その五
五月二十日日曜日。四人は隣の首都に電車で向かった。
彩原駅で降りて会場の彩原館に着くと、広場には様々な店が並び、大勢の人で賑わっている。中に入ると、他のゲームの本戦が行われている。
「まずは予選だから、会場は別の所だね」承芽
予選会場に入ると、20台程の対戦台が並んでいる。ここで30人以上との総当たりで一番成績の良い選手が本戦に出場する。予選グループは30組あり、事前応募で承芽は1組、生実は16組、瑞葉は17組、結菜は28組。
「予選は一斉に開始だから、ここで一旦お別れだね」瑞葉
「本戦で会おう」生実
「またね」結菜
「よし、行ってみよう!」承芽
練習を30分の練習を終え、各自で対戦が進められていく。
承芽、生実、結菜は全勝で1位になり本戦出場を決めた。瑞葉は最終戦を残して2位。三人はモニターで瑞葉の対戦を見守る。
「この前、試遊機で対戦した上宮射依ね」承芽
「承芽ですらあのネルスに負けちゃったし、瑞葉には厳しいかな」生実
「いやぁ、あれは軽く手合わせしただけだし……」承芽
「でも、結構本気じゃなかった?」結菜
「まぁ、途中からは割りとだけど」承芽
良いところもあったが、やはり1本も取れず、瑞葉は3位で予選を終えた。
「ごめん、3位だった……」瑞葉
「まだ敗者復活戦があるよ」結菜
「2位と3位に分けて、1位だけが本戦に出場できるんだよ」生実
「よし、次こそ!」瑞葉
瑞葉は全勝し、32番目に本戦出場を決めた。
「おめでとう瑞葉」結菜
「ありがとう、みんなのおかげだよ」瑞葉
一時間後、 場所を移して、本戦1回戦が始まる。ホールの真ん中にある舞台に承芽がひょいっと階段を上がっていく。
「んじゃ、よろしくー」承芽
承芽は女忍者わとこをを縦横無尽に操って2連勝し、2回戦に進んだ。生実は空の民レシルを操って2連勝、結菜は霊の民シノネで2連勝。瑞葉はあやめを使い、1勝するが、2戦目で相手の猛攻を止められず1対1。だが、冷静さを取り戻し、的確なガードと隙を突いた反撃で2勝目。
2回戦。四人共2連勝で準々決勝に進出。
「瑞葉、ついにこの日が来たわね。本気で勝負よ」結菜
「もちろん!」瑞葉
お互い積極的に攻めていく。しかし、僅差で結菜が1本を取る。瑞葉は深呼吸して2本目に挑む。シノネの連続瞬間移動からの攻撃をガードし、反撃を何度も試みる、そして、発動し損ねていた奥の手を当てて2本目を取った。
三本目。シノネは正面から仕掛けてくる。あやめは上手く攻防を続けていくが、シノネは紫のマントを捨てて動きを速め、シノネの投げ技があやめとの体力差を広げていく。そして、瞬間移動から奥の手、霊の分魂を発動させ、紫のマントを出現させて空中に浮かせて6体のシノネからの攻撃を受け、結菜が3本目を取った。
「やっぱり強いなぁ、結菜は」
「カガミで投げ技も鍛えてるからね」
「そっかぁ」
結菜が準決勝進出し、承芽と生実も準決勝での対決が決まった。
準決勝第1試合。射依のネルスと結菜のシノネの試合は射依の速い反応速度で次々に連続攻撃が決まり、結菜ももう少しのところまで追い詰めるが、2本連続で射依に負けた。
「惜しいー、結菜」瑞葉
「私じゃまだまだね。承芽と生実の試合を見よう」
準決勝第2試合。承芽のわとこと生実のレシルの対戦は大激戦となり、承芽が1本目を取り、生実も追い付く。3本もわとこの瞬間移動と炎の遠距離攻撃と、レシルの空中突進技がぶつかり合い。最後はわとこの投げ技が決まった。
「ふふーん、結菜の真似ぇ」
「あー、それがあった……」
休憩。
決勝戦。
「やっぱり上がってきたわね」承芽
「やっと本気でやれる時が来たぜ!」射依
1本目。承芽は早くも射依の超的確なガードと攻撃に驚く。ネルスは特別に速い動きをする訳ではないが、通常攻撃のリーチが長めで、特に突進技の襲による空中3連続攻撃は決めやすい。
(あと、あのニヤけた顔も不気味だよねぇ)承芽
承芽は瞬間移動を仕掛けるが決め手に欠ける。ネルスは通常技を仕掛け、わとこはガードゲージが限界達し、襲の3連撃が決まる。奥の手の眠も決まり、12連撃で射依が1本取る。
2本目。わとこは開始早々、緑のマントを外して素早さと攻撃力を高めて近づいていく。だが、炎を前方に放つが、ネルスはすかさずガード。わとこは瞬間移動で一発ずつガードさせては離脱を繰り返す。ネルスはガード破壊になる前に攻撃に転じる。しかし、わとこの隙を突いた瞬間移動からの連撃が決まり、更に投げ技も決めていく。最後はネルスの襲をガードしたところに火の噴き飲みを発動し、ネルスは炎に吹き飛ばされ、承芽が1本を取った。
三本目。わとこは既にマントを外した状態に対し、ネルスは怪の纏いを発動して全身に黒と紫のオーラを出し、防御力の低下を引き換えに素早さと攻撃力を上げた。
ネルスは弱襲を弱襲でキャンセルしたりと、牽制というよりかは誘き寄せようとする。それに対し、わとこも瞬間移動で誘き寄せ、誘き寄せ合戦が繰り広げられる。と、その瞬間、ネルスはガード破壊を狙って襲3連撃を繰り返す。わとこは瞬間移動でガードゲージの自動回復を待つが、技を発動するとガードゲージの回復は止まる。それほどの回復は見込めないわとこは攻めに転ずるが、ネルスはすかさず襲3連撃を仕掛ける。だが、3発目が発動せず、空中で無防備になったところをわとこの連撃が決まる。襲の入力は下、斜め、横だが、2発目に2回、3回目は3入力する必要がある。射依は襲の過度な入力に自身の疲労が限界に達しようとしていた。ネルスは地上戦を中心に攻撃を仕掛けつつも、自身の体力の回復も図る。
最後の攻防が始まった。お互いに体力を減らしていく。そして、最後の襲3連撃がわとこを襲い、わとこのガードが破壊され無防備になる。
「くっ!」
射依から声が漏れるとネルスは硬直する。衝撃で後ずさったわとこにとどめを刺そうと前方を入力しながらリーチのある通常技を入力しようとするが動かせない。そこにわとこは奥の手、火の竜巻を発動させ、ネルスは巻き上がる炎に包まれた。承芽が2本取って優勝を決めた。
歩み寄る二人。
「さすがに襲を酷使しすぎたかな。まあ、やるだけやったし、楽しかったよ」
「私も楽しかった。ありがとう」




