その三
瑞葉は静葉との特訓に疑問を感じ始めた。確かに静葉は強い、特訓の相手としてはこれ以上の相手はいないだろう。対戦してくれて、勝率は上がってきているが、多彩な攻撃を仕掛ける静葉の動きの中にも、どこかに癖のようなものを感じるからこそ。いや、少しは力を抜いているからかもしれない。しかし、静葉はいつも本気と答える。
「静葉さん、ちょっと外に行ってくる。今日はもう戻らないかもしれないから待ってなくていいよ。それじゃあ、今まで対戦してくれてありがとね」
毎日のように特訓に付き合ってくれた静葉は笑顔で見送った。
本番は一発勝負。こういうのは精神力が物を言う。静葉とばかり対戦していては、技術力は上がっても精神力は大して変わらない。このままでは全国の猛者に半分も力を出せずに負けてしまう。
商店街にあるゲームと雑貨の店である爽山に入り、階段を登ってゲーム売り場に着く。試遊台のアマネシホシをやっていると、おもちゃの仮面を着けた女が乱入してくる。女は黙ったままワトコを選び、こっぱみじんにアヤメを粉砕して去っていった。
レジを覗いてみると、仮面の女が店番をしている。
「やっぱり承芽だったか……」
「相変わらず、瑞葉は知らない相手だと何もできないんだから……」
そう言って承芽は仮面を外す。
試遊台に戻ると、別の仮面を着けた女が遊んでいる。瑞葉が乱入すると、仮面の女は全く動じず、操るシノネのごとく冷静な動きでじわじわとアヤメの体力を奪っていき二連勝。
「全然ダメね」
仮面を外すと結菜。
「やっぱり結菜か、なんとなく分かってたけどね」
「次は私」
新たな仮面の女が現れた。
「瑞葉がやって」
結菜からパッドを渡され、レシルに翻弄されて二連敗。
「瑞葉はゲームではない何かが必要ね」
瑞葉は仮面の女から聞こえる生実の声に指摘されて考え込む。
ひとまず店を出た。
「そういえば、今日は晴山運動会だったか」
「ああ、町内運動会ね。私はいいかな……」
瑞葉はあまり乗り気のない目で告知を眺める。
「とりあえず行ってみよう」




