その四
発明家の家に行くことに。
朝宮に住んでいる発明家の家に行くことになり、四人は丸見えの丘から西に向かえと、田畑や草地が増えていき、進んでいくと草地が増えていく、民家も減っていき、駅前や丘など、観光客で賑わう土地とはうって変わって、物凄くど田舎な空気が漂い始める。
ずっと進んでいくと、道から離れた所の木々の中に古びた一軒家があり、先頭を走る生実が家に通じる道の前で止まる。
「多分、あそこだと思うんだけど……」
近づいてみると表札がある。
「広原さん?」
瑞葉は表札を見て言う。
「そうそう。やっぱりここだね」
自転車を降りて、生実が扉の脇にある呼び鈴を押すと扉が開き、四人と同じ歳ぐらいの女の子が姿を現す。
「こんにちは。発明家の広原光助さんの家ですか?」
生実が聞く。
「そうだよ、私は娘の光織。皆さんは?」
「私は稗田生実」
四人が自己紹介をすると、光織は生実に興味を示す。
「もしかして、あのヒエダ?」
「そうだよ。主に建物と車の会社だけど、私は飛行機から玩具まで、幅広く作ろうと思ってるの」
「ここがヒロハラの社屋?」承芽
「ここは自宅。社屋はこの裏にあるよ。ところで、どうやって来たの? ここは駅からかなり離れていてバスも来ないし、タクシーですか? まさか歩いて……」
「いやいや、羽橋から自転車で天川を通って来たんだよ」承芽
「自転車? 確かに川に行くとよく見かけるけど、みんなは何年生?」
「中一だよ」承芽
「私と同じかぁ。でも、アシストがあれば中一でもなんとか行けるかも……」
「アシスト機能はあるけど、使わずに来たんだよ」瑞葉
「それは凄い……」
「ところで、光助さんは居ますか?」
「さっき気晴らしに出かけたよ。まあ、入って待ってて」
光織の自室で待つことになった。
「生実の部屋と似たようなもんか」承芽
「生実は何を作るの?」光織
「私はなんだろう。最近はこの結菜が考えたボードゲームを作ったよ。そのうち販売もする予定だよ」
「試しに遊んだら、強運の持ち主の瑞葉が最後の最後で大逆転したの」結菜
「ボードゲームかぁ……。他には? もう売ってる物とかある?」
「あるよ。幼稚園児で使われてるソラタマという卵型の飛行機はもう売ってるよ」
「もしかして、飛行機競争に出て優勝した機体?」
「そうそう、あれは大人用でまだ売ってないけどね。それで、あの競争が宣伝になったみたいで、問い合わせが殺到したみたい」
「あれ、生実だったのか……」
「うん、あれ私」
「生実もすっかり有名人じゃん」瑞葉
「光織は?」
「私はサッカー用ロボットを作ったよ。光助と一緒に三十体」
「そんなに……二人で?」
「まあね。会社のみんなに手伝ってもらってもいいんだけど」
「そういえば、この近くで大会があるんじゃなかったっけ?」承芽
「そうそう。この前一回戦を勝てたから、今日準々決勝があるんだけど。で、戻ってくるまでの間、会社でも見てみる?」
「おおお、ぜひ!」生実
裏に向かうと、木造四階建ての幅がある建物がある。
「なんというか、見た目を古いけど、なかなかの大きさがある建物ね」生実
入ると、くつろげる広い空間があり、奥にはいくつも扉がり、真ん中の奥には階段がある。用件は備えられている端末を通してやり手りが行われる。
「あれ、天星がある」瑞葉
「一階はコンビニや、一般の方も利用できる喫茶店があったり、自由に集まったりもする空間だね」
二階に上がり、十字路を曲がって進んでいく。
「二階は研究員個人の研究室が並んでるよ」
一周してから十字路を真ん中に向かって曲がって進む。
「二階は外側が研修室で、内側は物置や共同で使う空間とかがあるよ」
三階に上がると、二階と同じく十字路がある。
「三階は住み込みの研究員の自室が並ぶ階ね。内側は台所や浴室があるよ」
真ん中の廊下を進むと、広い空間で女性が雑誌を読んでくつろいでいる。
「こんにちは」
「私は間宮和子。君達は?」
一人一人自己紹介をする。
「光織さんに中を見せてもらってまして。どんな研究をしてるんですか」生実
「知りたいかな?」
「はい!」生実
「なんだと思う?」
「なんだろう……」生実
「うーん……物を小さくするとか」瑞葉
「瑞葉、それはさすがにないでしょ」承芽
「なぜ分かった」
「瑞葉は勘がいいからね」結菜
「そう。つまり、もし物体を四次元に小さくして収納できたら、どれだけ便利かということだ」
「本とか色々と増えていくと収納が大変だからね」承芽
「そう、人類最大の課題は収納なのだよ」
「確かに、人類最大の夢かもしれませんね」生実
「で、ここに、何が見える?」
女性は肘掛けに乗せてある右腕の手の甲を指差してこちらを見てくる。
「……いえ、何も」生実
「私の迷える心と異次元を繋ぐ、忌まわしき魂の連なりが見えるかな?」
「連なり……異次元から自由に出し入れができる鎖……」結菜
「ええ!? 結菜には見えるの?」瑞葉
「つまり、異次元収納技術の基礎理論は既に完全している!?」生実
「ふふ、残念だけど、ただの冗談」
「冗談か……」生実
「しかし、光石からは溢れる水や電力には底がないと言われている」
「そうですね。理由は解明されていませんが」生実
「宇宙が無限なのか有限なのかも」
「世の中、有限な物ばかりなのに、宇宙だけ無限っていうのも、なんか矛盾な気もします」生実
「何か上手い収納法は無いのかな」瑞葉
「四次元収納とは方向性は変わるけど、それこそ無限の宇宙を収納に活用できれば、無限に収納は可能かもね」生実
「無人の倉庫を造り、地球の基地とをワイヤーで行き来させれば……」承芽
「それなら今からでも可能だが、まだそこまで物で溢れてはいないし、まだ必要はないかな」女性
研究員の女性と別れ、四階に上がる。
「ここもまあ、自由にくつろぐ空間だね。三階との違いは、周りにガラスを多く張り巡らしてあるから、見晴らしがいいところだね。ちなみに、ここも一般の方が利用できるよ。人里離れたところだから誰も来ないけど」
「そういえば、工場はどこ?」承芽
「工場はこの建物の地下にあるよ」
「地下かぁ」生実
「行ってみる?」
「もちろん!」生実
地下に降りると、広大な生産工場が広がっている。
「地下にこんな空間があるとはね。外の何もない環境からは想像ができない」生実
ガラス張りの廊下を進んでいくと、承芽の目が留まる。
「あれ、光カードじゃん」
「そうだよ」光織
「そりゃ、光カードを開発したのはヒロハラだからね」生実
「そうなんだぁ」承芽
一階に戻り、四人はアイスコーヒーを注文する。
「うちらはみんなコーヒーが好きなの」承芽
「ここもコーヒー好きが多いよ」
「何かコーヒーに関する商品は開発してるっけ?」
「うーん、コーヒーに関する開発をしている研究員はいたかなぁ……」
「そもそも、ヒロハラってどんな商品が有名なの?」瑞葉
「そりゃあ、ヒロハラといえば光カードが有名だよね」承芽
「光カードってヒロハラなんだぁ。他には?」瑞葉
「光らない画面とか」結菜
「光らない画面?」瑞葉
「普通の画面は光で映像を写し出すけど、ヒロハラが開発した画面は光らずに映像を写し出せるの」生実
「なるほど」瑞葉
「まあ、主に家電の商品の会社だね。それにしても、飛行機競争最後の追い上げは凄かったよね。最高速度は大会の新記録だもんね」光織
「そうだったのか、知らなかった」生実
「あの大会の規格はそれほどでもないから、他の飛行機と比べても常識を覆す速さだよ」光織
「凄いじゃん、生実」瑞葉
「嬉しいんだけど、なんであれほどの速度が出たのかよく分かってないんだよねぇ」生実
「あれは競争用じゃないもんね」結菜
「そうなんだよ。そこまで速度を重視した設計ではないし」生実
「光石には、人の想いを叶える力があると言われているけど、もしかしたら……」光織
「最後の追い上げの時にその事を考えたけど、実感としてはよく分からないし、もしそうだったとしても、飛行機の性能だけなら勝てなかった訳だから、ちょっと裏技に頼りすぎたことになる……」
「でも、途中までは単に飛行機の性能だったんだから、乗用飛行機なのにかなり高性能だったんじゃない?」承芽
「生実の想いに光石が答えたんだよ」瑞葉
「確かに、もっと速く飛びたいと光石に対して想った。そしたら、性能的にあり得ない速度が出たの……」
「なるほどねぇ。そうだとしたら、これは新たな研究の参考なるな」光織
自宅に戻って雑談をしていると、玄関から物音居住が聞こえてくる。
「帰って来たみたい」光織
「あれ? お友達かな」
「こんにちは」
「光助に会いに来たんんだって」
「お、おれ? そ、そりゃ、どうも」
「私は稗田生実です。色んな物を開発していまして……」
「ああ、あのヒエダの娘さんですか」
「生実は飛行機大会で優勝したんだよ、見たでしょ?」
「あれか、なるほど。ヒエダは飛行機も販売するみたいだね」
「はい、飛行機は私が作ったんですよ」
「そりゃ凄いな。みんなの歳は光織と同じぐらいかな?」
「中一です」生実
「中一!? どうなってんだ近頃の中学生は……。ていうか、ちょっと前まで小学生だもんな……。ほんと、最近の子は頭がいいんだからまったく……」
「それはそうと、三時から試合でしょ? 何してたんだよ、早く行かないと」
「いや、気晴らしに散歩でもしよっかなって。僕はどうも上がり症で……。そうだ、みんなも見にくるかな?」




