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その一

学校再開。

 五月八日火曜日。学校が再開し、瑞葉達四人は晴沢の森の中を歩いていく。

「久しぶりに学校だね」瑞葉

「さすがに昨日はヤバかった……」承芽

「ちょっと詰め込み過ぎでしょ」生実

「まだ疲れが取れなくて……」結菜

「そういえば、帰ったあと、お母さんとお父さんが帰ってきたよ」

「新しい陸地は見つかった?」生実

「やっぱり見つからなかったみたい。ほとんど観光だったみたいで」

「まあ、飽くまでオカルトの類いだからね」承芽


 森を出て、雑草が茂る先へ東門向かっていく。

「今週の日曜日は晴沢中緑祭りだね」

「自由参加だし、うちらは参加してないから忘れてた」承芽

「秋の文化祭と違って、緑祭りは自由参加だからね。組ごとに何かをする訳でもないから。組が違っていてもいいし」生実

「町内運動会みたいなもんだね」瑞葉

「二組は光々達が映画を撮影して上映するみたいだけど、撮影は進んでるのかな」結菜

「連休中に撮影してたみたいだよ」生実


 緑祭りの準備のために当てられた五時間目は、ただの自由時間となっていた。

「光々、撮影は順調?」

 承芽が光々達の話の輪に入る。

「うん。順調だよ。でも、なんか違うんだよね」光々

「なにが?」

「公園のまめさんっていう探偵物なんだけど、まめさんは最々が演じてるのね。上手いこと演じてるんだけど、まめさんの本質を考えると、なんか足りないような」光々

「私も演じていて、深味みたいなのが足りないような気がするんだよね」最々

「最々の特徴に合わせて、脚本を少し変えるべきかな……」光々

 途方に暮れる光々達に瑞葉と結菜と生実が会話に加わる。

「どうかした?」瑞葉

「撮影でちょっとあってね、ん? おお、そうだ! 結菜に頼みがある。公園のまめさんは結菜しかいない!」光々

「え?」

「うん、結菜がぴったりかも」愛々

「よし、放課後に撮影しよう。じゃあ、脚本を渡しておくから、頼んだよ!」光々

「わ、わたしが!?」

 結菜は席に戻り、脚本を読んでみる。

「まめさんかぁ、やってみるか……」


 学校が終わると、瑞葉達四人は一旦家に帰り、結菜は要望通りに襟付きのワンピースに着替えてから撮影が行われる晴山の森公園に向かった。公園に着くと、一緒に撮影へ参加することになった瑞葉達も普段着にランドセルを背負って脚本を確認している。

「台本は覚えられた? まあ、大体の流れが合ってればいいよ」

「覚えたけど……」

「さすが結菜。あと、これね」

 光々は袋を渡す。

「バターピー?」

「まめさんはよく豆を食べてるの。だから子供達にまめさんって呼ばれてるの。じゃあ、こっち来て」

 結菜はベンチに座り、光々から説明を受ける。

「感情は出さずに無表情ね。脚本が最後まで進んだら自由に喋ってみてもいいよ。みんなにも言ってあるから適当に話してみてね」

 光々がカメラマンを持っている弓々の隣に移動すると、光々の合図で撮影が始まる。


 昼下がりの公園、まめさんを演じる結菜がバターピーを一粒ずつ食ていると、瑞葉と承芽と生実がランドセルを背負って近づいてくる。

「あっ、公園のまめさんだ、これあげる!」

 小学一生役の瑞葉が棒状のスナック菓子をまめさんに渡す。

「では、頂くわ」

「知ってる? まめさんに駄菓子をあげるといいことがあるんだって」瑞葉

「ホントに? じゃあ、私もあげる。はい、まめさん」

「ありがとう」

 ランドセルを背負った承芽もスナック菓子をまめさんに渡す。

「私もあげる。はい、どうぞ」

「ありがとう」

 ランドセルを背負った生実もスナック菓子をまめさんに渡す。

「では、お礼にバターピーをあげるわ。手を出して」

 三人が片手を出すと、バターピーを手のひらに出した。

「ありがとうマメさん。ね、いいことあったでしょ?」

「ほんとだ」承芽

「ありがとね」生実

 バターピーを食べながら、瑞葉が質問する。

「ねえねえ、まめさんはいつもなにしてるの?」

「まぁ、近所を行ったり来たり」

「ふーん」

 瑞葉は不思議そうにまめさんを見つめる。

「まめさんは何歳?」

 承芽が質問する。

「まぁ、まあ、十二歳の辺りをと行ったり来たり……」

「ふーん」

 承芽は不思議そうにマメさんを見つめる。

「まめさんはなんでまめさんって呼ばれてるの?」

 生実が質問する。

「それはやはり、豆ばかり食べてるからだと思われるわね」

「そんなに豆が好きなの? どの豆が一番好き?」生実

「やっぱり、一番はバターピーね。ちなみに、ピーナッツは二日酔いにも効くみたいよ。あなた達も大人になったら、お酒と一緒にピーナッツを食べることを勧めるわよ」

「そうなんだぁ、あとでお母さんとお父さんにも教えるね」生実

「あなた達はどの豆が好きなの?」

「えーと、黒い色した甘い豆」瑞葉

「黒豆でしょ? 私は納豆が好き。二人は食べられる?」承芽

「納豆? ネバネバしたやつ?」瑞葉

「私は食べられるよ、瑞葉は?」生実

「あれ、臭いから食べたくないなぁ、給食に出てきたのは残さず食べたけどね。まめさんは食べられる?」瑞葉

「もちろん食べられるわよ、大人だからね。中には大人になっても食べられない人もいるから、あなた達はお利口さんよ。私は中学生になるまで食べられなかったからね。まあ、梅干しでも混ぜてみたら食べられるかもしれないわよ。ところで、君達は何年生かな?」

「一年生だよ」瑞葉

「一年生か。その割には言葉が達者ね」

「あっ、お母さんの手伝いがあるんだった」承芽

「私も、お父さんの手伝いをしないと」生実

「私も。それじゃあ、まめさん、またね」瑞葉

 バターピーを食べ終えた三人は帰っていった。


「はい、カット。凄く良かったよ、結菜はハマり役だね。三人も凄く良かったよ」光々

「結菜が二日酔いの話をしてからは勝手に盛り上げちゃったけど、どうだった?」承芽

「めちゃくちゃ良かったよ。このまま使わせて貰うね。それじゃあ、結菜はこのままで、次は音々と乃々、お願いね」


 撮影が再開され、探偵役の音々と、助手役の乃々がベンチに近づいてくる。

「やあ、まめさん。子供達に人気があるとは意外だねぇ」

 探偵の真尋と助手の皆世が話しかけてくる。

「あなた達か。また依頼?」

「そうなんだよ。迷子の猫を探してるんだが」

「この子です」

 皆世が写真を出して見せる。写真には黄色と白の模様をした猫が写っている。

「そういえば、谷にある自販機の上に、この色をした尻尾が垂れ下がっていたが」

「そうか。早速行ってみるよ」

「はい、カット。次は愛々の出番ね」


 依頼主の頼子を演じる愛々が、ぬいぐるみの猫を抱いて真尋と皆世と一緒にベンチに近づいてくる。

「まめさん、是非にとお礼をしたいそうなのでお越し頂きました」真尋

「猫を見つけて頂いてありがとうございました。どうぞ、これ、バターピーです」

「これはこれは。では、頂きます」

 まめさんはバターピーの袋を受け取る。

「ところで、猫はどのくらいの間、行方不明だったんですか?」真尋

「朝御飯を食べたあとからです。、探しても見つからなくて」

「そ、そうですか、見つかって何よりです」

 頼子は帰っていった。

「ところで、まめさんは普段、何をしてるのかな?」真尋

「うちは農家なので、時々、手伝いをしたり、しなかったり」

「農家さんだったのか。ちなみに、何を栽培しているのかな?」真尋

「とうもろこし」

「とうもろこしかぁ、美味しいですよね」真尋

「ということは、この辺りのとうもろこし畑は……」皆世

「うちの畑です」

「まめさんの畑だったのかぁ」真尋

「ところで、何か話があるのでは?」

「あ、そうそう。お願いがあって。うちの探偵事務所に所属する情報屋になって貰いたいんだが」

「構わないけど、何をすればいいのかな?」

「いつも通りでいてください。それが、私達にはとても役に立つんです」皆世

「いいでしょう」


「はい、カット。じゃあ、次は一年後ね」光々


「あっ、まめさんだ」瑞葉

「まめさん、今日はバターピーがいっぱいあるね」承芽

「いいなぁ」生実

 二年生になった三人がまめさんに話しかけてくる。

「では、君達にあげよう」

「いいの? ありがとう、まめさん」瑞葉

 三人は袋ごとバターピーを貰うと、早速食べ始める。

「ねえまめさん、まめさんの本当の名前は何て言うの?」瑞葉

「里実」

「さとみっていうのかぁ」瑞葉

「でも、まめさんはやっぱりまめさんだよね」承芽

「これからもまめさんって呼んでもいいでしょ?」生実

「好きに言って構わないわよ」

「そうだ、お母さんの手伝いがあるんだった」瑞葉

「私も」承芽

「私も、帰らないと」

「またね、まめさん」

 三人はベンチを離れていった。

「まめさんは相変わらず子供に大人気だね」

「君達か、依頼かな?」

「そうなんだ。また頼子さんの猫が……」

「サラならさっき森で見かけたが」

「森か、行ってみるよ」

 猫が見つかると、頼子からお礼にバターピーを沢山貰った。

「はい、カット。次も一年後ね」

 結菜が脚本を確認すると撮影が再開する。


「あっ、まめさん、こんにちは」瑞葉

「今日もバターピーを食べてるね」承芽

「そういえば、まめさんはいつもワンピースだよね」生実

 三人は公園のベンチに座るまめさんに声をかける。

「あなた達もね」

「あれ? 今日はちょこもろこしもあるね」瑞葉

 まめさんは、表面にチョコレートがかかったとうもろこしの形をしたスナックを持ったまま、一口も食べずにいる。

「でこぼこしてて美味しいよね」承芽

「食感がいいよね」生実

「では、君達にあげよう」

 まめさんは何本も入っている袋からちょこもろこしを差し出す。

「ありがとう、まめさん」瑞葉

「あら、もう無い。これを開けるか」

 まめさんは、バターピーが入った紙コップを取り出して、一つ摘まんで食べる。

「そうだ、お店の手伝いがあるんだった」承芽

「私も試作品の手伝いがあった」生実

「私もお店の手伝いが。まめさんはお手伝いする?」瑞葉

「私も手伝ったりするよ。うちはとうもろこし農家だから、収穫の手伝いとかね」

「そうなんだぁ」瑞葉

「あなた達も、うちのとうもろこしを食べてるかもね」

「近くの畑でしょ? いつも買いに行ってるよ」承芽

「うちの近くの畑だね。直売所によく買いに行くよ。焼きもろこし食べられるよね。誰もいない直売所でも買ってるよ」生実

「それじゃあ、まめさんまたね」瑞葉

 瑞葉達は帰っていった。

「やあ、まめさん。またサラがいなくなったんだけど」

 探偵の真尋と助手の皆世が現れた。

「君達か。サラなら、ほら、あっちのベンチに座ってるよ」

「ホントだ。ありがとう、まめさん。連れて帰るよ」

「助かりました」

「いえいえ」

 皆世がサラ抱き抱えると、真尋と皆世は帰っていった。

「あの二人も、いつも同じ服ね」


「はい、カット。いいねいいね、とりあえず、続きの撮影は明日ね」光々

 光々達は帰っていった。

「明日もか。まあ、以外と楽しかったよね」承芽

「うん、自由に喋れるところが良かった」生実

「久しぶりにランドセルを背負ったから懐かしくなっちゃった」瑞葉

「結菜の演技もめちゃくちゃ良かったよ」承芽

「うん、思ったより楽しかった」結菜

 四人も帰っていった。

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