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その三

 五月十日木曜日。瑞葉達は学校から帰り、制服姿のまま晴山森公園に集まった。光々達が撮影の準備をしている間、瑞葉達は脚本を確認する。

「ついに中学生だね」瑞葉

「やっと、いつも通り振る舞える」承芽

「いつもの私達だからね」生実

 台本を確認していると、光々が近寄ってくる。

「そろそろ始めるよ」

 三人は光々に呼ばれて位置に着くと、光々の合図で撮影が始まる。


「まめさーん」瑞葉

「どうもー」承芽

「こんにちは」生実

「あら、中学生になったのね」

 まめさんははバターピーの袋を持って森を眺めていると、近づいてくる三人を見て、制服姿に気づく。

「まめさんは、どんな中学生だったんですか?」瑞葉

「私か中学生の頃は、今と変わらないわね。公園に行ったり、本を読んだり、ゲームをしたり」

「まめさんもゲームをやるんですか? 私達もよくやってるんですよ」承芽

「ゲームは一番の趣味ね」

「よく公園にいるのはどうして?」瑞葉

「まあ、気晴らしね。ずっと家にいても息苦しいし。あとは、山猫屋でゲームをしたり」

「やあ、みんな。君達も中学生かぁ」

 探偵の真尋と助手の皆世が現れる。

「また、サラがいなくなったんですか?」瑞葉

「いや、最近の頼子さんはサラを自由にさせてるみたいで、ちょっといなくなったぐらいでは探さなくなったみたいだよ。それでちょっと聞きたいんだけど、みんなは公園でサラを見かけたりするかな?」

「そういえば見なくなったよね」

 承芽がみんなに問いかける。

「うん、見ない」生実

「まめさんは?」瑞葉

「私はよく見かけるけど」

「どうやら、頼子さんがサラを放っておくようになってからは、あまり遠くに行かなくなったみたいなんだよね。頼子さんによると、サラは家にいる時間が増えたみたいだよ。でも、まめさんにはよく会いに来てるみたいだね。そういえば、近頃のまめさんはよく頼子さんの家に来てるみたいだけど、サラは見かけるかな?」

「よく、うちに来てるわね」

「もしかして……」瑞葉

「つまり……」生実

「サラがいなくなる原因って……」承芽

「…………私?」まめ

「サラはまめさんのことを気に入ってるみたいだね。まめさんがいる所にサラが居る可能性が高いということか」真尋

「そういえば、頼子さんって猫の絵描きさんなんだよね」瑞葉

「そう、雑貨に使われる絵を描いたり、雑貨そのものを考えたり。それを会社に売り込んだり。あと、雑誌のコラムを書いたり」

「いわば、サラは商売道具みたいな存在だから、そういう意味でも大事にしたいのかもしれないぞ」承芽

「サラをモデルに描いてるってことか」生実

「家族であり仕事仲間であると」結菜

「あっ、それ、ねこピーだ。鰹味で美味しいよね、承芽の店でしか見たことないけど」瑞葉

「ちなみに、ねこピーは私が頼子さんに頼んで会社に作ってもらった、あの店にしかないピーナッツ」まめ

「さて、私達はそろそろ帰るよ」真尋

「ありがとうございました、それではまた」皆世


 四人は黙ってバターピーを食べ続ける。

「中学生は、あっという間なのかな」承芽

「あっという間って、なんでだろう」生実

「まめさん、小学生はあっという間だった?」瑞葉

「中高生の六年間は生き方が見えてきてるけど、小学生の六年間はボヤけてるから、それなりに長かったわね。人は、先が見えないほど時間が長く感じるのよ。慣れてくると早く感じるから……」

「でもやっぱり、小学生も少しは短く感じるよね」承芽

「やりたい事があればあるほど時間は足りなくて短く感じる。人は色々と妄想する生き物、小学生なら尚更ね」まめ

「妄想と創造って違うよね。いざ形にしようとすると、予想していた形より現実的に収まっていく」結菜

「漫画も、最初の頃は物凄く妄想を掻き立てられるけど、ある意味で一番楽しいかも。いや、最初ならではの楽しさはその後の展開とは違う孤高の存在」結菜

「物語が明確になってきて答えが出ても、最初の頃の何も分からずに妄想していた物語は、いつ振り返っても答えを追い求める永遠の夢物語なんだよ。最初のわくわくを大事にしたいよね」瑞葉

「好きな物語ほど、もっと知りたくなったり、違う可能性を見いだしたくなる。その感情が創作のきっかけになると思う」まめ

「それじゃあ、またね、まめさん」瑞葉

 三人は帰っていった。

「森静か、時が流れて、知る私。何も変わっていないようで、私も少しずつ変わっていく……のか?」まめ


 三人が戻り、光々達もベンチの回りに集まってくる。

「みんな、ありがとう。これで撮影は終わりね。残りは編集だけだから、楽しみにしていてね」

 光々達は帰っていった。


 残りのバターピーを食べていると、ワンピース姿の女性が近づいてくる。

「あっ、本物のまめさんだ」

 瑞葉は公園でよく見かけるまめさんにすぐ気づく。

「みんなお揃いで」

「さっきまで、撮影をしてたところ」承芽

「撮影?」

「急遽、友達に頼まれて、晴沢中の緑祭で上映する映画に出演することになって……」生実

「主役のまめさんは結菜が演じてるんだよ」瑞葉

「いつも公園にいる情報屋っていう設定なの」承芽

「それはそれは。結菜、難しかったのでは?」まめ

「いつもとあまり変わらないかも……」結菜

「そうだよね、おっとりしてそうで、ちゃんと考えてるところとか、まめさんと似てるよね」承芽

「うん。だから、苦労したところはと聞かれても、あまり苦労はなかったかな、急いで脚本を覚えたことくらい」

「それはそれは。ところで、みんなもバターピーを食べてるのね」

「そうなんだよ、一昨日からバターピーばっかで。美味しいからいいんだけどね」承芽

「まめさんは一日でどのくらいバターピーを食べるの?」瑞葉

「日によるけど、一袋食べたり、数粒だったり。他にも色々とお菓子を食べるから。まあ、多くて三袋ぐらいかしら」

「さすが、まめさんなだけある」瑞葉

 四人は帰っていった。

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