「そういえば……」
生実も気づく。
先に広がる崖に着くと、四人は道から外れて草地にの中を進んでいく。
「あ、猫さん」
瑞葉は斜面から四匹の猫が山を登ってくるのが見えた。
「さっきの猫達みたいだね」
生実は毛色でついさっき見かけた猫と気づく。
猫達が近寄ってくると、瑞葉の足元にはキジトラの猫、瑞葉の左側に立つ結菜の足元には茶トラ白の猫、瑞葉の右側に立つ承芽の足元には三毛猫、結菜の左側に立つ生実の足元にはキジトラ白の猫が寄ってくる。四人は挨拶代わりに頭を軽く撫ると、猫達も四人と同じく南方向に向く。
「そうだ、写真でも撮っておこう」
生実は小型の飛行カメラを取り出すと、光石の浮遊する力で滞空させる。飛行カメラは自動で四人の前方や後方などから撮っていく。
「猫達もお気に入りの所みたいだね」
四人が来た道を戻っていき、瑞葉は振り返ると、猫達はずっと森を眺め続けていた。
猫達と別れて、四人は北東にある商店街に辿り着く。
「それじゃあ、今日はこの辺りで解散でいっか」
承芽の店の前で承芽が言う。
「それじゃあ、また明日ね」
瑞葉はそう言いって家に帰っていった。
瑞葉は布団の中で一日を振り返る。完成したゲームや、描き終えた絵の出来映えに満足感を覚え、猫と出会ったことも思い出す。
「次は猫を描こうかな」
一話が終わりました。