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その二

撮影は順調に進み……。

 五月九日水曜日。瑞葉達は今日も公園での撮影に出演することになった。瑞葉は学校から帰ると衣装を選ぶ。

「これにしてみよう」

 瑞葉は着替えて晴山の森公園に向かった。公園に着くと、結菜達がベンチの近くで脚本を確認している。

「お待たせー、私もワンピースにしてみたよ。あれ? みんなもか……」瑞

「なんだ、瑞葉も」承芽

「私も着てみた」生実

「さすがに全員ワンピースは不自然かなぁ……」瑞葉

「いいじゃん、全然問題ないよ。色も被ってないし」光々

 瑞葉は水色、結菜は黄色、承芽はピンク、生実は黄緑のワンピースを着ている。

「まあ、うちらはいつも色分けしてるからね」

「脚本は覚えた?」

「一応覚えたよ。まあ、細かいことは私達に任せてくれるみたいだから、なんとかなるはず」承芽

「昨日、ずっと脚本を覚えてたら、なんか楽しくなっちゃって」瑞葉

「そうそう。かなり私達に合ってる役だと思うよ」生実

「うん、ちょっと撮影が待ち遠しくなっちゃった」結菜

「よし、始めよう」光々

 結菜がベンチに座り、撮影が始まる。


「まめさん、こんにちはー」瑞葉

「まめさん元気?」承芽

「まめさん、会いに来たよ」生実

 三人は公園のベンチに座るまめさんに声をかける。

「それはそれは。では、これをあげよう」

 三人にバターピーの袋を渡す。

「ありがとう、マメさん」瑞葉

「ところで、あなた達もワンピースね」

「うん。偶然みんな同じみたいで……」瑞葉

「まめさんはいつもワンピースだよね」承芽

「楽だからね」

「あれ? サラだ。また公園にいる」

 瑞葉は森でくつろいでいるサラを見つけると、近寄って抱き抱える。

「やあ、まめさん、サラを探してるんだが……」真尋

 探偵の真尋と助手の皆世が現れる。

「サラならここに」

「さすがまめさん、今回もお手柄だな」真尋

「助かりました」真尋

「それじゃあ、頼子さんに届けてくるよ」真尋

 瑞葉は皆世にサラを渡すと、真尋と皆世は帰っていった。

「あっそうだ、仕入れの手伝いがあるんだった」承芽

「私も試作品の研究の続きが」生実

「私もお店のパウンドケーキを作る手伝いが」瑞葉

 三人は帰っていった。

「はいカット。いいね。次は五年生ね」

 脚本を確認してから撮影を再開する。


「まめさん、こんにちは」瑞葉

「私達もバターピーを持ってきたよ」承芽

「一緒に食べよう」生実

 三人もベンチに座ると、持参したバターピーの袋を開ける。

「ワンピースの四人が揃ってバターピー……。なかなかね」

 四人でバターピーを食べていると、瑞葉が質問する。

「まめさんは探偵なんでしょ?」

「まぁ、そんなところね」

「どんな依頼がくるの?」生実

「猫を探したり」

「それは知ってるって。他には?」承芽

「落とし物を探したり」

「あとは?」承芽

「買い物を頼まれたり、掃除を手伝ったり」

「なんでも屋だね」瑞葉

「そう、なんでも屋」

 話していると、探偵の真尋と助手の皆世がサラを抱えて現れる。

「やあ、みんな」

「サラだ、今回は先に見つけたみたいだね」瑞葉

「実は、事務所にサラが来たから、もしかしたら頼子さんに何かあったのではと、頼子さんの家に様子を見にいってみたのだが、誰もいないみたいで」

「それで、頼子さんを探してるのですが……」

「頼子さんなら、三十分程前に公園に来ていたけど」

「多分、サラを探してたんだな」真尋

「そういえば、ここに来る途中、森で頼子さんのような姿を見かけたけど……」瑞葉

「森か、ありがとう、行ってみるよ」

「助かりました」

 真尋と皆世は頼子さんを探しに森の中に入っていった。

「サラは何しに事務所に行ったんだろう」承芽

「猫がわざわざ飼い主を探しに家を離れるかなぁ……」瑞葉

「サラは頼子さんに連れられて、よく事務所に行ってたんだろうし、遊びに行ってたんじゃない? 頼子さんの家と事務所はそんなに離れてないみたいだし」生実

「あっそうだ、新作の感想を書かないと。難易度とか色々書いて、店で配るやつ」承芽

「私も今日は試運転があるみたいだから」生実

「私も新しいパウンドケーキを考えると約束をしてたんだった。それじゃあ、またね、まめさん」瑞葉

「はいカット。この調子で六年生も撮ろう」光々

 脚本を確認してから撮影を再開する。


「まめさん、こんにちはー」瑞葉

「どうもー」承芽

「一緒にバターピー食べよ」生実

 瑞葉達は持参したバターピーを開ける。

「あなた君達も、もう六年生ね。長かったような短かったような。あなた達が一年生だった頃が昨日のことのように思い浮かぶわ」

 そう言って、まめさんは目の前に広がる森の奥を見つめながらバターピーを食べる。

「まめさんは、バターピーをそのまま食べる以外に、どんな食べ方をするの?」瑞葉

「そうね、コーンスープに混ぜたり、カレーに混ぜたり、粉末にしてアイスにかけたり」

「私は納豆に混ぜたよ」承芽

「私はマシュマロに刺して食べた。瑞葉は?」生実

「私はちくわに刺して食べた。面白い食感でなかなか美味しかったよ」瑞葉

「おもおいしい、だね」承芽

「あら、あなた達も、なかなか変わってるわね」

「やあ、みんな。私達もバターピーを持ってきたよ」

 探偵の真尋と助手の皆世がバターピーを持って現れる。

「またサラを探してるのかしら」

 まめさんは察して尋ねる。

「今日はまだ、サラの捜索依頼はありません」

 皆世が答える。

「でもほら、あそこにいるのはサラなのでは?」

「本当だ、もしかしかたら、これから捜索依頼がくるかも」

 と、その時、携帯電話が鳴る。

「頼子さんからです」

 真尋は皆世の携帯電話を受け取って応対すると、電話を切って皆世に返す。

「それじゃあ、みんな。サラを頼子さんに返しに行くね」

 真尋と皆世はサラを連れて帰っていった。

「今日もお手柄だね」瑞葉

「そういえば、お店の手伝いがあるんだった。どういう商品を売るか小学生の私の意見を聞きたいんだとか」承芽

「私も飛行機の研究しないと」生実

「私もお店の手伝いが」瑞葉

 帰っていく三人を眺めながら、マメは呟く。

「子供達、明日へと向かう、われいずこ」

「それじゃあ、明日もお願いね。次は中学生だから、制服のままで来てね」光々


 撮影が終わり、四人は公園を出ていく。

「今日は光の星使いと、かがみをとおるを放送するけど、またみんなで視よっか?」瑞葉

「いいね。じゃあ、七時前に瑞葉の家ね」承芽

 瑞葉は公園の前で三人と別れて帰っていった。


 四人は瑞葉の家に集まり、瑞葉の自室にあるテレビの前で待機する。七時になり、光の星使いが始まる。

「今日は誰かな」瑞葉

 物語が進むと、怪物退治に牡羊座の牧山智絵、牡牛座の大橋若菜、双子座の相田二葉、蟹座の早瀬歩美が選ばれ、転送されて集まる。智絵は植物を操る力、若菜は動物の力、二葉は分身の力、歩美は次元を移動する力を駆使し、怪物を探り当てて退治した。

「次はかがみをとおる!」瑞葉

 七時三十分からもアニメが始まる。

「まてーーーーー!」

 主人公のノボルは、追人(おいびと)と呼ばれる人形ロボットのヒザシで、触れると世界の覇者になる力を得られるといわれる逃人(にげびと)を追いかけ続けるが、他の追人勢力がヒザシと他三機に邪魔をしてくる。

「ノボル、ひとまず戻って」

「わかった」

 戦艦ヒガサからの艦長であるヒナタはノボルに帰艦を命ずる。

「追い詰めましたわよ!」

 戦艦トワイライトの艦長であるマドレーヌの甲高い声が、ヒガサの艦橋に響く。

「じゃあな、マドレーヌ」

 戦う気の無いノボルはマドレーヌに返すと、仲間機を含む全四機は戦闘領域を離れる。先行して離脱していたヒガサに追い付くと、ヒガサと共には速度を上げて並走する。

「まったく、逃げ足だけは速いんだから……」

 マドレーヌはヒガサ隊の逃げる速さに呆れる。

「月影、鏡は?」

「あったわ、このまま直進して」

 索敵の月影は、自軍が所有する天の御鏡を目指して緊急離脱を図る。

「ヒナタ、あいつらは追いかけるのを諦めたみたいだぞ」

「とりあえず、鏡に向かって」

 天の御鏡を通って遠い領域に逃げ込んだが、敵軍も自軍が所有する天の御鏡を通り、先回りして目の前に現れる。

「あら、ノボル、また会いましたわね」

「しぶといヤツめ」

 トワイライトから、マドレーヌが操縦するスターライト赤がディライトと交代で出撃する。タルトが操縦するスターライトの前に出ると、痺れてあまり動けないヒザシに近づき、腕に固定されたスターライターの銃口をヒザシ向ける。

「おやすみ、ノボル」

 マドレーヌは最後の言葉を告げると、手元の引き金を引こうとする。

「待って」

 スターライトがとどめの一発を放とうとした時、ヒナタの言葉にマドレーヌは撃つのを止める。

「ヒナタ……」

 ノボルは呟く。

「命乞いは受け付けませんわよ」

「渡したい物がある」

「渡したい物?」

 ヒガサのカタパルトデッキから白いケースがスターライト赤に向かって放たれると右手で掴む。

「なんですの? 金塊なら間に合ってますわよ」

「お茶うけ」

「お茶うけ? そ、それは、どうも……」

「気に入ってくれたら、見逃してほしい」

「いいわよ、待ってなさい。不味かったら容赦しないわよ! ジェラート、お茶の用意を」

「かしこまりました」

 料理長のジェラートは、すぐにお湯を沸かし始め、棚から紅茶を取り出す。

 着艦したスターライトから降りたタルトはケースを持ち運んでいくと、長いテーブルの端に立ってケースを開けると、中には黒く長い物体が敷き詰められている。

「これは……なんですの?」

 マドレーヌはテーブルに置かれた画面に映るヒナタに向かって尋ねる。

「羊羮」

「ヨウカン? ジェラート、適当な大きさに切るのです」

 マドレーヌが席に着き、ジェラートは透明の袋から羊羮を取り出して2センチ程に切って皿に移し、マドレーヌの前に皿を置くと、マドレーヌはフォークを刺して食べる。

「お、おいしいわね……」

 マドレーヌは砂糖を入れずに紅茶を飲む。

「できれば、一緒に送った緑茶と一緒に食べて欲しい」

「これね。ジェラート」

 ジェラートがカップに緑茶を注ぐと、羊羮を食べてから緑茶を飲む。

「なかなか渋い味ね。確かに、これとの相性はいいと思うわ。皆さんも食べてみなさい」

 マドレーヌの言葉を待っていたかの如く、両扉がバタンと開き、大勢の隊員が雪崩れ込んでくる。

「美味い!」

「この深い甘さ!」

「この重い食感!」

「そして、この渋いお茶!」

「美味い! 非常食にも良さそうだな」

 整備長のキルシュトルテも羊羮を気に入る。

「今まで味わったことのない味だな」

 料理長のジェラートも羊羮を気に入る。

「俺はこの緑茶も気に入った。常に常備したいな」

 艦長のタルトは緑茶も気に入る。

「よろしかったら、もっと差し上げますよ」

 画面に映るヒナタがマドレーヌに言う。

「あら、よろしいのですか? 遠慮なく頂いておきますわ」

 ヒガサから次々とケースがトワイライトに向かって放たれていき、ムースの乗るムーンライト、エクレアの乗るハイライト、チュロスの乗るディライトが受け取っていく。長いテーブルに山の様に羊羮が積まれていくと、隊員達は羊羮を切らずに食べ始める。

「あなたたち、お行儀がよろしくなくてよ!」

「いやいや、切らずに食べるのも美味しいぞ」

 画面に割って入ったノボルが切らずに食べることを勧めてくる。

「…………まったく、どれどれ」

 とか言いつつ、マドレーヌはあっという間に羊羮を一本たいらげた。

「とにかく、ここは見逃してあげるわ、さっさとどこにでもお逃げなさい」

「ありがとう」

 ヒナタがお礼を言うと、ヒザシと仲間機が艦内に戻る。

「ヒナタ、羊羮とお茶はもっと用意しておいた方がいいな」

「そうね」

 艦橋に入ったノボルの言葉に、ヒナタは艦長席に座って状況を見ながら答えると、手元のボタンを押して厨房に回線を繋げる。

「ヒカゲ、羊羮をもっと用意しておいてください」

「任せといて」

 ヒナタは索敵のツキカゲを見て言う。

「ファンタジアは、まだ近くですか?」

「目の前にいるわよ。ちょっと離れてるけど」

「見えるわ、あれね」

 ヒナタは肉眼で逃船の戦艦ファンタジアを視認すると、ツキカゲが艦橋の大きな画面に映し出す。

「ドリーマー、フライヤー、トリッパー、ローラー、みんな、楽しそう」

 円形のファンタジアの先端に四機の逃人が降り立ってこちらを見ている。

「そうか?」

 ノボルはヒナタの絵空事はいつものことと思いながら、軽く言葉を返す。

「残念だけど、今はそれどころではないわね」

 ノボルは窓の外に微かに見える白いファンタジアを見つめていると、体が温かくなっていく。

「またこの温かみ。なんなんだ?」

「わたしを、つかまえて……」

「またか、誰なんだ?」

 ノボルは以前にも聞いた女の子の声が誰なのか考え込む。

「どうかした?」

 ヒナタが気にかける。

「いや、なんでもない。疲れたかな」

 ノボルが艦橋を出ていこうとすると、突然大きな画面が白く光る。ノボルが振り返ると、ゆっくりと人影が映り始める。

「女の子?」

 ノボルは、女の子を見て不思議な親近感を覚える。

「みなさん、はじめまして、私は戦艦ファンタジアの艦長、チサトです」

「はじめまして、チサト、私は戦艦ヒガサの艦長ヒナタです」

「ヒナタ、あなたに会えて、とても嬉しいわ」

「ところで、あなた達は神がかった力を持つと聞いているのですが、当たりですか?」

「そうかもしれないわね。私にもよく分からないの。みなさんはどうなのかしら、変わった力は有りますか?」

「無い、かな」

「そうですか」

「この声……やっぱり」

 ノボルは、チサトがどこからか聞こえてくる声の主だと確証を持つ。

「どうも、ヒザシを操縦してるアサヒノボルです」

「はじめまして、ノボル」

「その……チサトは何歳?」

「16歳の高校生一年生ですが」

「そ、そうか。俺もヒナタも高校一年生。ちゃんと学校に通ってるんだな……」

「はい、今は夏休みですが」

「なんだ、俺達と同じか」

「はい、なので、夏休み中につかまえてください。」

「お、おう。でも、どうして逃げるの?」

「ふふ、理由なんて無いですよ。追いかけるから逃げる。理由なんて、それでいいじゃないですか。みなさんは、なぜ追いかけるの?」

「そりゃまあ、神の力がどういうものなのか気になるし……」

「お話できて良かったです。私達はこれから修理があるので、修理が終わったらまたどこかで会いましょう」

 ヒナタが会話に割って入る。

「はい、待ってますね。それでは」

 回線が切れ、画面は宇宙地図に替わる。

「ちょっとちょっと、まだ聞きたい事があったのに……」

「聞きたい事?」

「そうだよ。好きな音楽とかアニメとか食べ物とか」

「ミルフィーユとかティラミスじゃない?」

「いやいや、意外とラーメンとか好きなんじゃないか?」

「麺類ならスパゲティだと思うけど」

「と見せかけて、かき揚げを麺汁にじっくり染み込ませて食べるのが好きだったりしてな」

「ノボルの好みでしょうが……」

 ヒナタは左側のひじ掛けの先にある丸い球体に手のひらを載せて意識を集中させる。

「ヒガサ、天の御鏡に入ります」

 ヒナタが自らヒガサを動かし、反転させて天の御鏡に消えていった。

 EDが終わり、CMが流れ始めた。


「今回もやられっぱなしだったね」瑞葉

「もはや、お決まりかな」生実

「ヒナタはノボルに嫉妬して、無理やり回線を切ったよね」結菜

「チサトはノボルに言った言葉に自覚ないのかな」承芽

「どうだろう、ノボルみたいな人をどこかで思い描いていたのかも」結菜

「うん。それで、ノボルを見たときに、この人につかまえて欲しいって思ったはずだよ」瑞葉

「それで、勘の鋭いヒナタは会話を無理やり終わらたのね」承芽

「それって、ヒナタにも聞こえてるけど、知らないふりをしてるってこと?」

「やっぱり、ヒナタはそれなりにノボルのことを気にかけるてるよね」生実

「とにかく、羊羮食べたくなってきた」承芽

「羊羮ならあるよ」瑞葉

 早速、羊羮と緑茶を用意して食べる。

「いやぁ、お茶が合いますなぁ」瑞葉

「紅茶もコーヒーも試したけど、やっぱり緑茶が一番合うよね」結菜

 羊羮を食べ終わり、瑞葉は三人を玄関まで見送る。

「それじゃあ、みんな、明日も撮影頑張ろう」瑞葉

 三人は帰っていった。

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